発語が遅い?言葉はいつから出る?赤ちゃんの言葉の発達、育み方、発達障害との関係性などを解説【小児科医監修】

ライター:発達障害のキホン
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赤ちゃんがおしゃべりできるようになるまでには、いくつかのステップがあります。言葉の発達の流れや大まかな月齢の目安、「もしかして発語が遅いかも?」と気になったときにチェックしたい項目をご紹介します。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

言葉の発達にはどんな段階がある?

おむつを替えても、おっぱいをあげても、ゆらゆら抱っこでも泣きやまない! 泣き続ける赤ちゃんを前に「言葉で気持ちを伝えてくれたら…」と途方に暮れた経験を持つ保護者のみなさんも多いのではないでしょうか。

一般的に、赤ちゃんが意味のある言葉を話し始めるのは10ヶ月〜1歳半ごろですが、実はその前から言葉の発達は始まっています。赤ちゃんの言葉の発達の流れを見ていきましょう。

泣く(新生児〜)

新生児のころの赤ちゃんは、泣くことで、空腹や排泄など不快な状態を表しています。

ただ、これはパパやママ、周りの大人に向けて訴えているわけではなく、単純に不快な状態にあることを表しているだけだと考えられます。泣くとおむつを交換してもらえる、おっぱいやミルクを飲ませてもらえる、やさしくあやしてもらえるという経験を重ねることで、「泣くこと」が表現手段になるということを学んでいきます。

また、大人は赤ちゃんに語りかけるとき、自然に高い声になるかもしれません。「マザーリース」と呼ばれるもので、赤ちゃんにとって聞き取りやすい高音域の声です。少し高めの声で語りかけると、安心したような穏やかな表情を見せることもあります。

赤ちゃんは名前を呼んであげると初めの字の母音に反応することが多いです。例えば「なお」という名前の赤ちゃんなら、初めの字は「な」であり、その母音は「NA」の「A」なので「あ」に反応するのです。「みさ」という赤ちゃんなら「み(MI)」の「い(I)」に反応します。

名前を呼ぶことで親子の愛着は深まり、名前を聞いて脳が反応することで言語への準備が早くなるのではないかと推測できます。
(発達障がいに困っている人びと 鈴木直光著 幻冬舎ルネッサンス新書刊より一部抜粋)
参考:『発達障がいに困っている人びと』 (幻冬舎ルネッサンス新書 )著者:鈴木直光
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クーイング(2ヶ月ごろ〜)

生後2ヶ月ごろになると、赤ちゃんは「くー」「あー」といった柔らかい声を出すようになります。

これは、赤ちゃんが心地よさを感じているときに多く発するもので、クーイングと呼ばれています。クーイングは、音を発する器官の発達が進んできている証拠でもあります。まわりの人がが同じように「くーだね」「あーなんだね」などと返してあげると、さらに声を出したり、大人の真似をして大きな口を開けたりすることもあります。

喃語(6〜9ヶ月ごろ)

喃語とは、赤ちゃんが発する2つ以上の音を含む声のこと。喃語が出始めたころよく聞かれるのは、「あーあー」「うーうー」など、母音の発声です。徐々に「まんまん」「あむあむ」など母音と子音の組み合わさった声が出せるようになり、さらに「ぱっぱ」「ばばば」など、破裂音や濁音も発声できるようになります。

赤ちゃんは喃語を通して、発声や音の調整、肺からの空気のコントロールなどを学んでいます。骨格がしっかりし、声帯も発達することで、喃語の発音もはっきり、長くなっていきます。

指さし(9ヶ月〜1歳半ごろ)

喃語は出始めから3〜4ヶ月で徐々に少なくなり、その替りに指さしや身振り手振りが増えていきます。表情も豊かになり、嬉しい、楽しいなど自分の気持ちを伝えられるようになります。まだ意味のある言葉は出ませんが、赤ちゃんの中には周囲の大人の語りかけが蓄積されていて、言葉を話す一歩手前まで近づいています。

一語文(10ヶ月〜1歳半ごろ)

