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伸びしろしかない私たちへ:ラフ大療育の一日の流れ

人が変わっていく瞬間は、いつも大きな出来事の中にあるわけではありません。朝、体を動かすこと。呼吸を整えること。自分の考えを言葉にして、誰かの言葉にも耳を傾けること。そうした小さな時間の積み重ねが、気づけば「私はどこへ進みたいのか」という問いに、少しずつ輪郭を与えてくれます。 ラフ大の一日:体を整え、心を整え、未来へつなげる時間 ラフ大のトレーニングでは、日々の流れの中に、いくつもの大切な目的があります。 ただ技術を身につけるだけではなく、自分の状態を整えること。人との関わり方を学ぶこと。そして、自分がどんな道に進みたいのかを、支援員さんと一緒に少しずつ確認していくこと。 今回は、ラフ大の一日の流れの中でも、実際のサービス提供時間についてご紹介します。 ラフ大のサービス提供時間は、基本的に月曜日から金曜日まで。時間は朝10時から15時までです。 この5時間の中で、身体を動かし、頭を使い、人と関わり、自分自身を振り返る。そうしたカリキュラムを一つひとつ行っていきます。 まず10時に来たら、最初の1時間はしっかり体を動かします。 体を動かして、息をして。ここで大事なのは、ただ運動をすることだけではありません。身体を起こし、呼吸を整え、自律神経を少しずつ整えていくことです。 一日の最初に身体を整えると、その後の時間の入り方が変わります。 頭だけで頑張ろうとすると、どうしても疲れてしまうことがあります。でも、身体が少しゆるみ、呼吸が入り、自律神経がすんと整ってくると、学びに向かう準備ができていく。 その状態をつくることが、ラフ大の一日のはじまりです。 11時ごろからは小休止を挟み、その後40分ほど、その日にやることのタスク管理や、簡単な生活訓練を行います。 就労移行を目指す方にとっては、簡単なタイピングなど、頭を使う内容にも取り組んでいきます。 ここで大切にしているのは、時間の長さではありません。短い時間で、ギュッと集中して取り組むこと。 せっかく身体を動かして脳が活性化され、自律神経が整っているタイミングだからこそ、その流れの中でタスク管理や生活訓練に入っていく。無理に詰め込むのではなく、整った状態を活かして、必要なことに集中する。 そうやって午前中の時間を過ごしていきます。 そして12時から13時までは、お昼休憩です。 この時間も、ただの空白ではありません。午前中に動いた身体と頭を一度休ませて、午後のメインメニューへ向かうための切り替えの時間です。 休むことも、訓練の一部です。 頑張り続けるだけではなく、休む。整える。もう一度戻ってくる。そうしたリズムを身につけていくことも、働くうえで、そして生活していくうえで大切な力になっていきます。 13時からは、その日のメインメニューに入ります。 内容は曜日によっても変わりますし、その人その人の支援計画によっても変わります。 たとえば資格取得を目指している方であれば、その資格に向けた傾向と対策のトレーニングを行ったり、座学の部分に取り組んだりします。 目標があると、日々の訓練にも意味が生まれます。 「何のためにこれをやっているのか」が見えると、人は少し踏ん張れるようになります。ただ言われたことをこなすのではなく、自分の未来と今の行動がつながっていると感じられること。それが継続の力になります。 また、トークスキルやディスカッションの時間を設けることもあります。 自分の意見を言うこと。相手の意見を聞くこと。その両方を、演劇などを通して練習していきます。 人と話すというのは、簡単なようでいて、とても繊細なことです。 自分の気持ちを言葉にするには勇気がいりますし、相手の言葉を受け止めるには余白が必要です。うまく話すことだけが目的ではなく、そこには「自分を知ること」と「相手を知ること」があります。 自己理解はとても大切です。 自分は何が得意なのか。どんな場面で緊張するのか。どんなときに力を発揮しやすいのか。どんな環境だと苦しくなってしまうのか。 そうしたことを、自分一人だけで見つめるのは難しいこともあります。 だからこそ、支援員さんと話をしながら、客観的に自己理解ができているのかを確認していきます。 自分では当たり前だと思っていたことが、実は強みだったと気づくことがあります。逆に、自分では大丈夫だと思っていたことが、少しサポートの必要な部分だったと見えてくることもあります。 どちらも大切な発見です。 自己理解とは、自分を責めるためのものではありません。自分を正しく扱うためのものです。 そして、自己理解と同じくらい大切なのが、他己理解、つまり他者理解です。 