年齢別にみるダウン症がある人の生活

乳児(0歳~1歳)

ダウン症があると分かった場合、診断と同時に合併症のチェックや健康管理など医療的なサポートが始まります。心疾患や消化器疾患などの合併症が判明した場合には、すぐに治療がスタートします。

新生児から幼児期にかけての赤ちゃんは、眠くなったり、気に入らないことがあると泣くことで不快を訴えますですが、ダウン症のある赤ちゃんはあまり泣かないことが多いようです。気持ちよさそうに寝ているところを無理やり起こす必要はないかもしれませんが、あまり長いあいだ寝ていたり、一人でおとなしくしているようなときには、抱き上げてあやしたり、顔や体をさわるなどして、適度にコミュニケーションをとるとよいでしょう。
また、母乳やミルクを吸って飲むことがあまり上手ではなかったり、物を握る力が弱かったりすることも多いといわれています。気になることがあったら、かかりつけの医療機関などに相談してみましょう。吸う力が弱い赤ちゃんへの飲ませ方の工夫や、かかわり方についてアドバイスがもらえると思います。

幼児(1歳~小学校就学)

ダウン症のある子どもは成長のペースがゆっくりだといわれていますが、親子のふれあいや遊び、療育などを通して、全般的発達を促していくことができると考えられています。また、顔や舌の筋力が弱く、歯が生えるのも遅い傾向があるため食べる機能もゆっくり発達します。あまりかまずに丸飲みする癖がつかないように、口唇や舌の動き、発達を確認しながら、注意深く離乳食の形態を進めていきます。歯科や小児科、療育センターなどで食べ方の指導を受ける摂食外来を利用して、食べる機能の発達を確認している人もいます。

また幼少期の段階から傾向にあることも多いため、食生活や体を動かす習慣をつけるなど、早期のうちから肥満を予防することも大切です。

幼児期に通うことのできる場所には、保育園や幼稚園のほか、療育施設などがあります。ダウン症のある子どもの症状には個人差があるので、発達の様子を正しく理解・認識してその子にあった環境を用意することがポイントとなってきます。子どもの成長の様子や個性などによって通園先を決めるといいかもしれません。幼いころは、子ども同士でしか受けられない刺激や、そこから生まれる感情が大切な経験になります。お子さんにとってよい経験となるように、園と協力して見守りましょう。

乳幼児期を通じ、感染症にかかりやすいともいわれています。風邪や滲出性中耳炎、目の病気など、気にかけておきましょう。
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就学期(6歳~18歳)

小学校は、地域の小学校か、特別支援学校に就学します。特別支援学校にはさまざまなタイプがありますが、ダウン症のある子どもたちは、主に知的障害児を中心とした学校に就学します。歩くことが難しい場合や、聞こえの問題が大きい場合には、それぞれ肢体不自由児を対象とした特別支援学校や、聴覚障害特別支援学校を選択することもあります。いずれの場合にも、きめ細やかにケアを受けながら、個々に合わせて学ぶことができます。特別支援学校は、地域の学校に比べて数が少ないため、広い範囲から生徒が集まります。そのため、多くはスクールバスや移動支援のサービスを利用して登下校しています。

放課後の過ごし方もさまざまです。地域の学校の学童保育を利用している子どもたちもいますが、障害のある子どもたちのための放課後等デイサービスを利用している子どもたちもいます。

就学に際しては、地域の教育委員会が行う就学相談を受けることをすすめられます。就学相談では、発達検査や面談を通して子どもたちの発達状況、特性を確認し、それぞれの子どもたちにとって最適な教育環境がどこにあるかを保護者と教育委員会とで協議します。
中学校は、小学校と同様に地域の学校か特別支援学校のどちらかを選択しますが、高校になると、特別支援学級が設置されている学校が少ないため、特別支援学校を選択する人が多くなります。特別支援学校のなかには、企業就労を目指した職業訓練の色が濃い高校も少しずつ増えてきました。また、最近では、支援制度の整った一般の高校・専門学校なども出てきており、進学に際して選択の幅が広がりつつあるようです。子どもの成長、発達の様子に加え、本人の意思を尊重しながら、ぴったり合う学校や学級を見つけられるよう、地域の学校に関する情報を集めてみてください。

成人期(18歳~)

ダウン症のある方の多くは、卒業後、さまざまな業態、分野で就労しています。近年、50人以上の従業員のいる企業は障害のある人を一定割合雇用を義務付ける障害者雇用促進法の改正もあり、一般企業やその特例子会社(特別な支援を必要とする人たちが配慮を受けながら働ける場として、一般企業に設置されている子会社)に就労する人も増えてきました。また、福祉作業所などの作業内容も幅が広がっており、それぞれの得意分野を生かして楽しく働いているようです。また、中には、突出した才能を持っており、芸術分野で活躍している人もいます。

かつてはダウン症のある人の寿命は長くないとされてきましたが、現在では、医療の発達により合併症が治療できるようになったこと、療育で潜在的な能力を引き出して発達をうながすこともできるようになったことから、今後ますます平均寿命は伸びていくと考えられています。

さいごに

ダウン症のある人や子ども、それぞれに性格や性質がさまざまなことはもちろん、生活の様子もさまざまです。子どもの得意なこと、苦手なことなどを知り、個性に合わせた子育てを楽しんでいる保護者のみなさんがたくさんいらっしゃいます。さらに詳しい情報が必要な場合には、日本ダウン症協会や地域の親の会などに問い合わせてみましょう。
ダウン症協会
https://www.jdss.or.jp/
ヨコハマプロジェクト
https://yokohamapj.org/
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