ABA療育の基本的な考え方

個と環境へのアプローチ

ABAの基本的な考え方として、対象の個人だけでなく、環境と個人のお互いの作用が行動を行動や感情を形づくると考えます。そのため、個人だけではなく、その周囲の環境(モノ、人)にもアプローチします。例えば、感覚刺激に敏感な子が、学習に集中できない場合、部屋の色や音を減らしたり、周囲の人も会話や行動を変えることで、望ましい行動を引き出します。

問題行動を減らす、無くすためには、

①原因を理解/特定すること
②適切な手法を知ること
③その手法を実施し続けること


が必要になります。ABAではそれぞれの段階において、効果的な手法があります。それぞれ見ていきましょう。

問題行動の原因を理解

問題行動のほとんどは、以下の4つの強化子、言い換えると「子どもの望み」が原因となっていることが研究でわかってきています。
 
1.要求の実現
おもちゃが欲しい、何かをやりたい、など本人の要求が問題行動の原因となっていることがあります。例えば、おもちゃ売り場で、かんしゃくを起こし、おもちゃを買ってもらえた(要求が実現した)場合、今後そのかんしゃくの行動が増えることが予想されます。

2.回避と阻止
本人がいやな状態からその場を避けることができた時、不適切な方法でも回避できたという経験が問題行動の原因となります。例えば、友達に手を握られていて、手を握られるのが不快で、友達の手を噛むと友達が離れた。この時、「噛む」という行動で不快を回避できたため、嫌なことから避けるために同じ行動を繰り返すことになります。この行動は「回避」を原因とする問題行動にあたります。

3.注目要求の実現
相手や周囲、家族や保育士の先生などの注目が欲しいという欲求が問題行動の原因になっている場合があります。例えば、友達を急に叩いた結果、先生の注目が得られた場合、その「注目」が、問題行動を繰り返す要因となる可能性があります。

4.自動強化(感覚刺激)
問題行動が生み出す刺激自体が、快を生み出して、問題行動の循環に陥っている場合があります。手をひらひらさせたり、ぐるぐるまわる、つばを出したり入れたりするなどは、退屈や不安がまぎれるという感覚刺激自体が行動を繰り返させる原因になっている場合があります。

ABC分析

問題行動の原因は、大きく4つに分けられることを説明しましたが、実際の場面ではどうやって判断したらよいのでしょうか?ABAでは、行動を理解する際に、「ABCフレーム」で行動を見ることから始まります。

「ABCフレーム」の「ABC」とはそれぞれ「A」はAntecedent = 先行事象(行動の前の状況)、「B」はBehavior = 行動、「C」はConsequence = 後続事象(行動の結果)を表しています。例えば、おもちゃ売り場でおもちゃを買ってもらえずに泣く子どもの行動をABCフレームで分析してみましょう。
おもちゃ売り場で泣く子どもの行動をABCフレームで分析した図。おもちゃ売り場[A:先行現象]+(子どもの行動)泣く[B:行動]→おもちゃを買ってもらえる(お母さんがおもちゃを買う)[C:後続現象]
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この例の場合、Aのおもちゃ売り場という前の条件において、Bの子どもが泣く、という行動を起こすことによって、Cのおもちゃを買ってもらえるという後の事象につながっていることが分かります。

Bの行動を行うことにより、Cのおもちゃをもらうという結果につながったため、今後、この子は泣くという行動が増加する可能性があります。おもちゃを手に入れることにより前述の「要求の実現」により行動が「強化」されるためです。

強化

人は起こした行動に対する結果が望ましいものだと、以降もその行動を繰り返しやすくなります。この望ましい結果(ほうび)を与えてその行動を増やすことを「強化」と言います、またそのほうびのことを「強化子」と言います。お菓子や、おもちゃ、褒め言葉など本人が喜ぶものはどのようなものでも強化子になります。
「強化」の一連の流れを、お手伝いの後[行動]+ほめ言葉をもらい[ほうび]→よくお手伝いするようになる[行動の増加]という例あげて説明した図
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消去

