アスペルガーでも夫婦円満?その秘訣を聞いてみた

ライター:鈴木希望
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配偶者やパートナーと円滑なコミュニケーションを図ることができず、日々苦しむカサンドラ症候群の方々。彼らの言葉は、アスペルガー症候群の私の胸に突き刺さるものだらけでした。その一方で、カサンドラに悩まない人も存在します。なぜ?疑問を持った私は、とても身近な人から話を聞いてみました。

アスペルガーの私。知らないうちに周囲の人を追い詰めていた?

39歳でアスペルガー症候群の診断を受けた私は、自分の障害がどういったものなのかを調べる過程で、「カサンドラ症候群」という言葉にたどり着きました。

カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群当事者との意思疎通が適わない配偶者や家族、友人が陥る二次障害のことです。

体験談をつづったブログ等をいくつか読み、私は背中に冷たいものが伝うような気持ちに襲われました。

「マイペース過ぎで思いやりがない」
「こちらを糾弾するような物言いをする」
「自分のことにしか興味がない。一緒にいても寂しい」


カサンドラ症候群の方々が吐露するアスペルガー症候群当事者への思いは、かつて私がお付き合いした男性に言われてきた言葉だらけだったからです。

私は知らず知らずのうちに相手を追い詰め、カサンドラ症候群にしてしまっていたのだと、今さらながらに気付いたのでした。

では、アスペルガー症候群の人は、誰しもパートナーを追い詰めてしまうのでしょうか?

また、わかり合う方法はないのでしょうか?

私よりもアスペルガーっぽい父。では、母もカサンドラ症候群だったのだろうか?

「カサンドラ症候群」を考えたときに思い出したのが、私の父のことです。父は70代、未だに健在です。

この父というのが私とそっくり。頑固でこだわりが強く曖昧が苦手、発する言葉は理屈っぽく、意図せず論破モードになることも多々あります。このように、診断は受けていませんが、アスペルガー症候群の特性にぴったり当てはまってしまうのです。

父の偏屈ぶりは、今に始まったことではありません。母は父との結婚を決めたとき、「本当にこの変人と結婚しても大丈夫なのか」と、父の家族から随分と心配されたのだとか。

「はい、もちろん大丈夫です」

と笑顔で答えた定型発達の母。彼女は70代になった今、カサンドラ症候群のカの字も感じられないほど朗らかに、父と2人で暮らしています。

なぜ、カサンドラ症候群にならなかったのか?母に聞いてみた

両親はとても仲が良く、大きな喧嘩をしている光景を私は見たことがありません。

でも実は、カサンドラのような苦しみがあっても、それを見せないようにしていた時期もあったのかもしれない―そう考え、私は母に聞いてみました。

すると、彼女はそんな私の疑いを

母「あー、ないない。話があまりにも通じないから、イラッとすることは今でもあるけどね」

と、すぐさま笑って否定したのです。

私「へー。ほら、女の人ってさ、『察してよ!』みたいに思う人が多いって聞いたことがあるんだけど、お母さんはそういうのなかったの?」

母「そんなあ、お互い超能力者じゃないんだから!相手の言いたいこととか、察して完全に理解するなんて私だって無理だもん。お父さんや、のん(私の呼び名)はその度合いが違うだけ。

伝わらないなら伝わるように、通じてないなって感じたら、通じるようにすればいいでしょ?

私「ほう…素晴らしいお心がけでございますなあ…」

母「だってしょうがないよ、あの人はああいう人なんだし」

時折うっかり曖昧さを出してしまい、「それじゃあわからん」と父に苛立たれることもある母。そんなときは「あー、めんどくさいなあこの男」とぼやくなど、感情を出すことも忘れません(笑)

それでも、会話の中では曖昧な表現を避ける、頼みごとをする際には方法や目的などもわかりやすく伝える等の工夫をし、母は自ら父に歩み寄っています。

それもこれも「相手にどうにかしてもらおう」という期待をせず、「自分がどうしたいか」を主軸にしているからできることなのでしょう。
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