「社会の日常」が破壊されている今、ASDの宇樹が試している生活習慣、セルフケア

2020/04/18 更新
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新型コロナウイルス感染症の流行により、緊迫した社会情勢が続く昨今。ASDのある人は「いつもと同じ」「見通しが立っている」状況でないと不安を感じがちです。今のような先の読めない非常事態は苦手でしょう。ASDの私が最近試している、不安への対処法をまとめました。

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宇樹義子
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「自分の中の日常」を保つ作業にエネルギーを割く

「いつもと同じ」が安心する私は、「社会の日常」がうまくまわらなくなっている今、せめて「自分の中の日常」を保つように、よくよく注意を払っています。

「自分の中の日常」を保つことに、意識して多くのエネルギーを向ける

私たちが今経験しているのは、発達障害のない人だって未経験の、かなりのストレス状態です。生命の危険、経済的リスクがふりかかり、生活習慣の変更をせまられているのです。誰だって心身のバランスを崩して当然。発達障害者ならなおさらです。
私の場合、体感では「エネルギーの60%ぐらいを、今の環境を乗り切るために使っている」感じです。発達障害者には自分の疲れや緊張を自覚できない人も多いので、自分の心身の健康を保つことに、意識して極力多くの手間やエネルギーを割いてみましょう。「ちょっと手間をかけすぎなのではないか」ぐらいに意識してみてちょうどではないかと思います。

「生活習慣の断捨離」をする

Twitterでやりとりさせていただいた方が「こんなときには『日常の断捨離』をするのがいい」というようなことをおっしゃっていて、とてもいい言葉だと思いました。
この「日常の断捨離」を私なりに言い換えれば、「生活習慣の断捨離」です。
1.今までなんとなく続けていた生活習慣を数え上げてみる
2.数え上げた生活習慣が、自分の心身の健康のために不可欠だったのかを吟味する
3.不可欠でない生活習慣、かえって負担になっているような生活習慣を思い切って手放してみる
これを、一般的に言われている「モノの断捨離」で言い換えてみるとこうです。
1.今までなんとなく持っていたモノを数え上げてみる
2.数え上げたモノが、自分の心身の健康のために不可欠だったのかを吟味する
3.不可欠でないモノ、かえって負担になっているようなモノを思い切って手放してみる
イメージできたでしょうか。生活習慣も、モノと同じで断捨離していくことができると思うのです。部屋と同じように生活習慣をすっきりと整理して、省スペースならぬ、省エネルギーで生活できるように調整していってみましょう。

「きょう一日」だけを見ていればいい

今回のような非常事態では、まずは「一日ずつをそこそこ健康に乗り切る」ことが大事です。
今まで私たちは、ロングスパンで見た将来を念頭に、「よりよい自分のために、よりよい家族や社会のために」といろいろ努力してきたはずです。私たちの生活や社会が今後もおおよそ同じように回っていくことを前提に、人間関係や趣味を楽しんだり、ときにはそれらの活動について愚痴を言ったりもしてきました。
しかし、今の私たちが意識すべきなのは、おそらくは「きょう一日」、長くてもせいぜい「きのう、きょう、あした」の三日間ぐらいの時間軸ではないでしょうか。逆にいえば、それ以上の時間軸のことはあまり考える必要がありません。なぜなら、事態はあまりに刻一刻と変わっていっており、一週間や一ヶ月あとに、何がどうなっているかもわからないからです。
とはいっても、ここ一ヶ月の日用品の家庭での在庫のことについて考えたり、この半年にかかわる経済的支援についての情報収集をしておくことは必要かもしれませんよね。ここで私が強調したいのは、「社会のありかた自体が大きく変わったのだから、以前どおりの生活習慣を続けなければと気負う必要はまったくない」ということです。
たとえば……
「子どもの生きやすさを考えて、苦手なママ友づきあいを我慢して続けてきたけど、まあいいや。きょう一日、私たち家族が健康で乗り切れればいい」

「一日一回、誰かを笑わせられたら万事OK」

「よりよい仕事をするためにと資格の勉強をしてきたけれど、とりあえず諦めてしまおう。きょうもあしたも、私が家族のために元気な自分でいられればいい」

「昨日よりもきょうはすっきり起きられたから100点」
こんな感じで乗り切ってみてはどうでしょうか。

質の良い睡眠をとるために全力を注ぐ

常にできるだけ質の良い睡眠がとれるような工夫もしています。

精神的なストレスがかかると睡眠の質が低下しがちです。ストレスによって質の悪い睡眠が続くと、今度は身体の調子が悪くなります。睡眠で疲れが回復できなくなると抵抗力も落ちるでしょうから、「良い睡眠のためには死んでもいい」ぐらいの気持ちで生活しています(笑)。