人は行動のあとにほうびとなる出来事が得られないと、その行動が減少していきます。これが「消去」です。
「消去」の一連の流れを、お手伝いの後[行動]+ほめられず[ほうびなし]→お手伝いしなくなる[行動の減少]という例あげて説明した図
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行動の直後に不快な出来事があると、以後その行動は減少します。
「罰」の一連の流れを、お手伝いの後[行動]+叱られて[不快な出来事]→お手伝いしなくなる[行動の減少]という例あげて説明した図
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罰には積極的罰と消極的罰があります。きつく叱ったり、叩いたりするような積極的罰は避け、ほうび(快)を取り去るのが、消極的罰です。
例、テレビを消す、ゲームを預かる、など

ABAの療育では、基本的には罰の手続きは用いません。なぜなら、罰を与える人がいない時にその行動が増えたり、他の適切でない行動が増える可能性もあるからです。このようなときは、環境調整などによって対応していくほうがよいと言われています。消極的罰を用いるのは、子どもがまだ幼く、困った行動が起きてから期間がたっていない場合などに限ったほうがいいといわれています(後で説明する消去バースト等の理由により)。

おもちゃ売り場での対応例

おもちゃ売り場で泣いてしまう子を消極的罰で対応する場合は、どうなるでしょうか。
おもちゃ売り場で泣く子どもの行動をABCフレームで分析した図。
おもちゃ売り場[A:先行現象]+(子どもの行動)泣く[B:行動]→おもちゃを買ってもらえる(お母さんがおもちゃを買う)[C:後続現象]
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■消去と強化の組み合わせ
問題行動に対応するには、①問題行動を減らしつつ、同時に②望ましい行動を増やすことが重要です。そのため、強化と消去の両方を使いながら、望ましい行動に導きます。
問題行動への対応は、「問題行動を減らし」かつ「望ましい行動を増やす」ことであることを説明する図
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■消去で対応する(問題行動を減らす)
消去は、「求めているものを与えない、もしくは与えられない」という状況を作ることですので、この場合、おもちゃを買わずに毅然と無視し「おもちゃが手に入る」という強化子をなくします。これまで「泣く」→「おもちゃが手に入る」→「泣く」ということに循環になっているので、これを阻止します。
おもちゃ売り場で泣くことでおもちゃを買ってもらえる循環から、おもちゃ売り場で泣いてもおもちゃが手に入らない循環に変えることをABCフレームで説明した図
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消去を行う際には、一時的にその行動が悪化する「消去バースト」(泣く強さが強くなる、暴れるようになるなど)が発生する可能性がありますが、これも反応せずにいるといずれ消去バーストは収まるので、人のいない静かな場所に連れて行き、泣きやむで待ちます。

時間がかかる場合もありますが、要求に反応してしまうと、逆効果なので一貫した態度で対応します。(下図参照)
消去バーストが起きた時に完全に無視し続けることができないと、その困った行動を強化してしまうことがあるからです。例えば、おもちゃ売り場でおもちゃを買ってもらえず大泣きしても無視しているとします。そこで、棚を倒したり、商品を棚から落として傷つけるなどして無視し続けることが難しくなり対応してしまうと、より派手で影響が大きい行動をすれば保護者に無視されないと学びます。そうすると、次回以降は最初から影響が大きい行動をするようになってしまうでしょう。

「おもちゃ売り場に行かない」「キッズコーナーで遊ぶ」などの環境調整で対応するほうが無理なく困った行動を防ぐことができると考えられます。
問題行動を縦軸に期間を横軸にとって、困った行動に対して消去を行った場合[A]と反応を続けた場合[B]のそれぞれの行動の変容を表した図。
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■強化で対応する(望ましい行動を増やす)
問題行動を減らすことと同時に、望ましい行動ができた時に褒めたり、ごほうびを与えることで強化を行います。強化には、様々な方法がありますが、今回は「別の適切な行動を強化する」という方法を例に挙げます。「泣かずに3回お買い物できたらお菓子を買ってもらえる」というルールを設定し、事前に子どもと合意をとります。
おもちゃ売り場での子どもの行動をABCフレームで分析した図。おもちゃ売り場[A:先行現象]+(子どもの行動)泣かずに買い物をする[B:行動]→ほめてもらえる・ごほうびがもらえる[C:後続現象]
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このルールを子どもにわかりやすく伝えるために、ノートやメモ帳を使って、お買い物が終わるたびにシールが貯まる仕組みを作りましょう。このように、ポイントが貯まることでほうびがもらえる仕組みのことを「トークンシステム」と言います。

