AIロボは療育の達人!?欧州発の療育ロボ「QTrobot」のスゴイ機能を取材

ライター:林真紀
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ルクセンブルクの企業が、自閉症スペクトラム障害の子どもの療育をするAIロボットを開発したというニュースが入ってきました!遂に療育の世界でもAIが活躍する時代がきたようです。そして「ロボットが療育をする」というのは、発達障害児にとってどのような意味を持っているのでしょうか。LuxAI社の共同設立者・開発者のアイダ(Aida Nazarikhorram)さんに聞いたお話を元にしながら、紹介していきたいと思います。

わが家の息子、「ロボットが相手だと安心する」?

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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10346000331
わが家の8歳の息子が療育に行くとき、いつもとても楽しみにしていたことがあります。それは、病院の受付のところに「Pepper」くんというロボットがいてくれたことです。

息子は療育に慣れるまで、「今日は何をやるのだろう」「先生に叱られないかな」と予測できないことへの恐怖で、落ち着きがなくなっていました。けれども、「Pepper」くんと話をすると、心なしか少し気持ちが落ち着いているように見えました。

その後、息子の希望で犬のロボットを買いました。息子はこの犬のロボットのことも好きで、その後本物の犬を飼ったあとも、「僕はロボット犬のほうが好き」と言っていたほどでした。それは、本物の犬はどういう反応をするのか、どういう動きをするのか読めないから、怖かったのだそうです。(今はもう慣れました)

また、一時期、私のスマートフォンの「Siri」に話しかけることにハマっていました。「Siri」が相手だと、何時間でも話ができるようで、なかなかスマートフォンを返してくれないこともありました。

そのときに私は思ったのです。人間と違い、感情や態度がいつも一定のAIが相手だと、人間と話すときのような緊張感がなく、いくらでも話ができるのだな、と。心理的な負荷なくコミュニケーションが取れるのであれば、AIロボットが療育をしてくれたり、AIロボットが友達だったりしてもいいのかもしれない…とも。

漠然とそんなことを考えていた私に、なんと「発達障害児の療育を行うAIロボットが開発された!」というニュースが飛び込んできたのです。

開発者に聞く!QTrobot開発の背景は?

発達障害児の療育は人間がするもの、だって人間との関わり方を学んでいかなければならないのだから…そんな固定概念が私たちの中にあるかもしれません。その考えを覆す「QTrobot」というロボットがルクセンブルクの企業で開発され、注目を集めているのです。

オランダのアムステルダムで開催された「欧州CES 2019」(International Electronics Commercial Show/国際家電見本市)では、”Tech for Better World”部門でイノベーション・アワードを受賞しました。
LuxAI récompensée par le CES pour son robot (LuxAI社のロボット CESで入賞(フランス語))
https://paperjam.lu/article/news-luxai-recompensee-par-le-ces-pour-son-robot
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イノベーション・アワードを受賞したQTrobot
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私は居ても立ってもいられなくなり、開発した企業の共同設立者のアイダ・ナザリー(Aida Nazarikhorram)さんに連絡を取ってみました。

アイダさんによると、療育用ロボットの開発は2016年にルクセンブルク国立研究基金の助成対象となり、そこからLuxAIという会社を設立したとのことです。増加している発達障害児の療育ニーズに対して、療育を担当できる専門家が不足しており、これを解決するためにAIロボットの開発が進められました。ロボットが発達障害児の支援に高いポテンシャルを持つということは、これまでも多くの研究でいわれてきたそうです。

QTrobotはこんなことができる !

では、具体的にQTrobotはどのような形で療育を行うのでしょうか。

QTrobotの紹介

こちらの紹介動画を見ると、QTrobotを使った療育で以下のことを教えることができるといいます。

・表情
・コミュニケーション
・好ましい行動
・日常的生活スキル

カードゲームで表情の読み取りを教えるQTrobot

動作の模倣を教えるQTrobot

歯磨きのやり方を教えるQTrobot

人間が話すときには、たくさんの表情とボディランゲージを同時に発信します。それが発達障害の子どもにとって、習得が非常に難しいものであるとアイダさんは言います。しかし、QTrobotは人間のボディランゲージを上半身だけのシンプルな動きで表現するため、発達障害児が簡単に模倣できるそうです。

またQTrobotの表情は36種類もあり、多様な表現が可能です。その他にも、相手の言葉と顔と表情を認識する機能がついているので、発達障害児との相互コミュニケーションが可能です。

実際に使用する際には、療育の担当者や学校の先生などが操作をすることになります。そこで、ITやプログラミングの知識がない人でも、戸惑うことなく簡単にロボットの動作を組み込むことができるようになっています。担当者が自由に、その日の療育プログラムをつくることができるのです。

アイダさんは、QTrobotについて「発達障害児が安全でコントロールされた環境の中で、ソーシャルスキルを学ぶことができる」と話していました。つまり、ロボットが相手だと、発達障害児にとっての「想定外」のコミュニケーションが起きづらいのだと思います。ロボットは、決して相手を否定したり、叱ったりもしません。様々なことができるけれども、決してパターン以上のことはしません。それが、発達障害児にとっては「安全でコントロールされた環境」なのかもしれません。
LuxAI社のホームページ(英語)
http://luxai.com/
次ページ「実際に使っている子どもたちの反応は?」

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