手づかみ食べはいつから?しない場合の原因や対処法も/小児科医監修

ライター:発達障害のキホン
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手づかみ食べは、子どもが自分で食べる力を育んでいくための大事なステップです。離乳食の後期からは十分に手づかみ食べをさせてあげることが重要だと言われています。手づかみ食べをしやすいメニューや、手づかみ食べの促し方についても、医師の監修のもと解説します。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。
目次

手づかみ食べはなぜ必要?手づかみ食べはいつから始まる?子どもの発達について解説

手づかみ食べは9ヶ月頃からスタート

離乳食は、生後5〜6ヶ月から始めることが推奨されています。最初は、10倍がゆをなめらかに裏ごししたものをゴックンと飲み込むことからスタートしますが、生後7〜8ヶ月ごろになると、水分を減らしたメニューも舌と上顎ですりつぶして食べられるようになります。

そして生後9~12ヶ月頃になると、離乳食は1日3回になり、栄養の大半を離乳食からとるように。かむ力もだんだんとついてきて、やわらかくゆでた野菜などを前歯でかじりとり、歯ぐきですりつぶしながら食べるようになります。この頃になると、手指も発達し、手のひらでものを握ったり、親指と人差し指でつまんだりといった細かい動作が徐々にできるようになってきます。食事の時、子どもがお皿のなかに手をのばしてさわろうとする仕草も増えてくるかもしれません。

こうした仕草が見られるようになったら、ぜひ離乳食にも手づかみで食べられるメニューを取り入れ、十分に手づかみ食べをさせてあげましょう。

手づかみ食べは目と手と口の協調運動

手づかみ食べは、食べ物を見て確かめ、手でつかみ、口へ運んで食べるという「目と手と口の協調運動」です。この3つの協調運動は、スプーンやフォーク、箸などの食具を使うためにも重要です。手づかみ食べをたっぷり経験することで、食具を使いこなす土台も育まれていきます。

また、この時期は「自分でやりたい!」という意欲が芽生えてくる頃です。食べ物をつかんで投げたり、ベタベタの手で顔や頭、テーブルなどをさわったり、お皿をひっくり返したりと、保護者にとっては困った行動に見えることも増えますが、ここはぐっとこらえてできる限り子どもの自由にさせてあげましょう。

子どもは手指をセンサーにして、食べ物の形状や温度を感じ取りながら、「落としたらどうなる?」「手でにぎるとどうなる?」とさまざまなことを学んでいる最中です。

食事用のビニール製やシリコン製のスタイを使用したり、食事いすの下にレジャーシートや新聞紙を敷いたりすることで、食べこぼしの片づけは少しラクになるでしょう。

子どもが手づかみ食べしない4つの原因、手づかみ食べしないことでの影響とは?

手づかみ食べをしない4つの原因

手づかみ食べは、9ヶ月頃から多くの子どもに見られますが、なかには自分から食べ物に手を伸ばそうとしない子どももいます。子どもが手づかみ食べに興味を示さない理由としては、以下の4つが考えられます。

1.手が汚れる感覚がイヤ
離乳食後期から完了期のメニューは、歯ぐきでつぶせるくらいのかたさが目安です。手づかみ食べメニューも、手でぎゅっと握るとつぶれてくっついてしまうことから、手にベタベタとくっつく感触をいやがって、手づかみをしようとしない可能性が考えられます。

ただ、しばらくは慣れない感触をいやがる子どもも、ママやパパがやってみせたり、何度か繰り返して安全であることを学習することで、次第に抵抗感がなくなっていくケースも少なくありません。子どもとママやパパに負担のない範囲で、チャレンジを継続していくとよいでしょう。

また、保護者が汚れるのをいやがって、こまめに子どもの手を拭いたり、「それは手づかみしないで!」など、手づかみ食べ用のメニュー以外をさわらせないようにしていると、子どもの「さわってみよう」「自分で食べてみよう」という意欲がしぼんでしまうこともあります。手づかみ食べの時期は、ある程度汚れるのも仕方ないと割り切りましょう。

2.食への興味があまりない
大人でも食べることが大好きな人もいれば、食べることよりも趣味や仕事の優先順位が高い人もいます。赤ちゃんのタイプも、大人同様にさまざまです。

食事の際は、子どもの気があちこちに散らないように、集中できる環境を整えましょう。テレビは消し、おもちゃは目に入らないところに片づけます。保護者がいっしょに食卓を囲み、大人が食べている姿を見せることも、食への関心を引き出すのに効果的です。

3.手先がまだ器用ではない
手づかみで食べるには、手指のこまかい動作が必要です。子どもの発達には個人差が大きく、手指の発達スピードにも幅があります。9ヶ月ではまだ上手に手づかみできなかった子どもも、10ヶ月、11ヶ月と月齢が大きくなるにつれ、次第にこまかな動作ができるようになり、上手に口に運べるようになっていくことも多いものです。あせらず、その子なりのペースを大事に見守りましょう。

4.自分でやりたいという意欲が育っていない
子どもが離乳食に手を伸ばしたり、さわろうとしたときに、汚れるのを嫌がってさわらせないでいると、子どもが「食事は大人に食べさせてもらうもの」と学習してしまうことがあります。すると、月齢が進んでも、大人がスプーンを運んでくれるのを口を開けて待つばかりで、自分から食べようという意欲が見られなくなってしまうケースも。子どもが手づかみしやすいメニューを持たせてあげて、自分で食べる経験を少しずつ重ねていくことで、徐々に意欲が育っていきます。

手づかみ食べの機会が少ないと、食具を使って自分で食べる発達もゆっくりになるなどの影響が考えられます。ただ、手づかみ食べは個人差が大きく、あまり手づかみ食べをせずに、はやくからスプーンなどを使って食べることに興味を示す子どももいます。
大切なのは、子どもが「食べるって楽しい!」と感じて、おいしく味わって食べられること。手づかみ食べのメニューも用意しながら、おおらかな気持ちで子どもの自発的な食行動を見守っていきましょう。

手づかみ食べのポイントと促し方は?

9ヶ月頃になったら、手づかみで食べられるメニューを献立に加えることを意識しましょう。たとえば、ごはんを小さめのおにぎりにしたり、ゆでた野菜やいも類をスティック状に切ったりするだけでも十分です。バナナやふかしたさつまいもなどは、やわらかくて甘みも強く、手づかみ食べにぴったりです。

手づかみ食べメニューは、少し大きめにカットすると、子どもが前歯を使ってひと口量をかみとる練習にもつながります。子ども用のお皿に盛りつけ、子どもが自由に手をのばせるようにしましょう。最初は口いっぱいにつめこんで、「おえっ」とえづいてしまうこともあるかもしれません。それも子どもにとっては、適切なひと口量を覚えるための学習です。食事中は必ずそばにいて、のどにつまらせないように見守りましょう。

食事は食べさせてもらうものではなく、自分で食べるもの。子どもの「食べたい」という意欲を引き出していくためには、おなかがすいて食事をする、というリズムをつくることも大切です。3食は毎日できるだけ決まった時間に設定し、体を動かしてたっぷり遊び、空腹を感じてから食事をできるようにしましょう。食事の時間だけでなく、起床時間、昼寝、就寝などの生活リズムを整えていくことも大事です。
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