海外のダウン症児向け言語プログラムをいち早く導入!放課後等デイ・児童発達支援「バンブーワァオ」

2018/08/08 更新
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児童発達支援・放課後等デイサービス「bamboo wow(バンブーワァオ)」は、海外のダウン症児専門の言語プログラムをいち早く取り入れ、体づくりからデスク学習まで、ダウン症のある子どもの特性を踏まえた療育を実践しています。体の発達と認知や言語の発達は両輪だと考えているからです。

また、障害のあるなしに関わらず「あなたはあなたのままでいい」と丸ごと受け入れてもらえる大切さを、海外視察のなかで気づいた代表の矢作桂子さん。この場所をダウン症のある子や保護者の居場所にしていきたいと考えています。

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発達ナビ施設インタビュー
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ダウン症のある子ども向け言語プログラムを、アメリカから導入

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アメリカのダウン症児専門の言語プログラムを取り入れ、体づくりからデスク学習まで、ダウン症のある子どもの特性を踏まえた療育を実践する
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東京都杉並区、南阿佐ヶ谷駅からほど近い場所にある、ダウン症のある子どもたちを中心に療育を行う、児童発達支援・放課後等デイサービス「bamboo wow(バンブーワァオ)」。2016年にオープンしたこの施設は、2018年7月現在、およそ150名の登録者が在籍しています。

この施設の特色は、海外で実践されている「ラーニングプログラム(LP)」をいち早く導入したこと。LPとは、イギリスの大学でダウン症のある子どもたちのデータを元に開発され、アメリカで発展した言語プログラムです。アメリカでは既に20年近い実績があり、スムーズな言語獲得や認知の向上など、大きな成果が出ているといいます。

このLPを日本に持ち込んだのが「bamboo wow(バンブーワァオ)」代表の矢作桂子さんです。矢作さんは、現在小学6年生と3年生の2人の男の子を育てるお母さん。開設のきっかけは、ダウン症のある次男が生まれたことでした。矢作さんは次男を育てるなかで、あることに気づきます。

“日本では、未就学児への療育は充実しているけれど、小学校へ上がると通えるところが少なくなってしまう…”

また、ダウン症のある子どもに特化したプログラムを受けられる場所が見つけられませんでした。そこで矢作さんは、「ならば、私が」と立ち上がったのです。そして、ダウン症のある子どもに関する教育法や療育をリサーチしていくなかで見つけたのが、LPでした。1984年から1993年の10年間をアメリカで過ごし、英語も堪能な矢作さんは、アメリカに視察に向かいます。

“プログラムをこの目で見てよかったら、プログラムを広められる場所をつくろう”

このときから、既に「bamboo wow(バンブーワァオ)」の構想が矢作さんの頭のなかにぼんやりと描かれていました。アメリカへ視察に出かけたのが2017年6月。この視察を経て構想はさらにはっきりとしたものに。その後、プログラムの日本語翻訳など1年の準備期間を経て、「bamboo wow(バンブーワァオ)」をオープンさせたのです。

アメリカで出会った、ハッピーでいきいきしたダウン症のある若者たち

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「bamboo wow(バンブーワァオ)」の代表・矢作桂子さん。ダウン症のあるお子さんがきっかけとなり、施設をオープンさせた
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アメリカでの視察で感じたことや「bamboo wow(バンブーワァオ)」の特色について矢作さんにお伺いしました。

ーーアメリカでの視察で印象的だったことはありますか?

矢作:子どものころから一緒にLPを受けている10代のダウン症の子どもたちに出会ったのですが、その子たちが兄弟みたいな関係性だったんです。外では「なんとか苦手を克服しなければいけない」と気を張ることがたくさんあると思いますが、その子たちだけで集まったときには、リラックスして若者らしく彼氏や彼女の話をしたり、映画の話をしたり。ハッピーでいきいきしている姿がとてもいいなと感じました。

ーーそんな場所を日本でもつくりたいと考えたのでしょうか?

矢作:もしプログラムを広めるだけだったら保護者を集めて講演をするだけでもよかったかもしれません。でも、「ダウン症のある子どもたちが、自分のままで認められ、自己肯定感を高められる場所」をつくりたかったんです。それと同時にダウン症のある子どもを育てるお母さんやお父さんがほっとできる場も必要だと思いました。だから「場所づくり」にもこだわりました。

ーー多数の専門家の方がスタッフとして在籍していると聞きました。

矢作:はい。ありがたいことに予想以上に専門家の方が集まってくれました。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理士、保育士、などです。現在在籍しているスタッフは21名です。私を含め、保護者からのありとあらゆる質問に答えられるような体制を整えています。

ーー多くの専門家が集まっているからこそできることはどんなことでしょうか?

矢作:「○○ちゃんのお母さんからこんな質問がありました」とスタッフでつくっているSNSのグループにメッセージを書き込むと、スタッフはオフの日でも、それぞれの考えをたくさん回答してくれます。専門が違うので、異なる意見もありますが、それをすべて保護者にお伝えします。このなかからいろいろ試して○○ちゃんにぴったりな方法を一緒に見つけられればと思っています。

ーー本やネットでもなかなか自分の疑問や不安に対する的確な回答を探すのは難しいので、保護者にとっても心強いでしょうね。

矢作:これまでの療育は、「いかにできないことを少なくするか」というところに重きが置かれていたように思います。でも、ここでは「できる、できない」は関係ありません。子どもも親も安心して過ごせて、子どもの特性を親が学び、できるだけ不安なく楽しく子育てをすることを大切にしています。そのために専門家の力を借りて、親も子もそしてスタッフもみんなで成長していきたいですね。

