スクールカウンセラーにどんな相談ができるの?

スクールカウンセラーには、学校生活、学習、発達に関する悩みだけでなく、その背景にある家庭環境の問題や、個人の心身の問題など幅広く相談できます。
つまり、お子さんに関わること、お子さんが生活する環境(学校、家庭)における気になることであれば、概ねスクールカウンセラーに相談してよい事柄です。スクールカウンセラーに相談していいかわからない場合は、その悩ましいと思うことから相談し、その中で、スクールカウンセラーがより適した相談機関・窓口や医療機関などを紹介することもできます。

相談していいのかどうかで悩むよりは、まずは気軽に問い合わせてみるくらいの気持ちを持ってみるとよいかもしれませんね。

スクールカウンセラーとの相談ケース例

ここで、よくある「スクールカウンセラーとの相談の始まり方」について紹介します。
※実際のケースを基に、大幅に改変した架空事例です。

よくあるのは、保護者からスクールカウンセラーとの面談を希望する場合です。

【事例1】小1女子Aさん:登校渋り

小1のAさんは、学校では大きな問題もなく楽しそうに過ごしているように見えます。しかし、5月ごろから夜になるとAさんが「明日学校行きたくない…」と泣き始めることに、お母さんは心配をしていました。朝になってもぐずぐずしながら準備をし、どうにかこうにか学校まで送って行く日々でした。学校が近づくにつれ、ぐずぐずしていた様子も見えなくなり、夜からのことを感じさせない様子で校門を入っていきます。そして家に帰ってくるときは、元気よく「ただいまー!」と帰ってきます。

担任の先生に電話で話を聞くと、「え、そうなんですか?朝の支度もてきぱきできているし、学校来ちゃうと平気なんですかね…」と意外そうな様子でした。
お母さんはこのまま学校が嫌いになってしまったらどうしよう、休み始めたらどうしようと不安になり、スクールカウンセラーとの面談を希望する旨、担任の先生に伝えました。



スクールカウンセラーとの面談では、Aさんの幼いころの様子も聞かれました。
「幼稚園の時は、お母さんと分かれるのはスムーズでしたか」
「新しい場所に行くことや新しいことをするのは好きなお子さんですか」
そういった話の中で、お母さんはAさんCちゃんが幼稚園に入園したての時期や学年が変わった後、行事の前や当日はよく泣いて大変だったことを思い出しました。家族で出かけるときも、よく知っている場所に行くのは好む一方で、初めて行く旅行などはぐずぐずしやすく、楽しそうな遊具のある場所に行ってもお父さんやお母さんのそばを離れることはなく「平凡な休日を好む子なんだなと思ってました(笑)」と話しました。

Aさんの様子をよく聞いてみると、前夜からの渋りが特に強いときと、そうでもない日とあることも見えてきました。算数、国語、図書がある日の前は比較的渋りが少なく、生活、学活のある日の前はよく泣いていたのです。スクールカウンセラーは、「もしかしたら、授業で何をやるのかよくわからない日は不安になってしまうのかもしれないですね。そのあたりのことを担任の先生に伝えて、翌日の授業で何をするか予告してもらうようにしましょうか」と提案しました。

担任の先生はその後、翌日の連絡をする際に、「生活では、アサガオの観察をします。アサガオの絵を描きます」と簡単な予告をみんなにしてくれるようになりました。また、運動会が近づき、普段とは違う時間割で授業をする際も、時間割の変更と、「明日はかけっこの練習をします」「明日はダンスの練習を教室でやります」など、具体的に予告するようにしてくれました。

お母さんも学年だよりを見ながら、Aさんに予告をしたり、宿題のついでに教科書の次のページもちらっと一緒に見るようにして、「次は足し算やるってー」と授業内容もだいたいどんな内容をやるのかを知らせるようにしてみました。

そんな対応をしているうちに、夜ぐずぐずすることはありますが、泣くほどではなくなり、朝も少しずつ準備がスムーズになってきました。登校する道すがら、Aさんから「今日は図工で〇〇をやるんだよ」と楽しみにしている発言も見られてきました。

