発達障害や感覚過敏がある方が暮らしやすい街とは?川崎市が進めている「誰もが自分らしく暮らし、自己実現を目指せる地域づくり」

ライター:発達ナビ編集部
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川崎市
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川崎市が進めているプロジェクトが、大きな注目を集めています。近い将来の人口減少社会を見据え、一人ひとりが尊重され、能力を発揮することができる環境づくりのモデルケースについて、取材しました。

目次

この街から日本の風景を変えていく。発達障害や感覚過敏のある方が暮らしやすい川崎市の取り組み

「障害のない社会をつくる」。

発達ナビを運営する株式会社LITALICO メディア&ソリューションズが掲げるこの理念にも通じる、「誰もが自分らしく暮らし、自己実現を目指せる地域づくり」の実践を全国に先駆けて始めている街があります。それが、神奈川県川崎市の「かわさきパラムーブメント」です。

今このプロジェクトが、近い将来の人口減少社会を見据え、一人ひとりが尊重され、能力を発揮することができる環境づくりのモデルケースとして、大きな注目を集めていることをご存知でしたか?
ロゴ
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2016年度から継続する「かわさきパラムーブメント」は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「東京2020大会」)の開催をきっかけとして、「人々の意識や社会環境のバリアを取り除き、誰もが社会参加できる環境を創り出す」ことを理念としています。

「人それぞれの個性への理解」が「心とハードのバリアフリー」につながり、「社会環境によるバリアのない暮らし」が自己実現を可能にし、「社会への参加」が当たり前となり、そのことで新しい価値が創出されていくという循環を目指すプロジェクトです。
川崎市
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川崎市は、パラリンピアンとの交流をきっかけに共生社会を実現するための先導的かつ先進的な取組を総合的に実施する「先導的共生社会ホストタウン」に認定され、「心のバリアフリー又はユニバーサルデザインの街づくりの取組の継続的・加速的な実施」と「東京大会の事後交流も含めた幅広い形での相手国・地域のパラリンピアンと市民との交流」に取り組んでいます。

今回はその先導的・先進的な取り組みの事例について、川崎市 市民文化局 オリンピック・パラリンピック推進室の永田光太郎さんに、お話を伺いました。
永田さん
永田光太郎さん
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人々の意識や社会環境のバリアを取り除き、誰もが社会参加できる環境を創り出す

――まずは「かわさきパラムーブメント」が始まった背景について教えてください。

以前から少子高齢化、人口減少社会の到来を見据えた持続可能なまちづくりについて議論や検討を重ねてはいましたが、その計画をさらに大きく前に進めるきっかけになったのは東京2020大会の開催が決まったことでした。川崎市では、パラリンピックを未来につながるダイバーシティとインクルージョンの象徴と捉えています。パラリンピックに重点を置き、障害のある人が生き生きと暮らすうえでの障壁となっている、私たちの意識や社会環境のバリアを取り除くことや、新しい技術でこれらの課題に立ち向かうこと、これらを「ムーブメント」として展開していくことを目指し、かわさきパラムーブメントの取り組みがスタートしました。

――その中でも川崎市では、身体障害がある方の他にも発達障害や感覚過敏がある方への取り組みに力を入れているそうですね。

全国的にも身体障害がある方への取り組みはハード・ソフトの両面で増えてきている一方で、目に見えない困難を抱える人たちへの取り組みはまだ実践の例が少ないのが現状です。ですので、先導的に川崎市発で発達障害や感覚過敏がある方へのサポートを全国に広めていければと、そんな想いで取り組みを進めています。

今回は、「かわさきパラムーブメント」を象徴する3つの事例について、紹介させていただきます。

日本初!発達障害、感覚過敏のあるお子さんのための「サッカー&ユニバーサルツーリズム」

――その取り組みのひとつが、「サッカー&ユニバーサルツーリズム」と伺いました。

「かわさきパラムーブメント」の取り組みにより未来へ遺していくレガシーのひとつとして、「誰もがスポーツ・運動に親しんでいるまち」があります。このレガシーの形成に向けて、JTBやANA、富士通、川崎フロンターレ等と連携し、2019年7月27日の川崎フロンターレ対大分トリニータ戦において、日本で初めて発達障害のあるお子さんを対象とした「サッカー&ユニバーサルツーリズム」を実施し、当日の試合観戦と翌日のサッカー教室にご参加いただきました。

――それはどのような課題に対しての取り組みだったのでしょうか。

発達障害のあるお子さんの中にはその特性から感覚過敏の方も多く、人混みや喧噪などが外出等における障壁となっていて、外出や旅行をためらってしまうこともあるそうです。またスポーツ観戦に関しても、スタジアムは歓声や音響が大きく、照明の光も強いので、そもそも観戦を諦めてしまう親子も多いとも聞いています。そんな親子の力になりたいと思ったんです。
サッカー観戦
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――多くの企業と連携したプロジェクトとなりました。

