「平成30年7月豪雨」、発達障害のある子への避難所での配慮ポイントまとめ
西日本を中心に広がる豪雨の災害では多くの方が被害に遭い、避難を余儀なくされている方もいます。中には発達障害のある子どもの避難生活やサポートに不安も抱く方もいるのではないでしょうか。避難所での配慮のポイント、被害の大きい地域での福祉避難所の設置状況、やむをえず車中泊となった際の注意点についてご紹介します。避難所で生活される方、運営される方、支援に入られる方のご参考となれば幸いです。
平成30年7月豪雨での甚大な被害。避難者7,000人以上、約25万戸が断水
消防庁の発表によると、今もなお多くの方々が避難をされています。また厚生労働省によると、2018年7月11日時点で約25万戸が断水状態となっています。
避難生活で発達障害のある子どもがおかれる環境
発達障害のある子どもの中には、慣れない環境や集団での行動が苦手があるなど、避難所生活が難しい子もいます。感覚過敏や偏食などがあり、特別な配慮や対応が必要になる人もいます。しかし避難するにあたって、障害のある人に対する配慮が難しい場合や、見えにくい障害であることも影響して、なかなか理解を得にくい場合もあるようです。
東日本大震災の際も、避難所生活をあきらめて車中生活を送った家族が少なくありませんでした。
出典:https://www.asahi.com/?iref=com_gnavi_top国立障害者リハビリテーションセンター研究所の発達障害情報・支援センターが東日本大震災(2011年)の翌年、岩手、宮城(仙台市を除く)、福島の3県で、発達障害がある人(もしくは、家族が代理で回答)にアンケートしたところ、276人が回答。避難所を利用した人は23%で、そのうち避難所で問題なく過ごせた人は18%にとどまった。
偏食で配給食が食べられない▽見守りが必要で配給の受け取りに行けない▽夜中に目を覚まして声を出してしまう――など、障害特有の行動で、本人だけでなく、家族の負担も大きかった。周囲に遠慮し、避難所生活をあきらめて車中生活を送った家族もいた。
朝日新聞デジタル, 帯金真弓「発達障害の人たちに理解と支援を 避難所で孤立の恐れ」, 2016.04.20
出典:https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/26/住まいを失い、行き場を失った被災者がたどり着くはずの仮設住宅が、そこでトイレもできず、お風呂にも入れなかったりするなど、障害者への配慮はほとんどありません。
ある避難所へやってきた車椅子の障害者が、「ここは階段ばかりだから」と断られたり、発達障害で自閉症があり、水の配給の列に並べない子どもの分を求めた親に、「平等ですから」ともらえなかったり、「迷惑をかけるから」と避難所を追い出されたり・・・。
NHKハートネット,熊本地震「また取り残されるのか」被災地での障碍者支援の実態,2018,04,13
避難所での配慮、知っておきたいポイント
「走り回る」、「大声を出す」といった行動も、その子の不安の表れであることが少なくありません。限られたスペースのなか、少しでも不安やストレスを軽減するには、どのような配慮をすれば良いのでしょうか。
以下では、発達障害のある方への避難所での配慮のポイントをご紹介します。
配慮が必要な子どもがいないか確認を
避難所を運営する方は、ご高齢の方や、病気や身体障害等のある方への配慮と同じく、発達障害によって特別な配慮が必要な方がいないかを、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
パーテーションの用意を
パニックになった時に落ち着ける場所としても活用できます。
インターネット上などでも簡単な手作りパーテーションのアイデアが載っています。ぜひ参考にしてみてください。
食べられない物がないか確認を
また、どんな食べ物かわからない時は不安が大きくなり、食べられないことがあります。パンは袋から出して、飲み物はコップに注いで、実物が見える状態で渡すことで安心して食べられることもあります。
物資の配分や声掛けは個別に
また、発達障害のある子どものなかには、指示の内容が理解できない、困っていることが伝えられない、人とコミュニケーションをとるのが困難な子もいます。
そのような手助けが必要な子に対しては、一斉のアナウンスだけでなく個別に声掛けをしましょう。
簡易式トイレや、洋式便座の用意を
それでも、トイレに行けないという方のために大人用のおむつを避難所で用意しておくこともおすすめです。
サポートが必要だということを周囲にも知ってもらう
LITALICO発達ナビでは、災害時に避難所等で過ごす、発達が気になるお子さんの保護者さまや周囲の方々へ向け、避難所等でサポートが必要なお子さまの存在を知らせる「ヘルプマーク」を作成し、以下のリンクに設置しました(東京都申請済)。避難所での掲示などにぜひ、プリントしてご活用ください。
避難所内でもできる活動の準備を
熱中症対策
■症状
めまい、立ちくらみ、手足のしびれ、筋肉のこむら返り、気分が悪い、頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、いつもと様子が違う。
(重度:返事がおかしい、意識消失、けいれん、からだが熱い)
■水分補給
こまめな水分補給などの調節は通常でも忘れやすいことなので、意識的にのどが渇いていなくてもこまめに水分・塩分・経口補水液の補給を促してください。
■暑さ対策
発達障害のある人は、体温調節が苦手であることなどで暑い場所にいつづけてしまう危険性もあります。感覚鈍磨がある人は、体調不良や痛みに気づきにくいことや、子どもの場合、体調不良をうまく人に伝えられないこともあります。
健康状態をこまめに観察し、なるべく日陰や風通しの良い涼しい場所に移動するようにしましょう。厚生労働省がまとめている熱中症対策が以下のリンクにあるので参考にしてください。
障害の有無にかかわらず気をつけるべきポイント
高温多湿な夏場では食材が腐りやすくなります。食中毒対策について以下のリンクを参照ください。
多くの人がいる避難所や車中などにいる方は、思うように体か動かせなかったり一定の姿勢を強いられる状況です。軽いストレッチやマッサージを心がけましょう。以下のリンクに実践可能な予防策が載っています。
避難中のがれきや木片などでけがや切り傷がある場合、小さな傷であってもそこから感染症が広がる可能性があります。土砂災害の場合、破傷風の感染に注意が必要です。以下のリンクでは症状や注意点、対処法などが記載されているのでぜひ、参考にしてください。
一般避難所が難しい方のための「福祉避難所」があります
以下のリンクでは広島市、岡山県、愛媛県での福祉避難所がまとまって確認できます。参考にしてください。
車中泊の方の注意点
配給リストから漏れない工夫を
避難所を運営される方は、そういったご家族が近隣におられないかコミュニケーションをとり、直接配給するなどの配慮をご検討ください。
適切な配慮で避難生活を乗り切りましょう
以下のリンクでご紹介しているハンドブックやマニュアルもご参照ください。
みなさんのご無事と1日も早い復旧をお祈りしております。

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