トゥレット症候群の症状や治療法、トゥレット症候群とほかの発達障害との合併があるのか解説します【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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トゥレット症候群とは、児童期から青年期にみられるチック症の一種です。本人とその周囲の人たちが障害に気づかず、日常生活を送る上で困難があることが少なくありません。トゥレット症候群を適切に理解し、支援を行っていくために必要な情報をご紹介していきます。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

トゥレット症候群とは?

トゥレット症候群とは、児童期から青年期にみられるチック症の一種で、まばたきや首ふりなどの「運動チック」と、咳払い、鼻鳴らしなどのうち1つ以上の「音声チック」が1年以上持続することを特徴とする精神・神経疾患です。
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トゥレット症は、チック症群の一つです。チックとは、突然、速く、反復的に繰り返される運動や発声のことをいいます。まばたき、肩すくめ、手足の曲げ伸ばしなど身体の動きのチックを「運動チック」、咳払い、鼻ならし、うなりなどの発声に関するチックを「音声チック」といいます。いくつかの運動チックと1つ以上の音声チックが同時(または症状のある同時期)にあらわれる症状が1年以上続いており、その症状が18歳以前に発症している、物質の生理的作用やほかの疾患が原因ではない場合に「トゥレット症」と診断されます。

トゥレット症候群の推定有病率は学童期の子どもで1000人あたり3~8人の範囲とされています。
チック症について詳しくは次の記事をご覧ください。
チック症とは?「目をつぶる」「咳払い」「首を振る」など、癖に見える症状とチックの見分け方、体験談、子どもと大人それぞれの治療法を解説【専門家監修】のタイトル画像

チック症とは?「目をつぶる」「咳払い」「首を振る」など、癖に見える症状とチックの見分け方、体験談、子どもと大人それぞれの治療法を解説【専門家監修】

トゥレット症候群の症状経過

トゥレット症候群は、平均的に4~6歳で発症し、10~12歳くらいに重症度のピークがきます。

まず初期の段階で、まばたきや首ふり、顔をしかめるといった「単純運動チック」が始まることがあります。そしてしばらく経つと、物に触る・蹴る、飛び上がるなどの「複雑運動チック」、不謹慎な言葉を唐突に言ってしまうなどの「複雑音声チック」へと進行していく場合があります。その後、一般的には青年期の間に症状は軽減するといわれています。
日本小児科学会雑誌114巻11号 1673~1680(2010年)「トゥレット障害」(東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻統合脳医学講座こころの発達医学分野 金生由紀子)|厚生労働省
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2010/103101/201027004A/201027004A0016.pdf

トゥレット症候群の主な原因と悪化要因

トゥレット症候群の原因

トゥレット症候群の正確な原因はまだ分かっていませんが、家系発症が比較的多いことや双生児研究の結果から遺伝的要因の関連性が指摘されています。

また、情動、注意、意欲、報償、依存、歩行運動などをつかさどる、大脳基底核のドーパミン神経受容体の異常が関連しているともいわれています。

トゥレット症候群の悪化要因

トゥレット症候群の症状を悪化させる要因は環境要因、気質要因、そのほかの要因の3つに分けることができます。

■環境要因
チックの症状は、不安、興奮、強い疲労によって悪化し、落ち着いて集中しているときは改善します。たとえば、テストを受ける、課外活動に参加するなどの、ストレスが多い出来事はしばしば症状を悪化させる一方、勉強や仕事に集中しているときは、症状を軽減させます。

■気質要因
対人関係が不器用、不安やストレスを感じやすい、緊張を感じやすいなど、デリケートな気質の子どもがトゥレット症候群を発症しやすいといわれています。

■そのほかの要因
併存したADHD(注意欠如多動症)の症状緩和のために使用される中枢刺激薬などが、トゥレット症候群の症状を促進することがあります。また、結膜炎を生じた際の目のかゆみでまばたきをしていたのが癖になったケースや、テレビの見過ぎによる目の疲れが原因となったケースもあります。
次ページ「トゥレット症候群によく見られる合併症」

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