相手のことをちゃんと受容してあげること。自分のことも受容してあげること。 人との関わりの中では、自分だけが正しいわけでも、相手だけに合わせればいいわけでもありません。自分の感じ方があり、相手の感じ方がある。その違いを知りながら、どう関わっていくのかを考えていく。 その中で、「じゃあ自分には何ができるんだろう」という問いが生まれてきます。 これは、とても大切な問いです。 できないことだけを見るのではなく、できることを探す。苦手なことを無視するのではなく、どう工夫できるかを考える。自分の特性や状態を理解したうえで、自分が社会の中でどう力を発揮できるのかを見つけていく。 ラフ大の時間は、そのための練習でもあります。 自己理解とは、自分を責めるためのものではなく、自分を正しく扱うためのものです。 14時15分から14時45分ごろまでは、その日の振り返りを行います。 最後の30分ほどで、「今日はどこまでできたのか」「自分の目標はどこにあるのか」「どの道に進んでいきたいのか」を、支援員さんと一緒に話し合っていきます。 一日をなんとなく終わらせない。 今日はここまでできた。私の目標はこれだ。じゃあ次回はこれができるようにしていこう。そして最終的にはここで頑張るんだ。 そうやって、目標達成に向けた確認を都度都度行っていきます。 振り返りがあることで、その日の経験が次の日につながります。 やったことが流れていくのではなく、自分の中に残っていく。小さな達成も、小さな課題も、次の一歩の材料になっていく。 これは、ラフ大だけで大切なことではありません。仕事でも、生活でも、きっと同じです。 当たり前を当たり前にやる。 言葉にすると簡単ですが、実際にはとても難しいことです。時間通りに来る。身体を整える。やることを確認する。人と話す。自分を振り返る。次の目標を決める。 どれも派手なことではありません。 けれど、その一つひとつを積み重ねることが、未来につながっていきます。 当たり前を当たり前にやることは、簡単そうに見えて、実は一番深い訓練なのかもしれません。 ラフ大の一日は、10時から15時までの限られた時間です。 でもその中には、身体を整える時間があり、頭を使う時間があり、人と関わる時間があり、自分を見つめる時間があります。 そして最後には、今日の自分を確認し、次の自分へつなげていく時間があります。 私たちは一日で大きく変わるわけではありません。 けれど、今日できたことを見つける。今日できなかったことを責めずに受け止める。次はどうしていくかを考える。その繰り返しの中で、少しずつ自分の道が見えてきます。 当たり前を当たり前にやるのは、難しい。 でも、だからこそ、伸びしろしかありません。 ラフ大の時間は、その伸びしろを一緒に見つけていく時間です。

エンタメ療育スタジオ Rough&Diamonds/伸びしろしかない私たちへ:ラフ大療育の一日の流れ
教室の毎日
26/08/29 13:53 公開
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ラフダイが感覚統合療法の宝庫である理由

教室で消しゴムを落としただけなのに、その子の一日は少しずつほどけていくことがあります。拾う、戻す、先生の話を聞く、ノートを見る、次の指示についていく——大人には何でもない動作の連続が、ある子にとっては山を登るようなことだったりするのです。大切なのは、「どうしてできないの?」と責めることではなく、その子の中でまだつながっていない感覚と動きの回路を、一緒に見つけていくことです。 【「できない」のではなく、まだつながっていないだけ】 ある男の子の話をします。 その子はいわゆる発達性協調運動障害の特性があるお子さんでした。感覚統合がうまく使えていなくて、体の使い方が少しぎこちない。思ったように手足を動かすことが難しかったり、物の管理がうまくいかなかったり、情報処理に時間がかかったりする。 本人の中には、ずっとフラストレーションがありました。 やりたいのに、うまくできない。 周りと同じように動きたいのに、間に合わない。 先生の話も聞きたいし、ノートも見たいし、道具も出したいのに、体と感覚がうまく噛み合わない。 こういう子は、ラフダイにとって本当にぴったりのお子さんです。 なぜなら、ラフダイは感覚統合療法の宝庫だからです。 発達性協調運動障害は、一見するととてもわかりづらいことがあります。ぱっと見ただけでは、「怠けている」「不注意」「ふざけている」と誤解されてしまうこともある。学校の先生も、どう関わればいいのかわからなくなってしまうことがあります。 でも、本人の中ではちゃんと理由が起きています。 