ディスレクシア(読字不全)とは?症状の特徴や生活での困りごとは?

ライター:発達障害のキホン
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ディスレクシア(読字不全)とは読字障害とも呼ばれるLD・SLD(限局性学習症)の一種です。そんなディスレクシアの症状や生活における困りごと、対処法や治療法などをご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

ディスレクシア(読字不全)とは?どんな状態なの?

ディスレクシアとは、LD・SLD(限局性学習症)のタイプの一つで、字を読むことに困難がある状態を示します。読字障害、識字障害、読み書き障害、難読症などと呼ばれることもあります。個人差はありますが、文字がゆらいで見える、文字がにじんで見える、鏡文字に見える、かすんで見えるなどの症状があります。
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ディスレクシアとは、LD・SLD(限局性学習症)のタイプのひとつで、字を読むことに困難がある状態を示します。読字障害、識字障害、読み書き障害、難読症などと呼ばれることもあります。症状には個人差がありますが、文章を正確に読むことが難しい、すらすら読むことが難しい、読むことができても内容を理解することが難しい、などの困難を抱えることがあります。

※学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

日本ではディスレクシアがある人の割合を示す統計は発表されていませんが、文部科学省がまとめた『令和4年度 通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について』の中の「児童生徒の困難の状況」では「知的発達に遅れはないものの学習面で著しい困難を示す児童生徒の割合」が6.5%という調査結果があり、日本におけるディスレクシアの発現率の割合として一番近いものであると考えられます。日本語にはひらがな・カタカナ・漢字があり、文字が多岐にわたることからも詳細なディスレクシアの発現率は分かっていません。また、海外に比べると日本はディスレクシア自体の認知度がまだまだ低いことから、文字を読むことに対して困難を抱えていても自分がディスレクシアということに気がつかないまま大人になる人もいることが分かっています。
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学習障害(限局性学習症)の特徴や関わり方のポイントを解説/専門家監修

通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について|文部科学省
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2022/1421569_00005.htm

ディスレクシアの主な症状

「文字を読む」というのは一見単純に見える行為ですが、「まず文字を目で追い、その一文字一文字を単語などのまとまりにしてつなげ、音に変換し、それを脳で記憶している意味と結びつけて理解する」という複雑なプロセスを経ています。

つまり、文字を音と結び付けて読み上げる「音韻処理」や、文字の形を認識したり語句のまとまりを認識し意味と結び付ける「視覚的な処理」などが必要になります。一人ひとりの偏りや特性は異なりますが、ディスレクシアのある人はそれらの処理をするための脳の部位に何らかの機能障害や偏りがあり、そのために読むことが難しいのではないかと言われています。

以下にディスレクシアのある人に見られる主な特性をご紹介します。

1.「文字の読み方の認識が難しい」音韻処理の不全
「音韻機能」とは最小の音単位を認識・処理する能力を指しますが、ディスレクシアの人の脳の特性として、音韻の処理に関わる大脳基底核と左前上側頭回という領域の機能異常があるのではないかと言われています。そのため音を聞き分けることや、文字と音を結びつけて「読む」ことが難しい場合があります。

■文字と音の変換が苦手
ひらがなの文字と音を結びつけて読むのが難しいことがあります。また小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」や音を伸ばす「ー」などの特殊音節が認識できず、読めないということもあります。

■単語のまとまりを理解するのが困難
たとえば「み」「か」「ん」などのひらがなやカタカナの一音ずつは読めてもそれを「みかん」というひとまとまりの単語として理解するのが難しいことがあります。

■聴覚記憶が苦手
定型発達の場合、言葉を「音」として記憶しながら読んだり話したりしますが、ディスレクシアがある人の中には、この「音韻認識」が弱く聴覚的な記憶が苦手な人がいます。このように処理と記憶を同時に行うことが難しいことから、「読むこと」に困難な場合があります。


2.「文字の形の認識が難しい」視覚情報処理の不全
ディスレクシアのある人の中には、視覚認識や眼球運動に偏りがあるために普通の文字の見え方とは違った見え方をしている人もいると言われています。

■文字がにじむ・ぼやける
水に浸したように文字がにじんで見えたり、目が悪い状態のように文字が二重になったり、ぼやけて見えたりするという場合があります。

■文字がゆがむ
文字がらせん状にゆがんだり、3Dのように浮かんで見えたりすることがあります。

■逆さ文字(鏡文字)になる
鏡に映したように文字が左右反転して見えることがあります。

■点描画に見える
1つの文字を点で描いているような点描画に見える場合があります。

ディスレクシアの人は、以上の状態のいずれかがあることで文字が読み取りづらく、語句や行を抜かしたり、逆さ読みをしたり、音読が苦手な傾向にあります。また、読みだけでなく、読めないことで書くことにも困難があらわれる場合もあります。

ディスレクシアのある人には、全く読めないのではないけれど、「読むスピードが遅い」という人もいます。そのことから周りから「怠けている」と勘違いされてしまうというケースもありますが、本人の努力不足などではなく、ディスレクシアは先天性のものであるということを周囲の人が理解することが大切です。
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ディスレクシアの困りごと

学校・仕事での困りごと

学校では板書をすることがありますが、文字を読むのも書くのも苦手なディスレクシアのある子どもにとっては難しい作業と感じる人が少なくありません。作文や漢字の書き取り、音読なども苦手なことがあるため、取り組むのに時間がかかったりすることがあります。先生や本人、家族も子どもにディスレクシアがあることに気づいていない場合、「怠けている」と勘違いされてしまうこともあります。

仕事の面では、書類作成など文字を扱う業務が苦手で、何度間違いを指摘されてもミスを繰り返してしまうというケースがあります。また、素早くメモを取ることができないことで、上司の指示を聞いたり、電話を受けた場合に困ることもあります。短期記憶が苦手な場合は、誰から電話が来たか忘れてしまったり、人の顔と名前を覚えられなかったりして困る、ということもあります。

家・生活での困りごと

ディスレクシアのある人は、文字を認識するのに時間がかかることがあるため、日常生活の中でバスに乗りたいときに行き先を認識できず乗り遅れたり、車を運転しているときに文字標識を認識できず通り過ぎてしまい困ってしまうことがあります。

そのほかには、小さい文字を読むのが困難なため小説など文字ばかりの本を読むことが苦手であったり、電話番号を認識しづらいために電話をかけ間違うことが多いという人もいます。日常生活で文字を読んだり、書いたりする場面は多くあるので、ふとしたことで困るという人もいますが、ディスレクシアと気づかずに、できない自分を責めてしまう人も多くいるという現状があります。

ディスレクシアを背景にした困りごと

ディスレクシアのある人は、会話面では問題ないことが多いため、対人関係で問題を抱えることは少ない傾向にあると言われています。しかし、文字の読み書きが出来ないことをからかわれたりすることがきっかけになり、対人関係がうまくいかずに不登校や引きこもりにつながってしまうケースもあるようです。また、親や学校の先生がディスレクシアと知らずに注意を繰り返してしまうと、本人が大きく自信を失ってしまったり、反対に反抗的な態度を取ってしまうなど、ディスレクシアがきっかけで対人関係に困りごとを抱えるということもあります。

これらの困りごとは、周りがディスレクシアを理解し、行動することで解決することもあります。周囲の人が本人の気持ちに寄り添い、「どうすれば過ごしやすいかな?」などと意識しながら環境を整えることが大切です。

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