選択の下し方で未来はどう変わる?マンガで学べる『10代のためのソーシャルシンキング・ライフ』で、家庭・学校のさまざまな状況をハッピーエンドに!

ライター:発達ナビBOOKガイド
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金子書房
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「ソーシャルシンキング」とは、他者の感情や考えを推察すること。人が社会で生きていく上で欠くことのできないスキルです。私たちはこのスキルを使いながら「その場に合った求められる行動の選択」を繰り返しています。選択によって、状況は「いい方向」にも「悪い方向」にも変わります。『10代のためのソーシャルシンキング・ライフ』では、同じ状況下で下す選択によって「いい方向」および「悪い方向」にいくパターンを漫画で分かりやすく紹介。中高生にも理解しやすく、ソーシャルシンキングのスキルを高めることができる1冊です。

私たちを常に取り巻く「社会的状況」とは?

本書には、「社会的状況」という言葉が頻繁に出てきます。
社会的状況とは、そのとき自分がいる場所や時間、周りにいる人々によって、何かをしたり、言ったり(あるいは、しなかったり、言わなかったり)することを求められている状況のことです。

この言葉の内容を理解することで、初めて「自分にとって最良の選択」ができるようになります。

たとえば、「授業で質問する」という場合の社会的状況は、

場所:学校

時間:教室にいる大部分の時間

周りにいる人:学校の生徒と先生

自分に求められていること:質問をする前に手を挙げて、先生に当てられるのを待つ


ということになります。
10代のためのソーシャルシンキング・ライフ: 場に合った行動の選択とその考え方
パメラ・クルーク (著), ミシェル・ガルシア・ウィナー (著), 黒田美保 (監修, 翻訳), 稲田尚子 (監修, 翻訳), 高岡佑壮 (翻訳)
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社会的状況には明らかなルールと隠れたルールがある

社会的状況には、そのケースに応じて必ずルールがあります。そのルールははっきりと説明されない、あるいは隠れていることも多いので、それを理解・推測する力も必要です。

先ほど挙げた例でいえば、先生に当てられる前に勝手にどんどん答えるという選択をしてしまうと、「周りの生徒が不快に思い、せっかく答えたのに先生にも怒られ、自分自身も不愉快な気持ちになる」という結果になりかねません。

ルールを推測・理解したうえで「自分に求められている事柄を理解し、その事柄を実行するために選択を下す」ことが大切なポイントとなります。

そして意識すべきなのは、「自分の選択した行動(言葉)によって、周りにどう思われるかが決まってくる」ということです。

選択の下し方にもタイプがある

選択を下すにもさまざまな方法やタイプ、癖があるようです。その中でも、本書では主に4つのタイプが挙げられています。

1.自動運転型
自分が置かれている社会的状況をまったく意識せず、ともかく素早く行動しようとするタイプ。「自分の言動が周りにどう影響するか」をまったく考えないため、他人を傷つけたり困らせたりする。

2.紋切り型
社会的状況を少しは意識するものの、選択方法がいつも同じというタイプ。「自分の選択する方法が最善でストレスレス」だと思い込んでいる。

3.運任せ型
文字通り、運を天に任せて選択を下すタイプ。いい方向にいくか悪い方向に転ぶか、成功率は50%しかなく、とてもベストな選択といえない。

4.ソーシャルシンカー
置かれた社会的状況を理解して選択を下すタイプ。いい換えればソーシャルシンキングのスキルが高いタイプ。さまざまなストラテジー・コード(ある目的を達成するため、総合的・合理的に計画を進める方法)を使えるので、理想のタイプともいえる。

本書の漫画でも、登場人物はいずれかのタイプに当てはまる選択の下し方をします。同じ場面で、自分が、あるいは自分の子どもがどのタイプの選択を下しそうかを考えながら読むと、この本をさらに有効活用できるかもしれません。

ソーシャルフォーチュンとソーシャルフェイト

自分が社会的状況の中で求められる行動を選択した場合、「ソーシャルフォーチュン」(ハッピーエンド)への道を進むことになります。反対に、求められていない行動を選択してしまった場合は「ソーシャルフェイト」(バッドエンド)に向かうことになってしまいます。

マップと道

本書では「対人行動マップ」を使って、ある行動の選択をした場合、どのような「道」をたどっていくのかを学んでいきます。対人行動マップは、必ず社会的状況(周りに他人がいて、何らかのルールが存在する)とセットになっています。

