校長先生からの一言で、転学を決意

そんなとき、校長先生からある言葉をかけられました。

「彼は、とても一生懸命だよ。そして、とても豊かな発想力と、人へのやさしさを持っている。そんな彼が、学校の勉強では辛い思いをしているのを見てるとね。我々学校の意味ってなんだろう、って思うんだよ。

彼の良いところだけはつぶしたくないよね、守っていきたいよね。

私たちが長男に願うのは、学歴や、他の子どもと同じように育てるということよりも、幸せな大人になってほしいということ。

自分なりの生活をして、失敗をして落ち込むことがあっても「それでも僕は大丈夫」と思えるように。自分の好きなところを見つけられるように。そんな大人に、なってほしい。

そのためには彼のペースに合った、学習や生活ができるところに、置いてあげたほうがいい。

不安な気持ちもありましたが、校長先生との話で、息子への思いを改めて確認することができました。こうして、私たち夫婦は転学を選ぶことにしたのです

転学までのステップ

これまでの様子を市に共有するため、就学相談へ

まず最初に、就学相談を申し込みました。

●初回面談・行動観察
 
相談員の先生に、子どもの発達の様子や学校生活の様子、転学先の希望などについて伝えます。母子手帳や育児日記など、ありったけの資料をひっくり返して臨みました。

子どもは別室で1時間ほど、遊んだり簡単な学習をしたりし、その様子をモニタリングしてもらいます。


●発達検査・医師との相談など

長男は半年ほど前に、LDの検査を受けています。その資料を取り寄せて提出したので、医師との相談、検査は省略されました。

●学校での様子を観察

相談員の先生が、学校での長男の様子を見に行っていたようでした。

密な学校との連携で実現した、特別支援級の見学と体験授業

学習障害でADHDの息子が、小学5年生で「転学」を決意した理由の画像
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11017007453
就学相談期間中に1度、希望する支援級での体験が受けられますが、相談を受ける前に、私たち夫婦で支援級の見学に行きました。

まずは親が見て「長男にとっていい環境かどうか」を判断する必要がある、と思ったからです。

これには、小学校の校長先生が快く動いてくださいました。相談すると、

校長先生「向こうの校長先生と知り合いだから、話を通しておくよ、電話してみて」

と言ってくれたのです。

見学の結果、ここなら長男が自分のペースで自信を持ち、学習するのを助けてくれるだろう、と確信できたので、見学先の先生方にその旨お伝えしたところ、

見学先の先生「1度本人も来てみた方がいいですよ、連れていらっしゃい!

と提案してくれました。こうして長男は、1回の見学、1回の体験と、2回支援級に行くことができました。

慣れない環境だと、緊張が強く出てしまう長男にとっては、2回目の体験で「ここなら楽しく勉強できそうな気がするよ」と思えたのでした。

転学のタイミングは、本人の気持ちを尊重して

就学相談を始めたのが4月、必要書類も5月には提出し、後は会議を待つばかりとなっていました。

ですが、結局「転学支援部会」が開かれたのは7月の半ばのこと。そこで改めて保護者面談・子どもの行動観察が行われ、その結果をもとに「就学支援等検討委員会」が行われたのが、その1週間後でした。

「結果が出るのは、夏休みに入ってからですね」と言われたのには、驚きました。

つまり、1学期の終業式には転学するかどうかがわからないまま、2学期になったらいきなり、新しい学校に行くんだよ!と言わなくてはならないということ。
 
彼の心の区切りのためにも、ちゃんと先生や友達に「ありがとう、次の学校で頑張ります!」と挨拶してから、次へのステップに進めたい

この気持ちを、今までの学校と支援級の先生とにお話をしたところ、お二方とも「その方がいいですね」とご理解くださいました。

結局、夏休みに入って転学許可を頂いた後に相談をし、「始業式は今までの学校で参加し、翌日から支援級へ」という流れにしてもらったのでした。

転学の目的を、本人にどう伝えるか

転学が正式に決まり、長男本人にも「2学期からは、前に見学に行ったあそこの学校に行くことになったよ」と伝えました。

見学や体験の時に「う~ん…勉強はこっちの学級のほうがラクそうだけど、友達がな~」「歩く距離が遠くなるんじゃない?」と言っていた長男ですが、なんとなく察していたところがあったのでしょう。

父親が、「今のクラスでは、君のペースで勉強できなくて辛いでしょう。でも、君のペースに合わせてもらえるところなら、君はもっともっといろんなことを学べるんだよ。

君の得意なこと、いいところを大事に伸ばしていくために、新しい学級に行こうよ」と伝えたところ、「うん、わかった!」と、親が拍子抜けするほどに、すんなりと受け入れられたようです。
次ページ「転学が子どもの可能性をひらくこともある」

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