やるきスイッチ、やめるスイッチ、どうオンにする?「ゲームがやめられない」「毎回遅刻する」…身につけたい力が学べる『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』

ライター:発達ナビBOOKガイド
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合同出版
やるきスイッチ、やめるスイッチ、どうオンにする?「ゲームがやめられない」「毎回遅刻する」…身につけたい力が学べる『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』のタイトル画像

「ゲームやテレビがやめられない」「遅刻ばかりする」「お金の管理ができない」
日常生活の中でこのような困りごとが頻繁にある場合、それは「実行機能(遂行機能)」が低いことが関係しているかもしれません。実行機能とは「目標を遂行するために必要な機能」のこと。『実行機能をアップする37のワーク』(合同出版)では、自分の特性を理解し受け入れ、適切な目標を設定し、実行機能を高める方法をワーク形式で学べます。困りごとを抱えている人、困りごとをサポートする人に役立つ1冊となっています。

「実行機能」とはなにか?

実行機能にはいろいろな定義がありますが、1つは「目標に向かって行動するために必要な考えや行動、感情をコントロールする機能」のことです。普段何かするときにこの機能を意識することはあまりないかもしれませんが、それは行動する際の目標が習慣化・日常化しているから。たとえば「朝ご飯を食べる」という行動は特に目的など意識せず習慣化していますが、実は「動くためのエネルギーを補給する」という目標があっての行動なのです。

また、やりたくない気持ちを抑えて計画を立てながら行動する、これも実行機能の働きです。例えば苦手でやりたくない・面倒だと感じていても「宿題を終わらせる」「業務をやり遂げる」といったことは、その例です。
やる気スイッチをON! 実行機能をアップする37のワーク
高山 恵子 (著)
合同出版
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実行機能に関係する8つの要素

実行機能に関係する要素の中で、この本では重要な8つを紹介しています。
①起動
いわゆる「やる気スイッチ」です。

②計画立案
物事の優先順位を決め、最適な方法でプランを立てる機能。やりたいものを先に、やりたくないものは後回しに、という気持ちを抑えることも必要になってきます。

③時間の管理
いつやる、どのような時間配分でやる、時間を見ながら行動を調節する、という機能です。

④空間や情報の管理
環境をどのように整備すれば効率的に行動ができるか、整理整頓や情報の取捨選択に関わる機能です。

⑤お金の管理
お金を計画的に使う、自分のお金がいくらあるか常に把握し、収支のバランスを取る機能です。

⑥切り替え
今の感情や気持ち、行動をストップして、シフトする機能です。状況が変わったり、急に指示があったりしたときに臨機応変に対応する機能でもあります。

⑦ワーキングメモリー(作業記憶)
現在の情報と過去の情報(記憶)を一時的に頭の中に留めておく機能です。やるべきこと、指示の内容を覚えておいて、その作業を終了するまで記憶するときに使う、大切な機能です。

⑧集中と制御
今やるべきこと、1つだけに注意を向けることが集中です。そのためには、他に魅力的な刺激があっても、それに注意をそらさない制御機能が必要になります。

8つの要素の中でどのような困りごとがあるのか、つまずきやすいのか、まずは自分の状態をよく知ることが大切です。本書の巻頭にあるチェックシートで確認してみましょう。
実行機能チェックリスト
『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』より
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発達障害と実行機能の関係

発達障害のある人の中には、実行機能がうまく働かない人がいます。「自閉スペクトラム症(ASD)」や「注意欠如・多動症(ADHD)」のある人は実行機能が低いといわれています。では、発達障害がある人の苦手領域や特性と実行機能には、どのような関連性があるのでしょうか。

【自閉スペクトラム症】
ワーキングメモリーをうまく入れ替えること(アップデーティング)やさまざまな情報を切り替えること(シフティング)、加えて感情のコントロールが難しい傾向にあります。

自分の感情をしっかり知ることや、気持ちの切り替えのトレーニングが効果を発揮します。

【注意欠如・多動症】
目先のことに反応して動いてしまい、見通しを立てて行動する、待つことが難しい傾向にあります。実行機能でいうと、「計画力に関する能力の弱さ」のあらわれです。

