放課後等デイから就労支援まで。地域に根付き、障害のある人の人生をずっと支援する「B’s」の取り組み

障害のある子を育てる保護者は「子どもの将来はどうなるのだろう」とか「いつまで一緒にいられるだろう」と将来への不安を感じることも少なくありません。でも、「わが子が成長してもきっとここで、親や地域の人たちとともに暮らしていける」と思える場所があったなら、どれだけ心が軽くなるでしょう。

そんな場所をたずねて、石川県白山市へ。放課後等デイサービスや就労継続支援、高齢者デイサービスなどさまざまな施設がひとつに集まり、そこに地域の人たちが集う「B’s」の取り組みを取材しました。

子どもからお年寄りまで、地域の人が集う「ごちゃまぜの場所」。その真ん中にいるのは…?

B’sの中にはさまざまな施設があり、子どもからお年寄りまで地域の人たちが集う場所となっています

石川県白山市に、お年寄りも子どもも、障害のある人もない人も、町のみんなが集うごちゃまぜの場所があります。そして、その場所の真ん中にいるのは、障害のある人たちやお年寄りです。

「社会の中で弱者と言われる障害者や高齢者。でも、彼らを弱者にしているのは周囲の環境の方なのでは?」
という考えから、彼らを真ん中に、だれもが行きかうごちゃまぜの拠点としてつくられたのが、佛子園が運営する「B’s」です。

もともとここには、旧学校の校舎を改造してつくられた、障害がある子どもの入所施設がありました。地域との交流もほとんどなかったその場所を、地域の人たちが訪れる賑やかな町の拠点に変えたのです。

B’sは、放課後等デイサービスをはじめ、就労継続支援や生活介護の事業所、介護サービスの事業所、ショートステイ、グループホーム、保育園、クリニックなど複数の施設から成り立っています。高齢者通向けデイサービスも同じ敷地内にある、共生型の福祉施設です。誰でも利用できる温泉や飲食店なども併設しています。

洒落た雰囲気の敷地に足を踏み入れると、大きな木の遊具が目に飛び込んできます。天気のいい日には、放課後等デイサービス・B’sこどもLaboに通う子やB’s保育園の園児、そして近所の子ども達が、木の遊具のある庭で混ざって遊ぶ姿が見られるといいます。

地域の人たちが来たいと思える仕掛けが、随所に

デイサービスや就労支援の事業所だけでなく、カフェやスポーツ施設、温泉、遊具の設置された庭も。地域の人たちが「来たいと思える場所」となる仕掛けが随所に

庭を囲むようにして、放課後等デイサービス、料理教室やカフェ、フラワーショップ、リハビリ機能も併せ持つ整形外科、保育園が並びます。

建物に入ると、天然温泉、手打ちそばやここで醸造するビールを楽しめるレストラン、カラオケ、全身マッサージを受けられるリラクゼーションまで。2Fには、最新の機器がそろうスポーツ施設や住民自治室、就労継続支援・生活介護の事業所、ショートステイができる場所もあります。

庭の遊具のひとつに、大きな滑り台があります。「滑り台は下から登っちゃいけないって叱られがちでしょ。ここは規則でがんじがらめにして叱ったりしたくない。だから、叱らなくてもいいように、滑っても登ってもいいような幅の広い滑り台をつくった」という、B’sを運営する佛子園代表の速水さん。

「地域の子ども達にも来てもらいたいから、お母さんたち向けに”日陰”も意識してつくったんですよ。子ども達を遊ばせながら、お母さんたちが日陰でおしゃべりができるでしょう」。そういう時間・空間が必要だと言う、速水さん。子ども達のそばにいる保護者のニーズもくみとり、しっかりと設計に反映する。地域の人たちが来たいと思える仕掛けを随所にちりばめています。

中核となるこの施設の周りには、障害のある人が暮らすグループホーム・B’s Homesも点在しています。

遊び場のような、たまり場のような、生活の場

地域の高齢者は入浴札を裏返すことで安否確認もできる仕組み。高齢者デイサービスの部屋で過ごす人は少なく、スポーツ施設や温泉を楽しんだり、施設内で仕事をしたり。住民自治室で地域活動について話し合う場面も
Upload By 発達ナビ施設インタビュー

