言語聴覚士(ST)とは?役割や仕事内容、言語聴覚療法や資格の取得方法について詳しく紹介します【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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言語聴覚士はSTとも呼ばれ、言語や発声・発音、聴覚、認知などの機能が損なわれておこるコミュニケーション障害に対して支援を行う専門家です。また、食べたり飲み込んだりすることなどに困難がある摂食・嚥下障害(えんげしょうがい)に対しての支援も行います。この記事では、言語聴覚士の役割や言語聴覚療法について詳しく紹介します。

監修者井上いつかのアイコン
監修: 井上いつか
言語聴覚士
大阪外国語大学、神戸総合医療専門学校卒。 医療・福祉機関で勤務後、現在フリーランスとして活動。 発達に凸凹のあるお子さまやご家族のサポート、支援者の育成、記事執筆・監修等を行う。
目次

言語聴覚士(ST)とは?

言語聴覚士(ST)とは、言語や発声・発音、聴覚、認知などの機能に何らかの課題があることでおこるコミュニケーション障害と、食べたり飲み込んだりすることに困難がある摂食・嚥下(えんげ)障害に対してリハビリテーションなどの支援を行う専門家です。

食べること、人とコミュニケーションをとることは、人間が生きていくうえで欠かせません。ところが、なんらかの要因でこれらがうまくいかないと、日常生活を送るだけでもとても大変になってしまいます。なかでも、音声によって自分の気持ちや意思を伝える「話しことば」は、コミュニケーションの大きな手段です。その手段がうまく使えないと、孤独や生きにくさを感じてしまうかもしれません。

言語聴覚士は、そんな人々をサポートする重要な役割を担っているのです。まず、その困難の原因がどこにあるのかを調べ、どんなサポートが必要かを考えます。そして、必要な機能やその代わりとなる手段の獲得を目指し、その人らしい豊かな生活を目標に様々な支援をします。

日本における言語聴覚士の位置づけ

日本において言語聴覚士は、1997年に制定された言語聴覚士法で定められた国家資格です。厚生労働省は法律に基づき、以下のように定義しています。
II 言語聴覚士の定義
 言語聴覚士とは、厚生大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある人々に対して、その機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいうものです。

(言語聴覚士国家試験受験資格の認定について |厚生労働省HP)
出典:https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/tyokaku/tp0918-a.html
この制度は1999年からスタートしました。毎年1千5百名程度が国家試験を経て有資格者となり、2015年の時点で2万5549人が言語聴覚士として活躍しています。

言語聴覚士になるには

高い専門性を要する言語聴覚士になるには、文部科学省または厚生労働省が指定する養成校で学び、言語聴覚士国家試験に合格する必要があります。

2016年現在、全国に73校ある指定養成校で「言語聴覚士学校養成所指定規則」に定められたカリキュラムを修了し、一般教養と言語聴覚障害学の専門的な知識や技術を身につけるのです。

卒業する前に、例年2月に行われる国家試験を受け、合格すると厚生労働大臣より免許が交付されます。有資格者となり、言語聴覚士名簿に登録すれば医療機関や福祉の現場などに就職し、言語聴覚士として働けます。

言語聴覚士が支援する対象

言語聴覚士はことばとコミュニケーションに障害のある人を支援するスペシャリストです。その業務には、単なる障害の克服・機能回復だけでなく、機能面で障害があってもその人らしい生活が送れるように支援することも含まれています。

主に支援するのは言語・聴覚の障害ですが、食べ物を飲み込む嚥下障害(えんげしょうがい)もカバーします。

それらの障害のもととなる原因は、病気・事故・発達上の特性など多種多様です。また、ことばの発達などに問題を抱える子どもから、嚥下障害や失語症のあるお年寄りまで、対象となる年齢が幅広いのも特徴です。

対象とする障害の種類

言語聴覚士が支援する障害は、おおまかに3つに分けられます。

1.ことばの障害
ことばの障害にはさまざまなものがあります。

言語機能の障害
認知や感情、言語をつかさどる脳機能の障害である高次脳機能障害のひとつです。以前は獲得していた言語能力(ことばを理解する・話す・読む・書くなど)が失われたり低下する失語症など、事故や病気による脳機能の損傷で起こる場合があります。

言語発達遅滞(げんごはったつちたい)
子どもの場合、知的障害(知的発達症)やASD(自閉スペクトラム症)など発達障害のため、ことばやコミュニケーションの習得が、同年齢の子どもに比べて遅れる場合があります。

声や発音の障害
声の高さや大きさ、イントネーションや速さに異常がある、かすれるなど声質の異常(嗄声)がある、声が出ないなどの音声障害、正しく発音ができにくい構音障害、ことばが円滑に出てこなかったりつまったり、同じ音を繰り返してしまう吃音(きつおん)などがあります。

2.きこえの障害(聴覚障害
高齢、また病気や怪我できこえが悪くなる場合もあります。きこえが非常に悪ければ、周囲の音が聞こえずに生活しづらく、ときに危険な目に遭うこともあります。大きな物音はきこえる状態であっても、状況や音量によって会話がうまく理解できないなど、日常生活に影響が出てしまうこともあります。高い音や低い音だけがきこえづらい場合も、言語の獲得に支障が出たり、生活で困ったことが起こることもあります。

また、生まれつき耳のきこえが悪い場合には、ことばの習得が遅れることがあります。子どもは乳児期から周囲の大人の話しているのを聞いたりコミュニケーションを取ることなどを通してことばを覚えていくからです。しかし、たとえ聴覚障害があっても、適切な支援や指導があれば、ことばやことばに代わるコミュニケーション手段の習得は可能です。

3.食べる機能の障害(摂食・嚥下障害
脳卒中やがんなどの病気や外傷、加齢などにより、食べ物をそしゃくしたり、飲み込んだりするのが困難になる障害です。うまく飲み込めず、むせてしまったり、気管に入って肺炎を起こすこともあります。脳性まひや知的障害(知的発達症)、口唇口蓋裂などにより起こる場合もあります。
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