いじめ、ブラックバイト、デートDV…子どもが巻き込まれたら?法律で解決できる?10代の子どもたちに読んでほしい『こども六法ノベル』ーー著者インタビューも

ライター:発達ナビBOOKガイド
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困ったことが起きたときに知っておきたい法律。とはいえ、一般的に敷居が高いと思われる法律を、子どもにもわかりやすいことばに”翻訳“したのが「こども六法」でした。その著者の山崎聡一郎さんが原案をつくり監修した新刊「こども六法ノベル」(KADOKAWA)は、法律について興味をもった子どもだけでなくすべての人に向けた小説です。この本で山崎さんが伝えたかったことについてインタビューしました。

10代に密接な3つのテーマが全体を網羅している「こども六法ノベル」

「こども六法ノベル」は、高校生で弁護士の久家智紘(くげちひろ)と、中学生の弟・祐樹(ゆうき)が、弁護士事務所に持ち込まれる問題を法律によって解決していく小説です。3つの話には、それぞれ人権問題が盛り込まれています。「FILE1 石蹴り姫の沈黙」ではいじめの問題、「FILE2 ブラックバーガー」は、ブラックバイト、「FILE3 友達の守り方」はデートDVについて。いずれも10代の人たちが知っておきたい大事なテーマです。

コミカルに描かれるシーンもあって読みやすいストーリーですが、法律によって「弱きを助け強きをくじく」といった単純なものではありません。たとえばFILE1は、万引きが問題なのかと思うと、掘り下げてみたらいじめの問題が隠れていたというように、実際の生活で起こりうるいくつもの事柄が複合的に折り重なっています。また、FILE2ではブラックバイトを辞めたがっている高校生の姿が話の中心ですが、そもそもブラックな働き方を強要する社会構造が背景に見えてきます。複数のレイヤーが重なって描かれているストーリーです。

高校生弁護士・久家智紘と祐樹、10代の依頼人たちによって繰り広げられる「こども六法ノベル」の原案・監修者であり、六法をわかりやすいことばに“翻訳”して話題となった「こども六法」の著者、山崎聡一郎さんにお話を伺いました。
「こども六法」の著者、山崎聡一郎さん
「こども六法」の著者、山崎聡一郎さん
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「法律があれば何でも解決」するわけではないことを伝えたい

発達ナビ編集部(以下――):新刊の「こども六法ノベル」は、実際に法律を使うとどんなことが解決できるのか、ということがわかる本という印象ですが、「こども六法」との視点の違いについて教えてください。どんなことをメッセージとして伝えたかったのでしょうか。

山崎聡一郎さん(以下、山崎):「こども六法」は、私がいじめの被害に遭っていたときに法律を知っておきたかった、という自分自身の原体験に結びついた本でした。手に取れる場所に法律を、ということが「こども六法」のコンセプトなんです。

でも、実際には「法律は万能」ではありません。何か問題が起きたときに、法律の手にかかれば一刀両断!というイメージを持つ人も少なくないと思いますが、残念ながら現実にはそうではありません。

人間は感情の動物だからこそ、その感情によってミスをするものです。その感情によるミスを防ぐためのルールが法律です。法律に書かれていることは「ルールだから守りましょう」ということなのですが、そこからさらに、「では、なぜ守らないといけないんですか?」ということまで広げて考えてみましょう。これだけは明らかに迷惑がかかるとか、明らかに嫌がる人のほうが多いはずといったことから、合意形成によってルール化しているのが法律です。法律を守れば、むやみやたらに人を傷つけることにはならないという最低ラインが守られます。

ただ、現実の人間関係は法律さえ守っていれば、みんなが嫌な思いをしないのかというとそんなに単純ではないでしょう。法律はときおり感情とは対立します。法律を使うのは人だからです。

詳しくはぜひ本を読んでほしいですが、例えば「FILE3 友達の守り方」では、法律は万能ではないことを顕著に描いています。テーマはDVで、登場人物は被害に遭っている友だちを守りたいあまり「虚偽告訴」という誤った訴え方をしようとしてしまう、という話です。一歩間違えばその被害者側が責められる立場になるという展開です。最終的には虚偽告訴はしませんが、DVそのものを許さないためにとるべき行動が結末には描かれています。
先が気になるストーリーを追いながら、法律について知ることができます
先が気になるストーリーを追いながら、法律について知ることができます
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法律を知り始めると、誰でも「法律ってすごいんだ」という認識になるんですよね。私自身がそうでした。でも、自分のために法律を勉強してみたら、法律で解決できない問題を現実にいくつも見ることになりました。だからこそ、法律は万能ではないというリアルなところを、法律に興味を持った人たちにはきちんと伝えていく必要があると思い、この「こども六法ノベル」をつくりました。

たとえばいじめの問題では、保護者が子どもよりもヒートアップしてしまい、「絶対訴えてやる!」となってしまう場合もあるわけですね。でも、そこでどういう代償を払うことになるのか、どういうリスクを負うことになるのかを考えてみてほしいのです。この本の第一話では「いじめ」をテーマにしています。ここでは、いじめた側の保護者がヒートアップしている展開になっていますが、現実にはいじめられている子どもの保護者のほうがヒートアップするケースもあります。

ただ、もしも本当に裁判するとなると、中学1年生のときに始めたら高校2年生になるくらいまでの時間がかかるのです。その年数、ずっといじめの話をしているということを想像してください。大人にとっての5年と子どもにとっての5年は全く違います。子どもがどのくらいのスピード感で育っていくのかを考えたら、その間に状況も変化するかもしれないのに、裁判によって片をつけようとすると、貴重な時間を無為にしてしまうことにもなります。