元々はJTB主催のシンポジウムで、発達障害をテーマとしたパネルディスカッションで生まれたご縁から始まりました。関わるスタッフに向けた勉強会や研修を実施していただいたり、川崎市自閉症協会の方にお話をいただいてケーススタディをしたり、発達障害というものを全員で学びながら進めていきました。

――企業と連携したからこそ、できたことがあったと。

それぞれの企業ができることは何かと考え、ひとつずつ形にすることで最後には大きな力となりました。当日は大分からも当事者のご家族に参加いただいたので、まずANAに飛行機やツアー中の移動をサポートしていただき、JTBには移動時に限らず運営に携わるスタッフに向けた心のバリアフリー研修を行っていただきました。また、富士通には当事者ではない方にも感覚過敏の特性とそれに対する配慮の仕方を学習できるVR動画を制作してもらったほか、サッカー観戦などの貴重な体験を簡単に日記にできる「気持ち日記」というアプリを提供してもらったりと、コンテンツ面で力を発揮していただきました。
かームダウンスペース
カームダウンスペース
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――お子さんにとって、スタジアムで直接サッカーを観戦するという、得難い体験になったのではと思います。

そうですね。会場となった等々力陸上競技場にはセンサリールームを特設して、音も光も抑制された部屋で観戦できるようにしました。同時にカームダウンスペースとスヌーズレンも用意して、疲れた時に休憩できるようにもしたんです。また試合開始前には川崎市長からこの取り組みについての説明をしたり、川崎フロンターレの計らいでオーロラビジョンの選手名をひらがなで表記していただいたりしました。サポーターの方たちが歓迎の横断幕を用意してくれたのも印象的でした。

――そして翌日にはサッカー教室も開催されました。

当日は、前日の試合に出場してリカバリートレーニングをしていた選手も急遽参加してくれて、思う存分サッカーを楽しんでもらう体験をしていただきました。普段見られない一面が見られて良かった、ひとつの成功体験となりその後の学校生活の中でも積極的に動けるようになったと、ご家族にも喜んでいただけたことが嬉しかったですね。
フロンターレ
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――今振り返ると、どのような意味のある取り組みとなったのでしょうか。

発達障害の当事者以外の方も巻き込んで、みんなが考えるきっかけとなったことが大きかったなと考えています。実施後も、国際ユニヴァーサルデザイン協議会主催のIAUD国際デザイン賞2019 UXデザイン部門での金賞や、公益社団法人日本プロサッカーリーグ主催の2020Jリーグシャレン!アウォーズでのJリーグチェアマン特別賞の受賞など、たくさんの反響をいただきました。現在も、他の自治体などから問い合わせをいただいており、今後はこの取り組みが全国的に広がっていくことが大切だなと思っています。
かームダウンスペース
とどろきアリーナのカームダウンスペース
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日本初!商業施設で安心して買い物を楽しむための「クワイエットアワー」

――他の取り組みとして、「クワイエットアワー」についても教えてください。

「サッカー&ユニバーサルツーリズム」のサッカー教室の日に合わせて、会場近くの「イオンスタイル新百合ヶ丘」に朝9時から10時まで、日本で初めての試みとなる商業施設における「クワイエットアワー」を実施していただきました。買い物を楽しんでから、サッカー教室に参加しようという提案です。

――まだ「クワイエットアワー」は日本で浸透していない中での取り組みとなりました。

そうですね。例えば、川崎市のホスト国である英国では、すでに商業施設でも特定の曜日・時間帯に行われているもので、感覚過敏のある方も安心して買い物ができるよう、音や光を緩和していると聞いています。感覚過敏がある方にとって、店内の音や光や匂いなどによって、生活に必要な買い物が苦痛になってしまうことがあります。この取り組みをきっかけに川崎市内、将来的には全国で「クワイエットアワー」が浸透していってほしいと願っています。
クワイエットアワー
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――具体的にはどのような取り組みだったのでしょうか。

店内の照明の明るさを通常時より2~5割程度暖和したり、店内に流れるBGMに配慮したり、カームダウンスペースの配置などを行いました。検討にあたっては、医師のほか、音響の専門家、当事者団体など、多くの方に意見を伺いながら進めました。
クワイエットアワー
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――日本初の商業施設における「クワイエットアワー」、やってみていかがでしたか?

