ディスレクシアの子どもたちへ――やみくもに頑張るのではなく「適切な練習」を。小児科医・平岩幹男先生が贈る『読むトレGO!』

ライター:発達ナビBOOKガイド
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合同出版
ディスレクシアの子どもたちへ――やみくもに頑張るのではなく「適切な練習」を。小児科医・平岩幹男先生が贈る『読むトレGO!』のタイトル画像

聞く・話すことは問題なくできるのに、文字を読むことがむずかしい学習障害「ディスレクシア」。文字を意味のある言葉としてとらえて「読める」ようになるには、ただ頑張るだけではむずかしいものです。理論的にわかりやすく「読む」練習ができる本「読むトレGO!」を、著者の平岩幹男先生からのメッセージを交えてご紹介します。

ディスレクシアについて理解して、「読む」トレーニングができる

聞く・話すことは問題なくできるのに、文字を読むことがむずかしい学習障害「ディスレクシア」。理論的に分かりやすく「読む」練習ができる本「読むトレGO!」について、著者の小児科医・平岩幹男先生のメッセージを交えてご紹介します。
読むトレGO!: スモールステップ読む練習帳
平岩幹男 (著)
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「読むトレGO!」は、大きく2つの内容で構成されています。前半は【かいせつ編】。ディスレクシアとは何なのか、どういうトレーニングが必要なのかという解説です。後半の【トレーニング編】はドリルのような実践編。ひらがな、カタカナ、漢字入り語句、同音異義語、四字熟語、そして「腕試し」として中学生以上の内容も収録しています。

そもそも、「読む」とはどういうことでしょうか。たとえば、「いぬ」と書かれた文字を、犬という動物を意味する言葉として認識するには、私たちはこんな過程を経ています。
子どもが「犬」という動物を知っていて、「い」と「ぬ」あるいは「犬」が文字であることを認識していて、それぞれに「いぬ」という音が割り当てられていることを理解していることが必要です。「い」・「ぬ」ではなく「いぬ」と音のまとまりとして認識できる、発音できることが必要なのです。(p9より)
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「読む」とはこんなプロセスを伴っています。これがディスレクシアを抱えていると、非常に難しくなります。もちろん、文字を読めるようになるためには、どんな子どもでも練習が必要です。ただディスレクシアの場合、もう少し丁寧な方法で「読む」練習が必要となります。

たとえば、トレーニング③「ひらがな清音2文字」では、2文字の濁点のない単語が並んでいます。これを声に出して読みます。
トレーニング3「ひらがな清音2文字」
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音で聞けばわかる単語を、文字として見ても意味をとらえられるように、声に出して読んでみることが練習となります。【トレーニング編】では、教育指導要領に沿って、ひらがなからスタートして、学年ごとに習う漢字まで読めるように、練習する語句が並んでいます。
トレーニング6_7
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「読めない」ことが、学力低下に結びつくことをストップさせたい

著者である平岩幹男先生は、自閉症スペクトラム障害の子どもをたくさん診てきた小児科医です。先生が診てきた中には、読むことに困難さのある子どもたちも数多くいました。

「読むトレGO!」の前著である「ディスレクシア・発達性読み書き障害トレーニング・ブック」のあとがきには、「現実に読むことができない子どもがいて、その子たちは文字が読めないままに学校に通い、うまくできないことを強制されているかもしれない、それでも、また、早い段階でトレーニングすれば、学力の低下も防ぐことができる」ということも伝えられています。

これからの社会は、ICTが進化して読み上げ機能なども普及し、必ずしも文字を「読む」ことができなければ困る、とはいえなくなっていくでしょう。
教科書バリアフリー法(2008年に施行された「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」)では、必要に応じて教科書のデジタルデータの提供、活用も定められています。デジタルデータであれば、大きさを変えたり、フォントを自分の読みやすいものに変えたりすることも可能です。(p38)
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でも、現時点ではまだ、読めないことによって、学校の勉強についていけなくなるということが起こり、将来的な仕事にも影響することがあります。

ディスレクシアを囲む環境は、今、どのようなことになっているのでしょうか。ほかの障害に比べても、まだまだ知られていないことが多くありそうです。

平岩先生「ディスレクシアを抱える人の数は、人口の数%を占めるといわれ、さらに日本では文字種がひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字と多いために、欧米よりも人数が多い可能性があります。それにもかかわらず、適切に診断対応をされていないのが現状です。そのため、診断概念やトレーニングについての啓発を行ってきました。

