夜尿症が子どもや家族に与える影響
次に、夜尿症が発達障害のある子どもや家族に及ぼす影響についてです。
夜尿症が発達障害のある子どもに及ぼす影響って?
夜尿症が高学年まで続き、修学旅行などの宿泊が伴うような共同行事が増えてくると、夜尿症は自尊心の低下や劣等感などの心理的ダメージの原因になります[3]。
夜尿症は一般に「そのうち、よくなるだろう」とされがちですが[6]、発達障害のある子どもにとっては、発達障害の症状に加えて、夜尿症があることによる心理的ダメージが加わるため、軽視してはいけません[6]。
また、夜尿症は発達障害の病態にも影響を及ぼすことが指摘されています。聴性脳幹反応(音を出して脳の活動状況を確認すること)では、夜尿症のみの児やADHDのみの児よりも、夜尿とADHDを併発している児においてもっとも強く反応しており、ADHDのある子どもに夜尿症が合併すると、中枢神経の感情反応が強まり、反抗的な行動をとるなど感情コントロールの悪化を招く可能性があります[7]。また、夜尿症を合併したADHDは夜尿症のないADHDよりも、不注意の度合いが強くなり、夜間覚醒や自分で朝目覚める能力が低下しやすくなる場合があることも分かっています[8]。
夜尿症は一般に「そのうち、よくなるだろう」とされがちですが[6]、発達障害のある子どもにとっては、発達障害の症状に加えて、夜尿症があることによる心理的ダメージが加わるため、軽視してはいけません[6]。
また、夜尿症は発達障害の病態にも影響を及ぼすことが指摘されています。聴性脳幹反応(音を出して脳の活動状況を確認すること)では、夜尿症のみの児やADHDのみの児よりも、夜尿とADHDを併発している児においてもっとも強く反応しており、ADHDのある子どもに夜尿症が合併すると、中枢神経の感情反応が強まり、反抗的な行動をとるなど感情コントロールの悪化を招く可能性があります[7]。また、夜尿症を合併したADHDは夜尿症のないADHDよりも、不注意の度合いが強くなり、夜間覚醒や自分で朝目覚める能力が低下しやすくなる場合があることも分かっています[8]。
こうしたことから、発達障害があるからこそ、夜尿症を積極的に治療する必要性があると考えています[6]。夜尿症は治療することが可能な疾患です。夜尿症を治療することで明るさと自信を取り戻し、発達障害への対処や治療にも取り組みやすくなります[6]。
夜尿症が家族に及ぼす影響って?
夜尿症は、子ども自身だけではなく、その家族、特に母親の心理状態にも大きな影響を与えます。子どもの夜尿が続くことで、日常のイライラ(デイリーハッスル)が蓄積し、感情的になり子どもを強く叱ってしまうことはありませんか。そして、そうした行動を起こしてしまったことを省みて、深く落ち込んだことはありませんか。
子どもは夜尿をなかったことにしようという心理的な防衛機制が働くため、実際は落ち込んでいても平気な顔でとりつくろうとすることがありますが、デイリーハッスルが蓄積してしまった母親は、夜尿をしたのに平気な顔をしている子どもを見ると、夜尿を治す気がない、反省もしていない、親の言うことを聞かないと誤解し、やがて子どもを受容できないという嫌悪感をもってしまうリスクがあります。また、家族や祖父母から子どものしつけ方が悪いと言われてしまうと、より自責感も抱きやすくなります[9]。
発達障害のあるお子さんの保護者は、いろいろな事象に加え夜尿があることで、より親の責任であるかのような錯覚に囚われ、悩みが深刻化することがあります。このような嫌悪感、自罰感、自責感は「母親失格」という負の心理的刻印[9]としてお母さんを傷つけています。
このように、夜尿症と発達障害の両方があるご家族では、お子さんとその親の両方が負の感情を持ちやすく、お互いの負の感情が連鎖して、より深刻な状況を引き起こすこともあります。この負の感情の連鎖を断ち切るためにも、夜尿症と発達障害の特性(原因や対応法など)を理解することが重要です。
子どもは夜尿をなかったことにしようという心理的な防衛機制が働くため、実際は落ち込んでいても平気な顔でとりつくろうとすることがありますが、デイリーハッスルが蓄積してしまった母親は、夜尿をしたのに平気な顔をしている子どもを見ると、夜尿を治す気がない、反省もしていない、親の言うことを聞かないと誤解し、やがて子どもを受容できないという嫌悪感をもってしまうリスクがあります。また、家族や祖父母から子どものしつけ方が悪いと言われてしまうと、より自責感も抱きやすくなります[9]。
発達障害のあるお子さんの保護者は、いろいろな事象に加え夜尿があることで、より親の責任であるかのような錯覚に囚われ、悩みが深刻化することがあります。このような嫌悪感、自罰感、自責感は「母親失格」という負の心理的刻印[9]としてお母さんを傷つけています。
このように、夜尿症と発達障害の両方があるご家族では、お子さんとその親の両方が負の感情を持ちやすく、お互いの負の感情が連鎖して、より深刻な状況を引き起こすこともあります。この負の感情の連鎖を断ち切るためにも、夜尿症と発達障害の特性(原因や対応法など)を理解することが重要です。
次回は、夜尿症の治療/対策、家族や周囲の望ましい対応、病院のサポートの受け方についてご紹介します。
東京成徳大学 田村節子(学校心理士スーパーバイザー、公認心理師、臨床心理士)
東京成徳大学応用心理学部臨床心理学科教授。東京成徳大学大学院心理・教育相談センター長。学校心理士スーパーバイザー。公認心理師・臨床心理士。
学校心理学に基づく研究、および実践の専門家。現在、家庭、教育、医療との連携について夜尿や発達障害の子どもに焦点をあてて研究と実践を行っている。
学校心理学に基づく研究、および実践の専門家。現在、家庭、教育、医療との連携について夜尿や発達障害の子どもに焦点をあてて研究と実践を行っている。
【引用文献】
1. 石崎優子. 夜尿症研究 . 2011; 16: 11-15
2. Robson WL, et al. South Med J. 1997; 90: 503-505
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9160067
3. 夏苅郁子. 児童青年精神医学とその近接領域. 2008; 49: 336-353
4. 夏苅郁子. 夜尿症研究. 2011; 16: 63-66
5. 平谷美智夫. チャイルド ヘルス. 2011; 14: 1333-1336
6. 大野友子. 小児看護. 2007; 30: 112-115
7. Equit M, et al. Acta Paediatr. 2014; 103: 868-878
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24799133
8. Elia J, et al. J Pediatr. 2009; 155: 239-244
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19446845
9. 田村節子. 小児科臨床. 2016; 69: 1263-1271
10. 田中幸代. 大阪小児科学会誌. 2011; 28: 12
11. 池田裕一. 特別支援教育研究. 2016; 16: 29-31
12. 石崎優子. 外来小児科. 2013; 16: 364-367
1. 石崎優子. 夜尿症研究 . 2011; 16: 11-15
2. Robson WL, et al. South Med J. 1997; 90: 503-505
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3. 夏苅郁子. 児童青年精神医学とその近接領域. 2008; 49: 336-353
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5. 平谷美智夫. チャイルド ヘルス. 2011; 14: 1333-1336
6. 大野友子. 小児看護. 2007; 30: 112-115
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24799133
8. Elia J, et al. J Pediatr. 2009; 155: 239-244
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19446845
9. 田村節子. 小児科臨床. 2016; 69: 1263-1271
10. 田中幸代. 大阪小児科学会誌. 2011; 28: 12
11. 池田裕一. 特別支援教育研究. 2016; 16: 29-31
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