体の動かし方がわからない。 目と手の距離感がつかみにくい。 肩、肘、手首、指先の動きがまだ分化していない。 目で見た情報と、体を動かす感覚がうまく統合されていない。 だから、落としてしまう。 ぶつかってしまう。 片付けられない。 指示についていけない。 これは「やる気」の問題ではありません。 体と感覚の回路の問題です。 子どもの困りごとは、わがままではなく、まだ言葉になっていない身体からのサインであることがあります。 たとえば、授業中の机の上を想像してみてください。 消しゴムがある。 筆箱がある。 鉛筆がある。 ノートがある。 教科書がある。 先生の話を聞かなければいけない。 黒板も見なければいけない。 ノートにも書かなければいけない。 大人から見ると、ただの授業風景です。 でも、その子にとっては、同時に処理しなければいけないことが多すぎる状態です。消しゴムを動かすだけでも、手の位置、物との距離、力加減、肘の動き、手首の動き、視線の向け方、姿勢の保持など、たくさんの感覚と動作が必要になります。 そのうちのどこかがまだうまくつながっていないと、消しゴムは落ちます。 落ちた消しゴムを拾おうとする。 その間に授業が進む。 先生の説明を聞き逃す。 何をすればいいかわからなくなる。 周りとの差を感じる。 本人の中に焦りや苛立ちが生まれる。 そうなると、「できない」が積み重なっていきます。 でも本当は、できないのではありません。 一度に求められている動作が多すぎるだけなのです。 だから必要なのは、スモールステップです。 本当に小さな、小さなステップでいい。 まずはノートを出す。 次に消しゴムを出す。 次に鉛筆を持つ。 次にそれを机の上の決まった場所に置く。 ひとつずつ、できるようにしていく。 遊びの環境の中で、何度も練習していく。失敗しても大丈夫な場所で、体を使い、目を使い、手を使い、感覚を少しずつ統合していく。そうすると、少しずつ回路ができてきます。 最初はぎこちなかった動きが、だんだんスムーズになっていく。 昨日より少し、手が届く。 前より少し、落とさずに持てる。 ひとつの動作が、自信を持ってできるようになる。 そこで初めて、次のステップに進めばいいのです。 いきなり二つ、三つ、四つ、五つの動作を求めるから難しくなる。まずはひとつの動作を、本人が「できた」と思えるところまで伴走する。その「できた」という感覚が土台になります。 支援で大切なのは、ただ訓練することではありません。 本人が自分の成長を感じられること。 お母さんやお父さんが、その小さな変化を一緒に喜べること。 周りの大人が、「この子は困らせている」のではなく、「この子が困っている」と見方を変えられること。 それだけで、子どもの世界はずいぶん変わります。 その男の子も、今では普通級で楽しく過ごしています。 もちろん、最初からすべてがスムーズだったわけではありません。ひとつずつでした。道具を出すこと。置くこと。見ること。聞くこと。動くこと。そのひとつひとつを分けて、本人ができる形にして、少しずつ積み重ねていきました。 そして、その積み重ねの先に、「できた」という表情が生まれました。 この瞬間を、お母さんやお父さんと一緒に喜べること。本人の中に生まれた小さな自信を、そばで一緒に感じられること。それが、この仕事の強みであり、ラフダイのいいところだと思っています。 子どもは「できた」を積み重ねることで、自分の体を信じられるようになる。 発達性協調運動障害のある子に必要なのは、大きな奇跡ではありません。 必要なのは、その子の困り感を正しく見つけること。 できない理由を、責めるためではなく理解するために見ること。 そして、その子のペースで、ひとつずつ一緒に練習していくこと。 消しゴムを落とす。 ノートを出すのに時間がかかる。 筆箱の中身をうまく管理できない。 その小さな場面の中に、その子の感覚の世界が表れています。そこを丁寧に見てあげることができれば、支援はもっとやさしく、もっと具体的になります。 子どもは、できない自分を責められ続けると、挑戦することをやめてしまいます。 でも、できる道筋を一緒に見つけてもらえたとき、もう一度やってみようと思える。その一歩が、体の動きだけではなく、心の動きも変えていきます。 だから私たちは、急がなくていい。 ひとつできるようになったら、次のひとつへ。 その子が「できた」と感じられるところまで、しっかり伴走する。 その積み重ねが、やがて教室での安心になり、家庭での笑顔になり、本人の自信になっていく。 消しゴムを落とさずに置けるようになることは、ただの動作の獲得ではありません。 それは、その子が自分の体と少し仲良くなる瞬間です。 そして、その瞬間を一緒に喜べることほど、支援者としてうれしいことはありません。