豊富なプログラムや教材から、その子に合ったものを

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海外の良質な教材からオリジナルの教材までがそろい、さまざまな子ども達に対応できる
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現在、「bamboo wow(バンブーワァオ)」では、アメリカから導入したLPで行う「ことばのためのプログラム」、「体づくりのプログラム」、「身辺自立のためのプログラム」、「好奇心発見のためのプログラム」、「親子プログラム」などさまざまなメニューを展開しています。1対1の個別指導からグループ指導まで、それぞれの子どもに必要なプログラムを、その子に合った形式で受講できます。

「親子プログラム」は月に1度、保護者に向けての講座が行われます。”数の概念を教える”から”親なきあとのこと”まで、テーマはさまざま。

保護者は「将来は就労させなくては。そのためにできないことをなるべく少なくして、愛される子どもに育てなくては」とプレッシャーを感じている方が多いといいます。このプログラムは、子どもの特性を深く知ることはもちろん、子育てをするうえで気を張ることが多い保護者が、子育ての見通しを持てたり、他の保護者との交流などを通して気を緩めることができる機会にもなっているのです。

”数の概念を教える方法”は、数唱から始まり、数を数えるとはどういうことか、その後に足す、引く、掛ける、割るなどの四則計算が入ります。さらにその後、お金や時間、最後に分数を教えるという順番だそう。

人間はもともと指を動かしながら数をかぞえることで、その概念を学んでいきます。そのために、指を動かして数唱する遊びをしたり、足踏みをして数を数えたり、手足で感覚をつかむ練習をたくさんするのだとか。体を動かしながら、体全体に染み込ませるように”数の概念”を教えていく――。その方法についても、丁寧に保護者に伝えます。

また、”親なきあとのこと”というテーマでは、専門家による講演を通して将来の見通しをもてるようにし、そのために今何ができるのかを話し合います。ただ漠然と不安に思っていたことがクリアになり、肩の荷を下ろせる保護者も多いのだそう。

また、「bamboo wow(バンブーワァオ)」にはさまざまな教材も揃えられています。ここでしか学べないLPはもちろん、アメリカから持ち帰ったものや、なかには手触りや音にこだわったオリジナル教材も。プログラムから教材に至るまで、さまざまな選択肢があるのが大きな特色のひとつと言えるのかもしれません。

認知の発達や発語のためにも大切な、体づくり

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身体均整師である矢作智崇さんによる個別プログラムの様子。プログラム中に矢作さんから保護者へ伝えられたアドバイスを別のスタッフが書き留め、プログラムの最後に保護者に渡している
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取材の日は、身体均整師である矢作智崇さんによる個別プログラムが行われていました。キネシオロジーなどによって適切な刺激を脳に送ることで、体の発達を促す「bamboo wow(バンブーワァオ)」で大切にしているプログラムのひとつです。

実際に智崇さんが子どもの体に施術を行いますが、このとき、家に帰った後保護者自身が生活に取り入れられるように、とても丁寧に説明をしています。保護者からも質問が飛び、保護者自身の体で智崇さんがポイントを再現するなど、それはさながら、その親子のためだけのオーダーメイドプログラム。また、智崇さんの説明や、保護者の質問、そしてその回答は、別のスタッフがしっかりとメモにとり、プログラムの後に保護者に渡すそうです。

「ここでやるだけではなくて、毎日実践してもらうことが大切」と智崇さんは話します。ダウン症のある子どもにとって、体の発達はとても大事なこと。筋力が弱いため、自分の体や脳に刺激を与える役割をもつ”運動”が苦手な子が多いのだそう。「だからこそ、外から刺激を与えることが重要なのです。きちんと体をつくることが、認知の発達や発語にもつながるとも言われています」。

智崇さんは、去年より今年、昨日より今日…と更新される体や発達についての情報を収集し続けたいと話します。それは「今日ここで保護者に伝えたことを、もしダウン症のある次男がもっと小さいときに自分が知っていたら」という後悔からだそう。でもそれを次世代の子どもたちに伝えていくことで、未来はさらに明るいものになると、智崇さんは語ってくれました。

遠方の希望者や、他の特性がある子にも!多くの親子にこのプログラムを届けたい

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「海外の良質な教材を日本に導入したり、WEBレッスンにも挑戦したい」「他の障害や特性がある子ども達にもLPや各種教育を提供していきたい」と言う、矢作さん
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「これからも最新最善の情報や知恵を取り入れて、子どもたちや保護者をサポートしていきたい」と話す矢作さん。遠方に住んでいて通えない親子のためのWEBレッスンや、教室の拡張、海外の良質な教材を日本に導入するなど、さまざまな形で多くの親子に関わっていくことが今後の展望だといいます。

当初は、ダウン症のある子どもたち専門の施設を目指していましたが、矢作さん自身が療育を学んでいくうちに、ダウン症でなくても、多くの「発達がゆっくりした子」に各プログラムが適応するのではと考えるようになったそう。今後は、他の障害や特性がある子どもたちにもLPや各種教育を提供していきたいと考えているとか。

「bamboo wow(バンブーワァオ)」は、ダウン症のある子どもたちの特性に合わせて、賑やかで雑然とした雰囲気になっています。シンプルで療育に特化した内装だと、「勉強をやらされる」とか「つまらない」と感じてしまうからです。でも、刺激が多すぎると感じる特性がある子どもの場合には、運営にも関わっているシンプルな内装の「よむかくはじく」の教室で療育をする場合もあります。

「bamboo wow(バンブーワァオ)」の挑戦はまだ始まったばかり。これから子どもたちがお互いをよき仲間として、学び成長し合い、かつて矢作さんがアメリカで出会ったような、いきいきとした若者に育つのが今から楽しみです。

取材・文:秋定美帆
写真:鈴木江実子
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