広汎性発達障害(PDD)は遺伝する確率があるの?きょうだい、父親、母親との関係は?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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自身や家族が発達障害の場合、遺伝するのかどうか気になることがあると思います。現在、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の原因や遺伝について解明されていませんが、関連するさまざまなデータが発表されています。今回は広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の原因や遺伝に関して分かっていること説やや検査方法などをご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

広汎性発達障害(PDD)とは

広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)において、対人関係の困難やパターン化した行動や強いこだわりの症状がみられる障害の総称として広汎性発達障害が定義づけられています。広汎性発達障害のグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害などが含まれています。

なお、現在は広汎性発達障害という診断名は使われていません。
2013年に発刊されたアメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)で自閉的特徴を持つ疾患が包括され、2022年発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました(ただし、広汎性発達障害の障害名・症状の中には、ASD(自閉スペクトラム症)の概念では除外されたものも含まれています)。
しかし、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合もあること、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である広汎性発達障害の名称も併記して説明します。

※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)は親から子どもへ遺伝するの? 確率は?

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)は遺伝的要因と環境要因が複雑に影響し合って発現するという説が主流になっています。遺伝性の関与を研究するための双生児研究や家族間研究が進められていますが、現在のところ研究によって数値がまちまちで、親子の遺伝確率の数値は明確にはわかっていません。

二卵性双生児と一卵性双生児を比較してみると、一卵性双生児のほうが広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の発現率は高いという報告があります。一卵性双生児は基本的な遺伝子配列が同じなので、この結果は遺伝子が近いほど、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)を発現しやすいということを意味しています。

また、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の原因は一つの特定の遺伝子によるのではなく、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の原因となりうるさまざまな関連遺伝子が重なることによる多因子遺伝と呼ばれるタイプであると考えられています。この関連遺伝子自体は多くの人が持っていると言われています。

これらの広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の要因となる何らかの遺伝子が重なり、さらにさまざまな環境要因が相互に影響したとき、脳機能に障害が起こり、症状が現れるとされています。その際に両親の遺伝子配列が要因の一部となっていることもありますが、それは広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)に限らず、すべての病気や障害に言えることです。つまり、親から子に単純に遺伝するということではないのです。よって、親が「広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)」だからといって、子どもにも100%遺伝するとは限りません。

なお、ASD(自閉スペクトラム症)の遺伝については、こちらの記事をご覧ください。
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ASD(自閉スペクトラム症)が遺伝する確率は?【専門家監修】

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の原因は何?

現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、さまざまな環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが、現在主流となっている説です。また、かつて言われたような親のしつけや愛情不足といった子育てのしかたによるという説は、医学的に否定されています。
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