共感覚の種類や判断法や原因、トレーニングで共感覚になれるのかまで解説

ライター:発達障害のキホン
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共感覚には、黒で書かれた文字がカラフルに見えるものをはじめとして、数多くの種類があります。共感覚は先天的なものだと考えられてきましたが、最近の研究では後天的に共感覚になることができる可能性があるとされています。この記事では、共感覚について解説するとともに、共感覚と自閉症スペクトラムの意外な関係性についても紹介します。

目次

共感覚とは

共感覚は、ひとつの感覚刺激から複数の感覚が呼び起こされることをいいます。例えば、数字や文字に色が付いているように感じたり、音楽を聞いたときに色彩が思い浮かんだり、辛いものを食べるときにとげとげの物を掴んでいるように感じたりする症状が見られることがあります。

このように、文字情報から色覚が呼び起されたり、聴覚情報から視覚的情報が呼び起こされたり、味覚情報から触角を感じたりするのが、共感覚の特徴です。

共感覚には次のような特徴があります。
・特定の条件下においてのみ感じるものでなく、意識的にコントロールできない
・共感覚は年齢を重ねても変わらない
・幼児期から継続して見られる
・物や経験と結びついたものではない
・好き、嫌いや快、不快のような感情を伴っている
【参考】長田典子 藤澤隆史「共感覚の脳機能イメージング」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isciesci/53/4/53_KJ00005490028/_article/-char/ja/
ヒトは、視覚や聴覚をはじめとする様々な感覚があり、これらの組み合わせは膨大になるため、共感覚の種類も多く存在します。(より細かい事例は後段の章で見ていきましょう。)

共感覚のある人の割合は調査によってさまざまで2000人に1人だとするものもあれば、20人に1人とするものもあります。
参考:脳のなかの万華鏡---「共感覚」のめくるめく世界
https://www.amazon.co.jp/dp/4309245250
近年では、共感覚がメディアで取り上げられたり、論文に多く取り上げられたりするようになってきましたが、19世紀後期まではほとんど科学的に共感覚が取り扱われることはありませんでした。

共感覚が万人に見られるようなものでなかったり、人それぞれ症状が異なっていたりしたために、共感覚の存在自体が疑われていたからです。共感覚は、想像力が豊かで目立ちたい人が作り出した幻想や、ドラッグをやっている人の幻想だとみなされることがありました。

しかし、幻想やドラッグという説明だけでは説明しきれないことがあることや、共感覚を科学的にとらえようとする研究の成果によって、共感覚に対する考え方が180度変わりました。

その結果、いまでは脳の理解のための一つの方向性として、 多くの科学者が共感覚を研究対象とし、仮説とその検証を行っています。
参考:脳のなかの万華鏡---「共感覚」のめくるめく世界
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共感覚の種類

共感覚には数えきれないくらい多くの種類があります。例えば、以下のような事例が存在します。

数字列形

数字などの順序がある考え方が、あらゆる形状にねじれたり、折れ曲がったりしているかのように感じられることを指します。数字列形の共感覚がある人には、数学の教科書に記載されている数式が立体的に見えたりします。

色のついた音

文字を読んだときに色を感じる人よりは少数ですが、会話の最中に特定の単語を聞くと色が思い浮かぶ人もいます。

味のある言葉

過去の経験や知識に関係なく、言葉そのものに対して味を感じる人がいます。例えば、「刑務所」は冷えたベーコンの味がするように感じる事例が報告されています。

色聴

色聴は音を聞いたときに、色や形、動きが想像される共感覚です。動物の鳴き声や掃除機の音など日常生活で聞こえる音にも聴覚以外の感覚が引き起こされる人がいます。

文字の人格化

文字が色を持っているだけでなく、それぞれ個性を持ったキャラクターのようにとらえる共感覚も存在します。

聴覚・運動の共感覚

ある単語を聞かせると、その単語に合わせてさまざまな姿勢をとる事例です。あまり多くは見られませんが、共感覚の一つだとみなされています。

痛みと形の共感覚

痛みを感じたときに、その痛みを色や形、時には人の歌声のように感じる共感覚です。
他にも、物を見たときに音が聞こえたり、音を聞いたときに身体を触られているように感じたりする共感覚もあります。

また、他にもミラータッチ共感覚と呼ばれるものがあります。

共感覚は、一般的には自分自身の視覚と聴覚がリンクしたりと、自己完結型の事例が多いですが、ミラータッチ共感覚は自分自身の感覚と他人の感覚がリンクします。

ミラータッチ共感覚のある人は、目の前で他人が頭をなでられるのをみるとまるで自分もなでられているかのように感じるのです。

ここで取り上げた共感覚はあくまで一例であるとともに、似たような共感覚の人同士であっても感じ方は千差万別です。
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参考:共感覚から見えるもの アートと科学を彩る五感の世界
https://www.amazon.co.jp/dp/4585210334

共感覚はだれもが持っている?

共感覚のない人であっても、複数の感覚が混じっていることを示唆する現象があります。

例えば、女性からの声援のことを「黄色い声援」と表したり、香水の香りを「あまい香り」と表現したりします。しかし、声援という聴覚情報が実際に黄色いわけではありませんし、香りが味覚的にあまいというわけではありません。

このように、私たちはある感覚の体験を表現するときに、別の感覚に使われる表現を用いることがあります。感覚同士に共通性を見出す作用を心理学では、通様相性(インターモダリティ)と呼んでいます。

共感覚のない人でも複数の感覚に共通性を見出しているとすると、共感覚かどうかはどのような違いがあるのでしょうか。

共感覚は、誰もが持っている感覚と感覚をつなぐ作用(通様相性)が人一倍強いということになります。

人はそもそもそれぞれの感覚を完全に分離して考えることはできず、誰もが無意識に感覚同士をリンクさせています。そのため、「重い」「軽い」という表現を本来重さのない音楽や絵画に対しても使うことができています。

一方で、その感覚同士の結びつきが強い場合、本当に重いものを持っているように感じたり、複数の感覚がつながっていることを認識できたりする人がいます。そのような人たちのことを、共感覚者だと言うことができるでしょう。
共感覚の地平 共感覚は共有できるか
https://ci.nii.ac.jp/naid/120006706088/
次ページ「共感覚の判断法」

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