「まんま」は食べ物を意味している、「ぶっぶー」は車のことというように、特定の音声と意味の結びつきが分かるようになると、一語文として発せられるようになります。

喃語と似ているように思えますが、違いは意味のともなう言葉である、ということ。周囲の大人が赤ちゃんにたくさん語りかけをすることで、赤ちゃんの脳のなかにいろいろなものの名前がインプットされていきます。

一語文が出る時期にも、かなりの個人差があります。遅くとも2歳までに意味のある言葉が出るようになれば問題ないと言われています。言葉がゆっくりめかなと思ってもあまり心配せず、たくさん話しかけ、この時期ならではの親子のコミュニケーションを楽しみましょう。

二語文(14ヶ月〜2歳ごろ)

二語文とは、「まんま、ちょうだい」など、2つの単語からなる文のこと。一語文が出るようになって6〜8ヶ月が経つと、徐々に二語文でのおしゃべりも盛んになっていきます。最初は片言で、大人からすると「宇宙語」のように思えるかもしれませんが、徐々にはっきりと話すことができるようになります。

ほかの発達に特に心配がなく、大人の言葉を理解できているならば、二語文が出るのがゆっくりでもあまり心配せずに見守りましょう。遅くとも3歳までに二語文が出れば問題ないと言われています。

いろいろな遊びや体験が言葉の芽を育む

大人が新しい言語を習得したいと思ったら、何冊ものテキストで文法を学んだり、リスニングや発音の特訓をしたりと、猛勉強を覚悟しなければなりません。ところが、赤ちゃんたちは授業やトレーニングを受けることなく、自然と言葉を理解し、話せるようになっていきます。

赤ちゃんが、意味のある言葉=一語文を話すようになるのは10ヶ月から1歳半ごろが目安ですが、一語文が出る以前から赤ちゃんはたくさんの言葉を理解しています。まわりの人たちが赤ちゃんにむかって自然に発する声かけを振り返ってみると、赤ちゃんの体験を言葉に置き換えてあげるものが多いですね。

「おなかすいたね」「お外は気持ちいいね」「もう眠いかな?」。
大人の声かけ、さまざまな遊び、日常生活のなかでの何げない体験が、すべて赤ちゃんの言葉の芽となってゆっくりじっくり育っていきます。

8〜9ヶ月ごろになると、「あーあー!」など声を出しながら、気になるものを指さすことが増えてきます。ママやパパの注意をひくように、見てほしい方向を指しながら、コミュニケーションをとろうとするのです。

また、このころから、まわりの人の言葉をマネするような光景もよく見られます。ママが「まんま」というと「まんまん!」と言ったり、「ブーブー来たね」と言うと「ぶっぶ!」と真似したり、まるで意味のある会話のようなやりとりもできるようになってきます。
さらに、そろそろ意味のある言葉を話せるようになるころには、大人が指をさすと、その指ではなく指先がさし示すものを見るようになります。

これは「共同注意」と言って、スムーズなコミュニケーションの土台ともなるものです。共同注意ができるようになれば、言葉が出てくるのもすぐそこです。

言葉が出るようになるまでには、喉や骨格、口元の筋肉などの体の発達に加え、人や周囲に興味、関心を持ち、気持ちを伝えたいと思うようになる心の発達、そして毎日の中での言葉のインプットと、たくさんの要素が複雑に関係しあっています。

発語がゆっくりめでも、無理に話すようにトレーニングしようとするのは逆効果になりかねません。その子なりの発達を見守りながら、たくさん語りかけ、その時期ならではの親子のコミュニケーションを楽しんでいくことが大切です。子どもが何か言葉を発したら、親はその都度反応してあげましょう。

発達障害があると発語が遅れる?

言葉の発達には、個人差が大きいものです。それだけに、周囲の子と比べて「わが子の発語が遅いかも?少ないかも?」と感じて心配になる方も多いでしょう。

発語の遅れには、いくつかの原因が考えられます。

聴覚障害

まずチェックしたいのは、聴覚障害が隠れていないかどうかの確認です。

赤ちゃんは、日々周囲の大人が話す言葉を聞くことで、物には名前があること、自分の気持ちを表現することを学んでいきます。けれど、聴覚に障害があると、言葉をインプットすることができません。聴覚障害の有無は、赤ちゃんに音を聴かせて脳の反応を見るABR(聴性脳幹反応)検査によって確認します。相手の口元を見ていることが多いです。

