キズもほつれもあなたの作品!「さをり織り」で子どもの個性が輝く放課後デイ・SAORI Hands

誰かに決められた「正解」を辿るのではなく、あなたの感性を自由に表現すれば、それがあなただけの「作品」になる。

キズやほつれを「模様」と捉えて自由な表現ができる「さをり織り」を活動の中心とする、大阪市都島区の工房「SAORI Hands」。ここでは、大人も子どもも、障害のある人もない人も、誰もが自由に感性のままに表現をすることができます。発達が気になる子ども向けの「放課後等デイサービス」も併設。その活動の魅力をご紹介します。

撮影: ナムフォト http://numphoto.com/

 

ここは、誰もが自分の「色」を織物の上で表現できる場所

砂場でお城をつくったり、絵の具や切り絵で夢の世界をつくろうとしたり…自分の内側から湧き上がる何かを表現しようと、夢中になった子ども時代のこと、覚えていますか。

誰に教わったり指図されたりするわけでもなく、ただ自由に、心のおもむくままに手を動かしていた時間。もう記憶にも残っていないかもしれないけれど、きっと誰しも経験したことがあるはず。

いつしか大人になり、知識や技術を身に着け、仕事をしたり、家事をしたり、周りの人たちとか変わったり…そうやってできることを増やしていった私たち。

だけど、「知っていること」が増え、周りの目を気にするあまりに、いつしか「正しさ」の枠に囚われてしまい、失敗を恐れて、自由に振る舞えなくなってしまうこともしばしば。

そして、子育てや教育の場面で、ついつい子どもの自分の「正しさ」を押し付けてしまったり…。

「子どもの個性を育もう」、「子どもの自由な感性を大事にしよう」
頭ではわかっていても、なかなかそうは振る舞えない。大人になればなるほど、余計なことを考えやすくなっている気がする…

そんな悩みやもどかしさから離れて、大人も子どもも、障害のある人もない人も、自由に、感性のままに表現することができる場所があったなら。そんな願いを叶えてくれるのが、今回の記事でご紹介する放課後等デイサービス「SAORI Hands(さをりハンズ) 」です。

大阪市都島区にある「さをり織り」の工房を訪ねました。

工房に入ると、部屋一帯に広がる織り機の数々。

壁一面には色とりどり、さまざまな素材の糸が並びます。

ワンピースやバッグ、小物など、廊下に並び、販売される作品の数々は、この工房の利用者さんが自らつくったもの。形も色も、ひとつとして同じものがない一点物。これらの作品は、どれも「さをり織り」という手法で織られています。

「さをり織り」による織物活動を中心とした工房である「さをりHands」は、一般の方が利用する教室を開く一方で、児童福祉法に基づく放課後等デイサービスも併設し、発達が気になる子どもや、障害のある子どもたちを受け入れています。

ここで営まれる「さをり織り」は、いったいどういった織物なのか。開設の経緯や、障害のある子どもも受け入れる放課後等デイサービスを運営する上での想いとは。

さをり織りの創始者、故・城みさをさんの息子さんである城英二さん、孫である城哲也さんにお話をお聞きました。

キズを模様と考えたら、織物の世界が広がった

城英二さん
「さをり織りは、私の母である故・城みさをが約50年前に創始した織りの手法です。

城みさをが、さをり織りを始める前の頃の織物の考え方というのは、とにかく一本の乱れもない、機械のように精緻な織物が良いとされていました。

織り機で織っている過程で、糸が飛んだりスキマができたりすることがあるのですが、そうなってしまうともう『キズモノ』といって、二束三文でしか売れなかったんですね。

でも、みさをはその考え方に疑問を覚えたんです。

キズを、キズではなく模様と考えたらどうだろうか。太さや感覚に幅を持たせれば、織る度にに違った個性が出るし、それが機械にできない手織りの良さなのではないだろうか、と。

それが『さをり織り』のはじまりです。当時の”当たり前”と真逆のアプローチをとったさをり織りは、だんだんと専門店などからも評価を得るようになりました。

以来みさをは、この自由な『さをり織り』の楽しさを伝えようと普及活動を続けてきました。この大阪の工房をはじめ、今では全国各地にさをりの輪が広がっています。

城哲也さん
「機械に負けないぐらい精密に、一本の乱れの無いものを目指すという考え方もひとつだと思うのですが、その域には長年修行をした一握りの職人しかたどり着けないですよね。一般の人はとてもじゃないけど敷居が高くて近寄れなくなってしまう。

でも、織物をはじめ、ものづくりってもっと気軽で自由なものでいいんじゃないかと思うんです。織り機にもっと気軽にさわって 織物の楽しさを味わってほしい。そんな思いでこの工房を運営しています」

城哲也さん(左)、城英二さん(右)

障害のある人を工房に受け入れて発見したこと

SAORI Handsで織られている織物は、どれも自由奔放で個性豊か。

織り手の感性を反映するかのように、ところどころに差し色が挟まれたり、異なる素材の糸を絡ませて凹凸がつくられたり…

時に真剣な顔で集中しながら、時に隣の人と談笑しながら、利用者さん一人ひとりが、気兼ねなく自由にこの場で過ごしている様子が伝わってきます。

城哲也さん
「たとえばお料理の世界でも、必ずしもレシピ通り作ることがが一番良いのかというと、そういう訳ではないと思うんですね。

レシピをちょっとアレンジしてスパイスを変えてみたり、レシピ通りやろうと思ったけど、途中で少し焦げちゃって、でもそれはそれで美味しかったり…。

織物も、一度も間違えないことが”正解”なのではなくて、一人ひとりの発想力や、試行錯誤する過程の楽しさを大事にしてほしいと思っています」

ひとつの”正解”を持たず、一人ひとりが楽しみながら試行錯誤をすることを大切にするさをり織り。この活動を、放課後等デイサービスという形で、発達が気になる子どもや、障害のある子どもも参加できるようにしたのは、どうような思いがあってのことなのでしょうか。

