息子は話せるけれど、コミュニケーションはとれない子でした

ライター:林真紀
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息子の発達に対して違和感を感じ始めた私…。けれども周囲からは「普通に話しているんだから大丈夫だよ」ということをよく言われました。診断を受け療育を受けるようになってから分かったことは、発達障害児が苦手なのは「話す」ことではなく「聞く」ことなのだということでした。

「違うでしょ。だって、普通に話してるじゃん」

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息子の発達について違和感を感じ始めたのは2歳頃でした。

公園に連れて行けばお友達と遊具や玩具の取り合いになり、頑として譲れず、遊具の順番も待てませんでした。保育園のお遊戯会では、周囲が可愛らしく踊るなかで、一人で集団から抜け出してくるくる回っています。
自分の思い通りにならないと癇癪を起こし、何が彼の地雷なのかも当時は分からず、怖くてどこにも出かけられない日々でした。

息子が発達障害なのではないか、と疑ったことは当時から何度もありました。そのたびに周囲にそれとなくその心配を話してみましたが、返ってくる言葉はいつもこれでした。

「違うでしょ。だって、普通に話してるじゃん」

そうなのです。「この子は発達障害かもしれない」という私の心配は、息子が「普通に話す」ことで常に打ち消されていました。息子は普通に話すどころか、むしろ幼児とは思えないほどの難しい言葉を使って話していたのです。
ですから、周囲の人たちも「この子賢くない?」と言ってよく驚いていました。

けれども私の違和感は少しずつ少しずつ大きくなっていきました。

それは、息子の話し方が双方向性を持たないことに気づいたからでした。

「これはコミュニケーションじゃない」と気づいたとき

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確かに息子は「普通に話す」子でした。
特に好きなことについては、どこで仕入れてきたのか分からない難しい言葉を使って延々と話をするのです。

けれどもある日気づいたのです。話をしている息子の目は、私を見ていませんでした
私はずっと息子がご機嫌にお喋りをしていることに私は満足していました。その視線の先に何があるのかなんて、気にしたことがなかったのです。

私は試しに、消防車や救急車の部品や用途の説明を延々する息子に、「そっか。○○君は消防車と救急車のどちらが好きかな?」「消防車に乗ったことはあるかな?」などと質問してみたのです。

ところが、息子がその質問に答えることはありませんでした。私の質問とは全く関係のない自分が好きな話を、延々話し続けるのです。

私の違和感はそこで最高潮に達しました。
私は息子の話を静止し、「ねえ、消防車と救急車のどちらが好きかなあ?」ともう一度聞いたのです。そのときの息子の答えを私は今でもはっきり覚えています。息子はこう答えたのです。

「消防車と救急車のどちらが好きかなあ?」

…そう、オウム返しでした。息子は私の問いかけの意味が分かっていなかったのです。
息子の話は、双方向のコミュニケーションではなかったのです。自分の好きな話をずっと話し続けていただけで、人の話を聞いて理解して返答するというプロセスはずっぽり抜けていたのでした。

話す力に隠れている「聞く力」の大切さ

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私のその心配は、発達検査で的中しました。臨床心理士は、息子の言葉の力の弱さを見抜いていました。そして検査の最後に言われたのです。

「息子さんはこんな風によくお喋りしているから分からないと思いますが、お母さんが思っていらっしゃるほどお母さんの言葉を理解していないと思います。息子さんは発達障害の特性で聞く力が弱いのです。」

言葉の力の弱さを指摘され、4歳から開始した言語療法。その狙いは素人の目から見てもはっきりと分かりました。

言語療法とは、「話す力」をつけるのではなく「相手の話を聞く力」をつけ、双方向のコミュニケーションができることを目指したものだと感じました。

言語療法によって息子は「聞く力」が少しずつ伸び、今では私の問いかけにも適切な応答ができるようになりました。

コミュニケーション能力とは、自分の好きなことを一方的に話すことではなく、相手の話を聞く力も必要なのです。

「普通に話す」ということには、相手の話を聞いて適切に応答する力も含まれるのだと思っています。
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