境界性パーソナリティ障害とは?不安・衝動的になる原因・診断基準・治療・周りの人の対処法を紹介(2ページ目)

境界性パーソナリティ障害と併発する合併症

境界性パーソナリティ障害と併発する合併症

境界性パーソナリティ障害はその障害の特性上、うつ病などと合併しやすく、発達障害などと併発している場合もあります。また境界性パーソナリティ障害と似ている自己愛性パーソナリティ障害についても紹介していきます。

■うつ病などと合併することがある
境界性パーソナリティ障害がある人がうつ病を経験する割合は90%に近いという報告もあるくらい、最も合併することが多い病気です。
うつ病は抑うつ気分が続き、何もやる気がしなかったり、すべて自分が悪いと責めてしまい、死にたい気持ちになったりする症状があります。境界性パーソナリティ障害の症状と共通点も多く、対人関係のトラブルが頻繁に起こることで抑うつな感情をもたらします。境界性パーソナリティ障害とうつ病が合併すると自己破壊への衝動が増し、死にたい気持ち(希死念慮)が増すと言われています。自己破壊的な行為はたとえば、過剰な自己非難や絶望感から自傷行為を行ったり自殺を考えたりすることです。

またうつ病に限らず、境界性パーソナリティ障害の自己破壊的行動への衝動が高まることによって、アルコール依存症、薬物依存症や気分障害、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、パニック障害などを引き起こすこともあります。

■ADHDとの合併の可能性がある
境界性パーソナリティ障害がある人はADHDを小児期または同時に発症している可能性があると、近年の研究によりいわれるようになりました。イギリスのある研究では、境界性パーソナリティ障害がある人でADHDの発症率は小児41.5%、成人16.1%と高いことが分かりました。

境界性パーソナリティ障害の発症は、必要な親からの共感が得られなかったことが原因の一つではないかという仮説があります。

ADHDがある人は、その特性から、社会関係や対人コミュニケーションに困難さが生じる場合があるほか、親が育てづらさを感じて親子の関係がうまくいかなかったり、体の感覚が過敏で子どもがだっこを嫌がったりして必要なコミュニケーションをとる機会を持ちにくかったりする場合があります。こうした、親子や対人関係上の困難さが積み重なることによって、子どもが十分に共感を受け取ったと感じられないなどが原因で境界性パーソナリティ障害へと発展することもあり得ます。

また発達障害の中には境界性パーソナリティ障害と似た症状が現れるものもあるため、臨床現場では障害同士の鑑別が難しいとも言われています。

■自己愛性パーソナリティ障害との合併が混在することがある
自己愛性パーソナリティ障害とは、自分に対して誇大なイメージを抱き、注目や称賛を求める一方で、他者からのマイナスな評価に対して過敏に傷つきやすく、他者に対する共感性の薄さが特徴的な障害です。

境界性パーソナリティ障害は、自己中心的で対人関係の問題から情緒不安定をまねくことなどから自己愛性パーソナリティ障害と共通点が多くあります。また原因も自己愛の未成熟が関わってくることから診療の現場では、この2つの障害の区別は難しいとされています。

この2つの障害の違いはどこにあるのでしょうか。境界性パーソナリティ障害が自己否定を繰り返し、考え続けることで情緒不安定が生じる傾向にあります。それに対して自己愛性パーソナリティ障害は、理想と現実のギャップを受け止められず、自己防衛のために誇大化した言動を繰り返し、自信があるようにうかがえるという点に特徴があります。

そもそもパーソナリティ障害はそれぞれ独立して存在するのではなく、重複している共通の症状があるため、複数のパーソナリティ障害が併存しやすくなっています。ですので境界性パーソナリティ障害に限らず、他のパーソナリティ障害が合併していることがあったり、判断が難しかったりする場合があります。
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境界性パーソナリティ障害かも?と思った時の相談先と医療機関

パーソナリティ障害の診断は難しいものです。もしご自身やご家族に境界性パーソナリティ障害の疑いを感じた場合は、一人で悩む前にまずは専門機関に相談することをおすすめします。