ともに、実行機能を補ってくれるサポーターの存在が重要になってきます。

実行機能を高め、行動を引き出す37のワークとは

日常生活、学校生活あるいは社会生活の中では、さまざまな場面で「実行機能」が必要になってきます。本書では、具体的な場面を想定した37のワークを通し、「うまくいく条件を模索し、実行する脳の回路をつくり、実行能力を高める」方法を紹介しています。

小学生、中学生、高校生それぞれの年齢層のキャラクターが登場することで、具体性や親しみが増し、とても分かりやすい内容になっています。もちろん大学生以上でも活用可能です。実際に、「子どものために購入したけれど、自分も活用できる」という保護者の方もいます。

ここでは3つのお悩み行動と、それに対して実行機能を働かせるためのワークをご紹介します。

よく遅刻をしてしまう

遅刻した原因を考えるワーク
『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』より
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このワークでは、まず「遅刻の原因を考える」ことから始めます。遅刻をした日を思い出しながらどんな原因があったか探していきます。たとえば"自転車置き場が混んでいて、その後電車に乗り遅れた"というトラブルがあったら、それをワークシートの「原因欄」に書き込みます。そして、その原因以外にも遅刻の原因になりそうなことはないか、なるべく多く想像しシートに書き込みます。それらの原因に対し、どのような対策があるかも書き出していきます。

「自転車置き場が混んでいる」という原因に対しては、「混んでいることを想定して余裕をもたせる」という対策を書きます。他にも多くの場面を想定して書き出しておくことで、事前に対処できることが増え、遅刻も減っていきます。

これに関連した「何分でできるかな?」や「逆算のプランニング」などのワークにも併せて取り組むと、時間管理の実行機能もより高まり、遅刻を防ぐことにつながります。

お金の管理ができない

「買いたいものを衝動的に買ってしまう」「コツコツ貯めることができない」という悩みは多いですが、そういった人は自分のお金の流れが分かっていない可能性が考えられます。「自分のお金の流れを把握する」ワークでは、お小遣い帳ワークシートに1週間分の費目を書き出すことで、自分のお金の使い道を把握でき、生活するにはお金がかかるということを実感できます。

また、家族と一緒にワークに取り組みお小遣い帳の内容を共有することで、お金の使い道について話し合うきっかけにもなり、使い方がおかしい際には保護者が一緒に軌道修正することもできます。将来カード破産などしないように、子どものころからの習慣が大切です。

お金の流れを把握できたら、「『お金は有限』を実感する」、その次は「計画的にお金を使おう」と段階を踏みながらお金の管理方法を理解できるようワークが用意されているので、お金と上手に付き合う方法をステップに分けて学び、お金の管理の実行機能をアップさせることができます。
おこづかいの使い道を考えるワーク
『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』より
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テレビやゲームがやめられない

実行機能はやる気スイッチをONにするために大切な機能ですが、「やめなければいけないときに、やり続けたい気持ちを切り替えて、やめる」こともとても大切です。

「やめるスイッチ2つの入れ方」のワークでは、やりたいことを「ずっとやり続けてしまうとどのような結果になるか」とともに、「今やりたいことをやめたら、後でもっとよいことがある」という例も挙げています。
やりたいことをやめられるとどうなるかを考える際の図
『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』より
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ワークシートには、〇〇をやめることができたら、「①未来でどんな嫌な状況を避けることができるか」「②未来にどんなよいことが起きるか」の2パターンを書き込みます。こうすることで、自分に合った「やめるスイッチの入れ方」を見つけていくことができます。

「やめるスイッチ」を作動させたい場面として、耳にすることも多くなった「ゲーム依存」での困りごとも本書では取り上げられています。「ゲーム依存を予防しよう」というワークでは、ゲームをすることでどんなトラブルが起きているか、依存度はどのくらいかなどを具体的にチェックするとともに、ゲーム依存の対策を学ぶことができます。

手伝ってもらうことも「実行機能がうまくいく」大切な条件

実行機能には個人差があり、自然と伸びる人もいればサポートが必要な人もいますほかの人にヘルプを出すことも、実行機能を高めていくうえで大切な条件のひとつなのです。

また、自己理解が難しく、自身を正しくチェックできない人もいます。客観的にセルフチェックできているか確認する――サポーターの支援はそこからスタートします。

サポーターと支援を受ける人の特性の違いを知ること

サポーターと子どもの相性の一例
『やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク』より
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困りごとを抱えている人はもちろん、サポーター側にもそれぞれ特性があります。相性が合わずうまくいかない...ということも当然ありえるでしょう。しかしお互いの特性を知ることで、困りごとを抱えた人に寄り添い、一緒に考えながらよりスムーズにサポートすることが可能になります。