当事者の方のサポートになるということは前提として、やはり大切なのは当事者以外の方に知ってもらう、考えてもらうことだと思っています。その意味で、普段お買い物をされている方が「クワイエットアワー」を知り、「よい取り組みですね、応援します」と言ってもらえたことは収穫でした。同時に、「少し店内が暗くて見えにくい」との素直なお声もいただき、今後も理解を広げていくための取り組みを推進していきたいと考えています。

――取り組みを川崎市全体に広げたいという想いもあるのではないでしょうか。

そうですね、市内の他の商業施設などに展開をしていきたいと考えていて、現在各方面から情報を集めながら進めています。構えずに参加しやすいように、例えば照明やBGMを落とすだけでもサポートになるんですよという提案をしていきたいと考えています。

そして実施事例が増えていくことで、発達障害や感覚過敏について知る機会が増え、自分も何かできないかと行動に移す、そんな風に広がっていって欲しいです。

マイノリティの立場で世の中を考える、「バリアフルレストラン」

――最後に、今年実施した「バリアフルレストラン」についても伺わせてください。

「バリアフルレストラン」とは、車いすユーザーと二足歩行者が逆転した架空の世界を体験する、「チーム誰とも(主体:公益財団法人日本ケアフィット共育機構)」によるプログラムのことです。「令和2年度共生社会ホストタウンサミットin多摩川」に合わせて、目玉となる出展のひとつとして二子玉川ライズ ガレリアで実施しました。

――障害の社会モデルの一環で、マイノリティの立場を体験するための企画ということですね。

はい、今の社会の多くは無意識のうちにマジョリティ優先の考え方で成り立っています。その前提をひっくり返して、世界の中で車いすユーザーが多数だったときに、どういうレストランになるのかを具現化して当事者ではない方に体験していただきました。コロナ禍ですので人数制限などの対策を万全にしながらの実施となりましたが、体験された方から貴重な機会になったとのお声をいただいています。
バリアフルレストラン
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――発達ナビのメンバーも参加させていただきましたが、非常に貴重な体験となりました。

ありがとうございます。川崎市長も体験をしたのですが、「すごい気づきをいくつも感じることができる非常に貴重な体験であり、このような機会をいろんなステークホルダーの方たちと連携しながらいくつもつくり出していきたい」とのコメントがありました。この取り組みをきっかけとして、身体障害のある方もそうですし、発達障害や感覚過敏がある方についても、当事者以外が自分事で考えたり体験したりしてもらうための取り組みを続けていきたいと思っています。
バリアフルレストラン
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――東京2020大会の見通しは不透明ですが、一旦は「かわさきパラムーブメント」の区切りを迎えることになります。

もちろん東京2020大会はきっかけのひとつでしかないので、今後も培ってきた考え方を広げて、どのように推進していくかを議論しているところです。時代の流れと共に常に視点は更新しながら、川崎市としての軸はブラさずに、レガシーを形成するために一歩一歩着実に取り組んでいきます。

――発達ナビの読者の皆さんにも、メッセージをお願いします。

川崎市では、街の物理的なバリアフリーの実現はもちろん、「心のバリアフリー」についても浸透させていくことで、発達障害や感覚過敏のある方にとっても暮らしやすい街づくりを目指していきます。私たちの取り組みを知っていただき、ぜひ川崎にお越しいただきたいと思います。

そして何より、川崎市が始めた「誰もが自分らしく暮らし、自己実現を目指せる地域づくり」の取り組みについて、ぜひご友人や暮らしている街の人たちにも伝えて広めていただきたいと思っています。この活動が川崎市だけではなくて全国に広がっていくことが、真に多様性を受け入れる社会の実現に繋がると考えているからです。

真の共生社会の実現に向けて、ともに歩んでいきましょう。
「かわさきパラムーブメント」についてご興味をお持ちいただき本当にありがとうございました。

2024年に100周年を迎える川崎市、その取り組みをたくさんの方に知っていただきたいから

「かわさきパラムーブメント」の考え方や取り組みには、発達障害や感覚過敏の当事者の方も、当事者でない方も、この社会で暮らす全員にとって多くの学びや発見があります。

川崎市が踏み出した一歩が少しずつでも広がっていくことが、これからの社会には必要なはず。多様性を受け入れる街が、ひとつ、またひとつと増えていくことで、「障害のない社会」はきっと実現していきます。

ぜひ皆さんにも、もっと取り組みについて知っていただき、近くの誰かに伝えていただけると幸いです。

サッカー&ユニバーサルツーリズムの取り組みを動画で見る!

「感覚過敏の疑似体験」VR映像

シャレン!やってる! ~えがお共創プロジェクト スポーツ×ユニバーサルツーリズム(川崎フロンターレ)~

2020年「発達障がい児向け親子サッカー&パブリックビューイング」を開催!

ようこそ、バリアCAFÉへ~二足歩行者ウォーカーの体験~


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