川崎病とは?主要6症状や原因、受診目安、治療や予後など/医師解説

ライター:発達障害のキホン
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川崎病は、子ども特有の病気の一つです。聞いたことはあるかもしれませんが、「どのような症状が出るのか、検査や治療法はあるのか」を知らない、または「大変な病気」というイメージを持つ方も多いでしょう。今回は、川崎病の原因や6つの主な症状、検査方法や治療法、また後遺症はあるのかなどについて、小児科医の室伏佑香先生に詳しく分かりやすく解説していただきました。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。
目次

川崎病とは?原因、かかりやすい年齢はある?

川崎病はどのような病気?

川崎病は、1960年代に川崎富作氏によって報告された、子どもに特有の全身の血管に炎症が起こる病気です。一番気をつけなければいけないのは、心臓に合併症を起こす場合があることです。まれに重篤な合併症を起こす可能性がありますが、適切な診断や治療を受ければ重症化しないことが多いです。

原因や起こりやすい年齢は?

現在のところ、遺伝的な要因、細菌やウイルスなどの感染、免疫システムの過剰な反応などと関連があると言われていますが、川崎病の原因は特定されていません。4歳以下での発症が多いですが、それ以降の学童期にも発症しうる疾患です。2021年の報告によると1歳が最も多く、2歳、0歳がこれに続き、女児よりも男児に多い傾向があります。再発率は約4%と報告されています。

また、欧米に比べると日本をはじめとするアジアの国々で多く発症するとも言われています。

川崎病の心合併症

血管に強い炎症が起こることで、冠動脈(心臓に酸素を届ける血管)が瘤のように膨らむ「冠動脈瘤」ができることがあります。冠動脈瘤は大きいほど重症で、まれに心筋梗塞や突然死を招く恐れがあります。

川崎病の症状は?病院受診の目安や検査、治療、予後などについて小児科医が詳しく回答!

川崎病にかかると、どのような症状が出るのでしょうか。また、どのようなことが気になったら受診する必要があるのか、検査や治療はどのようなことをするのか、予後はどうなのかなど、気になることを小児科医の室伏佑香先生が分かりやすく答えてくださいました。

Q:川崎病になるとどんな症状が出る?

(質問)
川崎病にかかると、どんな症状が出ますか?

(回答)
以下の6つの主要症状のうち、経過中に下記の5症状以上に当てはまる場合は、川崎病と診断します。

1. 発熱
個人差はありますが、無治療ではおおよそ1~3週間にわたって熱が上がったり下がったりします。現在は発熱日数を問わず、川崎病の診断基準の一つとみなされています。

2. 両側眼球結膜の充血
血管が拡張して見えやすくなることで、眼球結膜(白目の部分)が赤くなります。

3. 口唇、口腔所見…口唇の紅潮、いちご舌
のどが赤くなる、唇が赤く乾いてひび割れる、舌が赤くブツブツが目立つようになりイチゴのようにみえる、などの症状が出てきます。

4. 発疹(BCG接種痕やその周辺の発赤も含む)
発疹の形態はさまざまで、蕁麻疹(じんましん)や、 麻疹(はしか)や 猩紅熱(しょうこうねつ)による発疹のように見えることがあります。

5. 四肢末端の変化
急性期…手足の硬性浮腫、手掌足底または指趾先端の紅斑
回復期…指先からの膜様落屑

手の平と足の裏が赤色または紫がかった赤色になったり、手足の指が腫れぼったくなったりします。発症から約10日ほど経つと、手足の指の皮膚がむけ始める場合もあります。

6. 頚部のリンパ節の腫れと圧痛
首のリンパ節が腫れ、圧痛を伴います。腫れや痛みが強い場合には、首を動かしにくくなることもあります。

上記の主要症状は同時期に一気に出現せず、数日かけて揃ってくる場合もあります。また、5つの症状が揃わなくても、その他の症状や検査結果などから総合的に川崎病と診断することがあります。

川崎病の症状の現れ方は個人差が大きいので、似たような症状が出ていても、必ずしも上記の症状に当てはまらないこともあります。少しでも気になる症状がある場合には、ためらわずかかりつけ医などを受診することをおすすめします。
回答者:室伏佑香先生(東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 小児科専門医・指導医/小児神経専門医)
回答者:室伏佑香先生(東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 小児科専門医・指導医/小児神経専門医)
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Q:川崎病かも…どんな検査をする?