このマップはいわゆる「地図」とは違って、すごろくのように一本の線をたどっていく明確なものです。マップには2つの道、つまり「ソーシャルフォーチュン」への道と、「ソーシャルフェイト」への道があります。では、具体的にどのように道をたどっていくのでしょうか。

1.あなたが何をするかによって、他人がどう感じるか決まる
 例:もう寝る時間で、お母さんがボブに「テレビを消して」という。それに対し、ボブは「わかった」といってテレビを消す。

2.周りの人が、あなたのしたことについて何らかの感情を抱く
 例:ボブが素直に消した(望ましい行動をした)ので、お母さんの感情は穏やか。

3.あなたの行動をどう感じるかで、周りの人のあなたに対する接し方が変わってくる
 例:お母さんは小言をいわず部屋を出ていく。「テレビを消してくれてありがとう」と言うかもしれない。

4.周りの人のあなたに対する接し方によって、あなた自身がどう感じるかが決まる
 例:ボブはお母さんの優しい接し方によって、「穏やかでリラックスした気持ち」あるいは幸福さえ感じることができる。

ここでは、常にあなた(自分自身)と周りの人(相手)の感情が深く関係してきます。上記のように自分も相手も穏やかで幸せな感情を抱くことができれば「ソーシャルフォーチュン」ですが、テレビを消さないあるいは口答えをするという選択をすれば、「ソーシャルフェイト」の道をたどることになってしまいます。

選択がほんの少し違うだけで、進む道は大きく変わってしまうのです。

ソーシャルフェイトの道に進んだときこそ学びどき

ソーシャルフォーチュンへの道へ進むためのスキル(ソーシャルシンキング)を学んだり、他人の行動をみて「求められていない選択をしている」ことに気づいたりするのは、比較的たやすいこと。
しかし、現実の自分自身の生活において、下した選択がソーシャルフェイトの道に向かってしまうということは必ず起こるものです。そう、周りに不快な思いをさせないこと、迷惑をかけずに生きることは不可能。

ソーシャルフェイトの結果になってしまった選択をした場合は、その経験をもとに、次はソーシャルフォーチュンの道に向かう選択をすればいいのです。そのような経験を積むことで、ソーシャルシンキングはもちろん、問題解決や対応能力のスキルも身についていきます。

どんな行動を取るか選択を下す前に、知っておくべき3つのこと

ソーシャルフォーチュンかソーシャルフェイトか…自分が進む道に対してどのような行動を取るか選択を下す前に、ぜひ知っておきたい、大切な3つのポイントが紹介されています。

周りの人たちが自分のことをどう思っているか考える

自分が周りの人のことをどう考えるかは、その人への接し方に直接影響してきます。相手にいい印象を持っていたら、その人にやさしく接することができる。反対に不快な人だと感じていたら、冷たく接してしまうものです。それは相手にとっても同じこと。

ある人にとっては不快でないこと、あるいは問題にならないことでも、ほかの人には問題になってしまう、というケースも生じます。同じ社会的状況や同じ言動でも、「その相手との関係性」によって与える印象や結果が変わってくることもあるのです。

問題の大きさを理解する

もし自分が下した選択によって何か問題が起こった場合、その問題の「大きさ」を理解することが大切です。小さな問題に必要以上に大きく反応していたら、周りの人を困らせたり不快にさせることになります。もちろん、交通事故や自然災害、人の健康に関わることといった、本当に大きくて重大な問題は別です。

問題に対して過剰な反応をするのは、自分の感情を丸ごと外に吐き出しているということ。ある程度の感情を出し、ある程度は心にとどめておく、そのバランスが大切なのです。

感情表現コントロール

幼い子どもであれば、「問題の大きさ」と「人前で吐き出す感情の大きさ」が同じなのは当然です。しかし、成長に伴い、問題が起きたときに感情が激しく動いても、人前ではその気持ちをあまり出さないようにするというスキルが求められます。

