ウィリアムズ症候群って?顔立ちに特徴があるの?ウィリアムズ症候群の特徴や原因、検査方法や治療など【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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ウィリアムズ(Williams)症候群は、染色体の微細な異常が原因です 。特徴的な顔立ちであるほか、精神発達の遅れ、視空間認知障害、歯並びの不整などの症状が見られます。また、高カルシウム血症や大動脈弁上狭窄、先天性心疾患を抱える人が多くいます。
そのほかの特徴など、発達障害の関わりも含めて紹介します。

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監修: 大橋博文
埼玉県立小児医療センター遺伝科 部長
先天異常症候群の診療において、遺伝学的精密診断と健康管理プログラムの運用ならびに種々の先天異常症候群の集団外来の開催を連携した包括的支援に取り組んでいる。
目次

ウィリアムズ(Williams)症候群とは?原因は?

ウィリアムズ(Williams)症候群とは?

ウィリアムズ症候群は7番染色体の微細な異常によって現れます。特徴的な顔立ちであるほか、精神発達の遅れ、視空間認知障害や、歯並びの不整などの症状が見られます。また、高カルシウム血症や大動脈弁上狭窄、先天性心疾患の疾患を抱える人が多いことも分かっています。

性格にも特徴があるといわれており、社交的でおしゃべりが好きなことが多いようです。

ウィリアムズ症候群は、1961年にウィリアムズ医師らが発見しました。日本人では1~2万人に1人にウィリアムズ症候群があると考えられていて、とてもまれな疾患であることから国に難病として指定されています。
ウィリアムズ症候群(指定難病179)| 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4765

ウィリアムズ症候群の原因

ウィリアムズ症候群の原因は、染色体の微細な異常です。
ヒトは、22対からなる常染色体と1対の性染色体を持っています(常染色体:44本、性染色体:2本)。子どもは父親と母親から一本ずつ染色体を受け取っています。

ウィリアムズ症候群は、父親か母親どちらかからの7番染色体の一部が欠けてなくなってしまって起こると考えられています。欠けている部分は、顕微鏡でも見えないくらいの小さなものですが、約25個の 遺伝子が含まれていると考えられています。

遺伝子は、いわば体の設計図。遺伝子がほんのわずかでも欠けているだけでも、臓器なども含めて体のさまざまな場所に異常が現れてしまうのです。

ウィリアムズ症候群の場合、欠けている遺伝子の1つに「エラスチン」遺伝子があります。「エラスチン」は血管や皮膚などをつくっている線維成分の1つで、弾力や伸縮性に関係しているといわれています。

ウィリアムズ症候群で多く現れる大動脈弁上狭窄などの血管の疾患は、この「エラスチン」遺伝子が足りないことが原因であると考えられています。ほかにも、顔立ちや声の特徴、ソケイヘルニアなど にも「エラスチン」遺伝子が関わっているといわれています。

なぜ、染色体の一部が欠けてしまうのか、その理由は染色体の構造の特徴にあります。7番染色体には近接して存在する互いによく似たDNA構造(反復配列)があり、この部位の間で(稀ではありますが)欠失が起こることが分かっています。

さらに、ウィリアムズ症候群のある子どもの両親のうち28~33%の割合で、欠けている部分の遺伝子の並びが正常とは逆さまの並びになっていることが報告されていて、この欠失が起こるリスクの1つとなるのではないかと考えられています。

なお、ウィリアムズ症候群の人から生まれる子どもには、50%の確率でウィリアムズ症候群が遺伝します。
ウィリアムズ症候群(指定難病179)| 公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4765
Mònica Bayés, et al.Mutational Mechanisms of Williams-Beuren Syndrome Deletions. Am J Hum Genet. 2003 Jul; 73(1): 131–151
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1180575/
Janet Woodruff-Borden, et al.Longitudinal Course of Anxiety in Children and Adolescents with Williams Syndrome. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2010 May; 154C(2): 277–290
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2914498/

ウィリアムズ症候群にはどんな特徴がみられるの?

ウィリアムズ症候群の特徴には個人差が大きいため、以下に紹介した項目のすべてが当てはまるわけではありません。

からだや顔立ちの特徴

●顔立ちの特徴
幼いころには、おでこが広く、はれぼったいまぶた、低い鼻、厚い唇という顔立ちの子どもが多いようです 。

成長すると、首が長くなる人が多いといわれるほか、歯の成長に異常がみられることが多く、あごが小さくなることも特徴です 。また、声にも特徴があり、ハスキーボイスの人が多いようです。

●健康に関係する特徴
特に注意しなければならない疾患に、心臓の大動脈弁上狭窄があげられます。ウィリアムズ症候群の人の75%で発症していて、そのうちの30%の人では外科手術が必要です。
また、2歳までのウィリアムズ症候群の子どもの15%で、高カルシウム血症があるといわれています。