巻末の「本人×サポーターの実行機能タイプ別相性」では、『実行機能が強いサポーターと実行機能が弱い子どもの組み合わせ』を例のひとつとして挙げています。この場合サポーターが、「なぜできないの?」とイライラする気持ちを抑えること。そして子どもをじっくり観察してうまくいく方法を見つけ、具体的にやり方を教えることが大切だと記されています。

ほかにもさまざまな組み合わせが挙げられているので、支援する際の参考になります。

支援の引き算

サポーターは対象者の年齢によってもサポート方法を調節する必要があります。

小学生:その子に合った方法を親やサポーターが探し、モデルを示す。

中学生:1人でいろいろできるようサポートする。

高校生:1人でできることを増やし、解決できないときに先生や親に相談する。

年齢が上がるとともに、「支援の引き算」をすることが大切です。もちろん個人差があるので、順調に引き算できるわけではありません。うまくいく条件を一緒に探し、モデルを示し、トライした後のふり返りもしっかり行いましょう。このことが学校生活や社会生活をスムーズに送るための支援や合理的配慮を考えることにつながっていきます。

著者・高山恵子先生に聞く、「実行機能をアップする37のワーク」ができるまで

本書を手がけたのは、NPO法人えじそんくらぶ代表の高山恵子先生。自身もADHD(注意欠如・多動症)と診断され、小さいころからたくさんの失敗経験をしてきたそうです。今回は、本書をつくられたきっかけや背景などをお聞きしました。

「実行機能」はうまくいくためのキーワードだった

編集部:(以下――)この書籍をつくろうと思ったきっかけを教えてください。

高山:1990年代にアメリカの大学院に留学しているときに、当時この分野の第一人者のバークレー博士の「実行機能」の講演を聞きました。発達にアンバランスがあり、うまくいかないことが多かった私の人生の謎が解けたキーワードだったので、いつか日本に紹介したいとずっとチャンスを待っていました。

最近、脳科学や認知心理学の研究が盛んになり、やっとそのタイミングがやってきたという感じです。

――日常の中で困ったり迷ったりしやすい場面が取り上げられていますが、場面選定はどのようにされたのでしょうか。

高山:まず、実行機能に関わるキーワード(時間の管理、気持ちの切り替えなど)を選ぶところからスタートしました。ものごとを最後まで実行するためには、いろいろな機能が必要です。まず優先順位の高いものを選び、それに合わせて場面設定を考えました。

自分がADHDで実行機能障害がある当事者なので、過去の学校生活を思い出すと場面は泉のごとく湧き出てきました(笑)

日常生活「あるある」を取り上げ、分かりやすく

――ワークがとても具体的で、考え方なども分かりやすく解説されています。どのように考案されたのでしょうか。

高山:私が代表を務めている「えじそんくらぶ」で月1回、当事者や支援者向けに、自己理解を深めてストレスを軽減するための夜間講座を開いています。そこで使った説明・ワークや、その方が抱える問題に合わせて作ったシート等をベースに考えました。ですから、日常生活の「あるある」トピックで分かりやすく、実用性が高いと思います。

2020年1月から6月まで、この本をテキストにした「成人ADHD等の理解と対応」という講座を東京で行っています。興味のある方は「えじそんくらぶ」のホームページにアクセスしていただければと思います。
NPO法人えじそんくらぶ
https://www.e-club.jp/event/ev_edison/10379.html
――この本をどのような人に読んでもらいたいか、またどのように活用すると良いか、教えてください。

高山:実行機能は学童期前から徐々に発達し、20代後半くらいまで成長するといわれています。ただ、発達に偏りがある人は何らかの実行機能障害がある可能性があるので、周囲の人たちは実行機能の要素を細かく理解し、支援するときにはその子にとってどこが得意でどこが苦手なのかを見極めて、課題となることをサポートしてほしいと思います。

