障害者手帳とは?種類ごとの申請方法と受けられるサービスを一挙にご紹介
ライター:発達障害のキホン
手続きが煩雑な障害者手帳。申請先や申請方法が市区町村により異なり、とても複雑なことから申請をためらうことが少なくありません。しかし障害者手帳により受けられる支援やサービスが数多くあるのも事実です。東京都を例にとり、障害者手帳の申請方法やメリットを分かりやすくご紹介します。
監修: 上田征三
東京未来大学 こども心理学部 教授
東京未来大学こども心理学部教授。
知的障がい児・者施設での療育やソーシャルワーク部門設立に従事し、1998年から大学で「障がい児教育論」を専門にしている。
「障がいや病気があっても当たり前の生活ができる社会にする」というノーマライゼーション理念のもとに、インクルーブ教育に関する合理的配慮の研究を進めている。
障害者手帳とは
障害者手帳とは、障害のある人が取得することができる手帳です。障害者手帳を取得することで、障害の種類や程度に応じて様々な福祉サービスを受けることができます。一般に身体障害者手帳、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の総称のことを障害者手帳と言います。例えば18歳以下の児童の場合と19歳から64歳まで、そして65歳以上と年齢によって受付先が異なる場合があります。しかし、それぞれを個別に指して使われることもあり、呼び方には注意が必要です。
身体障害者手帳
身体障害者福祉法に基づき、身体障害のある方の自立や社会活動の参加を促し、支援することを目的として作られました。身体障害者福祉法が定める身体障害の種類・程度にあてはまり、その障害が一定以上持続する場合に限って取得できます。都道府県知事、指定都市市長、中核都市市長が交付します。
療育手帳
療育手帳制度は、法律で定められた制度ではなく、「療育手帳制度について(昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに基づいた制度です。知的障害(知的発達症)のある方が一貫した療育・援護を受けられることを目的にして作られました。児童相談所または知的障害者更生相談所で知的障害(知的発達症)であると判定された方が取得できます。都道府知事または指定都市市長が交付します。
療育手帳の呼び方は自治体によって異なります。多くの自治体は療育手帳としていますが、東京都や横浜市では”愛の手帳”、埼玉県やさいたま市では”みどりの手帳”と呼ばれています。
※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
療育手帳の呼び方は自治体によって異なります。多くの自治体は療育手帳としていますが、東京都や横浜市では”愛の手帳”、埼玉県やさいたま市では”みどりの手帳”と呼ばれています。
※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
精神障害者保健福祉手帳
精神保健福祉法に基づき、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方の社会復帰や自立を支援することを目的として作られました。精神疾患があるために生活に支障がある方が取得できます。都道府県知事又は指定都市市長が交付します。
障害者手帳の対象となる疾患や障害
障害者手帳を申請するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。身体障害、知的障害(知的発達症)、精神障害それぞれの場合の手帳の申請方法を説明していきます。
身体障害者手帳
以下の9つの障害が申請の対象となります。加えて、障害の程度や日常生活にどれほど支障をきたすかにより、7つの障害程度等級に分けられています。6級以上で手帳は交付され、様々なサービスが受けることができます。(※7級に該当する障害が2つ以上重複する場合は、6級の手帳となります。)以下の障害について、いずれも一定以上で永続することが要件とされています。
・ 視覚障害
・ 聴覚又は平衡機能の障害
・ 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
・ 肢体不自由
・ 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
・ ぼうこう又は直腸の機能の障害
・ 小腸の機能の障害
・ ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
・ 肝臓の機能の障害
療育手帳
児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害(知的発達症)であると判定された場合、療育手帳は交付されます。
