クラウドファンディングでカードゲーム誕生!特別支援学校発の「すきなのどっち?」で、子どものチカラを育もう

ライター:平野佳代子
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特別支援学校の先生の手作り教材を商品化して販売するネットショップ、「tobiraco(トビラコ)」。数多くの教材を商品化し、全国の必要とする人のもとに届けてきました。この秋、ある教材をクラウドファンディングで商品化することに挑戦しました。なぜクラウドファンディングにこだわったのか、その思いを同社の代表・平野が伝えます。

素晴らしい教材を、たくさんの人に知ってほしい

特別支援学校で使われている教材の多くは、障害のあるなしにかかわらず、楽しみながら学べるものばかりです。子どもの発達にきめ細かく寄り添っていて、遊び感覚で取り組める要素がふんだんに盛り込まれているからです。

でも、このことはあまり知られていません。そもそも特別支援学校の教材を目にする人は少ないと思います。もったいない話ですよね…。
筑波大学附属大塚特別支援学校の手作り教材展示コーナー。
筑波大学附属大塚特別支援学校の手作り教材展示コーナー。質が高く種類も豊富
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筑波大学附属大塚特別支援学校で見かけた手作りの教材は、お店が開けるのではないかと思うほどのバリエーションがありました。私は、その中でもある教材に心惹かれました。それは、障害のあるなしにかかわらず楽しめるコミュニケーションゲームでした。

考案したのは、同校の佐藤義竹先生。これは、カードに描かれた2つのイラストのうち、どっちが好きか、なぜ好きかを答えるだけの、シンプルなゲームです。
教材を手にしている、筑波大付属大塚特別支援学校の佐藤義竹先生
筑波大学付属大塚語特別支援学校の佐藤義竹先生。手にしているのは、クラウドファンティング用に作ったカードの見本
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ちょっと硬い言葉になってしまいますが、この教材の教育的な狙いをお伝えすると、「自分で選ぶ(自己選択)」「自分で決める(自己決定)」「自分の思いを伝える(意思表明)」ことをゲームを通して体験できるということです。支援者がいつもそばにいると、どうしても自己選択、自己決定、意思表明の機会が少なくなってしまうんですよね。そんな子どもたちに、ゲームを通してたくさん機会をつくっていこうと考えられたものです。

教育的な意図はともかく、「どっちが好きか」を答えるゲームは、単純におもしろいと思いました。「コミュニケーションすることって楽しいんだ!」と感じられるゲームでもあります。

この学校だけでしか使われないのはもったいない。そんな思いから商品化しようと決めたのです。
筑波大学付属大塚特別支援学校の佐藤義竹先生の手作り教材
佐藤義竹先生の手作り教材。子どもたちにとても人気のあるコミュニケーションゲーム
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せっかく商品にするなら、特別支援学校で生まれた教材のおもしろさを、もっとたくさんの人に知ってもらいたいとも考えました。そこで活用したのがクラウドファンディングです。

筑波大学附属大塚特別支援学校でも全校あげて協力してくれました。特別支援学校の取り組みを社会にアピールする必要があると考えていたそうです。クラウドファンディングという時代の流れに合った方法を取り入れようという意識も高く、この点もありがたかったですね。
筑波大学附属大塚特別支援学校の柘植雅義校長(左)と佐藤義竹先生
学校をあげてクラウドファンディングに協力してくれました。柘植雅義校長(左)と佐藤義竹先生。筑波大学附属大塚特別支援学校(東京・春日)の校庭で。
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発達障害を知っている人も知らない人も賛同

商品名は「えらんで きめて つたえるゲーム すきなのどっち?」。クラウドファンティングのプロジェクト名は「発達障害の子がコミュニケーションの楽しさを体験できるゲーム『すきなのどっち?』」としました。

2018年8月22日にクラウドファンディングのサイトを立ち上げ、10月30日に終了しました。運営サイトには初日だけで3,000人以上が訪れてくれました。賛同し出資してくれた方は142名。目標金額110%達成!予想を超えた数に驚きました。142名の方たちは、必ずしも特別支援教育の関係者だけではありません。

「孫と一緒に遊んだら楽しいと思いました」
「絵がかわいくて、おもしろそう」
「うちの幼稚園で使わせて」

などのメッセージをいただき、特別支援教育の関係者以外の方たちも多数賛同してくれました。

「なになに、おもしろそう」と手にとってみた。それがたまたま特別支援教育の教材だった。それでいいし、それがいいと思っています。
発達障害の子がコミュニケーションの楽しさを体験できるゲーム 好きなのどっち?
「発達障害の子がコミュニケーションの楽しさを体験できるゲーム 好きなのどっち?」プロジェクトに142人が賛同し出資。目標額110%達成
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ねえ、先生、あのゲームやりたいな

話が前後しますが、手作り教材の子どもたちの反応を佐藤義竹先生に改めてお聞きしました。
教材を手にする、佐藤義竹先生
教材を手にする、佐藤義竹先生
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佐藤先生は、次のように話しました。

「子どもたちは、話し手の答えを聞いて、『へ~、そうなんだ』とリアクションしたり、『私はこっちかな』と答えたりしながら、やりとりを楽しんでいましたね。引っ込み思案だった子も、早く順番がこないかなあと期待に満ちた顔で、相手の話を聞くことに集中していました。順番を待つことや相手の話を聞くのが苦手な生徒でも、コミュニケーションの楽しさに支えられて自然と主体的に参加することができたように思います」

ゲームを楽しんだ生徒は、「先生、今度は電車シリーズもほしいな」と言っていたそうです。自分の「好き」をもっと語りたい、という思いが湧き上がってきたのでしょうね。
筑波大学附属大塚特別支援学校校内。
筑波大学附属大塚特別支援学校校内
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さらに佐藤先生の話は続きます。

「そのうち、『ねえ、先生、あのゲームやりたいな』と生徒たちからリクエストされるようになりました。発語や発話に課題がある生徒も、主体的に『こっち』と好きな方を指さして答えると、それを聞いて『そうなんだね』と受け止める姿が生徒同士でみられるようになりました。答え方も、好きなモノも人それぞれ。ゲームを通して生徒たちが互いを尊重している姿をみると、このゲームを作って本当によかったなあとしみじみ思いますね」

「あのゲームやりたいな」は、ゲーム考案者にとって最高のほめ言葉ですよね。
次ページ「子どもが質問を考えるようになった」

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