(質問)
病院ではどんな検査をするのですか?

(回答)
血液検査や尿検査、咽頭ぬぐいの検査などを行い、感染症のチェックや川崎病を疑う血液検査所見(白血球や炎症反応(CRP)の上昇など)があるかどうかを確認します。

また、少しでも川崎病の疑いがあれば、心電図検査や心臓超音波検査(心エコー検査)などの心臓の検査を行います。そこで、心臓の動き、冠動脈瘤や心臓弁の異常の有無、心膜や心筋の炎症の有無などを確認します。心エコー検査で動脈瘤が見つかれば、心臓カテーテル検査を行うことがあります。
回答者:室伏佑香先生(東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 小児科専門医・指導医/小児神経専門医)
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Q:川崎病はどんな治療をするの?入院期間はどのくらいになる?

(質問)
川崎病と診断されたら、どんな治療を受けるのでしょうか?また、入院期間はどのくらいなのでしょうか?

(回答)
川崎病の治療開始はできるだけ早く開始すること、いわゆる「急性期」治療が重要です。特に冠動脈疾患のリスクを抑えるために、症状が現れてから7〜10日以内に治療を行うことが望まれます。治療内容としては、1~2日間にわたり高用量の免疫グロブリン(全身の炎症を抑える)を静脈内投与し、中等量のアスピリン(血管の炎症を抑える、血液を固まりにくくする事により血栓を予防する)を経口投与します。この治療で十分に症状が改善しない場合には、免疫グロブリンを再度投与したり、ほかの治療を追加することもあります。

数日熱のない状態が続けば、アスピリンを減量しますが、その後もしばらくは内服を継続することが多いです。冠動脈瘤がない症例では、炎症が治まればアスピリンの投与を中止しますが、冠動脈に異常が見られる症例では、長期にわたってアスピリンを内服します。

入院期間は、1回のグロブリン点滴治療で炎症が落ち着き、解熱した場合でおおよその目安として1~2週間程度です。冠動脈瘤があったり、治療を行ってもなかなか解熱が得られない場合は数ヶ月入院することもあります。退院後も外来で、年単位でエコー検査を継続することが多いです。
回答者:室伏佑香先生(東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 小児科専門医・指導医/小児神経専門医)
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Q:川崎病の重症化は命にかかわる?

(質問)
川崎病が重症化すると命にかかわるのでしょうか?

(回答)
熱などの症状が目立っている急性期での致死率は、0.1%未満です。
しかし、2~3%の確率で冠動脈瘤ができてしまうことがあります。(心臓の血管の一部が瘤のように膨らむ)冠動脈瘤ができてしまうと、血液の流れが滞って血栓ができやすくなります。ここから流れた血栓が冠動脈をふさぎ、その先の血流が途絶えて酸素が届かなくなってしまうと、心臓の筋肉が壊死し、心筋梗塞を引き起こします。だからこそ急性期の治療がもっとも重要であり、後年に心筋梗塞を生じるリスクを減らすことにつながります。

川崎病は全身の血管に炎症が起こるため、さまざまな臓器にも合併症がみられます。しかしほとんどは一時的なもので、適切な治療すれば重症になることは多くはありません。まれに心筋炎、心不全、不整脈、肝障害、イレウス、けいれん、脳症など重い合併症が起こることがあります。
回答者:室伏佑香先生(東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 小児科専門医・指導医/小児神経専門医)
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川崎病は治るの?後遺症や再発の可能性について

川崎病の死亡例は、全国調査において2019~2021年の2年間で2例のみとなっています。また、再発の可能性は全体の約4%、後遺症を生じる例は約2.5%という結果が出ています。後遺症の内訳は、冠動脈の小瘤が1.44%、中等瘤が0.57%、巨大瘤が0.13%、心筋梗塞が 0.01%、弁膜病変が0.45%となっています。

このような長期的心合併症も生じうる疾患であるため、川崎病の既往がある場合には受診時に既往がある旨を伝えましょう。また、お子さん自身で健康管理を行う年齢になったら「川崎病にかかったことがある」と伝え、本人が病歴を把握しておけるようにしておくことも必要でしょう。
参考:特定非営利活動法人日本川崎病研究センター 川崎病全国調査担当グループ 第26回川崎病全国調査
https://www.jichi.ac.jp/dph/wp-dph/wp-content/uploads/2022/04/a19b047d4b9e6fbb84b6b187236779c8.pdf
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