18歳未満の児童は、児童相談所にて、18歳以上の人は知的障害者更生相談所などで判定されます 。障害の程度はIQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などを総合的に判断して認定されます。ただし、認定区分や基準は自治体により若干異なります。知能や生活習慣、問題行動などを総合的に判断します。東京都の場合は1度(最重度)2度(重度)3度(中度)4度(軽度)と表記します。
18歳未満の児童は、児童相談所にて、18歳以上の人は知的障害者更生相談所などで判定されます 。障害の程度はIQ(知能検査などの発達検査の結果でわかる知能指数のこと)や日常生活動作(身辺処理、移動、コミュニケーションなどの能力のこと)などを総合的に判断して認定されます。ただし、認定区分や基準は自治体により若干異なります。知能や生活習慣、問題行動などを総合的に判断します。東京都の場合は1度(最重度)2度(重度)3度(中度)4度(軽度)と表記します。
障害の程度及び判定基準
重度(A)とそれ以外(B)に区分
・重度(A)の基準
① 知能指数が概ね35以下であって、次のいずれかに該当する者
食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする。
異食、興奮などの問題行動を有する。
② 知能指数が概ね50以下であって、盲、ろうあ、肢体不自由等を有する者
・それ以外(B)の基準
重度(A)のもの以外
引用:療育手帳制度の概要|厚生労働省
以上のように国は知的障害(知的発達症)に関する程度及び判定基準を「重度(A)」と「それ以外(B)」としていますが、これは国による技術的助言(ガイドライン)にすぎず、実際の運用のために障害の程度を4段階に分けているところがほとんどです。詳しくは、各都道府県のホームページをご覧ください。
療育手帳とは?受けられるサービスや他の障害者手帳との違いなど【行政書士監修】
精神障害者保健福祉手帳
精神疾患(てんかん、発達障害を含む)により、長い間日常生活または社会生活への制約がある方が申請することができます。以下の精神疾患などが一例として挙げられます。
・統合失調症
・うつ病、そううつ病などの気分障害
・てんかん
・薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
・高次脳機能障害
・発達障害(自閉症、学習障害、注意欠如多動性障害等)
・その他の精神疾患(ストレス関連障害など)
加えて、障害の程度により3つの等級に区別します。
・統合失調症
・うつ病、そううつ病などの気分障害
・てんかん
・薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
・高次脳機能障害
・発達障害(自閉症、学習障害、注意欠如多動性障害等)
・その他の精神疾患(ストレス関連障害など)
加えて、障害の程度により3つの等級に区別します。
精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断し、次の3等級とする。
・1級:精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
・2級:精神障害であって、日常生活が著しく制限を受けるか又は日常生活に
著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
・3級:精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は
日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
障害者手帳の申請
指定された医師による診断書が必要
それぞれの申請をするにあたり、指定された医師による診断書を提出する必要があります。病院により診断書の料金は異なります。
ここでは、日本赤十字社医療センターで診断書をもらう場合の料金をご紹介します。日本赤十字社医療センターでは、年金関係文書、身体・精神身体障害者関係文書に10,800円がかかります。診断書の料金が高額で、申請する上で金銭的なハードルになることも少なくありません。ですが、自治体によっては診断書の料金に助成をしているところもありますので、詳しくは、お住いの自治体に問い合わせてください。
診断書を提出してから障害者手帳を取得するまでの流れはどのようなものなのでしょうか。以下では、東京都を一例に、申請の流れをご説明します。
ここでは、日本赤十字社医療センターで診断書をもらう場合の料金をご紹介します。日本赤十字社医療センターでは、年金関係文書、身体・精神身体障害者関係文書に10,800円がかかります。診断書の料金が高額で、申請する上で金銭的なハードルになることも少なくありません。ですが、自治体によっては診断書の料金に助成をしているところもありますので、詳しくは、お住いの自治体に問い合わせてください。
