放課後デイサービスに勤務していた時のこと。冗談が大好きでいつもおどけてみんなを楽しませるY君。ある日、3人のお子さまと職員でお出かけしようということになりました。ニコニコして帰ってきたY君。楽しかった? と声をかけると
手で四角を作って「ば、ば、ば」。「ばす?」走る真似をしているので「走って追いかけたの?」両手を広げて待ってーーというポーズ。「待ってー!って追いかけたの?待ってくれたの?」頭を抱えて残念ーー「え~!待ってくれなかったんだ、残念だったね。」そして大笑い。残念だったけど楽しかったね。よかったね。
Y君は言葉を持ちません。でも身振り手振りで何があったのか、どんな風に思ったのか手に取るようにわかります。
以前は、私も言葉によるコミュニケーションがベストだと物の名前を言えるように練習したり、声を出す練習をしたりしていました。練習して、いくつかの言葉を話せるようになりましたが、質問するとうつむいてしょんぼりすることが増えていきました。
言葉を持ったとしてもそれを使いこなし、コミュニケーションの道具として活用できなければもったいないね。彼が本当に伝えたい、共感してほしい、そう思っているなら、彼の一番心地よい方法で伝えればいいんじゃないかな。彼にかかわっているすべての大人で協力して言葉以外の方法を探すことになりました。
今は彼が編み出した方法でいろんなことを伝えています。それで伝わらない時もあきらめずに絵カードを持ってきたり絵を書いたりして伝えます。
最近になって文字に興味を持ち始めたY君。文字カードを1枚1枚ゆっくりと並べてお名前が完成!友達の名前、先生の名前、大好きな乗り物、少しずつ作れる言葉が増えていきます。
伝えたい思いがあふれる。伝えたことを喜び、共感してくれる人がいる。だからもっと伝えたくなる。もっといろんな方法を、もっといろんな道具を使ってみたくなる。さらに意欲が出て、さらに思い通りに伝えられるようになる。人と係わることへの意欲がそだつことこそ、子どもが自立して世の中に出ていくために本当に必要な力なんですね。Y君はY君らしく生き生きと生きています。
すべての子どもが生き生きできる社会にしていきたいですね。
伝える意欲
小さな芽
18/11/10 15:04