日本では特に、ディスレクシア自体が広く認識されているとは言えません。『読む』困難さによって、会話には困難さを伴っていなくても、知的な遅れと判定されることが多いという現状があります

【かいせつ編】には、正しい対応の重要性について書かれています。
しかし、あくまでそれは診断されていて、本人がそれを知っている場合に限られ、診断されていなければ対応もされていないことが少なくありません。(中略)なぜディスレクシアに対応が必要かといえば、適切な対応がなければ、読むことができないために情報量や語彙が少なくなり、本来の知的能力に見合った社会生活(就学、就労や収入を含みます)を送ることが困難になることがあるからです。(p15より)
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だからこそ、適切な対応としての「読む練習」は必要であり、ディスレクシアかもと気づいた時点で、練習を始めることが大切なこととなるのです。

「ちゃんとやりなさい」ではなく系統立てた練習が必要

話せるのに、読むことができないと、「勉強を怠けている」と見られることが多く、そこで「きちんとやりなさい」と言われても、子どもにとっては混乱するばかりでしょう。だからこそ、系統立てた練習が大切です。

平岩先生「『読む』障害がある場合、程度の差はあれ書きの障害も伴いますが、これについても『きちんと書きなさい』などの精神論対応のみで終始していることが多いのです。

文字を覚えるときには、実際に使用する『語句』として学んだ方が使えるようになります。たとえば漢字の学習は、長い文章を読んだり、逆に漢字一文字だけを書いたりする練習よりも、意味のある語句の学習をすることで習得することを目指します。語彙を増やす、つまり知っている言葉を増やすということです。

読みの困難さがある場合、語彙が少ないことが多いので、読んで覚えようとするよりも口に出して意味を理解してから読むことをお勧めします。1日に5~10の語句の練習をするだけでも、積み重ねれば大きな力になるでしょう。また、学習についていけなくなった場合に、理解できる学年までレベルを下げて学び直しをすることも大切です。『読むトレGO!』は、この点も配慮しています」

ディスレクシアへの対応は、まず気づくことから

こうした練習で対応してあげるためにも、まずは「ディスレクシアかも?」と気づくことがスタート地点となります。

平岩先生会話の問題がないにもかかわらず、国語のテストの点が低い、算数の計算問題はできるけれども文章問題でつまずく、そうしたときには読みの困難さを抱えている可能性を考えてみてください。状況に応じてトレーニング法もありますし、合理的配慮を受けることができる場合も増えています。

この本は、読みの困難さを抱える子どもたちすべてに読んでほしい本です。ディスレクシアと診断されている場合もあるでしょうし、知的課題を抱えて学びの遅れに直面している子どもたちもいると思います。

学校の教員や保護者の方にも、ディスレクシアをはじめとした読みの困難さについて知ってもらいたいし、読めるようになるための練習方法がある、ということを知っていただけたらと思っています。そのうえで、『読むトレGO!』を活用してほしいと願っています」
私が外来で診ている子どもの中には、15歳までに小学校4年生レベルをマスターしようと、こつこつと学習している子どももいます。小学校2年生の漢字入り語句も、1日5個ずつ練習すれば、単純計算で2カ月くらいでできるようになるかもしれません。(p45より)
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Nintendo Switchと連動してゲーム感覚で練習できる

【トレーニング編】のページを眺めると、一見「ドリル」のように見えるかもしれません。ところが、この「読むトレGO!」の練習がドリルとはちょっと違うのは、Nintendo Switchのゲームソフトと連動していること。

平岩先生「読むこと自体が悩みの子たちは、やさしく書かれたはずの本でも、読むことに大きな抵抗を示します。そんな子どもたちを救うために、ゲームという手段が取り入れられています。ゲームで遊んでできるようになったことを本で試す、本で練習してゲームで試すという両方向で楽しみながら練習できるのです」
字を見ただけで泣きそうになってしまう子どもたちが、Nintendo Switch であれば喜々として遊んでいたり、ロールプレイングゲームの説明や、画面の下に出る指示の文章を何とか読みこなしたりしている(p46)
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楽しみながら続ける大切さ

続けていくためには、楽しみながら、がとても大事。文字を「読む」ことが苦手かもと気づいたら、「読むトレGO!」がきっと味方になってくれますね。

文/関川香織
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