心療内科や精神科の対象となる病気や障害など

対象になる病気としては、下記のようなものが挙げられます。

症状の程度や原因によってはほかの診療科をすすめられる可能性もあります。

仮面うつ病

主な症状は吐き気や腹痛、倦怠感、動悸などです。

うつ病の中でも、心の不調が体の不調に隠れてしまっているものが「仮面うつ病」と呼ばれています。

うつ病によくある気分の落ち込んだ状態が見られず、頭痛やめまい、不眠といった症状が目立つため、内科で診断を受けても異常は見つからず、単に調子が悪いだけだと思い込んでしまうことも多くあります。

過敏性腸症候群(IBS)

腹痛や下痢、便秘といった腸の不調が見られる病気です。日常生活への支障は痛みによる不快感だけではありません。急におなかが痛くなってトイレへ駆け込む、出勤前にトイレから出られなくなる日が多いなど、学校や仕事に影響が出ることもあります。

症状を訴える人は男性と比べると女性が約1.6倍多く、年齢では30代までの比較的若い人に多く見られます。
機能性消化管疾患診療ガイドライン「過敏性腸症候群(IBS)」
日本消化器病学会 (著)
南江堂 (2014/4/1)
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自律神経失調症

自律神経とは、体のバランスを整える神経です。その自律神経のバランスが崩れることにより起こるさまざまな症状の総称を自律神経失調症といいます。なお、自律神経失調症は正式な病名ではありません。

症状は倦怠感、不眠、めまい、頭痛、動悸、食欲不振などさまざまです。寝込んで起き上がれないほどの症状になることは少なく、多くの人は「なんだか調子が悪い」という状態が長く続きます。
参考:自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)|厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-082.html

過換気症候群(過呼吸)

突然息苦しさを感じ、呼吸が乱れ、息が入ってこないように感じるのが過換気症候群の特徴です。動悸や胸の圧迫感のほか、手足のしびれや筋肉のけいれんを感じることもあります。

発症した場合、呼吸を遅くしたり止めたりすると症状は改善しますが、本人が呼吸をコントロールするのは難しいものです。紙袋などを口に当てて呼吸をするという対処法もありますが、医師の指示を仰ぐのが良いでしょう。

パニック障害

突然息苦しさや動悸、冷や汗、恐怖感などを感じてパニック状態になり、そのせいで社会生活に支障の出ている状態をパニック障害と言います。電車やエレベーターなど閉鎖された空間では「逃げられない」と感じるため、外出ができず、学校や会社へ行くことができなくなることもあります。

状況によってはだれもがパニック状態に陥る可能性はありますが、自宅でテレビを見ているときに突然、寝ているときに突然など、予期しないところで発作が起きるのが特徴です。

摂食障害

食事をうけつけなくなる「拒食症」と、無謀な食べ方を繰り返す「過食症」。この両方を合わせて摂食障害と呼びます。食べては吐く、を繰り返すこともあり、その場合は体内のカリウムが下がって不整脈を起こすこともあります。拒食により栄養状態が悪くなり、月経が止まることもあります。そのため、身体面へのアプローチが必要となります。

拒食と過食、行動は正反対ですが根っこは同じです。拒食から過食へ、過食から拒食へと症状が変化することも少なくありません。「やせたい」という思いから治療を拒むケースもあるため、まずは治療の必要性を理解するところから始まります。

バセドウ病

多くの場合は「内分泌科(代謝内科)」または「耳鼻咽喉科」を受診しますが、心理的なストレスが関与している起因している場合は心療内科でカウンセリングすることがあります。甲状腺の機能異常により起こるのがバセドウ病で、動悸や疲労感、発汗が主な症状です。脈拍も早くなり精神的にも落ち着かないため、「体が常に全力疾走をしている」と形容されることもあります。

まぶたの筋肉が緊張することで常に目を見開いているように見えたり、眼球の周りの筋肉が肥大して眼球が突出することもありますが、バセドウ病が必ずしも眼球への変化をきたすとは限りません。

心療内科における治療の流れ

心療内科や精神科ではカウンセリングを含めた診察、検査を経てそれぞれの症状に合わせた治療を行います。

診察(カウンセリング)

まずは医師に現状を伝えます。病歴や症状、薬を飲んでいるかなどはもちろん、原因になりそうなストレスや家族との関係、生育歴などを話します。もし同じ病状でほかの病院にかかっていた場合はそれも話しておくと良いでしょう。うまくまとめて話せないことも多いため、受診前に簡単に話す内容をまとめてメモしておくとスムーズです。

話しているうちに人間関係や仕事の相談をしたくなる気持ちも出てくるかもしれません。ですが、心療内科の医師は体の不調の原因を探るために話を聞いています。

悩みを聞いて答えを探してほしいという場合は、カウンセリングルームを利用するという方法もあります。じっくりと話を聞いてもらえ、一緒に考えてくれますが、健康保険が適用されません。

検査

問診のあとは体の不調の原因や程度を探るため、必要に応じて血液検査、心電図などが行われます。

心理状態や性格を知るために、心理検査(心理テスト)をすることもあります。簡単な質問に答える検査のほか、カードに描かれた模様を見て何に見えるかを答えるロールシャッハテストなど、あいまいな質問で深層心理を探る検査が行われることもあります。

治療

心療内科の対象となる病気は、原因にストレスなどがあると考えられます。そのため、生活習慣や考え方を変えることにより、症状が改善することもあります。

内科的な治療としては薬物療法があります。病気やその症状に合わせて抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬といった薬が使われます。最終的には薬物を使わなくても安定して社会生活を送れるように、徐々に薬を減らしていきます。

ほかには患者の無意識を探りストレスの背後にある深層心理を理解することを重視する精神分析療法、不安にまつわる行動を直接変えることに徹する行動療法、認知のゆがみ(思い込み)を正して心を軽くする認知療法といった心理療法が用いられることもあります。

診療にはどのくらい費用がかかる?

心療内科や精神科へ行こうと思ったとき、気になるのは費用ではないでしょうか。内科と違って問診(カウンセリング)の分の時間もかかるので、高額なイメージはあるかもしれません。

カウンセリングルームとは違って医療機関では健康保険が適用されます。そのため驚くような額にはなりません。ただし医療機関の診療では、初診以外は何十分も時間をとれるわけではないことも憶えておく必要があります。

初診の目安

病院によりますが、保険適用になるため、初診で払う費用の目安は2500円~5000円程度のことが多いようです。症状によっては薬や検査代が別途かかることもあります。

臨床心理士によるカウンセリングを行っている場合など、別途予約料が必要なところもあります。予約の要不要を含めて、行く前に病院のシステムを調べておくと安心です。

治療費の負担を軽減する自立支援医療制度

心療内科の対象となる病気には、自己負担が1割となる「自立支援医療制度」が適用されるものもあります。

利用には医師の診断書と市町村での申請が必要で、市町村や都市に指定された「指定自立支援医療機関」でなければ適用されませんが、大半の心療内科や精神科の医療機関は指定を受けています。

治療に時間と費用がかかる場合は、制度の適用について医師に相談してみると良いでしょう。
参考:自立支援医療(精神通院医療)の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html
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