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「できない」の正体は、見えない感覚にあった

誰にでも、なぜかうまくできないことがある。それは何度挑戦してもつまずいてしまう計算問題かもしれないし、人前でうまく話せないことかもしれない。私の場合は、ごく単純な「片足立ち」だった。ただバランスをとるだけのシンプルな動きなのに、なぜか身体が言うことを聞かない。その「なぜ」を深く見つめていくと、私たちは自分の身体が持つ、目に見えない精巧なシステムに気づかされる。そして、できないことの裏に隠された、上達への意外な近道を発見するのだ。


「片足立ちが苦手なんです」。そう打ち明けると、多くの人は不思議そうな顔をするかもしれません。ですが、これは単なる運動神経の問題ではないのです。実は、私たちの身体の中で、非常に高度な感覚が連携し合って初めて成り立つ、複雑な行為なのです。

運動の世界では「感覚統合」という言葉がよく使われます。特に片足立ちのようなバランスが求められる動きには、「体性感覚」「前庭感覚」「固有感覚」という、目には見えない3つの感覚が深く関わっています。これらがうまく連動しないと、私たちはふらついてしまう。大人は無意識にこれらの感覚を使いこなしているため、子どもたちがなぜできないのか、その困り感に気づきにくいことがあります。

まずは、この「できない」という感覚を、ご自身の身体で体験してみましょう。

壁のすぐ横に立ち、身体の片側(肩から足まで)をぴったりと壁につけてみてください。その状態で、壁から遠い方の足を上げて片足立ちを試みます。どうでしょうか。ほとんどの人が、バランスをとれずにすぐ足をついてしまうはずです。しかし、壁から離れて同じことをすれば、案外簡単にできることに気づくでしょう。

答えは単純です。壁に身体が固定されることで、「体重移動」ができなくなるからです。

この小さな実験が教えてくれるのは、私たちが片足立ちをするとき、実は無意識のうちに身体をわずかに揺らし、重心を軸足の上へと巧みに移動させているという事実です。つまり、片足立ちが苦手なのは、バランス感覚が悪いからではなく、この繊細な体重移動を身体がまだ学習していないだけなのです。

では、どうすればできるようになるのでしょうか。答えは、その「体重移動」を意識的に練習することにあります。

まずはまっすぐに立ち、そこから身体を左右にゆっくりと揺らしてみましょう。「おっとっと」と声に出しながら、遊び感覚で重心が移動するのを感じてみてください。次に、重心を少しずつ片方の足にずらしていく練習をします。身体が軸となる足の位置をイメージできるようになったら、ゆっくりともう片方の足を浮かせてみる。すると、驚くほど簡単に片足で立てるようになっているはずです。

できないことには、必ず理由があります。そして、その理由は分解し、一つひとつ乗り越えることができるのです。

これは片足立ちに限りません。私たちが抱える様々な「苦手」も、その構造を理解し、正しいステップを踏めば、楽しみながら克服していくことができます。できない自分を責めるのではなく、なぜできないのかを観察し、身体で理解する。そのプロセス自体が、私たちに新しい身体感覚と、自分自身への深い理解をもたらしてくれるのです。

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