【ASDと学生生活】架空論文の作成、教科書丸写し…「言葉通り」に受け取る真面目な息子が、暗黙知に立ち向かう今
ライター:寺島ヒロ
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発達障害のある子どもを育てていると、「どうしてそうなるの?」と思う出来事に、ときどき出合います。本人はまじめに取り組んでいるのに、なぜかあさっての方向に努力し、周囲から不思議がられてしまう。今回は、息子が高校生の頃の、まさにそういう出来事の話です。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
大学受験対策の小論文の課題で
うちの息子、タケルはASD(自閉スペクトラム症)の診断があり、現在は障害学生として大学院で学んでいます。
タケルがまだ高校生の頃、大学受験対策で小論文の授業を受けていた時のことです。
ある日、提出した小論文について聞きたいことがあると先生に呼び出されました。
「この引用している論文、調べてみたけど見つからなかった。どこから引っ張ってきたの?」
その小論文は理科分野の設問で、ある典型的な現象が紹介され、「この現象について考えて書きなさい」というものでした。
タケルは、ある論文を引用して自分の意見を展開する書き方をしていたのですが、先生は「そんな研究結果が出ているのか!?」と、驚いたそうです。それで、自分でも知りたいと思って調べたのですが、見つからなかったのだと。
「この引用している論文、調べてみたけど見つからなかった。どこから引っ張ってきたの?」
その小論文は理科分野の設問で、ある典型的な現象が紹介され、「この現象について考えて書きなさい」というものでした。
タケルは、ある論文を引用して自分の意見を展開する書き方をしていたのですが、先生は「そんな研究結果が出ているのか!?」と、驚いたそうです。それで、自分でも知りたいと思って調べたのですが、見つからなかったのだと。
それに対して息子は、こう答えました。
「問題文に『考えて書きましょう』とあったので、論文もイチから考えました」
週末を論文検索に費やした先生は膝から崩れてしまったそう。
「問題文に『考えて書きましょう』とあったので、論文もイチから考えました」
週末を論文検索に費やした先生は膝から崩れてしまったそう。
手間を厭わないASD(自閉スペクトラム症)
もちろん息子は、先生をからかってやろうとしたわけではありませんし、調べものの手間を省きたかったわけでもありません。
むしろ論文を丸ごと創作するという手間をかけています。小説で言うところの「架空の本編」を一旦設定してから、自説を組み立てているのです(だからこそ先生も騙されてしまったわけですが……)。
単に「考えて書け」と言われたので、「考えたことだけで構築しなければならないんだな」と考えて、設定も論文もすべて自分でつくってしまったのです。「その手間が通常の宿題の範囲か?」とか、「理科の小論文として適切な課題か」ということは考えもしない、それがタケルなのです。
好きなところってどこ?
小さい頃から、似たようなことはありました。
たとえば、小学校低学年の時のことです。夏休みに「教科書の好きなところをノートに写してきてください」という宿題が出ました。
タケルは「好きなところ」を真面目に考えて……
国語の教科書の最初から最後まで、ほぼ丸ごとノートに書き写してしまいました!
タケルは「好きなところ」を真面目に考えて……
国語の教科書の最初から最後まで、ほぼ丸ごとノートに書き写してしまいました!
好きなところを「一部分」写すとは夢にも思わなかったようです。小さな字がびっしり埋まったノートは5冊分にもなりました。