薬の調整をする

常に主治医と連携し、ていねいに薬の調整をしています。

私は今回、初めて睡眠導入剤を処方してもらいました。この睡眠導入剤がよく合っているのもあって、毎晩かなり熟睡できています。自分で睡眠導入剤の種類について調べ、依存のリスクが少なくて自然な眠気を促してくれる、新しいタイプの睡眠導入剤を選んだので、安心できています。

日中は、漢方内科医から処方してもらった、不安によく効く漢方薬と、主治医から処方してもらった、てんかんや双極性障害の治療にも使われる薬を追加しています。

リラックスする時間をとる

よく眠るためには、夜になったらタイミングよく脳みそのスイッチがオフになってくれることが必要です。昼の間に心身の緊張を高めすぎないよう、リラックスする時間を多めにとるように心がけています。

もともとほとんど家から出ない私でさえ、外出を自粛するようになってからは運動不足でイライラしたりするので、リラックス時間にはストレッチなどでできるだけ身体を動かすようにしています。

緊張が出がちな人は歯を食いしばっていることも多いのではないでしょうか?私はアゴまわりを中心にほぐして、深い呼吸ができるようにします。スマホアプリを使ってマインドフルネス(瞑想のようなもの)も実践しています。

天気のよい日には、感染リスクの低い屋外を散歩することもあります(マスクをし、人混みを避けています)。今の時期、あちこちが花ざかりで心が和みます。

「充実した時間」をとる

出典が思い出せないのですが、ずいぶん昔、「眠れない人は『生きることに実感を持てない人』だ」という話を目にして、なるほど! といたく納得したことがあります。

なんでも、眠りは「小さな死」であり、安心して眠る(小さな死を迎える)ためには「私はきょう、十分に生きた。この生に満足している」という実感が必要なのだそうです。

このため私は「よい睡眠をとるためには、単に一日リラックスして過ごすことだけでなく、なんらかの達成感や充実感を得られるような活動もしたほうがよいのだろうな」と思っています。

「充実した時間」では、自分の興味分野のことに没頭したり、こだわり行動をあえて爆発させたりしています。お菓子やパンを焼いたり、情報を集めて整理したり、ほのぼの系の漫画を読んだり、映画・音楽鑑賞したり。仕事仲間と「そのうちこんなことやりたいね」などと夢のある話をすることが、想像以上にエネルギー源になってくれたりもします。

私の場合、見通しが立っていると安心するので、新型コロナウイルスについての情報収集はある程度しておいたほうが落ち着きます。しかし、科学技術振興機構による以下の発表を念頭に、「新型コロナウイルス関連情報に触れるのは1日最大4時間まで」を目安にしています。

自分を客観視する、非常手段を用意しておく

普段、活動量計という装置をつけて生活し、自分の睡眠の質や自律神経の状態を客観視できるようにしています。発達障害者には自分の心身の状態を自覚しづらい人も多いですが、こうした活動量計などの機器に頼ることで、自分の状態を把握しやすくなるのではないかと思います。自分の状態の監視が習慣づくと、自分のどんな生活習慣が心身によくて、どんな生活習慣がよくないのかの検証もしやすくなっていきます。

いろいろ工夫しても対処しきれないときは、誰にだってあります。私は、自分で自分の睡眠の質や自律神経の状態をどうにもできなくなったときの非常手段を複数用意しておくようにしています。以下のような感じです。

・信頼できる人に相談する
・オンラインカウンセリングを受ける
・鍼灸治療を受ける

いずれにしろ主治医にあらかじめ「自分でこういった対処をとろうと思うが、おかしくなったら引き戻してください」と伝えてあります。

「自分の中の日常」を保てなくなっても自分を責めない

私は今のところ幸い元気に過ごせていますが、ここまで書いたことをやってみても「日常を保つ」ことができない、あるいは「日常を保つ努力」自体ができなくなった場合は、それはすでに病的な状態ではないかと思います。

病気の場合、感じることの多く、できないことの多くは病気のせい。本人のせいではありません。本人の心がけではどうにもならないし、こうした状況下では誰が病気になっても無理はありません。そもそも、努力ができるかどうか、その努力が実を結ぶかも、本人が与えられた環境も含めた運みたいなところがあるので、本人のせいではありません。ともかく自分を責めないことです。

「気分の落ち込みが晴れない状態が二週間以上続いたらうつ病」という指針(※)があるので、二週間以上どうにもならないときには速やかに病院に行きましょう。

いつかみんなで再び日常を味わう日のために

今はいつ何がどうなるのか見通しが立ちませんが、いつか、少しずつ私たちに日常が、それももしかしたら今までとはまた少し違った日常がやってくるときがくるかもしれません。その日まで、そうっと、一日ずつ乗り切っていきましょう。果樹が実をつけるはるか前に、人知れず地面の下で健康な根を張っていくかのように。
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