おもに精神療法での治療が行われます

解離性健忘の治療には、医師や臨床心理士などによる精神療法が有効だと考えられています。

精神療法の目的は、思い出せないことを思い出すことではありません。本人が日常生活で支障をきたさず、安定的な生活を送るようになることです。

思い出せないできごとは、そのほとんどが本人の大きなストレスの原因であるため、思い出したからといって、本人の抱える問題が解決するわけではないからです。

もちろん、患者さんと治療する側との安心、かつ信頼できる関係性の中で、健忘の原因への理解が進み、思い出せるようになることもあります。

しかし、思い出さないことで本人の心が安定する場合には、無理して思い出させるようなことはしないようです。

小学校からの記憶をすべて失ってしまった患者さんで、治療をすすめていくなかで夫のもとで情緒が安定しているために、記憶の回復がないままで治療を終了したという例もあります。
岡野憲一郎/責任編集『専門医のための精神科臨床リュミエール20 解離性障害』(中山書店、2009年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4521731341

家族や周りの人の正しい理解とサポートが解離性健忘の患者さんの支えになります

治療以外で多くの時間をともに過ごしている周囲の人々とのかかわりは、解離性障害の治療に向けてとても重要です。

解離性障害の子どもであればその両親、成人であれば恋人や配偶者など、患者さんのキーバーソンとなる人は症状について正しく理解し、できる限りの患者さんの気持ちにより添った協力体制を整えることが望ましいとされています。

ある患者さんの例では、解離性健忘の症状でパニックに陥ってしまったときには以下のような仕組みを作り、パニックから解放される対処法を身につけるようにしたそうです。

1.恋人に携帯電話で電話をする
2.決まったセリフを口にしてもらう

解離性健忘の患者さんでは、抑うつ気分と自殺を考えてしまうことが特徴的にみられることも知られています。治療をすすめるなかで、健忘のために忘れていたできごとを思い出し、そのたびに気分が不安定になってしまう患者さんもいるようです。

したがって、解離性健忘はストレスの元となることを「忘れてしまう」ことで、患者さんの心の負担を軽くし、心を守っているという側面もあることを忘れないようにしましょう。
健忘やそれに伴う離人症状は、破局的な体験や孤立した抑うつ状態に対する防衛(defense)であるので、催眠や麻酔面接などを用いて無理に崩すことは治療的ではない.なによりも健忘を認めるあいだは、患者が心身の消耗を回復して、現実に再び直面して受容するための猶予期間であるという視点が必要である。症状の背景にある持続的で緊迫した孤立状況とそれに伴う抑うつ気分や自殺念慮などに焦点を合わせ,休養と環境調整を第一とする.次いで行き詰まった状況になっても誰にも助言や援助を求められないことを問題として取り扱っていくこと,さらには対人関係における適切な自己表現を可能とすることが課題となろう.治療の原則は,このような段階的プロセスを支持的に援助することである.

【出典】岡野憲一郎/責任編集『専門医のための精神科臨床リュミエール20 解離性障害』(中山書店、2009年)102ページ
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4521731341
一方、患者さんの家庭環境が、解離性健忘の引き金となっている場合には、家族の関係性を見つめ直す必要があります。

もしかしたら、家族のことが原因かもしれない、など悩むことがあれば精神科医と家族相談という形の受診をしてみるのも良いかもしれませんね。
岡野憲一郎/責任編集『専門医のための精神科臨床リュミエール20 解離性障害』(中山書店、2009年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4521731341

まとめ

この記事では、解離性障害のひとつである「解離性健忘」をご紹介しました。解離性健忘の人は、不安や抑うつ気分を感じていることが多いようです。そこで、周りの人は本人のストレスができるだけ減らせるような環境を整えてあげることが大切です。

ただ、サポートすることが周りの人にとって過度の負担となってしまっては、本人だけでなく周りの人もつらい思いを抱えてしまうことになります。そこで、「できる範囲内のサポートをする」と心がけるようにしましょう。
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