児童養護施設とは? 受けられる支援内容、利用方法、現状について詳しく紹介します!
2018/05/18 更新

児童養護施設とは、生まれた家庭で生活することが困難だと判断された児童が入所する施設のことです。子どもたちに、できるだけ一般的な家庭生活を提供し、施設を離れた後は、自立して社会生活を営めるよう支援することを目標としています。
この記事では、児童養護施設の現状や支援内容についてまとめています。

発達障害のキホン
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監修: 早川 悟司
児童養護施設 子供の家(東京都清瀬市)施設長
社会福祉士
目次
児童養護施設とは?
児童養護施設とは、経済的な理由や虐待など、さまざまな理由で保護者と生活することが難しい、そして社会のサポートが必要と判断された児童が入所する施設です。入所した子どもたちを保護し、生活習慣を身につけたり社会生活に必要なスキルを得られるよう、支援を行います。そして、自立に向けた支援、退所した者に対してもアフターケア支援を行います。
児童福祉法では、どの児童も適切に養育され、生活を保障され、愛され、保護されることで心身の健やかな成長を保障される権利を有すると定められています。そして、児童が適切に養育され、生活を保障されるための一つの手段として、児童養護施設があります。
児童福祉法では、どの児童も適切に養育され、生活を保障され、愛され、保護されることで心身の健やかな成長を保障される権利を有すると定められています。そして、児童が適切に養育され、生活を保障されるための一つの手段として、児童養護施設があります。

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児童養護施設はなんのための施設か
児童養護施設に求められている役割は、入所している児童が健やかに発達できるよう、できる限り家庭的で落ち着いた環境で生活を送れるようにすることです。つまり家庭に代わる家として、子どもが暮らす場所となり、この生活を通して、家庭に戻ることや児童の自立を支えます。
児童養護施設への入所の対象者とは?
どのような子どもが対象なのか
乳児を除く原則18歳まで(必要に応じて20歳まで)の、保護者による養育が困難な児童、また何らかの理由で児童養護施設によるサポートを必要とする児童が対象です。
特に必要があると判断された場合は乳児も対象となりますが、基本的に2歳未満の乳幼児は、乳児院を利用することになっています。
特に必要があると判断された場合は乳児も対象となりますが、基本的に2歳未満の乳幼児は、乳児院を利用することになっています。
どのような理由で入所するの?
児童養護施設に入所する理由は、多岐にわたります。父母の傷病、家庭の経済的な理由や虐待などで、保護者による養育が困難な場合です。相談相手が少ない、離婚率が高まりシングルマザーが増えているなど、現代の子育て環境が保護者の孤立や困難を生みやすいことも、その背景にあると言えるでしょう。
児童養護施設の入所プロセス
何らかの事情があるため家庭で子どもを育てることが難しい場合は、まずは近くの児童相談所や自治体の子育て支援の窓口に相談してみましょう。児童がサポートを必要としている状態だと判断された場合、児童相談所の職員が入所までの手続きを行います。
児童養護施設の入所に伴う費用は、保護者の所得に応じて変わります。また、保護者からの相談がなくても、児童相談所で必要だと判断された場合などに、子どもが児童養護施設に入所することがあります。
児童養護施設の入所に伴う費用は、保護者の所得に応じて変わります。また、保護者からの相談がなくても、児童相談所で必要だと判断された場合などに、子どもが児童養護施設に入所することがあります。
児童養護施設ではどんな人が働いているのか
児童養護施設では、施設長のほか、児童指導員、保育士、個別対応職員、家庭支援専門相談員、栄養士および調理員等、嘱託医の配置が児童福祉法に定められ、児童をサポートします。乳児が入所している場合は、これらに加えて看護師の配置が求められています。また、心理療法担当職員がいる施設も多くあります。
・児童指導員・保育士: 児童が健全に成長できるよう、日常生活や自立に向けた支援を行います。
・嘱託医・看護師: 児童の健康を医療の面からサポートします。
・家庭支援専門相談員: 家族との環境調整や親の相談を行います。
・栄養士・調理員等: 児童への食事提供を支援します。
※栄養士・調理員等については条件によっては施設にいない場合もあります。