実行機能はさまざまな定義があり項目もいろいろありますが、当事者としてこれが重要と思う項目をあげました。学習だけでなく、毎日の生活にいたるまでカバーしています。まず8~9ページで実行機能チェックをして、苦手な点を見つけるところからスタートしていただければと思います。

本には分かりやすく小学生、中学生、高校生のキャラクターを登場させましたが、私のようにADHDがある大人でも使える内容です。うまくいかなくても落ち込むことなく、継続する習慣を少しでも身につけ、より豊かな生活を送るヒントにしてもらえればと思います。

またこの本には直接触れていませんが、実行機能に障害があるのは発達障害のある人だけではありません。高次脳機能障害や認知症の人も、脳が損傷することによって実行機能がうまく働かない状態があらわれます。

リハビリ施設などにいる支援職の人は、子どもたちだけでなく大人を見ていて同じ状態に気づかれるかもしれません。同じような状態が一定期間続いている人にも効果的と思われます。

ゲーム依存は「やめるスイッチ」が壊れた状態

――その他この本の制作にあたり、こだわった点、気をつけた点などあれば教えてください。

高山子どもたちを支える支援者・保護者から寄せられる悩みに答えられるような本を心がけました。とくに今社会的課題になっているゲーム依存を、実行機能を切り口にして「応用課題」として取り上げました。うまく息抜きに使っている間は問題ありませんが、やめるスイッチが壊れた状態だと依存になりやすいので注意が必要です。すぐに使っていただけるように、実践的に作成しています。

ほかにも遅刻、整理整頓、お金の管理など、とりわけ自立するときに大切なことを現場のニーズに合わせ、すぐに使いたいと思っていただけ、かつすぐに自己理解が深まるように気をつけて作成しました。本人の興味のあるところからチャレンジしていただいても良いと思います。

やる気スイッチは、「何かをやめるスイッチ」「(やりたいことでも)やらないスイッチ」と大きな関連があります。このメカニズムをしっかり理解したうえで、依存の問題を理解し予防に役立てれば、よりスムーズに支援できると思います。

みんなと同じではなく、それぞれの幸せのために

発達ナビユーザーへ向けて、高山先生からメッセージをいただきました。

高山先生「できないことをやみくもに頑張っても、頑張らせても、良い結果が出るとは限りません。むしろストレスがたまり、二次的な問題も出てくることが多いものです。すべての人が自分の特性を受け入れ、適切な目標を設定し、自分にとってうまくいく条件を探して前進してもらいたいと思います。親を含めた支援者の方にはそれをサポートしていただきたいのです。そのためにこの本を活用してもらえればと思います。
目標は、みんなと同じことができるようになることではなく、不完全な自分を好きになり、幸せに生活できることだと思います。」
PDCA「P=Plan、D=Do、C=Check、A=Action」ビジネス分野でよく使われる言葉ですが、実行機能をアップさせるためにも重要なサイクルになってきます。なによりのポイントが「一度でうまくいくと思わない」こと。

失敗しても、PDCAサイクルを念頭において「37のワーク」を行いながら、うまく条件を探し続けていきましょう。それこそが、実行機能を高めていく一番の秘訣かもしれません。

やる気スイッチをON!実行機能をアップする37のワーク

やる気スイッチをON! 実行機能をアップする37のワーク
高山 恵子 (著)
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【著者紹介】
高山恵子
NPO法人えじそんくらぶ代表、ハーティック研究所所長。
昭和大学薬学部兼任講師、特別支援教育士スーパーヴァイザー。
昭和大学薬学部卒業後、約10年間学習塾を経営。
1997年、アメリカトリニティ大学大学院教育学修士課程修了(幼児・児童教育、特殊教育専攻)。
1998年、同大学院ガイダンスカウンセリング修士課程修了。専門はADHD等高機能発達障害のある人のカウンセリングと教育を中心に、ストレスマネジメント講座などにも力を入れている。
主な著書に、『ライブ講義高山恵子Ⅰ特性とともに幸せに生きる』(岩崎学術出版、2018)、『イライラしない、怒らない ADHDの人のためのアンガーマネジメント』(講談社、2016)、『これならできる子育て支援! 保育者のためのペアレントサポートプログラム』(学研プラス、2016)、『発達障害に気づかなかったあなたが自分らしく働き続ける方法』(すばる舎、2012)などがある。

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