教室で体調悪化、保健室で回復?不快感を表現できなくて…『感覚過敏研究所』を立ち上げた現役高校生が伝えたいこと【連載#01】

2021/05/18 更新
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自らの感覚過敏の困りごとを解決しようと13歳のときに感覚過敏研究所を立ち上げた所長、加藤路瑛がお届けする感覚過敏の連載企画。第1回目は、僕が感覚過敏を知ったエピソードです。中学に入学後、教室にいると具合が悪くなる生活が続きました。原因は聴覚過敏でした。聴覚過敏と知った僕がどのような行動をしたか紹介しています。自分の感覚を表現できない小さい子のための代弁者としてコラムをお届けします。

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加藤路瑛
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連載に込めた思い

こんにちは。加藤路瑛です。僕自身、感覚過敏の特性があることから13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。

発達ナビで感覚過敏に関するコラムの連載を担当することになりました。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。
加藤路瑛のプロフィール写真
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僕は現在15歳、高校1年生です。自分が感覚過敏だと気がついたのは中学1年生のときでした。振り返れば、小さいころから感覚過敏だったと思います。しかし、感覚は他人と比較できません。音に敏感、靴下がはけない、給食が食べられない…いろいろな感覚の過敏さがあったのだと思いますが、これが僕の日常であり、他の人も同じように苦痛を感じながら我慢しているのだと思ってしました。そして、我慢できないのは僕が弱いのだと思っていました。

ただ、何が苦痛なのかも小学生のころはわかりませんでした。「何かイヤ」そのような表現しかできなかったので、わがままな子だと思われていたと思います。小学生までは、自分の感覚による不快感は表現できませんでしたし、感覚過敏という言葉も知りませんでした。

今、感覚過敏という言葉を知り、感覚過敏で悩む人や家族と交流する中で、ようやく自分の感覚について言語化できるようになってきました。まだ自分の感覚の困りごとを表現できない小さな子の代弁者として、発達ナビで感覚過敏について語りたいと思います。第1回目は、僕が感覚過敏を知るきっかけとなった話をしたいと思います。

保健室に通う日々

中学に入学し、少しずつ学校生活に慣れてきたころ、教室にいると具合が悪くなることが多くなり、気がつけば保健室に頻繁に向かうようになりました。頭が痛いのです。保健室で休んでいると体調は良くなります。原因は自分でも良くわかりませんでした。

しばらくそんな日が続き、2学期になりました。夏休み明け、教室は賑やかです。みんなが楽しそうに話し、笑い声が溢れます。耳に女子生徒の笑い声が届いたとき、痛みを感じました。どうも、クラスメイトの甲高い笑い声に反応して頭痛がするようなのです。

保健室の先生にその事実を話してみました。

「もしかすると、聴覚過敏なんじゃないかな?デジタル耳栓というものがあって、それをつけると頭痛がしなくなるかもしれない。あとで、デジタル耳栓の資料を探して担任の先生にお伝えしておきます」

という話になりました。デジタル耳栓の資料をもらい、家に帰って母に話してみました。

デジタル耳栓とは、環境騒音を防ぐ電池式の耳栓です。話し声などは聞こえるので授業などで使用しても先生の声は聞こえるという説明でした。どんなものか分からないので、まずは買ってみることにしました。
デジタル耳栓をつけている様子
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デジタル耳栓をすると、エアコンから聞こえる空調音が消えました。時計の音、外から聞こえる車の音。そういう雑音が消えました。話し声はしっかり聞こえました。ただ、ワイヤレスではなくコード付きでしたので、コードのこすれる音が耳に入り快適とはいえませんでした。でも、これで学校にいるときの体調不良が治るなら、まずは使ってみたいと思いました。

デジタル耳栓を使うことのカミングアウト

保健室の先生と担任の先生にデジタル耳栓を使いたいと話しました。先生側からの提案だったのでもちろん使用の問題はなく、担任の先生は、学年や担当教科の先生に僕がデジタル耳栓を使うことを説明してくださいました。

1つの課題は、クラスメイトの反応でした。黙って使用すれば、イヤホンで授業中に音楽を聴いている人に見えるかもしれません。クラスのみんなにも、デジタル耳栓を使うことを知ってもらう必要があると先生に言われました。

担任の先生は理科の先生でした。ある日のホームルーム。先生は、音が聞こえる仕組みや音域の話など、聴覚の説明をしながら、デジタル耳栓の効果など科学的に説明してくれました。
そして、「これから加藤さんはデジタル耳栓を使うのでよろしくお願いします」と話してくださいました。そのおかげか、デジタル耳栓をつけていても、クラスメイトに何か言われることもありませんでした。