ある問題に対し、過剰に大騒ぎしたり取り乱したりすると、周囲の人もそれに反応して悪い流れになり、結果として新たな問題を生み出しかねません。

問題の大きさよりも小さめの反応をするように意識する、いわゆる「感情のコントロール」が求められます。

「対比漫画」「4マスマップ」、本書にちりばめられたさまざまな工夫

ソーシャルフォーチュンとソーシャルフェイトの違いが一目でわかる対比漫画

本書には、同じ社会的状況下でソーシャルフォーチュンとソーシャルフェイトへの「道」が対になった、全10編の漫画が描かれています。

ひとつ例を挙げ、実際に漫画をみて考えてみましょう。この漫画の主人公は、ボブ、先生、周りの生徒たちです。

【社会的状況】
場所は学校の教室。授業中で、先生の講義を聞いている。先生の講義はとても退屈な内容だが、「静かに座って聴くこと」が求められている。

まずはソーシャルフォーチュンへの道です。ボブはどのような選択をしているでしょうか。
フォーチュン編の漫画
フォーチュン編
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〈ソーシャルフォーチュンへの道〉
選択した行動:先生の講義は退屈だが、興味のあるフリをする(退屈だと言葉に出さず、頭の中は一息ついた状態で相手に身体と目線をむける、という行動)

選択した行動に対し、周りがどう感じるか:穏やか、いい気分

周りの人がボブにどう接するか:ボブは授業に集中していると思って、いい子だと思う

周りの人の接し方に対し、ボブはどう感じるか:平常心、穏やかでいられる

ボブはこのとき、しっかり意識を向けていると装うことで退屈な時間をやり過ごす「ソーシャルフェイク」と呼ばれる方法を使いました。これにより、自分も平常心で授業をやり過ごし、周りにいるクラスメイトや先生も穏やかな気持ちでいられました。

次に、ソーシャルフェイトへの道を見てみましょう。
フェイト編の漫画
フェイト編
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〈ソーシャルフェイトへの道〉
選択した行動: 机に突っ伏し、「退屈だ」ということを口に出す

選択した行動に対し、周りがどう感じるか: 怒り、イライラ、不満

周りの人がボブにどう接するか: 授業が止まる、周りの生徒がボブを責める、先生が「授業を妨害したので、明日も同じ授業をする」と言い出す

周りの人の接し方に対し、ボブはどう感じるか: 激怒、恥ずかしい

「退屈だ」という気持ちをそのまま言葉にしたことで、ボブ自身にとってもクラスメイトたちにとっても嬉しくない結果になってしまいました。<ソーシャルフォーチュンへの道>と見比べて分かるように、退屈な時間をうまくやり過ごすことができるほうが、結果として大きな問題に繋がることを防ぐことができますね。

このように、同じ社会的状況でも、何をしたのか、何が起こったのか、その結果どうなったのか、その違いがとても分かりやすい内容となっています。さらにそれぞれの漫画に対して詳しい解説もついているので、ソーシャルフォーチュンに導くコツやポイントも学ぶことができます。

好きな読み方で何度でも学べる

この本は、前から開いていくと「フォーチュン編」、本をひっくり返して後ろから開いていくと「フェイト編」が読める構成になっています。
最初にフォーチュン編だけを読むと、どの登場人物もソーシャルシンキングのスキルが高く、ハッピーな結果にたどり着ける人だと感じます。逆にフェイト編から読むと、本書が伝えたい「選択の力」がどのようなものか、よく分かります。

あるいは、フォーチュン編を1編読んだら、本をひっくり返して同じフェイト編を1編読む。まったく同じ社会的状況下で、選択が少し違うだけで結果が大きく変わってくることを確認できます。

本書にはボブ、サム、リンの3人が登場します。自分に似たタイプの登場人物に自分自身を重ねてシミュレーションしながら読んでみてもいいかもしれません。

自分がたどる道をシミュレーションできる

巻末には自身で書き込める「問題解決メーター(感情コントロール)」表「ソーシャルフォーチュン/ソーシャルフェイトの対人行動マップ」表が付いています。

実際に書き出してみることで、「自分はこういうときにこのような行動(言動)を取ってしまうんだ」「これくらいの問題なら感情的にならない」など、自身の新たな発見もできるかもしれません。

表は何枚かコピーして使用すれば、いくつかの社会的状況を想定しながら、何パターンかの行動(言動)選択をシミュレーションすることもできます。
ハッピーエンドの「ソーシャルフォーチュン」かバッドエンドの「ソーシャルフェイト」か。どちらかに向かう選択は、実際はたった数秒で行われます。誰しも、ソーシャルフォーチュンの道をたどれた方が、穏やかな気持ちで過ごすことができるはずです。

しかし本書で学んだり練習しても、そのときの状況、感情、勢いなどで、意に反してソーシャルフェイトの道へ行ってしまうことも多々あると思います。そのときに大切なのは、周りの人にきちんと謝ること、「自分は間違ってしまったけど、あなたのことを悪く思ってしたわけではない」と伝えることです。
間違えること自体が問題なのではなく、間違いを通して学ばないことが問題なのです。本書と自身の経験で、求められる行動を選択できるソーシャルシンキングのスキルを高めていってほしいと思います。