エンタメ療育スタジオ Rough&Diamonds/ラフダイが感覚統合療法の宝庫である理由
教室の毎日
26/08/28 08:53 公開
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療育の力は、ときどき医学の力を超えていく

子どもの成長には、こちらの予想を静かに裏切る瞬間があります。できないかもしれない、と言われたことの隙間から、小さな「好き」が顔を出し、それがいつの間にか、その子自身を前へ運んでいく。私は療育の現場で、そんな奇跡を何度も見てきました。なかでも忘れられないのは、生まれた時から重い病気を抱えながら、今では舞台の真ん中に立つようになった、ひとりの男の子のことです。 “無理かもしれない”から主役へ 東京ラフダイに長く通ってくれている子どもたちの成長を見ていると、「奇跡」という言葉を使いたくなる瞬間があります。 もちろん、奇跡という言葉だけで片づけてしまうには、その道のりはあまりにも地道です。本人の努力があり、保護者の方の支えがあり、私たち支援者の伴走があり、日々の小さな積み重ねがあります。 それでもやっぱり、ある時ふと振り返ると、こう思うのです。 「ここまで来たんだ」 「こんなに変わったんだ」 「子どもの成長って、本当にすごいんだ」 今回は、そんな子どもの成長のひとつの物語として、ある男の子のことを書きたいと思います。 彼に初めて会ったのは、小学校低学年くらいの頃だったと思います。 彼は生まれた時から、重い病気を抱えていました。クルーゾン病、そして水頭症。生まれてすぐに手術を受け、頭の中にはシャントという医療器具が入っています。 そのスタート地点からすでに、「歩くのは難しいかもしれません」「普通に生活するのは困難かもしれません」と言われていた子でした。 医療の現場でそう言われるということは、決して軽いことではありません。現実として、身体のバランスを取ることが難しかったり、発達の面でも課題があったり、日常の中でたくさんの困難を抱えていたのだと思います。 私が出会った頃の彼も、まだ言葉があまり出ていませんでした。 人と関わることにも怖さがありました。身体もふらふらしていて、安定して歩くことすら簡単ではないように見えました。 けれど、その子の中には、はっきりとしたひとつの火がありました。 ダンスが好き。 音楽が好き。 その気持ちは、言葉よりも先に身体から伝わってきました。 最初は、人と関わることに抵抗がある。怖さもある。気持ちとしてはネガティブな部分もある。 でも一方で、音楽が流れると反応する。ダンスに興味を示す。自分から少しだけ近づいてみようとする。 その「好き」という気持ちが、彼にとって最初の橋だったのだと思います。 人との距離を縮めるための橋。 自分の身体と仲良くなるための橋。 不安の中から、やってみたいという気持ちへ向かう橋。 私たちは、その橋を無理やり渡らせるのではなく、彼が自分のタイミングで渡れるように、少しずつ伴走していきました。 声をかける。待つ。気持ちが乗るように関わる。安心できる環境をつくる。できたことを一緒に喜ぶ。 そういうことを、本当にコツコツ積み上げていきました。 療育というのは、とても大きな変化を一瞬で起こすものではないのかもしれません。むしろ、目に見えないくらい小さな変化を、毎回拾い上げていくことの連続です。 今日は少し目が合った。 今日は少し近づけた。 今日は音に合わせて身体が動いた。 今日は友達の存在を嫌がらなかった。 そんな一つひとつは、その場では小さく見えるかもしれません。 けれど、子どもにとっては、その一歩が世界を広げる大きな経験になっていることがあります。 彼は少しずつ、少しずつ変わっていきました。 最初は怖かった人との関わりも、だんだん楽しいものになっていきました。音楽やダンスを通して、周りの人とのつながりが生まれていきました。 そして今、その子は東京ラフダイの演劇クラスで、主役を張るほどまでに成長しています。 これは本当に、すごいことです。 かつては歩くことさえ難しいかもしれないと言われていた子が、今ではしっかり舞台に立ち、ダンスをしています。 身体の中にはシャントが入っているので、物理的にバランスを取ることが難しい部分は今もあります。それでも彼は、がっつり踊っています。 片足バランスだってできます。 以前の姿を知っているからこそ、その姿を見るたびに胸がいっぱいになります。 子どもは、こちらが決めた限界の中だけで育つわけではありません。 もちろん、お医者さんが言う「難しいかもしれない」は、現実を見た上での大切な言葉です。