もちろん、泣き寝入りしたほうがいいということではありません。けれど、こうしたことも考慮してほしいのです。実際、いじめについてしっかり取り組んでいる弁護士は、すぐに裁判にしようとは絶対に言いません。裁判にしなくても法律を使っていじめを解決していく方法はあるし、そこを熟知した弁護士としてこの本では「久家智紘」を描いています。

法律ではなく法律家に注目してほしい

――現実にも、久家智紘のように子どもの思いを理解している弁護士が身近にいるといいなとも思います。そうでなければ、やはり自分で法律について学ぶことは必要なのでしょうか。

山崎:法律を学ぶのはいいけれど、それと同時に法律家がいるということに注目してほしいですね。自分で法律を勉強しても、必ずしも現実的に法律を使いこなせるわけではないでしょう。逆に法律を使いこなせない人こそ、智紘のような法律家に相談してほしいのです。相談して法律で救ってもらうということができるわけですから。

どんなジャンルでも、自分が持っていない専門性を持った専門家に助けてもらうことが大事です。そのためには、それぞれの専門領域のさわりだけでも知っておくことで、「これはもしかしたらこの専門家に頼ったら助けてもらえるんじゃないか」という発想になることが大事でしょう。足がかりを得るという相談のプレステップが重要だなと思っています。

――法律そのものを覚えておくんじゃなくて、困ったときに誰に聞いたらいいかを、覚えておくことが大事ですね。

山崎:そうです。法律で解決できるかも、と思ったら、自分で調べてもいいですが、法律家に相談して「これは法律で解決できますか?」と聞いてみることが早いのではないでしょうか。

――今、「助けて!」と言えない子どもが多く、「『助けて』と言える人になってほしい」というメッセージによく出合います。助けてくれる人は、親や先生だけではないことも知ってほしいですね。具体的にはどこにいけば、法律の専門家と出会えますか?

山崎:各都道府県、各自治体の弁護士会が子ども向けの相談窓口を無料で開設しているので活用してほしいと思います。こうした情報は「こども六法ノベル」でも巻末で紹介しています。
ほかにも、法律についての知識を得られる解説も付いています
ほかにも、法律についての知識を得られる解説も付いています
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法律は「フィードバック」が大事。「法制度を使う」ことはプラスのフィードバックになっていく

――障害のあるお子さんの保護者に向けて、法律や法制度についてはどんなことを伝えたいですか?

山崎:障害者に対する法的な支援、制度的な支援というのは、人権保障の問題です。人権は「かわいそうだから保障してあげる」という視点のものではありません。障害のある人は、健常者にくらべてスタートラインにハンデがあるということですよね。ビハインドを背負っている分、ほかの人よりも障害者はもっと頑張らないとスタートラインに立つことができない。そこを、支援によってスタートラインを揃えることが「公平」なのだと考えています。

だから、支援を受けることや税金を使っていることについて、後ろめたいことのように言う人がいるかもしれませんが、それは全くの理解不足です。法制度による支援を使うことは保護者も子どもも人権として当然のことです。何か言われても全く気にする必要はないということを伝えたいです。

――法制度はあるのに、合理的配慮や支援を受けるときに遠慮してしまって使えないでいるという声もよく聞くのですが、どう考えたらいいでしょうか。

山崎:「フィードバックをする」という意識を忘れないでほしいです。フィードバックとは、制度が不十分だからもっと良くしてほしいと訴えることばかりではありません。その法制度がちゃんと使われてるということ自体が立派なフィードバックです。使われるべき制度が使われてないということは、それが必要のない制度だという逆の意味でのフィードバックになってしまうんですよ。

その一方で、「支援」は「優遇」ではありませんから、スタートラインを揃えてもらったあとの努力はほかの人と同じになります。そこから先は制度に頼れないことも忘れないで、使える法制度は使ってほしいと思います。
法律を知るだけではなく、その解釈や考え方についても整理してくれます
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高校生弁護士は現実にあり得る?

――ところで、「久家智紘」は高校生で弁護士という設定ですが、これは現実の日本でありえることですか?

山崎:制度上は、高校生でも弁護士になれます。弁護士になるには、法科大学院を修了するというルートでは年齢制限がありますが、予備試験ルートだったら年齢制限はありません。日本で高校生の弁護士は、今は実在しませんが、制度的な壁はないのです。

「こども六法」の効果なのかはわからないですが、小学生でも弁護士や検事になりたいという子どもたちは増えています。そういう子どもたちが、学校の勉強とは別に自分の勉強したいことを早めに始めることは、全然ありだと私は思っています。「こども六法ノベル」を読んで、高校生で弁護士に制度的にはなれるものならトライしてみようかな、と思う人が出てきたら、面白いでしょうね。そういう人にも、この「こども六法ノベル」を読んで、「法律は万全ではないこと」を知っておいてほしいです。

まとめ

法律というと間違ったことを絶対に許さない、無機質で冷たいイメージがあるかもしれませんが、これを使うのは感情の動物である人間です。法律を「一刀両断するための刀」として使うのではなく、気持ちが通う使い方をすることが大事だということを、「こども六法ノベル」は教えてくれるようです。思春期に読んでほしいテーマがメインの小説ですが、実は大人も一緒に読むことで、大事なことに気づかせられるかもしれません。

文/関川香織
こども六法ノベル その事件、こども弁護士におまかせ!
山崎 聡一郎 (企画・原案), 岩佐 まもる (著), 飯田 亮真 (監修)
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