「高齢者向けデイサービスの施設は、通常、安全管理のために死角がないようにつくるでしょう。でも、それじゃあお年寄りは端っこに座ります。人は、死角がないと落ち着かないもんです」。
B’sでは、その死角に椅子を配置し、人と人との会話が生まれるようにしています。
ごちゃまぜの、遊び場のような、たまり場のような、生活の場がつくりたいからーー。

温泉は、町民は無料。毎月2,300人ほどが入りにきます。地域の高齢者は、温泉に入るときに自分の名前の書いてある札をうらがえします。わざわざ家まで見守りにかずとも、温泉に入りに来てもらうことで、地域の高齢者の安否確認ができる仕組みです。もちろん、放課後等デイサービスに通う子ども達も自由に温泉に入れます。

B’sの中は、さまざまな人たちが行きかい、だれが事業所スタッフなのか、誰が放課後等デイサービスに通う子なのか、ふらりと訪れた地域の人なのかわからない、「ごちゃまぜ」の場所です。

「ぼくはね、ここで働いているんだ」就労支援で働く若者が、誇らしげに話しかけてきた

就労継続支援A・B型と生活介護も施設内に。作業所だけでなく、厨房やカフェ、保育園やスポーツ施設などから、地域清掃や配食など施設の外に出ての作業まで担う。一日の終わりには、仲間と飲んで語らう姿も

「ぼくはね、作業所で働いてるんだ。こどもLabo(放課後等デイサービス)の卒業生だよ」
住民自治室を見学していると、一人の若者が話しかけてきました。

学生時代から通いなれた放課後等デイサービスのある施設で、今は仕事をしている。仕事が終わったら、ふらりとデイサービスに顔を出して、高校生の利用者たちとおしゃべりを。「ここはぼくの居場所なんだ」という誇りが、充実した表情から感じられます。

B’sを支えるのは、障害のある人たちが働いたり訓練をしたりする、就労継続支援の事業所や生活介護の事業所です。

就労継続支援の作業スペースでの業務のみでなく、蕎麦屋の厨房やハンバーガーカフェの店員、保育補助、フラワーショップ、スポーツ施設のインストラクターや受付、パソコンでの事務作業や絵本・パンフ作成など、担う業務はさまざま。

他にも、地域清掃やホテルのベッドメイク、近隣の高齢者宅への配食など施設の外に出ての作業もあります。配食では、障害のあるスタッフも高齢者のもとに食事を届けます。

自分のペースを崩さず時間に追われない、障害のあるスタッフとの会話を心待ちにしている高齢者も多いそう。おかずを分け合って食べたり、おしゃべりすることを楽しみにしているといいます。

皆いきいきと活躍しています。一日の終わりには、ビールを飲みながら仲間と語らう姿も。

ここで働くスタッフは、自宅から通うほか、近隣にある12カ所のグループホームから通う人も多くいます。皆、施設に入所するのではなく、地域で暮らしています。

B’sでは、「人は、人の役に立っていると思うとき、幸せになれる」と考えています。だから、その人が望めば、やりたい役割を果たせるようにしています。自分が根づいている場所、必要とされている場所がしっかりとある。だから、ここで働く障害のある若者たちは、こんなにも誇らしげなのでしょう。

施設の中を自由に行き来する、放課後等デイの子ども達。この地域に、あたり前に暮らし続けられるように

天然木をふんだんに使ったぬくもりのある部屋で、子ども達は好きなことをして遊んでいます。友達同士でのおやつも楽しそう
Upload By 発達ナビ施設インタビュー

午後3時を過ぎると、放課後等デイサービス・B’s こどもLaboの部屋には、次々に子どもたちが。毎日約30人の子どもたちがやってきます。月間のべ1,000人ほどが利用しているそうです。

小学生は、元気に走りまわっています。そこに、就労支援での作業を終えたOBの面々が加わり、おしゃべりに花が咲く。青春しているなぁ!人生楽しんでるなぁ!と、見ているこちら側まで、晴れやかな気持ちでいっぱいになります。

子ども達は、広い施設内のどこで過ごしてもいい

放課後等デイサービスを利用する子どもたちは、B’sの中を自由に行き来できます。マッサージやスポーツ施設も無料で利用可能。スヌーズレンルームでリラックスしたり、職員と一緒に学校の勉強をする子達も

