ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?支援の対象、方法、気をつけたいポイントについて(2ページ目)

このように、SSTはさまざまな手段を通して実践をすることができます。次はさらに具体的なSSTの例について日常生活と対人関係とに分けてご紹介します。

日常で取り入れられるソーシャルスキルトレーニング(SST)

日常で取り入れられるソーシャルスキルトレーニング(SST)

あいさつをする

あいさつは、人とのコミュニケーションには欠かせないものです。ところが子どもの中にはどこでどのようにあいさつをすればよいかが分からなかったり、あいさつの言葉を口に出すのが恥ずかしかったりと、さまざまな理由からあいさつができない子どもがいます。

適切なタイミングで適切なあいさつの言葉を発することができるようになるためには、「大人が積極的にあいさつをする」こと、「あいさつを強要しないように気をつけること」が大切です。「あいさつをすることは気持ちがよいこと」「相手の気持ちが嬉しくなること」ということを子どもが肌で感じられるような環境を作っていくとよいでしょう。

順番を守る

公園の遊具に乗るとき、バスに乗るとき、お店に並ぶときなどに、つい並んでいる人の間に入ってしまったり、「一番」じゃないといやだと駄々をこねてしまったりする子どもがいます。一番であろうとすること自体は決して悪いことではありません。しかし順番を守ることができないと、そこからけんかに発展してしまったり、相手から嫌な印象を持たれてしまったりとトラブルになってしまう可能性があります。

そうならないために大人ができることは、「日頃から自分が順番を守り、その姿を子どもに見せる」、「子どもが順番を守れたときに褒める」、「一番じゃなくても大丈夫だということを伝える」などです。順番を守れなかったからといって叱るのではなく、自然に順番を守れるようになるために日々の生活から習慣を身につけていくことが重要です。

対人関係におけるソーシャルスキルトレーニング(SST)

相手の気持ちを察する

子どもの中には、相手の気持ちを理解することが苦手な子どもがいます。相手の表情から気持ちを読み取ることが苦手だったり、共感するということが苦手だったりと理由はさまざまですが、時にはそれが人とのかかわりにおいてネガティブに働いてしまうことがあります。

そんな子どもがうまく相手の気持ちを読み取れるようになるために、多くのSSTの方法が考えられています。たとえばゲームを用いたもの、ロールプレイを用いたもの、絵カードを用いたものなどです。「嫌なことをされたとき自分はどう思うか、その嫌なことを実際にされている相手はどんな気持ちか」を考えたり、今相手が考えていることを意識的に想像したりする訓練をすることで、実際の生活でも自然と相手の気持ちを理解できるようにサポートをします。

会話をする

上記に挙げたように、相手の気持ちを理解することが難しい場合などは、相手を傷つける言葉を言ってしまったり、相手にとって興味のない話をひたすら話し続けてしまったりという言動につながってしまうことがあります。相手の気持ちをくみ取り、適切な話題・話す時間・使う言葉を選んで進めていく会話は、多くのステップを含んだソーシャルスキルなのです。

多くの要素を含む会話だからこそ、その訓練は「決められた質問(自分の名前など)に答える練習をする」というものから「「シナリオに従って言葉のキャッチボールの練習をする」というもの、「おしゃべりタイムを設けて振り返りを行う」というものなど多岐にわたります。

ソーシャルスキルトレーニング(SST)で大切にしたいポイント

多くの所でさまざまな指導者によって実践されているSSTですが、SSTを行うためには気をつけたいポイントがあります。ここではそのうちの2つをご紹介します。

ほめる

社会性を身につけている大人から見ると、社会のルールに従うことのできていない子どもの行動は目につくものとしてとらえられるかもしれません。しかし、子どもにとって叱られたり注意をされたりすることは嬉しいことではありません。それどころか、叱るという行為は社会性を鍛えるのに逆効果の場合もあるのです。

できないことを叱るのではなく、できたことを認めて褒めるということが子どもが楽しみながら自然に社会性を身につけていくのに重要なポイントなのです。

スモールステップを踏んでいく

冒頭でも述べたようにSSTを必要とする子は、生まれてから育っていく中で自ら周りの人を観察して、社会性を身につけていくのが苦手な子どもです。そのため、一般的に当たり前だと思われる会話や行動・思考が自然にできないケースが多く見られます。

同時に、その子がそれまで積み上げてきた「当たり前」も存在します。その当たり前を変えるのには長い時間と、多くの小さなステップを踏まなければなりません。指導する側に立つ人は、長い目で物事をとらえ、ゆっくりと成長を見守っていく姿勢が必要なのかもしれません。

まとめ

今回は子どもの社会性を訓練するSSTについてご紹介しました。SSTには多くのトレーニング方法があるため、今回紹介したものはごく一部です。

しかしSST全体において言えるのは、一つの目標に対して多くのステップを作り、一歩一歩進んでいくことが大切だということです。上で少しふれたように、たとえば「会話が苦手」という一つのケースの中には、「相手の気持ちを読み取ることができない」「相手の言っていることの意図が汲み取れない」「自分がどんな言葉を使って返答したらよいかが分からない」というような多くの要素が含まれています。

最初から「会話がうまくなる」という急激な変化を求めるのではなく、苦手なことを一つひとつ解消しながら本人の感じる「生きづらさ」に対応していけると良いでしょう。
高機能自閉症・アスペルガー障害・ADHD・LDの子のSSTの進め方―特別支援教育のためのソーシャルスキルトレーニング(SST)
田中 和代・岩佐 亜紀
黎明書房
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