障害名まであなたは伝える?「カミングアウト」に私の出した結論

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お子さんに見えない障害や病気がある方は、そのことを周りの方たちにカミングアウトをしましたか?
現在10歳の長男は、3歳の頃に自閉症スペクトラム(広汎性発達障害)と診断され、 その直後から幼稚園での集団生活が始まりました。
集団生活をおくる上で私が悩み続けてきたことが「わが子の障害を周りにどのように伝えるのか?」ということでした。

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「○○が苦手です」では、発達障害の実情が上手く伝わらないこともある

発達障害のある子のことを説明する際、よく耳にするセリフに

「うちの子は○○が苦手です」

というものがありますよね。私も、療育センターでそのように説明することをすすめられていたこともあり、最初は長男の障害名ではなく「〇〇が苦手なのよ」と特性だけを伝えるようにしていました。障害名を言って偏見を持たれるよりは、具体的な得意不得意を話した方が伝わりやすいだろう…そう思っていたからです。

実際に、そのように伝える方がコミュニケーションが円滑にいく場合もあるでしょう。ですが、私が直面した現実は真逆だったのです。帰ってきた言葉の多くは

「苦手ってことは頑張ったらできるんでしょう?」
「甘やかしすぎじゃない?」
「しつけの仕方が悪いんじゃない?」

といった、息子や私の”がんばり”不足を原因とするかのような反応でした。

「トツカさんって、ほんと過保護よねー」

知らないところでそんな風に言われることもあり、当時はひどく落ち込みました。しかし、今思えばこちらの伝え方のせいで余計な誤解を招いていたのだと感じます。確かに、「うちの子は○○が苦手です」と突然言われても、それがどの程度苦手かを想像することは難しいですよね。

「うちの子だって大変なのに、この人は何を甘えているの?」

そう思うのは自然なことだと思います。それが定型発達の世界なのです。こうしたことがあってからは、私はあえて先に

「うちの子は自閉症という障害を持っています」

と伝えた後に、

「障害の特性から○○が苦手なため、ご理解いただけると助かります」

というように伝えるようにしました。

もちろん「障害があるから迷惑をかけても許してね」という意味ではありません。「本人も家族も努力をしていますが、それでも難しいことが多々あります。そのためご迷惑をおかけすることがあるかと思うので、もし気になったことがあれば遠慮せずお知らせください」という意味です。

何かあれば常に対応するという姿勢を示しておくことで、理解し合うための土台作りができることに気がついたのです。

発達障害がある子たちにとって“苦手”という感情は生きるか死ぬかのレベルであることも多いです。しかし、ただ“苦手”と伝えるだけでは、その困難の大きさを判断できないのも無理はないですよね。

そのために、少しでも相手が抵抗なく受け入れられるようにこちらができる工夫。それが「障害名から伝える」ということではないかと感じました。

「障害名を伝える=偏見を持たれる」とは限らない

障害名を伝えることに関して、多くの保護者の方が悩む問題があります。

「障害名を伝えることで障害名が一人歩きして偏見を持たれないだろうか…」

ということです。

私の結論を言うと、それは違います。悲しい話ですが、発達障害に対して偏見を持っている方は特性に対しても偏見を持っていることが多いため、障害名を伝えても伝えなくても大きく変わらないのです。

「子どもが○○をするのは親のしつけのせい」

すでにそう思っている方にとって、障害名は重要ではありません。むしろ障害名や詳しい特性を伝えることで「障害があるからそのような行動をすることもある」ということを知ってもらえ、逆に偏見がなくなることの方が多かったのです。そのため、障害名を伝えることでプラスになることはあってもマイナスになることはありませんでした。

あえて障害名を伝えることで良い意味で変化が!

とはいえ、実際に障害名を伝えるとなると「お友だちができなくなるのではないか」「偏見を持たれないか」など、どうしてもマイナスのことを考えてしまいがちですよね。ですが、先にお話しました通り、実際はプラスになることも多いのです。なぜならば「正しい知識を伝えられる」からです。

恥ずかしながら、私自身も、わが子が自閉症だと知る以前は

「自閉症=喋らない障害」

だと思っていました。実際はそんな子もいればそうでない子もいますよね。しかし、以前の自分のように誤って認識している方は大勢いらっしゃいます。そのため意図せず傷つけたり傷つけられたりということが起こってしますのです。けっして悪意があるわけではありません。ただ、知らないだけなのです。

障害名を伝えた後、そんな方たちによく聞かれることがあります。

「自閉症って○○な障害だよね?でも、息子くんはそんな風には見えないよ?」

それぞれがイメージしている“自閉症”とギャップがあるのでしょうね。障害のカミングアウトを機にこうした質問をされることが増え、その度に説明をするようになりました。

大人が正しい知識を持つことで、子どもにも間接的に障害がある子との関わり方を伝えることができます。逆にこちらは年相応の成長や遊びを教えてもらえ、お互いに知らない情報を知ることができるのです。

言わなければ伝わらず歩み寄ることができなかったであろう関係も、こちらから一歩踏み出すことで世界が大きく広がり、この先必要な社会とのつながりを作ることができるのではないでしょうか。

また、学校でもある程度オープンでいることで、学級内での配慮が円滑に行えると聞いたことがあります。高学年になると、それまで漠然とゆるされてきた発達障害の子を見て

「あの子だけ特別扱いされてずるい!」

と感じる子が増えてきます。大人でも理由を聞かされず一人だけ特別に配慮されている状態を快く思うことは難しいですよね?それと同じなのです。

なぜその子には配慮が必要なのか、それをある程度示してあげることで、クラスメイトにとっても良い効果があると感じました。

伝え方を工夫して否定し合わない関係作りを

現在長男は特別支援学級と普通学級を行き来しています。特別支援学級に通っている子どもたちは、必ずしも障害の確定診断がある子どもばかりではありません。長男に発達障害があることを知っている親御さんもいれば知らない親御さんもいます。子どもたちも同様です。

そのような状況ですが、障害名が足かせになっていると感じる経験をしたことはありません。多くの方は定型発達の子と同様、本人の性格や人間性を見て判断してくれていると私は感じています。

見えない障害をカミングアウトすることが正解かどうかはわかりません。しかし、私自身は少なくとも不正解ではないと思っています。

障害の有無を問わず、すべての人たちが理解し合って生きることは難しいことです。しかし完全に理解することはできなくても、伝え方一つで否定し合わない関係が築けると思うのです。そんな関係を築いていくことが、将来社会で共存することにつながるのではないでしょうか。

障害の種類・子どもの性格・周りの環境などで伝え方は変わってきますが、あえて障害名を伝えるという選択もあるということを知ってもらえたらと思います。
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