しばらくして、お母さんは再度スクールカウンセラーに予約を入れてもらうよう、連絡帳で担任の先生に伝えました。スクールカウンセラーとの面談では、「うちの子は新しいものや何が起きるかわからないものが不安だったのですね。予告するようになって、だいぶ落ち着いてきました。ありがとうございました。また気になる様子が見られたら、また相談させてください」。お母さんの中でも、心配な様子が見られたら相談しようということが安心材料となり、Aさんが不安になっても受け止められそうな気がしてくるように感じられました。

また、こういった形での相談の始まり方もあります。

【事例2】小2男子Bさん:授業に集中していない、学習のつまずき

小2男子Bさん。お母さんは家で宿題をやらせることでとても困り感を持っていました。机に向かわせるまでに一苦労、計算ドリルは比較的取り組むものの漢字や音読はすぐに嫌がり親子でケンカになることもしばしば。勉強が苦手でも楽しく元気に学校へ行ってくれたらまずはそれでよいと考えていたので、1年生の時はそこまで気になりませんでした。しかし、あまりにも手がかかり続けるため、お母さんも疲れてきています。

授業参観での様子は、家とも似て、席にはついているものの、近くの子と話していたり、手いじりしていたり、周りの子が2年生になり集中するようになってきたのとは対照的に、落ち着きのないままであるように見えました。担任の先生も、Bさんの席を一番前にして声をかけやすくしているようですが、Bさんが問題を解く場面になるとすぐに「先生先生!」と先生を呼ぶ様子も見て、大丈夫なのかと心配になりました。

夏の個人面談の時に、お母さんは担任の先生に「うちの子、なんか授業に集中できてないし、家で宿題やらせるのも大変で…。大丈夫なんでしょうか」と相談してみました。
すると、担任の先生からは、「集中が続かないのも気になりますが、何か書く作業をするときに特に取り組みが悪くなるように感じています。うちのクラス、よくスクールカウンセラーの先生が見に来てくれるのですが、スクールカウンセラーの先生に相談してみませんか?」と話されました。

お母さんはそんなことになるとは思っていなかったので、戸惑ってしまいました。

担任の先生は、「スクールカウンセラーの先生とは、よくクラスの子のことで助言をもらったりしているんですけど、今度Bさんの様子をじっくり見てもらって、そのあとで、私とお母さんとスクールカウンセラーの先生とで、一緒に話をしませんか。私もクラスの中でBさんにどんな手立てをしたらもっと取り組みが良くなるのか聞いてみたいので」と続けました。お母さんは、「じゃあ、それなら…」と三者面談について承諾しました。



2学期が始まってしばらくした日の放課後、その三者面談が開催されました。
「お母さん、初めまして、スクールカウンセラーの○○と申します。今日はお時間いただきありがとうございます」と挨拶ののち、担任の先生の司会で面談が始まりました。お母さんが今Bさんのどんな様子に心配を感じるのか、担任の先生が今教室の中で集中して学習に取り組むためにどんな工夫をされているのかなどをお母さんや担任の先生がそれぞれ話しました。

それを聞いてスクールカウンセラーは「なるほど、ありがとうございます。先日、Bさんの様子を見たのですが、Bさんは先生が話をしているときは比較的よく聞こうとしていました。でも、先生が板書をし始めると私語や手いじりが増えて、板書を写すときになると、より一層…という様子でした。先生に声をかけられて、ノートに写そうとしても、1文字ずつ書いていてとても時間がかかっていました。漢字ドリルは、なぞりは丁寧ではないですが、そこまで抵抗なく書いていますが、書き順が毎回違っていました。なぞりでない、白いマスに自分で書くときになると、書かなかったり、書いても線の数が多かったり少なかったりしていました。そういう様子から、もしかしたら読み書きでつまずきがあって、その結果、抵抗感が増したり、取り組みが悪くなったりしているのかもと思ったのですが、どうですか」

お母さんには、家での様子に思い当たる節があり、それを話しました。担任の先生も「確かに、読み書きはすごく時間がかかるお子さんかもしれないですね…」と。その後、スクールカウンセラーの先生からは、「個別にBさんと話したり、書く様子を見させてもらったりする時間を放課後に取ることはできますか」と提案があり、お母さんも「お願いします」と承諾。次回は、スクールカウンセラーとお母さんがその様子を話すことにしました。



