医療保護入院が必要だと思ったら?

家族に医療保護入院が必要であると思ったらまず相談をしてみましょう。精神疾患や精神障害に関して相談をしたいときには、精神保健福祉センターが便利です。

精神保健福祉センターでは、心の健康や気がかりなことについて相談を受け付けています。相談を受け付けるのは精神保健福祉士という専門家です。本人の病気のことから、周囲の人の接し方のポイントなどを教えてくれるとともに、本人への医療機関の受診の勧め方や、入院についての経済的な相談などを気軽に相談することができます。また、必要であれば適切な医療機関や、精神保健指定医のいる病院につないでもらうことも可能です。

相談は来所によっても受け付けていますが、遠方にお住まいの場合や屋外に出ることが難しい場合には電話による相談もすることができますので、少しでも気がかりなことがあったり、医療保護入院について聞きたい場合には、お問い合わせください。

全国の精神保健福祉センターについては以下のHPから一覧を見ることができます。
全国の精神保健福祉センター|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html
緊急時には、夜間・休日にも受診を受け付けている精神科医療機関に連絡をし、適切な判断をあおいでください。
夜間休日精神科救急医療機関案内窓口|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/ercenter.html

入院から退院まで、その後のケアの流れは?

それでは、入院から、治療・退院まではどのような流れで行われるのでしょうか。指定医からの診察、家族等が入院の同意をしたあとの、入院から退院までの流れとその後のケアについてご紹介します。

入院から退院まで

■入院手続き
診察の結果、直ちに入院をさせないと本人の医療や保護に支障のある場合には、入院への同意を家族が行ったあと、強制的に病院へ移送することとなります。

「入院申込・誓約書」「実費費用徴収に関する同意願い諸」「退院証明書」などの書類への記入が求められます。入院するときの持ち物は、以上の書類と本人の健康保険証、本人の生活用品などをもって家族が入院に立ち会うことがほとんどです。

■入院中・治療
入院中は、医師と看護師により治療が行われます。そのほかには、入院をしてから相談員(退院後支援生活相談員)が本人の退院後の生活での充実を目指してケアにあたってくれます。入院当時から早期退院を目指した対応が行われています。

本人には入院中の権利や、退院の請求などについて口頭及び書面で十分な説明が行われます。治療においては、医療と本人の保護を第一として行うために、場合によってはいくつかの隔離や拘束などの行動制限が課せられることもあります。また、精神科には開放病棟と閉鎖病棟があり、場合によっては閉鎖病棟への入院となる場合もあります。

入院中、基本的には面会は自由です。病院職員の立ち会いなしに面会を行うことが原則ですが、患者もしくは面会者の希望がある場合には病院の職員が立ち会うことが可能です。

ときには、入院中に受ける治療や処遇に対して、本人が納得いかない場合もあります。例えば、病状の改善にもかかわらず退院させてもらえないなどです。病院の職員やソーシャルワーカーに相談することが必要ですが、それでも改善されない場合には、都道府県の知事に対して「処遇改善請求」や「退院請求」をする権利があります。

退院とその後の支援

■退院予定期間がきたら
入院時に決められた入院期間がすぎると「引き続き入院が必要かどうか」「退院に向けての取り組み」などについて医療保護入院者退院支援委員会で議論がされます。その結果、退院が適切であると委員会で判断された場合には、退院に向けた準備が進められます。

退院の際には医師の判断と、家族等の同意が必要です。本人が退院をしたくても、家族等の同意がない場合には退院することはできません。

家族や地域の受け入れさえ整えば、すぐに退院をできる場合に行われるプログラムがあります。それは「精神障害者地域移行・地域定着支援事業」という事業で、ここでは病状が安定している入院者を対象として病院関係者や地域支援センターの職員が、退院前の準備から退院後の生活を支援します。詳しくは病院のスタッフにお尋ねください。

■退院後
医療保護入院の退院後には、入院による治療が必要な場合には任意入院の形態に移行し治療を続けます。また医療保護入院の結果、もう入院の必要がなくなった場合には、通院という形でその後の経過を病院が支援し、徐々に地域での生活へと移行できるようにします。

医療保護入院では医療費の助成が受けられます

医療保護入院にかかる費用では医療保険が適応され、3割以下の負担額となります。医療費の7割以上は健康保険で支払われるため、入院をした場合の自己負担分はいくぶん軽くなります。とはいえ高額となる入院費を負担することが難しい場合もあると思います。

入院費用がかさむ場合には、以下の制度を利用することにより医療費の補助を受けることができます。

心身障害者医療費助成制度

各行政が行っている重度の障害者を対象とした医療補助制度であり、医療費の1割~全額が補助されます。ご利用の際には、療育手帳・障害者手帳をもっていることが条件です。

この制度は都道府県や市町村が実施しているものであり、補助の対象となる障害等級は自治体により異なります。ご参考までに、障害等級について札幌市と熊本市を例に挙げてご紹介します。
精神障がいのある方で、1級の精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方。
(札幌市|重度心身障がい者医療費助成)
出典:http://www.city.sapporo.jp/hoken-iryo/iryojosei/judo.html#naiyou
3歳以上の重度心身障がい者(身体障害者手帳1・2級、療育手帳A1・A2、または精神保健福祉手帳1級の方)。
(熊本市|重度心身障害者(児)医療費助成)
出典:http://www.city.kumamoto.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&id=55
障害の等級が自治体により異なっておりますので、ご利用の際にはお住まいの自治体のHPをご覧ください。

また、この助成を受けるにあたり注意点が2つあります。1点目は平成27年8月1日以降に新たに障害者の診断を受けた場合には、助成の対象とならないことです。2点目は、所得制限が定められているため、生計を同じくしている人の所得が一定額以上の場合には助成の対象外となることです。以上の点に気をつけてください。

また自治体によって、いったん医療費を支払ってしまった場合にもあとから助成を受けることができることがあります。市区町村の窓口で手続きを行えば医療費が一部戻ってくるので申請してみてください。詳しい情報を得たい場合には、市区町村の窓口にお問い合わせください。

高額療養費制度

この制度は高額の医療費を支払ったときに払い戻しを受けることのできる健康保険制度です。月の支払いのうち、負担の上限金額を超えた支払いをした場合には、その超過分が支給されます。

高額療養費の支給は、診療の月から3ヶ月以上の時間がかかります。その間の家計の負担が考えられますので、以下の2つの制度を利用することで入院の間の負担を減らすことが可能です。
◇限度額適用認定証
70歳未満の方で、入院費が高額となることが事前にわかっている場合には、限度額認定証を病院に提示することで、負担額に限度を設けることができます。所得により異なりますが、支払額の上限の目安は平均44,000~140,100円/月です。この場合には高額療育費を申請する必要がなくなります。
健康保険 限度額適用認定|全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3020/r151/
◇高額医療費貸付制度
入院中の家計の負担を軽減させるために、一時的に入院費を借りることもできます。この制度では、高額療育費で支給される見込みの約8割の料金を無利子で貸し付けを行っています。

すべての申請は郵送で行うことができます。申請者の方が窓口に足を運ぶ必要がなく簡単に申請することができますので、ぜひご活用ください。詳しく知りたい方は以下の全国保険協会のHPをご覧ください。
高額医療費貸付制度|全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/osaka/cat080/kashitsuke/kasitukekouryou/
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