医療機関での受診先は精神科、心療内科などになります。

「もしかして境界性パーソナリティ障害かも・・・?でも、医療機関を受けるほどのことでもないような気がする・・・」そのような場合は、各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センター、または各市区町村に設置されている保健所・保健センターの相談窓口へ相談してみてください。もちろん、本人だけではなく家族が電話などで相談することもできます。

次のリンクは全国の精神保健福祉センターの一覧になりますので、参考にしてみてください。
また、本人が会社勤めの場合や高校や大学に通っている場合、学校や企業専属のカウンセラーに相談することもおすすめです。

企業や学校のカウンセラーは、その人が所属している組織の内情にも通じているため、より適切なアドバイスをもらうことができる可能性が高いです。また、連携している医療機関を紹介してもらえる場合もあります。

境界性パーソナリティ障害の治療ってどんなものがあるの?

境界性パーソナリティ障害の治療法は、主に精神療法と薬物療法があります。

精神療法

精神療法は即効性はありませんが、医師や専門家と一緒に本人の物事に対する考え方や感じ方などを見直していく治療法になります。これから紹介するのは境界性パーソナリティ障害に有効といわれている精神療法の2つの代表例です。

認知行動療法(CBT):認知行動療法とは、何か困ったことにぶつかったときに、本来持っていた心の力を取り戻し、さらに強くすることで困難を乗り越えていけるような心の力を育てる方法として、いまもっとも注目を集めている精神療法です。

具体的には、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのかを客観的に観察し、自動思考という考えのクセを把握します。そして、そういった状況に直面した際に、どのように考え、対処していけばいいかを考え、考え方をコントロールしていく治療法です。
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弁証法的行動療法(DBT):弁証法的行動療法とは、マーシャ・M・リネハンによって開発された、境界性パーソナリティ障害に効果的といわれている、行動療法を中心とした心理療法です。以下の4つの治療法を組み合わせることで、考え方のクセに気付かせ、バランスの良い考え方や反応ができるようにすることが目的です。

・苦悩耐性スキル....自身の感情の波が激しくなっているときに、問題がさらに悪化しないように、状況を改善するタイミングを待つためのスキルを身につけます。
・マインドフルネススキル....ありのままの自分を受け入れるスキルを身につけます。
・感情調整スキル....自身の感情を理解し、調節することのできるスキルを身につけます。
・対人関係スキル....感情調整を行いながら、適切な対人関係を築くスキルを身につけます。

しかし、欧米を中心に発達した治療法であり、日本で受けられる場所はまだ限られています。

また、薬物療法と心理療法以外にも、重度の境界性パーソナリティ障害と診断されたときに入院療法が適応される場合があります。

・薬物乱用、自殺、自傷行為を繰り返すとき
・重度の妄想により日常生活を送ることが難しいとき
・社会から離れた場所で本人に休息が必要と判断されたとき
・家族などの周囲の人が疲れてしまったとき

これらの場合は入院をし、カウンセリングなど様々な治療法を組み合わせて治療していきます。

薬物療法

境界性パーソナリティ障害に根本的に作用する薬は残念ながらありません。そのため衝動性や感情の不安定さといった症状を改善するために薬が処方されます。主に気分の落ち込み、不安、現実認識の低下に対する薬が処方されます。

BPDの薬物療法の第一選択は,中等量の非定型抗精神薬であり,抑うつ, 不安に対してはセロトニン選択性再取り込み阻害薬SSRIぐらいに抑えるべきであるというのがガイドラインにおける薬物療法の基本である。

牛島定信『境界性パーソナリティ障害の治療ガイドライン』(2010)

出典:https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1120060604.pdf
抗うつ薬は抑うつ症状を改善するほか、衝動性や感情の不安定、激しい怒りの抑制のために処方されます。

薬には副作用もありますし、人によって薬が合わないこともあります。低年齢の子どもの場合はより慎重に進めるべきという専門家もいます。主治医の先生と信頼関係を築き、よく相談した上で納得して治療を進めることをおすすめします。

境界性パーソナリティ障害がある人にどう接したらいい?

