悪気ゼロなのに神経逆撫で?アスペルガーな娘と「他人の気持ち」を考えた

ライター:GreenDays
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自分では他人を攻撃しているつもりはないけれど、なぜか険悪な雰囲気になって戸惑っている。そんな娘と良いコミュニケーションとは何か?を、話し合ってみました。

思ったことは黙っていられない?アスペルガーの娘が正直すぎて…

アスペルガー症候群・ADHDと診断されている小学3年生の娘は、最近誰かと話をしている最中に、意図せず険悪な雰囲気になったり相手を怒らせてしまったりすることが増えてきました。

先日あった、伯父と娘との会話です。

伯父「今日は本屋さんで、旅のガイドブックを買ってきたよ」

娘「そんな写真ばかりの本じゃなくて、せっかく本屋さんに行ったなら、ちゃんと文字がたくさん書いてある本を買ったら良かったのに」

言われた方としては、「なぜそんなことを言うんだ!」と、ついカッとなりそうな言い方です。娘は頭に浮かんだことを、そのまま口にしており、それはアスペルガーの特性の1つでもありますが、このまま放置する訳にもいきません。

娘の場合、「叱られて場数を踏めば自分で学ぶだろう」という考えは途方もなく遠回りで、その間にも自己肯定感は下がり続け、「相手が悪い!」と思い込むなど、誤った解決方法を身につけてしまったが最後、なかなか修正できません。

なんとか上手くコミュニケーションを取る手立てはないのでしょうか。

なぜ娘は、自分の「好きなもの」以外を受け入れられないの?

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11038018544
まず、なぜ娘が他人にとって不快な発言をしてしまうのかを考えてみました。

娘は幼い頃から息をするように本を読み、「自分の人生に本がなければ、死んでいたかもしれない」とまで言う子です。つまり、娘にとって本はとても大切なものなのです。

大切にするあまり、自分の好きな本以外を否定してしまうのでしょう。その傾向は昔からありました。
例えばテレビのコマーシャルで、出演者がある食べ物を食べて満面の笑みで「美味しい!」というのを見ると、娘は必ず画面に向かって文句を言います。

「そんなのより、ママのお料理の方が絶対美味しい!」「ママの料理も食べたことないクセに何がわかるのっ!」こんな感じでずっと本気で怒っているのです。

ちなみに私は家事の中でお料理が一番苦手で、特別美味しいものを調理できる訳ではありません。アレルギーで使える食材にも限りがあるので、どちらかというとその出来栄えは平均よりも下の部類に入ると思います。
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それでも、娘にとって私は特別な存在なので、関係のないコマーシャルを見ても、「自分が大切に思っているモノと違うものを勧められている」と認識した瞬間、「それは自分の大切なものを否定するということか!?」という怒りに直結するようなのです。

伯父さんが選んだガイドブックは、私の大切にしている本とは違う。私が大切にしているものが選ばれなかった。否定された!とても良いものなのに!どうしてこっちを選んでくれないの!どうしてそんなものを選んだの!?こっちの方が良いに決まってるのに!!!

そんな娘の心の声が聞こえてくるようで、その気持ちを理解する反面、その場を険悪な雰囲気にしてしまって申し訳ない気持ちで一杯でした。

好きなものを否定され、気付いたのは…

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その場で「なんてことを言うの!謝りなさい!」と怒って済ますのは簡単なことですが、それでは根本的な解決になりません。

どうして思ったことを言ってはいけないのか、わからないままだと怖くなって口を閉ざしてしまったり、人の顔色を窺い過ぎて辛い人生になったりすることも考えられます。そこで、夜になってから娘とゆっくり話し合ってみました。

私「今日、お話の途中で良くない雰囲気になったの気づいてた?」

娘「うん、気付いてた…。でもさ、あんな写真ばかりの本を買ったって、仕方ないでしょ?」

私「そうねぇ。でも小説や伝記を読んだって、結局その人生を生きたのはあなたとは別の人間でさ、読んで偉くなったようなつもりになるぐらいなら、本なんて読まなくてもいいんじゃないかな。もう本なんてクダラナイものにお金使うのやめた方がいい気がしてきた。」

娘「えっ!?ママ、何でそんなこと言うの!?ママだって本好きって言ってたじゃない!?」

私「うーん、好きだったけどもういいや!これからは別のところにお金使うことにするから、本買ってって2度と言わないでね。…ってって言われたらどう思う?」
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娘「(泣きながら)ひどい…。そんなのイヤだよ…。

私「そう思うでしょ?あなたが今日伯父さんにやったのは、これ。こういうことなの。自分の大切なものや好きなものを否定され、別のものを押し付けられることが、どれだけ嫌なものかがわかってやっているの?」

娘「そんなつもりはなかったの!ただ、ガイドブックより本の方がためになると思ったから言っただけなの」

私「あのね。何に喜びを感じるか、何が好きで何を大切にするかは人によって違うし、自由に選択することができるのよ。それを価値観っていうの。人はそれぞれ自分だけの価値観を持っていて、他人がそれを否定したり馬鹿にする権利はないのよ。あなたも自分の大切な本を否定されて、今悲しかったでしょ?」

娘「すごく悲しかった…」

私「だったら、誰かの『好き』を否定するようなこと、もう2度としちゃダメよ。優しい人はね、その場の空気を壊さないように、そんなこと言われても我慢してニコニコしてくれるけど、それに甘えちゃダメなんだよ。」

娘「ニコニコしてても、我慢してるときがあるの?」

私「そう。でもね、誰かが我慢してくれて成り立つコミュニケーションなんて、良いコミュニケーションとは言えないのよ。」

娘「じゃあ良いコミュニケーションってどんなの?」

私「そうねぇ。みんなが自分の好きなお話を安心してできるといいね。あなたと話すと否定されない、バカにされない、わかってもらえる…そんな風に思ってもらえたら大成功じゃないかしら?」

娘「確かにそんな人なら、安心してお話できるね!」
次ページ「お互いの「好き」を認め合うことから始めてみよう!」

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