聴覚障害の原因、遺伝との関連は?

遺伝的な要因

父親と母親の遺伝子の組み合わせや、遺伝子の突然変異などにより引き起こされることがあります。その場合、外耳やそのほかの器官の奇形などの障害が同時に出現することもあります。

遺伝以外の要因

遺伝以外の要因としては、妊娠中にかかった先天性サイトメガロウイルス感染症や風疹などの感染症などが挙げられます。また、出生直後に感染症にかかった場合にも聴覚障害が生じることもあり得ます。

そのほかにも、低体重での出産や長期間にわたる人工呼吸器の使用などによっても聴覚障害が生じることがあるといわれています。

聴覚障害はどうやって分かるの?診断は?

聴覚の障害が重い場合には、生後間もなく聞こえの問題が発見されますが、中軽度の場合にはその発見が遅れる傾向にあります。

子どもの聴覚障害の場合には、コミュニケーションや言葉の発達の面に遅れが生じることがあり、それらの遅れが聴覚障害を見つけるきっかけとなることが多いようです。

聴覚障害のサインの一例には以下のようなものがあります。

・不意な音、大きな音がしたときに反応を示さない
・生後8ヶ月を過ぎても、相手の声の真似をしようとしない
・話し言葉が年齢相応より遅れている、または発音が気になる
・ジェスチャーを加えないと聞いた言葉の意味が伝わらないことがある
・周りの状況にそぐわない大きな声(もしくは小さな声)で話すことがある
・話しかけるとどちらかの耳を話している人のほうにかたむける など


これらの項目に当てはまる場合にも、一概に聴覚障害であると判断することはできませんが、子どもの様子を見て、心配な場合には一度聴覚検査を受けてみるとよいでしょう。

検査を受けたい場合には

聴覚検査は、病院の耳鼻咽頭科で受けることができます。

聴覚検査で調べることができるのは主に2つです。聞こえの程度と、どこの部位に異常があるかどうかについてです。

聴覚を調べる際には、月齢、年齢に応じた検査が行われます。6ヶ月未満の子どもによく行われているのは、脳波を測定する検査です。この検査では、小さなイヤフォンで音を聞かせます。子どもの頭の上に、コンピューターに接続されている電極をつけることにより、音に反応して脳波に動きがあるかどうか確かめます。

年齢が上がってきたときには、スピーカーから音を流して何らかの反応があるか調べる検査や、音が聞こえたらおはじきを取ったり、ボタンを押したりする検査を行います。

耳の聞こえのチェックは、1歳6ヶ月、3歳の乳幼児健診のときに行われますが、聴覚障害は、治療を施す時期が早いほど、聴力が回復しやすいことも多く、言葉の学習もスムーズになります。ですので、定期健診が来るのを待つのではなく、心配な場合はなるべく早い段階で検査を受けるようにしましょう。

聴覚障害の治療・改善方法

聴覚障害には、治療により治すことができる伝音難聴と、治療によっては治すことができない感音難聴があります。治すことができない聴覚障害の場合には、聴力を補うために何らかの改善方法がとられます。

子どもが聴覚障害の場合には、早い段階で治療を開始するのが理想的といわれています。聴覚障害の改善には、難聴の種類や聞こえの程度により、その内容が変わってきます。ここでは、聞こえの改善のための方法についてお知らせします。

補聴器

補聴器は、普通の大きさでの会話が聞こえにくくなったときに、はっきりと聞くための医療機器です。

伝音難聴では、補聴器で音を大きくすることではっきりと聞こえるようになります。音を脳に伝える機能の障害である感音難聴の場合、補聴器では音を大きくしても歪んで聞こえることがあり、改善されないこともあります。その場合は、歪を小さくするよう調整するなど別の改善方法がとられます。

補聴器にはたくさんの種類があり、また価格によってついている機能もさまざまです。決して高い補聴器が最適となるわけではありません。自分に合った最適な補聴器を選ぶために、補聴器の相談医から販売店の紹介を受けるようにしましょう。

補聴器の購入の際には、保険は適応されません。しかし、身体障害者手帳を持っている場合は、補装具交付申請書を市区町村の福祉関係の窓口に提出することで1割負担で購入することが可能となります。また、最近では手帳交付の対象にならない軽中等度難聴がある小児に対しても独自に補聴器購入費用を助成している自治体が多いですので、居住地の市区町村の窓口で確認してみましょう。

手術

◆感音難聴の治療
感音難聴の治療のひとつとして人工内耳植え込み術があります。

人工内耳は、補聴器で十分に音を聞くことができなかった場合に、手術により音声を獲得できる人工機器です。内耳に電極を挿入し、体外器から音を電気信号に変えて神経に送る方法です。人工内耳をつける場合には、以下の条件を満たしたうえで、手術が必要となります。

・内耳が原因の感音難聴である
・年齢が1歳以上または体重が8kg以上である
・6ヶ月以上の補聴器装用によっても十分に聞くことができない など

活動性の中耳炎がある場合など、手術ができないこともあります。
人工内耳の手術には、健康保険が適用されるほか、自立支援医療(更生医療)、高額医療費支給などの各種医療費の助成を受けることにより、負担額の軽減ができます。詳しくは、お住まいの市区町村のホームページをご確認ください。

◆伝音難聴の治療
伝音難聴の治療として手術が行われることがあります。手術が必要なものの例としては、音の聞こえを阻害している異物の除去や、新たな鼓膜の形成、中耳の骨を人工のものに置き換える必要がある場合などがあります。

一例ですが、伝音難聴に対しては手術を行うことで聴力改善が見込まれることもあります。新たな鼓膜の形成、耳小骨の連鎖を再建する、耳小骨を人工のものに置き換える、人工中耳植え込み術を行うなどです。耳の手術は、耳の後ろを開いて行うものと、耳の穴から原因となっている部位に治療を施す方法があります。
次ページ「聴覚障害のある子どもの進学先は?」

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