本人の治療のために協力体制をつくる

境界性パーソナリティ障害がある方は身近な人に見捨てられることへの不安を強く抱いています。治療を行っていくにあたって、本人のなかでは葛藤や変化が訪れます。また治療も長期にわたって行われるために、効果がなかなか現れないことに対する苛立ちや不安感を抱くかもしれません。

そんなときに寄り添うことができるのは医師ではなく、本人の家族や周囲の人たちです。その人たちが安全基地としての役割を担うことによって本人が治療に挑みやすい環境をつくることができます。あなたの居場所はここにある、いつもそばにいると安心させる協力的な姿勢と環境づくりが大切です。

周りの人が本人に振り回されないように気をつける

境界性パーソナリティ障害がある方は、感情や言動の変化が激しいために家族や周囲の人が振り回されてしまったり、本人からの強い物言いによって責任を感じてしまったりすることがあります。本人に対してどう接していいかわからず悩み、周囲の人がうつ病などになってしまうケースもあります。

そのようにならないためには、本人に振り回されすぎないことが大切です。拒絶せず、過保護にもせず、程よい距離感をもって本人の言動を観察してみてください。境界性パーソナリティ障害がある人を支えることは難しく共倒れしてしまう危険性がありますので、本人に振り回されないように意識してみてください。

また本人の言動の一つひとつは、本人に責任がある姿勢を貫いてください。境界性パーソナリティ障害の原因のうちの環境要因として家族の環境がありますが、たとえこれまでの関わりに何らかの問題があったとしても、その結果何を感じて、何を行うかは本人次第です。

家族や周囲の人が責任を感じすぎてしまうと、本人は自分の問題の責任を家族に押しつけてしまい兼ねません。そうではなく「それはあなたの問題です。」と一線を引いたり、家族で抱えこまずに専門家に相談し支援を受けたりすることが重要です。

本人と一緒に周囲も変わる

上記と矛盾してしまうかもしれませんが、家族・周囲の人などとのかかわりの積み重ねによって、本人が負担を感じていることがあります。しかし具体的にどのようなかかわりが負担になっていたのかは、関係性の当事者たちには分からないことがあります。そのようなときには家族なども一緒に治療を受ける方が良い場合もあります。治療を受ける程ではなくても、本人とのかかわり方や自分を見直すよい機会になります。

長年築いてきた関係を改善するには時間がかかります。一気に問題を解決しようとは考えずに、焦らず少しずつでも変わっていくことを意識してみてください。しかし本人の回復に貢献するために、家族や周囲の人自身が無理矢理変わらなければならないということではありません。「できないことはできない」と言うことも、現実的な一人の人として本人とかかわっていくためには大切なことです。

相談する相手をもつ

本人にとって身近な家族などは、激しい感情をぶつけやすい人でもあります。そのために本人に対して怒りや嫌悪感を感じ、ときには拒絶してしまうこともあります。しかし拒絶してしまっては本人にとっての安全基地であることも、かかわり方をお互いに変えていくこともできず、根本的な治療を行うことはできなくなります。ですので、定期的に他の人に相談して助言をもらうことは重要です。周囲に安心して相談できる相手がいない場合は、心理カウンセラーなど専門家のサポートを求めることも考えましょう。

まとめ

境界性パーソナリティ障害の症状は多岐にわたって存在し、本人をはじめ周囲の人たちも悩まされます。しかし決して個人の性格の問題ではありません。本人が過去の体験を自分の糧となるように消化できていなかったり、現在またこれまでの環境が合わなかったりといったことが積み重なっています。その積み重なっている経験が考え方をつくり、そこから言動が生まれています。

これらは適切な治療を受けることによって、少しずつではありますが変えていくことができます。

境界性パーソナリティ障害がある人を支えることは大変なことだと思います。ですが、本人も自身の言動や思考をコントロールできず苦しんでいます。本人や家族だけで解決しようとするのではなく、専門家の支援も受けながら、お互いに適切な距離を取りつつ、また一方で支え合いながら付き合っていくことが大切です。
境界性パーソナリティ障害
岡田 尊司 (著)
幻冬舎
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林 直樹 (著)
主婦の友社
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