スクールカウンセラーは、Bさんと放課後15分ほど相談室で話したり、読み書きのつまずきの様子を見たりという時間を設けました。その後、またお母さんと面談。
読みがスムーズでないことや、スムーズにひらがなを書けない様子、一方で数字や計算は比較的うまく使えており、計算問題はそこまでつまずいていないこと、そして、個別で15分という設定でもやや注意がそれがちで周りの音や物に気を取られがちな様子などをスクールカウンセラーは、報告しました。

そこから、読み書きが苦手なことについて、また、音や物など周囲の刺激に反応しやすいことについて家でできる対応を一緒に考えつつ、詳細なアセスメント(何がどの程度つまずいているか客観的に知る)をしてもらうために、外部機関(教育支援センター/教育相談/医療機関/民間機関など)での検査を提案し、お母さんも、「Bが何かで困っていてそうなっているのなら、私も対応が知りたいです」と快諾。

その後は学校での様子をスクールカウンセラーから伝えたり、お母さんの家での対応をしてみてどうだったかを聞いたり、また他機関を問い合わせてみてどうだったかを共有するために、その後、月一程度で継続的に面談を行っています。

スクールカウンセラーと担任の先生が連携することもお母さんは許可したので、適宜スクールカウンセラーと担任の先生はBさんの様子について話しているそうです。お母さん、担任の先生、スクールカウンセラー、その三者がそれぞれの立場からBさんの様子を見て、できる手立てを考え実践しながら、一緒になって継続的に見守っている。そんな構図ができています。

スクールカウンセラーに相談するには?

実際に、「スクールカウンセラーに相談したい!」と思ったら、どのように申し込み、カウンセリングを受ければよいのでしょうか。

以下では、多くの学校が実施している、カウンセリングまでの流れを紹介します。ただし、学校ごとに、スクールカウンセラーに相談を依頼するための方法は異なりますので、必ず自分の子どもの学校のスクールカウンセラーに関する決まりなどを確認するようにしましょう。

スクールカウンセラーに相談したいと思ったら、多くの学校ではまず、事前に問い合わせてカウンセリングの予約をする必要があります。多くの学校はスクールカウンセラーが来校する日を決めています。
平成27年3月9日(月)中央教育審議会チーム学校作業部会(第4回)「スクールカウンセラーの役割と活動の在り方」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/052/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/07/1357412_02_1.pdf
カウンセリングの予約をするには、担任教員またはスクールカウンセラー担当教員へ連絡帳や電話にて問い合わせるか、「スクールカウンセラーだより」のなどの配布物に記載している連絡先へ、直接連絡する必要があります。

多くのスクールカウンセラーは、定期的に学校の様子や心のケアに関するアドバイス、カウンセリング可能日時などを記載した「スクールカウンセラーだより」をつくっています。このような配布物をチェックして、スクールカウンセラーのスケジュールを確認するようにしましょう。

カウンセリングの日程が決まったら、限られた時間で悩みや話したいことを満足に話し合うことができるように、前もって話したいことを考えたり、メモなどに簡単にまとめておいたりするとスムーズです。

まとめ

スクールカウンセラーとは、学校現場で臨床心理の専門知識に基づき、児童生徒・保護者・教員に対してカウンセリングや助言、心のケアを行う専門家です。


心理の専門家に無料で比較的気軽にアクセスできるのはスクールカウンセラーを利用する際のメリットです。そして実際の子どもの学校場面での様子を見てもらうことが出来ることもスクールカウンセラーの持つ強みです。

学校で何か相談するとなると、最も身近な担任教員が思い浮かぶ方も多いでしょう。教員はお子さんと学校生活を共に送る教育の専門家です。スクールカウンセラーは心理や発達の専門家です。それぞれの視点の違いを活かしつつ、相談することは子育てにおいてとても心強く感じられるのではないでしょうか。

保護者のみでスクールカウンセラーと話すことも可能なので、子どもの学校生活や家庭での過ごし方など不安に思った際に相談してみると、解決の手立てが見つかるかもしれません。子どもの学校生活、不安だけど誰に話したらよいかわからない…あるいは担任教員には相談しづらい悩みがある…そんなときは、スクールカウンセラーに一度相談してみてはいかがでしょうか。

※この記事は2017年11月1日に公開をしましたが、専門家の監修を受け内容のアップデートを行ったうえで、2021年8月16日に改めて公開をしました。
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