・児童指導員・保育士: 児童が健全に成長できるよう、日常生活や自立に向けた支援を行います。
・嘱託医・看護師: 児童の健康を医療の面からサポートします。
・家庭支援専門相談員: 家族との環境調整や親の相談を行います。
・栄養士・調理員等: 児童への食事提供を支援します。
※栄養士・調理員等については条件によっては施設にいない場合もあります。
児童養護施設入所後の生活
どんなサポートがあるのか
入所した児童の中には、児童養護施設で長い期間暮らす子どもも少なくありません。彼らが落ち着いた環境で過ごせるよう居室、相談室、調理室、浴室および便所の揃った空間を用意することが求められています。
児童は児童養護施設から学校へ通い、地域で生活をしています。施設にいる職員が具体的にどのようなことを児童に提供するかは、児童福祉法に定められていますが、児童養護施設では、保護者に代わって生活の支援や自立に向けたサポートをしています。施設によって異なりますが、様々な行事やグループワーク、独自の余暇プログラムなどを行っているところもあります。
児童は児童養護施設から学校へ通い、地域で生活をしています。施設にいる職員が具体的にどのようなことを児童に提供するかは、児童福祉法に定められていますが、児童養護施設では、保護者に代わって生活の支援や自立に向けたサポートをしています。施設によって異なりますが、様々な行事やグループワーク、独自の余暇プログラムなどを行っているところもあります。
入所した児童に会うことはできるのか
基本的には保護者と児童は面会交流ができます。ただし、その児童が入所した理由や状況によって保護者に会うべきではないと判断された場合などには、児童の人権を第一に考え、面会できないこともあります。
児童養護施設の現状
施設数と入所児童数
平成28年10月時点の、児童養護施設の数と入所児童数は次のようになっています。
■施設数 603カ所
■入所児童数 27,288人
■施設数 603カ所
■入所児童数 27,288人
近年、児童養護施設の数は増加傾向にあります。これは大規模施設から比較的生活人数の少ない小規模施設に分割されているなどの背景もあるようです。平成13年10月時点では、551カ所だった児童養護施設が平成28年10月には603カ所になりました。また、入所する児童の割合にも変化があり障害がある児童の入所が増えています。
また、平成25年の時点では知的障害3,685人、その他の障害2,319人、広汎性発達障害1,576人など、児童養護施設入所児童の28.5%が障害のある児童だということが分かっています。
また、平成25年の時点では知的障害3,685人、その他の障害2,319人、広汎性発達障害1,576人など、児童養護施設入所児童の28.5%が障害のある児童だということが分かっています。
児童養護施設退所後の生活
退所理由
児童養護施設の退所については、家庭に戻る場合もありますし、高校を卒業するなどして施設から社会への自立を目指す児童も大勢います。中には里親委託され、退所する児童もいます。
児童の引き取りは可能か
入所した児童の家庭への引き取りについては、保護者の生活や養育環境が整っているかどうかを確認した後、保護者・児童相談所・施設等で話し合って決めます。
進学率、就職率はどのくらいなのか
高校卒業後、専門学校や大学など、高等教育に進学する児童もいます。平成24年度末に高等学校を卒業した児童のうち、平成25年5月1日現在の進路は厚生労働省の調査によると、大学進学12.3%、専修学校等進学10.3%、就職69.8%、その他7.6%です。東京では19.8%が大学に、17.7%が専修学校等に、合わせて37.5%が進学しており、地域や施設によっても差異があると言われています。
退所した児童にどのようなサポート体制があるのか
児童養護施設は、原則高校を卒業すると社会的自立を目指すことになります。しかし、本人にとっては児童養護施設は生活の場であり、家庭のような存在です。18歳になった後も自立に向けてサポートがまだ必要な場合もあります。そのような児童に対して、色々なサポート制度があることをここで紹介します。
■自立援助ホーム
児童福祉法で児童自立生活援助事業として位置づけられている自立援助ホームでは、児童養護施設を退所した児童に対しても職業支援や社会的自立に向けた援助を行っています。対象となる児童は、義務教育終了後の15歳~20歳までです。必要に応じて22歳の年度末までの間延長されることもあります。
