情報過多時代の発達障害子育て、悩める保護者の支えにーー多職種連携に取り組む本田真美医師インタビュー

ライター:発達ナビ編集部
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小児診療の現場では、医師や看護師だけでなく、さまざまな専門家が連携して一人のお子さんと家族をサポートする多職種連携が少しずつ進んでいます。今回は、日本小児診療多職種研究会の理事長を務める小児科医 本田真美先生のインタビューをお届けします。

目次

「経過観察」ではなく具体的なアドバイスを!多職種連携の現場から

26年以上、小児科医としてお子さんたちを診てきた本田真美(ほんだまなみ)先生。医療はもちろん、教育や福祉・行政などのさまざまな分野の専門家が互いに協力し合う多職種連携の推進を目指し、クリニックの院長として、「日本小児診療多職種研究会」の理事として取り組まれています。
――2016年に開院された「みくりキッズくりにっく(東京都世田谷区)」では、まさに多職種連携を実践されていますね。

本田先生:そうですね。「子どもの専門家集団」を掲げ、医師と看護師、事務のほか、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、公認心理師、保育士、幼稚園教諭、音楽療法士、管理栄養士、児童支援員という計13職種、70人以上の専門家 が在籍しています。

――発達・小児神経外来とは別に、「発達サポート外来」を設置されていますが、どのような診療をされているのでしょうか。

本田先生:専門の療法士が、心理療法、理学療法、作業療法、言語療法の面からアセスメントを行い、お子さんに合わせたプログラムを提供しています。発達障害や脳性まひ、染色体異常などのお子さんが多いですね。毎月1日~5日に翌月の初診予約を受け付けていて月に30人ほどの初診のお子さんを診ていますが、希望者はその4~5倍もいるのが現状です。

私たちは、お子さんや保護者の方の困りごとに対して「もう少し様子を見ましょう」という経過観察ではなく、具体的で分かりやすいアドバイスをすること、保護者の方がご家庭で安心してお子さんに向き合えるようサポートすることを心がけています。

よく、個性か障害か……という話がありますが、キーワードになるのが社会適応力だと思います。となると、医療だけでは限界があって、発達が気になるお子さんやその家族を支えるのは、「医療」「教育」「福祉・行政」のトライアングルだということです。診断がついたり、薬を処方されたりすれば解決するわけではないということですね。だから私は、医療での多職種連携はもちろんのこと、担当領域に縛られることなく「さまざまな分野の専門家が互いに協力し合うこと」を目指しているのです。
本田真美(ほんだまなみ)先生:国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)や都立多摩療育園(現都立府中療育センター)、都立東部療育センターなどを経て2016年に「みくりキッズくりにっく」を開院
本田真美(ほんだまなみ)先生:国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)や都立多摩療育園(現都立府中療育センター)、都立東部療育センターなどを経て2016年に「みくりキッズくりにっく」を開院
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情報過多で保護者の方が大変な時代だからこそ

――日々、発達が気になるお子さんの保護者の方から話を聞いていて、どのようなことを感じられていますか。

本田先生:情報過多の時代だからこそ、目につきやすい子育てのマニュアルや療育法に頼りすぎてしまう傾向があるように思います。

例えば、「発達障害のチェックリストには当てはまらないけど、園の先生に受診をすすめられたから」と来院される方がいます。そこで、例えば「トイトレが進まない」「夜眠れない」「毎日のルーティン」といったお子さんのエピソードをもとに詳しくお聞きしてみると、お子さんの発達の特性が見えてきて、アドバイスをすることができます。

――インターネットで調べたりチェックリストを試してみたりすることで、逆にお子さんの特性が見えにくくなってしまうこともあるのですね。

本田先生:そうですね。そして、すべてのお子さんに共通した正解があるわけではないので、「わが子が困っている背景や原因」を知り、「わが子に合うもの」を選択することが大切ですよね。ただ、保護者の方が自分で見つけるのは難しくなっているように思います。だからこそ、専門職である一人ひとりが広い視野と経験や知識をもとに多くの手札を持ち、お子さんに向き合う必要があると考えています。

お子さん自身が「ヘルプを出せる」「交渉できる」ように

――保護者の方には、お子さんとの関わりについてどのようなお話をされていますか。

本田先生:お子さんが「ヘルプコール」と「交渉力」を身につけられるようにしましょうということでしょうか。まずは就学までに、「助けて」「やりたくない」と言えるように。そうすれば、嫌なときに暴れたり癇癪を起したりしなくても良くなり、お子さん自身が楽になるでしょう。当院でも、就学までのプログラムを大事にしています。

就学後はさらに進んで、「交渉術」を学んでほしいと思います。例えば、学校での合理的配慮。もちろん学校の先生と保護者の方を中心に話し合いをされると思いますが、小学校高学年ぐらいになったらお子さん自身が自分に必要なもの・不要なものを意思表示できると、ミスマッチを防ぎやすくなりますね。

これは、服薬にも当てはまります。医師が処方した薬を、保護者の方がお子さんに飲ませることが多いと思いますが、いずれはお子さん自身が用法容量の範囲内で「この薬は、この量だと調子が良いから飲みたい」と言えるように練習していってほしいのです。

――お子さんのために、意思表示できる力を育むことが重要なのですね。
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