文/田崎美穂子

10代のためのソーシャルシンキング・ライフ: 場に合った行動の選択とその考え方

10代のためのソーシャルシンキング・ライフ: 場に合った行動の選択とその考え方
パメラ・クルーク (著), ミシェル・ガルシア・ウィナー (著), 黒田美保 (監修, 翻訳), 稲田尚子 (監修, 翻訳), 高岡佑壮 (翻訳)
金子書房
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【著者】
パメラ・クルーク(Pamela Crooke, Ph.D. ):公認言語療法士
ミシェル・ガルシア・ウィナー(Michelle Garcia Winner, M.S. ):公認言語療法士
パメラとミシェルは米国カリフォルニア州サンノゼにある「ソーシャルシンキングセンター」で、言語療法士として、対人認知に困難を抱える子どもたちへの介入・支援を専門に行っている。1990年代半ばにミシェルが考案した「ソーシャルシンキング」の枠組みは、今日では理論、キーワード、カリキュラム、方略にわたり、対人認知の学習に困難を抱える人々の助けとなっている。パメラは、ソーシャルシンキングセンターの上級セラピストであり、ミシェルと共著で、『きみはソーシャル探偵!』(金子書房)など、ソーシャルシンキングの本を執筆している。

【漫画】
www.tiger-arts.com

【監訳者】
黒田美保(くろだ みほ)
帝京大学文学部心理学科教授。BRIDGEこころの発達研究所代表。臨床心理士・臨床発達心理士。医学博士・学術博士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京都大田区公務員、よこはま発達クリニック勤務を経て、 2005年~2006年ロータリー財団奨学金によりノースカロライナ大学医学部TEACCH部門に留学。帰国後、国 立精神・神経医療研究センター研究員、淑徳大学准教授、福島大学特任教授、東京大学大学院客員教授、名古屋 学芸大学ヒューマンケア学部教授を経て、現職。 ソーシャルシンキングの中核的なガイドブック『ソーシャルシンキング』(ミシェル・ガルシア・ウィナー著、 金子書房)を監訳。自閉スペクトラム症のアセスメントとして世界的に評価の高い『ADOS-2 日本語版』 『ADI-R日本語版』『SCQ日本語版』『CARS2日本語版』(金子書房)、および適応行動尺度のグローバルスタン ダードである『日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度』(日本文化科学社)の監修・監訳に携わる。その他の主な著 訳書に、『公認心理師のための発達障害入門』(金子書房)、『これからの発達障害のアセスメント』(編著、金子 書房)、『公認心理師のための「発達障害」講義』(編著、北大路書房)、『公認心理師の技法ガイド』(編集、文光 堂)など。

稲田尚子(いなだ なおこ)
帝京大学文学部心理学科講師。公認心理師・臨床心理士・認定応用行動分析士。 心理学博士。東京女子大学文理学部心理学科卒業。九州大学人間環境学府人間共生システム専攻心理臨床学コー ス博士後期課程単位取得退学。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部研 究員、東京大学医学部附属病院こころの発達診療部、Southwest Autism Research & Resource Center客員 研究員、日本学術振興会/東京大学大学院教育学研究科特別研究員(RPD)を経て、現職。 前述の『ソーシャルシンキング』の監訳に加えて、ソーシャルシンキングの絵本『きみはソーシャル探偵!』 (ミシェル・ガルシア・ウィナー&パメラ・クルーク著、金子書房)を翻訳。『ADOS-2 日本語版』『ADI-R日 本語版』『SCQ 日本語版』『CARS2日本語版』(金子書房)の監修・監訳に携わる。その他の主な著訳書に、 『「どうしてそうなの?」と感じたときに読む本』(共監修、PHP研究所)、『ADHDタイプの大人のための時間 管理ワークブック』(共著、星和書店)、『自閉症スペクトラム障害の診断・評価必携マニュアル』(共訳、東京書 籍)、『これからの発達障害のアセスメント』(分担執筆、金子書房)など。

【訳者】
高岡佑壮(たかおか ゆうしょう)
東京認知行動療法センター/東京発達・家族相談センター心理士。公認心 理師・臨床心理士。教育学博士。東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程修了。東京大学医学部 附属病院こころの発達診療部、その他都内精神科等での勤務を経て、現職。

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