軽く受け流していいものではありません。 でも同時に、子どもの成長には、予測を超えて伸びていく瞬間があります。 「無理かもしれない」と言われたことが、そのままその子の未来のすべてになるわけではない。 そのことを、彼は身体ごと教えてくれています。 私たちは長く療育支援として関わる立場だからこそ、子どもたちの成長過程を保護者の方と一緒に見届けることができます。 最近も、昔の動画を見返す機会がありました。 「ああ、こんなに小さかったですね」 「この頃はまだ、こんな感じでしたね」 「でも今は、もうこんなにできるようになりましたね」 そんなふうに、保護者の方と一緒に懐かしみながら、その子の歩んできた時間を振り返ることがあります。 その時間は、とても尊いものです。 療育の現場では、毎日が劇的な変化に満ちているわけではありません。むしろ、うまくいかない日もあります。気持ちが乗らない日もあります。後戻りしたように見える日もあります。 それでも、長い時間で見ると、確かに育っている。 できなかったことができるようになっている。 怖かったものが、少しずつ楽しいものに変わっている。 そして、好きだったものが、その子の人生を支える力になっている。 彼の場合、それはダンスであり、音楽でした。 最初は小さな反応だったものが、やがて人と関わるきっかけになり、身体を動かす喜びになり、舞台に立つ力になっていきました。 「好き」は、子どもの中にあるとても大切な入口です。 そこから関係が始まることがあります。 そこから自信が育つことがあります。 そこから、その子自身も知らなかった可能性が開いていくことがあります。 だから私たちは、子どもの「好き」を見逃したくないのです。 たとえ今は言葉が少なくても。 たとえ不安が強くても。 たとえ身体の動きに困難があっても。 その子の中にある小さな火を見つけて、消さないように、急かさないように、一緒に育てていきたい。 そう思っています。 彼の成長を見ていると、子どもは本当に奇跡的に伸びることがあるのだと感じます。 でもその奇跡は、どこか遠くから突然降ってくるものではないのかもしれません。 好きなものに出会うこと。 安心できる人に出会うこと。 何度も失敗して、またやってみること。 できた瞬間を誰かと喜び合うこと。 その積み重ねの先に、ある日ふと、奇跡のように見える景色が現れるのだと思います。 舞台の真ん中で踊る彼の姿を見るたびに、私は思います。 子どもの未来は、最初に告げられた言葉だけでは決まらない。 その子の中にある「好き」と、周りにいる大人たちのあたたかい伴走が重なった時、未来は少しずつ形を変えていく。 そして、かつて「難しいかもしれない」と言われたその足で、子どもは自分のリズムを見つけて、前へ進んでいくのです。

エンタメ療育スタジオ Rough&Diamonds/療育の力は、ときどき医学の力を超えていく
教室の毎日
26/08/27 11:33 公開
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療育の楽しさが生み出す子どもの主体性

何かが「好き」という純粋な気持ちは、時に私たちの想像を超えるほどの力を秘めています。それは、苦手だったことに向き合う勇気をくれたり、退屈だった日常を輝かせてくれたりする、不思議なエネルギーの源です。もし、子どもの「やりたい」という小さな炎が、家庭や学校での学び、そして自分自身を成長させる大きな力に変わっていくとしたら?これは、ダンス療育という現場で生まれた、ささやかで、しかし確かな希望の物語です。 私たちのダンス療育プログラムには、「振り付けダンス」という時間があります。3ヶ月に一度、新しい課題曲が発表され、子どもたちはそれを練習し、最後には発表の場が設けられます。このプログラムの中心にあるのは、子どもたちが好きな、キャッチーな音楽に合わせて楽しく踊るというシンプルな体験です。 「楽しい」と感じると、もっと「上手になりたい」という気持ちが芽生えます。そして、発表会という目標があるから、「人に見せたい」「もっと練習したい」という意欲が自然と湧き上がってきます。この一連のプロセスこそが、子どもたちの「主体性」を育む上で非常に大きな意味を持つと、私たちは考えています。 先日、あるお父様から嬉しいご報告をいただきました。私たちの教室に通い始めてから、お子さんが家でYouTubeのダンス動画を見ながら、夢中になって練習するようになったそうです。その姿を見て、お父様は「ダンスがしたいなら、まずは宿題を早く終わらせなさい」という”魔法の言葉”をかけたと言います。 すると、驚くべき変化が起きました。