診断書を提出してから障害者手帳を取得するまでの流れはどのようなものなのでしょうか。以下では、東京都を一例に、申請の流れをご説明します。
身体障害者手帳
申請から約1ヶ月程度で発行されます。ただし、医師への確認や等級認定に審査が必要な場合は、さらに時間がかかることがあります。
ステップ1:
区市町村の障害福祉担当窓口の方に申請したい旨を伝え、身体障害者診断書・意見書の書式をもらいます。これは身体障害者福祉法第15条の指定をうけている医師のみが作成することができます。区市町村の障害福祉担当窓口に相談するか、かかりつけの医者に確認しましょう。
区市町村の障害福祉担当窓口の方に申請したい旨を伝え、身体障害者診断書・意見書の書式をもらいます。これは身体障害者福祉法第15条の指定をうけている医師のみが作成することができます。区市町村の障害福祉担当窓口に相談するか、かかりつけの医者に確認しましょう。
ステップ2:
身体障害者診断書・意見書の作成にあたり、問診や検査などを行います。
身体障害者診断書・意見書の作成にあたり、問診や検査などを行います。
ステップ3:
医師から診断書・意見書を受け取ったら、再び役所の相談窓口に行き、必要な書類を揃えて提出します。その際、以下の点に注意してください。
・身体障害者診断書・意見書 は発行から1年以内のものである必要があります
・交付申請書は区市町村の障害福祉担当窓口で入手可です。
・申請する方の写真は縦4cm×横3cm、上半身で脱帽で撮影してください。
15歳未満の場合は保護者、15歳以上は本人が申請します。
医師から診断書・意見書を受け取ったら、再び役所の相談窓口に行き、必要な書類を揃えて提出します。その際、以下の点に注意してください。
・身体障害者診断書・意見書 は発行から1年以内のものである必要があります
・交付申請書は区市町村の障害福祉担当窓口で入手可です。
・申請する方の写真は縦4cm×横3cm、上半身で脱帽で撮影してください。
15歳未満の場合は保護者、15歳以上は本人が申請します。
また、平成28年1月よりマイナンバー制度が開始したため、個人番号(マイナンバー)や身元確認のできる書類が必要となりました。身体障害者手帳には個人番号(マイナンバー)は表示されません。
身体障害の種類によっては治療などにより障害の程度が変わることがあるので、障害再認定制度があります。障害再認定制度とは期日までに身体障害者診断書・意見書を提出することで障害程度を改めて診査し、重大な変化があると判断される場合には持っている手帳と引換えに、新しい手帳が交付されることをいいます。東京都では平成14年度から実施していて、該当者には身体障害者手帳が交付される時などに通知されます。
障害者再認定制度に該当しない方でも、障害の程度が変化したり、新たに障害が加わる場合には、等級変更を行う必要があります。また障害がなくなった場合は返還の手続きをする必要があります。
障害者再認定制度に該当しない方でも、障害の程度が変化したり、新たに障害が加わる場合には、等級変更を行う必要があります。また障害がなくなった場合は返還の手続きをする必要があります。
療育手帳
療育手帳は判定から約1ヶ月後に郵送などで通知されます。
ステップ1:
まず区市町村の障害福祉担当窓口に相談します。
まず区市町村の障害福祉担当窓口に相談します。
ステップ2:
知的障害(知的発達症)の判定を受けるための予約を取ります。18歳未満の場合は児童相談所で、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所での判定となります。東京都の場合、18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は東京都心身障害者福祉センター又は多摩支所での判定となります。
また何年かに一度、年齢更新の判定を受ける必要があります。これは知的障害(知的発達症)が障害の程度が変化しやすいことによるものです。東京都の場合、年齢更新の判定を3歳、6歳、12歳に行います。療育手帳(愛の手帳)を確認し、余裕を持って更新しましょう。
知的障害(知的発達症)の判定を受けるための予約を取ります。18歳未満の場合は児童相談所で、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所での判定となります。東京都の場合、18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は東京都心身障害者福祉センター又は多摩支所での判定となります。
また何年かに一度、年齢更新の判定を受ける必要があります。これは知的障害(知的発達症)が障害の程度が変化しやすいことによるものです。東京都の場合、年齢更新の判定を3歳、6歳、12歳に行います。療育手帳(愛の手帳)を確認し、余裕を持って更新しましょう。