知的発達症(知的障害)

聴覚障害がないのに著しく発語が遅れている場合は、何らかの知的発達の遅れの可能性があります。

脳の機能に何らかの障害があることが原因で、言葉の意味は理解しているけれど、うまく発語につながらない、というケースもあります。また、知的発達症のある子どもには筋緊張が低下しているケースがあり、筋緊張が低下していると、口の周りの筋肉をうまくコントロールしづらくなるため、発語の遅れにつながることもあります。

構音障害

口や舌、声帯など、声を出すために重要な部位に何らかの異常があることで、決まった音を正しく発音できないことを「構音障害」と言います。

不正咬合や口唇口蓋裂、舌小帯短縮症、脳性麻痺による顔面の筋肉の過緊張などが原因となります。適切な治療や言語療法士(ST)によるトレーニングによって改善をめざします。サ行がタ行になるケースが多いですが、マ行、ラ行、カ行などが含まれる言葉が言えるかどうかなどもポイントです。

発達性言語症(発達性言語障害)

難聴や知的発達症などの原因がなく、運動発達に異常が見られないのに、言葉の発達だけが遅れるものを「発達性言語症(発達性言語障害)」と呼びます。発語の遅れはあるものの、指さしや身振りなどによる非言語性のコミュニケーションは問題なく行えるのが特徴です。

発達性言語症のうち、言葉の理解は進んでいて、大人が言うことに身振りや手ぶりで答えられるタイプは「表出性言語障害」と言われます。このタイプは、保育園や幼稚園など、集団生活をすることで発語が出やすくなります。

一方、発語だけでなく、言葉の理解も遅れる「受容性言語障害」の場合は、言語療法士(ST)による療育も検討する必要があります。

生活環境による発語遅延

赤ちゃんは、生まれた直後から自分に語りかけられる声、言葉をシャワーのように浴びて育ちます。そして、「あーあー」「ばばば」といったクーイングや喃語、宇宙語のような初めてのおしゃべりに大人が反応し、言葉を返してくれることで、双方向性のコミュニケーションを学びます。

ところが、周囲から話しかけられることが少なかったり、テレビや動画の視聴時間が長かったりすると、赤ちゃんは双方向性のコミュニケーションを学ぶことができません。近年、生活環境による言語の発達遅延も指摘されるようになっています。

この電子メディアの使いすぎが乳幼児の言葉の遅れにつながるとも言われています。テレビやゲームを利用すると子どもがおとなしく見てくれることが多いので、保護者は楽に感じますが、コミュニケーションの機会が減ってしまいます。また、テレビを見ていないのにつけっ放しにするのも雑音が多くなり、集中しづらい特性があるお子さんにとって生活しづらい環境となっているかもしれません。トランプ、かるた、ボードゲームなど会話のできるアナログ的な遊びや外の公園で遊具、ボール遊び、三輪車などができる機会をなるべく増やすようにしましょう。テレビを消し、赤ちゃんとコミュニケーションをとることは今すぐにでもできる方策だといえます。
(一部 日本小児科学会雑誌 第108巻 第4号 平成16年「日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 提言 | 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」より)

このように、発語の遅れにはさまざまな原因が考えられます。1歳半健診、3歳健診などで言語の遅れを指摘されたときには、運動面を含めた全体の発達が遅れているのか、言語の発達だけに遅れがあるのかなど、その原因や背景を確認する必要があります。全体の発達が遅れている場合は、精神運動発達遅延と呼ばれ、何らかの基礎疾患が隠れている場合もあります。さまざまな検査によって原因を見極め、治療や療育を進めていきます。

言葉の発達の遅れが気になったときは、まずは専門家のもとで聴力に問題がないかなど、原因を調べることが重要です。また、ご家族だけで不安や心配を抱え込まず、小児科医、保健師、専門家に相談してみましょう。必要なトレーニングがあれば、無理のない範囲で取り入れていくといいでしょう。
参考:日本小児科学会雑誌|第108巻 第4号/平成16年4月1日
https://www.jpeds.or.jp/journal/abstract/108-04.html
参考:日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会 提言 | 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20040401_TV_teigen.pdf
次ページ「聴覚障害以外の原因によって言葉が遅れた子への接し方」

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