城哲也さん
「この工房に限らずですが、さをり織りの輪が段々と全国に広がっていくなかで、自然と障害のある人も利用者として混ざってくるようになったんです。

最初は、障害のある人が織物をやるということに対して、僕たちもどう受け入れて、どうサポートすればよいか、正直分からない状態でした。

ですが、いざ受け入れてみると、そういう人たちの方が、自分の世界を非常に素直に表現していることに気づいたんです。

たとえば年配のおばちゃんの利用者さんの傾向として、『これ、どうやったらいいんですか、先生!』と、やっぱり最初は私わたしに”正解”を教わろうとするんです。

非常に素直だったんですね。もうなんていうか、自分の世界というのが、バッと出たんですね。

でも、障害のある人の多くは、一度織り機の使い方を覚えたら、私たちに何も聞かずにいきなり自分の作品をどわーっとつくるんです。これには驚きました」

城英二さん
「これは面白い。障害のある人にもどんどん混ざってもらった方が、さをり織りの良さを一般の人たちにも啓発できると思って、一緒に混ぜこぜでやろう、となったんです。

それがそもそものスタートですね。今では全国の工房の大体8割以上は障害のある生徒さんを受け入れていると思います」

城哲也さん
「一般利用のコースでも、そのように障害の有無にかかわらず混ぜこぜで運営しているのですが、ここSAORI Handsでは放課後等デイサービスの枠組みも利用して教室を併設し、そちらに登録いただいた方は、児童福祉の枠組みで、低負担でご利用いただけるようになっています」

「作品づくり」を通して成長していく、発達が気になる子どもたち

実際にここでさをり織りを始めた子どもたちは、どのように過ごしているのでしょうか。

城哲也さん
「最初はみんな、まず好きなようにやってもらいます。落ち着きがなかったり、行動面に特性のあるお子さんの場合だと、最初は糸も絡まったりしてハチャメチャになるんですよ。

でもね、周りの大人に教えてもらったり、自分で何度かやっていくうちに、段々とそういう子も落ち着いてくるんですよね。なんとなくこの工房での自分の居場所も見つけて、織り機に向かっているときも、ハチャメチャにならず、落ち着いて作品づくりに没頭できるようになっていくんです。

一つでも、自分の作品が完成すると、大人か子どもかとか、障害があるかどうかではなく、作家として自分が認められる経験が持てるんですね。その認められたという感覚が、だんだんとその子を成長させていくんだと思います。

ときどきスランプ陥ったりもするし、気持ちが落ち着かないときもあるので、僕らスタッフがちょっと手を添えてアドバイスすることもあるんですが、基本的には教えないスタンスです。

その子自身が自分の作品とどう向き合っていくのか、自分の感情だったり、起伏とどう向き合っていくのか。じっくり焦らず見守っていると、自然とセルフコントロールもできるようになっていきます」

たった一つでも自分にとって納得のいく「作品」をつくり、周囲に認められる経験をする。それが、子どもにとっての足場となり、気持ちや行動が安定していく上での大事な”軸”となっているようです。

さをり織りを通して自分の感性を表現し、成長していく子どもたち。

子どもの発達が気になり、SAORI Handsにわが子を通わせる保護者の方に対して、「保護者さんたちも、自分自身の感性を大事にしてほしい」と城哲也さんはいいます。

城哲也さん
「これは僕の考えですが、保護者さんが自分自身のことを好きになってくれることが、お子さんの成長にも繋がると思っています。

障害のあるお子さんの保護者さんの中には、子どものためにつきっきりでがんばっておられる方も多いのですが、それでも保護者さんとお子さんは別人格です。

保護者さんは保護者さんで楽しんで、お子さんはお子さんで楽しんでほしい。それがお子さんにとっても、自分の世界を広げていくチャンスになるんです。

心配なこともあると思いますが、ここに連れてきたときはお子さんと少し離れて、自分の休憩時間を持ってもらったり、一般利用でさをり織りを保護者さんも体験してもらったり…自分の楽しさというのを大事にしてほしいと思います」

一人ひとりの素直な感性から生まれるさをり織りの多彩な作品。

ここSAORI Handsでは、「普通になること」や「正解を探すこと」のプレッシャーから解き放たれて、誰もが自由に作品づくりに打ち込むことができます。

発達が気になるお子さんも、学校とは違う自由な空間で、自分らしく安心して過ごすことができそうです。

併設の一般利用コースもあるため、同じ空間で世代や障害の有無を超えて多様な人たちが交わるのも魅力のひとつ。保護者の方も一緒にさをり織りを楽しめるのが良いですね。

大阪市都島区の放課後等デイサービス「SAORI Hands」。発達が気になるお子さんの通所施設を探している保護者の方も、一般利用でさをり織りを体験してみたいという方も、ぜひ気軽に訪ねてみてください。

撮影: ナムフォト

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