しかし、残念なことに甲高い声をシャットダウンする機能はありませんでしたので、僕の頭痛は頻繁に発生しました。授業中は、みんながノートをとる筆記音や、電気や空調の「ジー」とか「ゴー」というような雑音はなくなり集中できました。

感覚過敏を知ったときの解放感

保健室の先生に「聴覚過敏」」という言葉を教えてもらいネットで調べました。すぐに「感覚過敏」という言葉にたどり着きます。感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの諸感覚が過敏になっていて日常生活に困難さのある状態をいいます。

・苦手な音があるって頭痛がする。
・ニオイに敏感で、いろんなニオイが混ざった場所にいられない。
・レストランは食べ物が混ざったニオイがして苦手。
・食べられるものがほとんどない。
・靴下が痛くて履けない


自分のさまざまな困りごとや不快感が、感覚過敏の症状にあてはまっていました。「僕は感覚過敏だったんだ」そう思ったときの納得感。今までのつらさの原因がわかった解放感は言葉では表現が難しいですが、曇っていた視界がクリアになった瞬間でした。自分が自分でないような感覚、暗闇の中をよくわからないまま歩いていた状態、そんな説明し難い状況が本当に吹き飛んだのです。

聴覚過敏、小さい子が表現するのは難しい

僕は中学に入ってから、女子生徒の甲高い声で頭痛がすることに気がつきましたが、症状が出たのが中学生というわけではありません。振り返れば、小学生のころから頭痛持ちでした。頭が痛いことは伝えられますが、その理由を分析することはできませんし、どんなときに起こるのかも考えることはできませんでした。とにかく頭が痛いのです。

たとえ、苦手な音が何なのか自覚できたとしても、聴力に問題がないとか、普段は問題なく生活できていれば、「ちょっと神経質な子」「わがままな子」と思われる可能性もあります。僕は中学生で気がつき、自分の状況を冷静に先生に相談することができました。もし、僕が、教室で不快な音があったとして、急に耳を塞いでしゃがみこんだり、「うるさい」と怒鳴れば問題児扱いされたかもしれません。

小さい子が苦手な音があって辛いということを親や先生に伝えるのは難しいことだと思います。ですから、子どもと不快のもとが何なのか話し合える環境が大事だと思います。僕は、自分の経験から、自らの感覚の過敏さを表現できない子のために、「感覚過敏研究所」で感覚過敏をキャラクター化して、感覚過敏マークを作っています。缶バッジにして販売もしています。
感覚過敏研究所の感覚過敏缶バッジ
感覚過敏研究所の感覚過敏缶バッジ
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感覚過敏缶バッジを手にしながら、生徒たちが「私の中にコアラ(味覚過敏)がいる」「僕はウサギ(聴覚過敏)」と自分の過敏さを見つめ、生徒同士で語り合えたという事例を、感覚過敏缶バッジを活用してくださっている学校の先生から連絡いただいたこともあります。

このように過敏さを視覚化し、自分の中にある困りごとを表現できるようになることが感覚過敏の困りごとを解決する一歩だと僕は思っています。

僕の聴覚過敏対策

僕の場合は、デジタル耳栓では聴覚過敏の困りごとのすべては解決できませんでした。15歳、高校生になった今、僕は通信制高校への進学を選択したので、教室での賑やかな音で悩まされることはありません。日常生活では、かなりの多くの時間をヘッドホンで音楽を聴いたり、動画視聴しています。自分の好ましい音に囲まれて生活しています。
聴覚過敏対策でヘッドホンを
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また、状況に応じて、ノイズキャンセリングのイヤホンも使っています。ほぼ環境音はガードできています。このレベルのノイズキャンセリング機能が備わったイヤホンが中学1年生のときにあったのなら、僕の中学校生活はもう少し快適だったかもしれません。

ノイズキャンセリング機能はこれからも進化していきます。ぜひ、テクノロジーの進化も利用して、聴覚過敏の困りごとを解消してほしいと思います。

まとめ

第1回目の連載はいかがだったでしょうか?感覚は目に見えず、他人と比較できないから、苦しさをうまく表現できませんし、他人に伝えるのも難しいです。小さい子だったらなおさらです。僕も自分の感覚について向き合えるようになったのは中学生になってからです。感覚過敏研究所の所長として、たくさんの人の感覚過敏の話を聞くようになって、ようやく冷静に分析できたり、対策を考えられるようになりました。

大人の方や専門家の方が解説する感覚過敏とは違う視点で、当事者として、子どもの代表として、感覚過敏についてお伝えしていきたいと思います。次回のコラムもお楽しみに!
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