児童福祉法で児童自立生活援助事業として位置づけられている自立援助ホームでは、児童養護施設を退所した児童に対しても職業支援や社会的自立に向けた援助を行っています。対象となる児童は、義務教育終了後の15歳~20歳までです。必要に応じて22歳の年度末までの間延長されることもあります。
■児童養護施設で過ごす期間の延長
現在、児童養護施設で過ごせる年齢は原則18歳までとなっていますが、引き続き必要と判断された場合、22歳の年度末まで支援を継続することができます。
現在、児童養護施設で過ごせる年齢は原則18歳までとなっていますが、引き続き必要と判断された場合、22歳の年度末まで支援を継続することができます。
■身元保証人確保対策支援事業
児童養護施設等を退所後、自立に向けてアパートの賃貸や就職する際に保証人が必要になってくる場面があります。しかし、児童の中には身元保証人を引き受けてくれる人を見つけることが難しくアパートの賃貸や就職が困難になる場合があります。
身元保証人確保対策支援事業とは、そのような状態を改善するための制度です。具体的には、施設長等が児童の保証人を引き受けた後、なんらかの損害を被った時に国と都道府県等が賠償額の一定額を支払うというものです。このようなサポートによって、施設長等が保証人になった場合の負担が減り、保証人を引き受けやすくなります。
児童養護施設等を退所後、自立に向けてアパートの賃貸や就職する際に保証人が必要になってくる場面があります。しかし、児童の中には身元保証人を引き受けてくれる人を見つけることが難しくアパートの賃貸や就職が困難になる場合があります。
身元保証人確保対策支援事業とは、そのような状態を改善するための制度です。具体的には、施設長等が児童の保証人を引き受けた後、なんらかの損害を被った時に国と都道府県等が賠償額の一定額を支払うというものです。このようなサポートによって、施設長等が保証人になった場合の負担が減り、保証人を引き受けやすくなります。
児童養護施設のこれから
社会的養護を必要とする児童の増加に伴って、それらの質と量の充実が求められています。具体的には、できるだけ一般家庭に近いような環境を提供するために小規模化やグループホームのような地域分散化が進められていくこととなります。
小規模化が進むことで児童一人ひとりと向き合える時間が増え、子どもと職員の関係形成が、一層重要になります。また、被虐待児や障害のある児童の増加に伴い職員の高い専門性が求められているため、職員の資質向上を目的とした研修事業が実施されています。
小規模化が進むことで児童一人ひとりと向き合える時間が増え、子どもと職員の関係形成が、一層重要になります。また、被虐待児や障害のある児童の増加に伴い職員の高い専門性が求められているため、職員の資質向上を目的とした研修事業が実施されています。
まとめ
様々な事情で子どもを養育するのが困難になってしまう場合もあるでしょう。残念ながら、虐待の通告件数も年々増加が報告されています。そのような状況をそのままにしておくことは、子どもにとっても保護者にとっても健全な状態であるとは言えません。
そのような状況となった時に、子どもを守り、居場所となり得る一つの手段が児童養護施設です。自分ひとりで何とかしようとするのではなく、誰かを頼ることも状況を改善する一つの手段です。もし、保護者の方で子どもの養育に困難を感じている方は、まずは児童相談所などの専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。
すべての子どもは社会全体で育てていく「社会的養護」という考え方に基づき、児童養護施設は設置されています。児童養護施設では子どもが健やかに暮らせるように子どもに寄り添い、サポートをしています。そのために、より家庭に近いスタイルの施設も増えています。
そのような状況となった時に、子どもを守り、居場所となり得る一つの手段が児童養護施設です。自分ひとりで何とかしようとするのではなく、誰かを頼ることも状況を改善する一つの手段です。もし、保護者の方で子どもの養育に困難を感じている方は、まずは児童相談所などの専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。
すべての子どもは社会全体で育てていく「社会的養護」という考え方に基づき、児童養護施設は設置されています。児童養護施設では子どもが健やかに暮らせるように子どもに寄り添い、サポートをしています。そのために、より家庭に近いスタイルの施設も増えています。

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