シールが一定数たまったら、お菓子が買ってもらえるなどのご褒美(強化子)を用意し、実際にルールを守って買い物ができたときには褒めてあげながらシールを貼り、揃った時はお菓子をあげるようにします。
子どもの特性はひとりひとり異なること、また問題行動の種類や状況は様々であるため、対応の方法は異なりますが、これらのABAの手法により、どのような原因があるのか、どう行動を起こすべきなのかがより具体的になります。

ABA療育のサービスを利用するにはどうしたらいいの?

ABAの理論に基づいた療育サービスを提供している団体、放課後等デイサービス、塾などが近年増加しています。専門性の高いスタッフによる通所療育、出張療育といった子ども向けのサービスだけでなく、親向けのセミナー、ペアレント・トレーニングなども実施されています。

団体ごとの指導方針や提供サービスの内容、金額や居住地などを確認しながら、お子さまとご自分に合う療育サービスを探してみてください。

ABA療育は家庭できる?

ここでは、ABAの考え方や実践を学ぶことができる親向けの書籍を紹介します。ただし、療育を一人だけで行うのは、技術的、労力的に負荷がかかりやすいため、なるべく専門家や支援団体と相談・連携しながら行うようにしましょう。

本で学ぶ

『家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46』
ABA療育プログラムのシリーズ、「困った行動」「生活・自立」「生活・学習」「コミュニケーション課題」などのテーマがあります。子ども一人ひとりに合わせた療育プログラムのつくりかたについても掲載。そのためカバー範囲は広く、イラストは抑えめで情報量が多いです。ABAの仕組みについても詳しく学ぶことができ、具体例が豊富。しっかりと勉強したい方向け。
家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46
井上雅彦
学研プラス
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『発達障害のある子の「行動問題」解決ケーススタディ―やさしく学べる応用行動分析』
問題行動は、その理由に対応した支援の方法を見つけることが「行動問題」の根本的な解決につながります。応用行動分析学のアプローチではどのように解決しようと考えるのか――この本では、応用行動分析の理論と技術を、豊富な事例をとおしてやさしく学ぶことができます。
発達障害のある子の「行動問題」解決ケーススタディ―やさしく学べる応用行動分析
小笠原 恵
中央法規出版
Amazonで詳しく見る
『保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック―子どもの行動を「ありのまま観る」ために』
応用行動分析の入門的な本。困った行動にどのように対応したらいいか分からない保護者向けの、読みやすい本。子どもの気になるところや問題行動ばかりでなく、よいところ、できているところに目を向けられるようにと書かれています。
保護者と先生のための応用行動分析入門ハンドブック―子どもの行動を「ありのまま観る」ために
三田地 真実 (著), 岡村 章司 (著), 井上 雅彦 (監修)
金剛出版
Amazonで詳しく見る
『応用行動分析学から学ぶ 子ども観察力&支援力養成ガイド』
応用行動分析学(ABA)の立場から、その子に合った支援の方法の見つけ方を解説する本です。子どもの観察のしかたや記録のとり方、その結果をどう支援につなげるかなど、実用的な内容となっているので、学校などの支援現場でもすぐに活用できそうです。
応用行動分析学から学ぶ 子ども観察力&支援力養成ガイド
平澤紀子
学研プラス
Amazonで詳しく見る

特別支援教育で活用するABA療育の本

特別支援教育におけるABA療育の活用方法について紹介された本です。
できる!をのばす行動と学習の支援―応用行動分析によるポジティブ思考の特別支援教育
山本 淳一 (著), 池田 聡子 (著)
日本標準
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応用行動分析で特別支援教育が変わる―子どもへの指導方略を見つける方程式 (シリーズ教室で行う特別支援教育)
山本 淳一 (編集), 池田 聡子 (編集)
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