お子さんは、ダンスの練習時間を確保するために、自ら進んで宿題に取り組むようになったのです。宿題を終えた後は、心ゆくまでダンスの練習に打ち込む。それは結果として、学習習慣と運動習慣の両方を身につけるという、素晴らしい相乗効果を生み出しました。「本当に助かっています」という感謝の言葉に、私たち自身の心が温かくなるのを感じました。 このエピソードが教えてくれるのは、療育の現場での「楽しさ」が、子どもたちの日常生活にまでポジティブな影響を及ぼす力を持っているということです。教室での体験が家庭での自主的な学習意欲につながり、学校の宿題にまで良い影響を与えていく。この連鎖が生まれる瞬間こそ、私たちが目指していることの一つです。 子どもたちの主体性を育むということは、彼らの内側にある「興味」や「関心」、「やってみたい」という純粋な気持ちを見つけ出し、それを丁寧に育てていくことに他なりません。それは決して簡単なことではなく、時として大きな困難を伴います。しかし、私たちはその難しい挑戦にこそ価値があると信じて、日々子どもたちと向き合っています。

エンタメ療育スタジオ Rough&Diamonds/療育の楽しさが生み出す子どもの主体性
教室の毎日
26/08/26 09:37 公開
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エンタメ療育で広がっていく未来

私たちは知らず知らずのうちに、他人の可能性に「こうあるべきだ」というレッテルを貼っていないでしょうか。障がいがあるから、こういうことは難しいだろう。この特性があるから、きっとこうなるはずだ。しかし、一人の少女が、その思い込みがいかに脆く、そして人間の成長がいかに予測不可能であるかを、身をもって教えてくれました。それは、あるダウン症の女の子との出会いから始まった物語です。 今から10年以上前、私が東京の事業所で働いていた頃、一人の小学一年生の女の子が見学にやってきました。ダウン症のあるその子は、どこの事業所からも受け入れを断られ、困り果てていたと聞きました。確かにお友達を叩いてしまうことがありましたが、それは誰かを傷つけたいからではありませんでした。まだ言葉でうまく伝えられないもどかしさ、それでも「伝えたい」と願う心の叫びが、そうさせているのだと私には見えました。 その小さなサインを見過ごさず、彼女の内に秘めた思いを支えることこそが、私たちの仕事です。私たちは彼女を受け入れることを決めました。それが、長い長い付き合いの始まりでした。 彼女は、エンターテイメントを通じた療育の中で、まるで水を得た魚のように自分を表現することを学んでいきました。自分の気持ちを発信する力と、相手の思いを受け取る力。その両方をぐんぐんと伸ばしていったのです。やがて彼女は、特別支援学校ではなく「普通校に行きたい」と、自らの意思をはっきりと口にしました。ご両親も、そして何より本人が強く願っている。ならば、挑戦しない理由はありません。「いいじゃないですか、やってみましょうよ」と、私たちは彼女の背中を押しました。 そして今、彼女は高校二年生になりました。見事、自分で選んだ高校に合格し、ダンス部で活躍するダンサーです。週に6日、私たちのところに顔を出してくれますが、その姿は昔の彼女とは比べ物になりません。 一般的に、ダウン症のあるお子さんは、朗らかで、おとなしいタイプが多いと言われることがあります。しかし彼女は、私たちの「エンタメ療育」という環境の中で育つうちに、自分の意見を堂々と発信できる、誰よりもおしゃべりが好きな、活発な一人の高校生へと成長しました。学校の先生たちも「聞いていた話と全然違う」と目を丸くするほどです。 もちろん、今でも学校生活でのサポートは必要で、私たちは訪問支援も行っています。しかし彼女の存在は、「障がいがあるからこうだ」という固定観念が、いかに一面的なものであるかを証明してくれています。人は、その人を取り巻く環境によって、いくらでも変化し、成長していくことができるのです。 来年、彼女は高校三年生になり、その先には「働く」という新たなステージが待っています。ご両親からは「この子の物語の最終章を、ぜひお願いします」と託されました。プレッシャーはありますが、それ以上に私の心はワクワクしています。彼女には、可能性しかありません。彼女のような存在が、これからの未来を作っていくのかもしれない。そんな期待を抱かせてくれるのです。

エンタメ療育スタジオ Rough&Diamonds/エンタメ療育で広がっていく未来
教室の毎日
26/08/25 09:36 公開
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