判定時間は、おおむね次の通りです。
1.初めて手帳を取得する方・程度の見直しの方は2時間程度
2.更新の方は1時間半程度
幼児・児童・成人等、年齢によって判定時間が多少異なります。
ステップ3:
必要な書類を揃えて面接・聞き取り調査を中心とした判定を行います。
写真は縦4cm×横3cm。このサイズに正面を向いた顔がはっきり写っているものであれば、スナップ写真でも利用可能です。その場合は切らずにお持ちください。
判定には本人に加え、家族の方などご本人の小さい頃の様子を説明できる方が同行する必要があります。該当するような人がいない場合は当時の情報を集め、福祉事務所等の担当者が判定の立ち会う場合があります。
18歳未満の判定項目は、年齢により異なることがあります。また18歳以上の場合は手帳を取得することに同意している必要があります。十分話し合ったうえで判定に臨みましょう。
3歳、6歳、12歳、18歳になる以前、もしくは当該年齢時に知的障害(知的発達症)の程度に大きな変化がある場合は、更新の申請をする必要があります。また、18歳以上の方(判定日に誕生日を迎える方も含む)は児童の手帳から成人の手帳へ更新を行う必要があります。それ以降でも、障害の程度が変わった場合は、程度変更をすることができます。
必要な書類を揃えて面接・聞き取り調査を中心とした判定を行います。
写真は縦4cm×横3cm。このサイズに正面を向いた顔がはっきり写っているものであれば、スナップ写真でも利用可能です。その場合は切らずにお持ちください。
判定には本人に加え、家族の方などご本人の小さい頃の様子を説明できる方が同行する必要があります。該当するような人がいない場合は当時の情報を集め、福祉事務所等の担当者が判定の立ち会う場合があります。
18歳未満の判定項目は、年齢により異なることがあります。また18歳以上の場合は手帳を取得することに同意している必要があります。十分話し合ったうえで判定に臨みましょう。
3歳、6歳、12歳、18歳になる以前、もしくは当該年齢時に知的障害(知的発達症)の程度に大きな変化がある場合は、更新の申請をする必要があります。また、18歳以上の方(判定日に誕生日を迎える方も含む)は児童の手帳から成人の手帳へ更新を行う必要があります。それ以降でも、障害の程度が変わった場合は、程度変更をすることができます。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は病院で初めて診察してから6ヶ月を経過して、初めて申請することができます。病名変更や転院がある場合には医師にご相談ください。提出された書類を審査し、2ヶ月程度で発行されます。
ステップ1:
区市町村の障害福祉担当窓口の方に申請したい旨を伝え、説明を受けて必要書類の様式をもらいます。
区市町村の障害福祉担当窓口の方に申請したい旨を伝え、説明を受けて必要書類の様式をもらいます。
ステップ2:
申請に必要な書類を揃えて役所の窓口に行き、申請します。
必要書類のひとつ、障害者手帳用診断書には2つの条件があるため注意してください。
・医療機関での初診日から6ヶ月以降に作成されていること
・作成日が申請日から3ヶ月以内のもの
年金証書の写しは精神障害による障害年金もしくは特別障害給付金を受給している
場合に限ります
本人の写真は縦4cm×横3cm、脱帽・上半身で撮影します。申請した日から1年以内に撮影したものに限ります。裏面には氏名・生年月日を記入する必要があります。
平成28年1月よりマイナンバー制度が開始したため、個人番号(マイナンバー)や身元確認のできる書類が必要となりました。身体障害者手帳には個人番号(マイナンバー)は表示されません。
申請に必要な書類を揃えて役所の窓口に行き、申請します。
必要書類のひとつ、障害者手帳用診断書には2つの条件があるため注意してください。
・医療機関での初診日から6ヶ月以降に作成されていること
・作成日が申請日から3ヶ月以内のもの
年金証書の写しは精神障害による障害年金もしくは特別障害給付金を受給している
場合に限ります
本人の写真は縦4cm×横3cm、脱帽・上半身で撮影します。申請した日から1年以内に撮影したものに限ります。裏面には氏名・生年月日を記入する必要があります。
平成28年1月よりマイナンバー制度が開始したため、個人番号(マイナンバー)や身元確認のできる書類が必要となりました。身体障害者手帳には個人番号(マイナンバー)は表示されません。
手帳は2年ごとに更新する必要があり、有効期限の3ヶ月前から申請できます。その際には必要書類と現在交付されている手帳の写しが必要となります。また有効期限内に精神障害の状態が悪化した場合には、障害等級の変更を申請することができます。