そのほか、糖や脂質の代謝異常のために肥満になりやすかったり、エラスチン遺伝子の欠損によってそけいヘルニアの発症率が高いことも分かっています。
さらに、子どもから大人まで年齢を問わず、ウィリアムズ症候群のある人は頻尿であることも知られています。
大沢真木子、中西敏雄/監修、松岡瑠美子、砂原眞理子、古谷道子/編集『ウィリアムズ症候群ガイドブック』(中山書店、2010年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4521732038
ウィリアムズ症候群・ADHD当事者の古澤瑛子(アコ)さんのインタビューでは、グループホームの支援者がアコさんの幼少期を以下のように振り返っています。
ウィリアムズ症候群の特徴で、アコさんは生まれつき心臓が弱いのもあって、お母さんはものすごく緊張感を持って彼女を育てておられたんです。転んで怪我して入院するんじゃないか、なにかあったら死んじゃうんじゃないかって、どこかに連れていくのもすごく慎重で。
出典:https://h-navi.jp/column/article/35028072
親元を離れてグループホームへ。喜びも苦労も分かち合いながら、自立して暮らせる今が幸せ――ウィリアムズ症候群・ADHD当事者の古澤瑛子さん【連載】すてきなミドルエイジを目指してのタイトル画像

親元を離れてグループホームへ。喜びも苦労も分かち合いながら、自立して暮らせる今が幸せ――ウィリアムズ症候群・ADHD当事者の古澤瑛子さん【連載】すてきなミドルエイジを目指して

発達全般の特徴

ウィリアムズ症候群の人は、生まれつき体が小さいことが多く、発達もゆっくり進みます。大人になっても身長の低い人が多いようです。

視空間認知障害があることも、ウィリアムズ症候群の大きな特徴です。動くものの認識が難しいため、たとえば、車が近づいてくるか遠ざかっているか分からないことも。交通事故には特に注意が必要です。

平均的なIQは59とされていますが、これはあくまで平均値であり、IQは個人差が大きいものです。多くの場合は知的発達の遅れは軽度から中程度です。一方で、人の顔を覚えるのが得意であったり、言語による短期記憶に非常にすぐれていたりするほか、書くことや読書なども得意であるといわれています。

ウィリアムズ症候群の人は、ADHD(注意欠如・多動症)を併せ持つケースが多く見られます。

アメリカのルイビル大学のLeyfer博士が、アメリカ精神医学会の『DSM-4』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版)での診断基準を使って、6歳から14歳までのウィリアムズ症候群の子ども119人を調査したところ、64.7%の子どもがADHDであったことを報告しています。
大沢真木子、中西敏雄/監修、松岡瑠美子、砂原眞理子、古谷道子/編集『ウィリアムズ症候群ガイドブック』(中山書店、2010年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4521732038
Ovsanna T. Leyfer, et al. Prevalence of Psychiatric Disorders in 4 - 16-Year-Olds with Williams Syndrome. Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2006 Sep; 141B(6): 615–622.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2561212/
ADHD(注意欠如多動症)の3つのタイプとは?【専門家監修】のタイトル画像

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また、不安障害がある人がとても多いことも分かっています。アメリカのルイビル大学のWoodruff-Borden博士が、アメリカ精神医学会の『DSM-4』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版)での診断基準を用いてウィリアムズ症候群の子ども45人を5年間にわたって調査しました。

その結果、82.2%の人が調査期間中に不安障害があることが認められ、62.2%の人は慢性的な不安障害であることも明らかとなりました。具体的には音や大勢の人など、特定の恐怖症であることも分かっています。
Janet Woodruff-Borden, et al.Longitudinal Course of Anxiety in Children and Adolescents with Williams Syndrome. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2010 May; 154C(2): 277–290
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2914498/

人懐っこさや音楽への感受性など、性格面での特徴

人懐っこく、明るく社交的な性格は、ウィリアムズ症候群の特徴の一つです。子どもでは知らない人を怖がらないかわいらしい性格で、周囲の人にも愛されるでしょう。また、他人の気持ちなどに共感しやすいこともわかっています。

素敵な性格ではあるものの、知らない人にも慣れなれしい態度をとってしまうこともあるため、幼いころには「知らない人についていかない」「むやみに抱きつかない」ことを一つひとつ教える必要があります。

また、ウィリアムズ症候群は、音楽的な才能に恵まれる人が多いことでも知られます。音感がよく、すばらしい歌や楽器演奏で豊かな時間を過ごす人が多くみられます。

一方で、聴覚過敏である場合もあり、特に金属的な音を苦手とする人が多いようです。
大沢真木子、中西敏雄/監修、松岡瑠美子、砂原眞理子、古谷道子/編集『ウィリアムズ症候群ガイドブック』(中山書店、2010年)
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ウィリアムズ症候群の診断・検査は?

ウィリアムズ症候群の人の75%には、先天性の心臓疾患がみられます。そのため、乳幼児期に心疾患の発見をきっかけとしてウィリアムズ症候群の診断がされることが大半です。

また、乳幼児期の発達のおくれから診断を受けることも多いようです。ウィリアムズ症候群は別名「妖精様顔貌症候群」とも呼ばれていて、身体的特徴から専門医であれば本疾患に気づくことができると思われます。

しかし確定診断には、染色体を調べるFISH法とよばれる検査などが必要です。ウィリアムズ症候群では2つあるべきエラスチン遺伝子を含む染色体領域が1つしかないため、それを確認することで確定診断されます。
次ページ「ウィリアムズ症候群のある人の乳幼児期の発達の特徴」

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