子ども達はこどもLaboの部屋で遊んでもいいし、庭や施設内で自由に遊んでもいい。温泉に入ったり、リラクゼーションでマッサージを受けるのもOK。

B’sでは、マッサージショップからテナント出店料を取らない分、福祉利用者が来店した場合には、無料でサービスを受けられるようにしているのです。最新の機器がそろうスポーツ施設の利用も、子どもであってももちろん可能です。

スヌーズレンルームもあり、光を楽しみながらゆったりと寝転んでいたい子どもは、ここで過ごすこともできます。

将来、どんなことをしたい?自分がやりたいことを自然に見つけていける

障害のある人たちが、施設内でたくさん活躍しています。作業所はもちろん、厨房、フラワーショップ、スポーツクラブなどなど。先輩たちの姿を見ることで、自然と「将来やりたいこと」を考えることもできそうです

同じ施設の中に、就労継続や生活介護の事業所があることで、将来の見通しもつきやすいといいます。作業場での仕事、厨房の仕事、スポーツ施設のインストラクター、フラワーショップ、配食、保育園のスタッフ、清掃…放課後等デイサービスに通う子どもたちは、自然とさまざまな役割を知り、自分のやりたいことを見つけてくことができます。

そしてまた、地域の子どもや大人と日々交わり、声を掛け合うことで「ここは自分の暮らす場所」であることを、しっかりと自分の中に根づかせることができるのです。

障害のある「ある一人の人生」に寄り添おうと思ったら、支援を区切ることなんてできない

B’sを運営する、社会福祉法人佛子園代表・速水健二さん。速水さんら職員の事務スペースは住民自治室の中にあり、垣根はない。地域の人、スタッフ、子どもたちが自由に話しかけられる環境をつくっている

B’sを運営する社会福祉法人佛子園では、石川県内各地に、障害者施設・高齢者施設の機能を合わせもった施設を運営しています。そもそも、どうして社会的弱者と言われる人たちの施設をまるごと担おうと考えるようになったのでしょう?そして、縦割りともいわれる法制度のもと、どうしたらそんなことができたのでしょう?

そう問うと、代表の速水さんは、少しきょとんとした表情を見せました。「障害のある”ある一人の人生”に寄り添おうと思ったら、子ども用、成人用、高齢者用、と支援を区切ることなんてできないでしょう?」

例えば、以前は、障害のある人の福祉をある年齢になったら高齢者用の福祉に切り替えなくてはいけなかった。障害者向け施設は高齢者向け施設として運営することはできなかったので、住み慣れた施設を離れて高齢者向け施設に移らなければいけない。でもそれは負担が大きい。だから、障害者も高齢者も支えられる施設をつくったーー。

こうして佛子園は、法律で障害者も高齢者も支援が可能となる「共生型の施設」が認められるより前から、さまざまな年齢の社会的弱者と言われる人たちのための施設を運営してきました。

「福祉の制度は、使いやすいようにある程度ゆるみをもっている。それを現場が保守的に解釈して、あれもこれもできないって思いこんでることが多い。例えば、以前は障害者福祉と高齢者福祉の職員室は仕切られていなきゃいけなかった。でも何で仕切るべきかは書いていない。だからうちは”ふすま”で仕切っていた」

今は、共生型が法律でも認められるようになり、施設のどの職員も、どの施設の利用者でも見守れるようになりました。スタッフは皆インカムをつけ、全員で見守りをしていると言います。

子ども達が撮影した、友達やスタッフ、就労支援に通うOBのいきいきした表情

自分が住む町の中に、だれもが安心でき、仲間と語り合うことができる場所があること。社会的に弱者と言われる人たちを弱者のままにしておかず、それぞれが役割を持ち、必要とされていると感じられること。

言葉にするととてもシンプルだけれど、人が自分らしく幸せに生きていくために何より必要で大切なことなのではないか。「B’s」の中をいきいきと行きかう人たちの姿を目の当たりにして、そう思わずにはいられませんでした。

撮影/吉田直哉(GARAN ASSOCIATES)、LITALICO発達ナビ編集部

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