【無料アーカイブ配信中】井上雅彦先生・本田秀夫先生もご登壇!「こころの幸せ」と「つながり」を考える。「LITALICO MIRAI FES」レポ
ライター:発達ナビ【編集部Eye】
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2026年4月、『LITALICO発達ナビ』は10周年を迎え、会員数は50万人を突破しました。この節目を記念し、4月5日に『LITALICO MIRAI FES』を開催。当日は専門家の知見と参加者の声が重なり、一人ひとりの困りごとが未来への手がかりへと変わっていくような時間となりました。本記事では、井上雅彦先生、本田秀夫先生によるセッションや講演の見どころ、個別インタビューでのメッセージを凝縮してお届け。講演の模様はアーカイブ配信中なので、見逃した方もぜひ本記事をガイドに視聴してみてください。
小さな安心のかけらを。編集長・牟田暁子が「つながり」に込めた想い
フェスの幕開け、温かな拍手の中で登壇したLITALICO発達ナビの牟田暁子編集長は、10年間の歩みを支えてくれたユーザーへの深い感謝を述べました。今回のテーマ『つながりがつむぐ、新しい社会のカタチ』に込めた想いは、単なる交流に留まりません。正しい知識で悩みを見通しに変える「専門家とのつながり」、一人じゃないと知ることで心の荷物を下ろす「仲間とのつながり」、そして個性を可能性として捉え直す「お子さんの“好き”とのつながり」。
編集長は、「社会のカタチを変えるのは制度や法律だけではありません。今日この場所で、誰かの言葉に頷いたり、モヤモヤを言葉に変えたりする、その小さな心の動きから始まります。今日、このフェスを終えて帰るとき、皆さんの心の中に『こんな風に動いてみるといいのかな』『同じように悩んだり頑張ってる仲間がいるんだな』といった、小さな安心のかけらが一つでも残ることを願っています」と語りかけました。
編集長は、「社会のカタチを変えるのは制度や法律だけではありません。今日この場所で、誰かの言葉に頷いたり、モヤモヤを言葉に変えたりする、その小さな心の動きから始まります。今日、このフェスを終えて帰るとき、皆さんの心の中に『こんな風に動いてみるといいのかな』『同じように悩んだり頑張ってる仲間がいるんだな』といった、小さな安心のかけらが一つでも残ることを願っています」と語りかけました。
皆さんの声が誰かの勇気に――井上雅彦先生が信じる「体験」という唯一無二の価値
「発達ナビ」の立ち上げ当初から監修に携わってこられた、鳥取大学大学院教授・公認心理師の井上雅彦先生。オープニングセッションでは「50万人という規模は、(私の住む)鳥取県の人口とほぼ同じ。これほどの影響力を持つサイトで監修をする上で、何より大切にしてきたのは『情報を正確に伝えること』です」と、これまでの歩みを振り返りました。
近年、学生のレポート作成などでもAIが多用される現状に触れつつ、「基本情報はAIでも書けますが、例えば発達ナビライターのお子さんが成長し、ライフステージが変わっていく中で紡がれる“体験の持続的な情報”というのはAIで代替することは難しい。皆さんの発信する声がまた別の誰かの勇気になる、そんな『つながり』が生まれていけばいいなと思います」と、同じ悩みを通ってきた人だからこそ届けられる「言葉の力」を強調しました。
最後に、「これからはAIとコラボした支援計画の作成など、WEBサイトと読み手のインタラクションが主体となる未来になっていくんじゃないでしょうか。皆さんが積極的に要望を出してくださることが、私たちの原動力になります」と、次の未来へ向けた力強いメッセージで開会の言葉を締めくくりました。
近年、学生のレポート作成などでもAIが多用される現状に触れつつ、「基本情報はAIでも書けますが、例えば発達ナビライターのお子さんが成長し、ライフステージが変わっていく中で紡がれる“体験の持続的な情報”というのはAIで代替することは難しい。皆さんの発信する声がまた別の誰かの勇気になる、そんな『つながり』が生まれていけばいいなと思います」と、同じ悩みを通ってきた人だからこそ届けられる「言葉の力」を強調しました。
最後に、「これからはAIとコラボした支援計画の作成など、WEBサイトと読み手のインタラクションが主体となる未来になっていくんじゃないでしょうか。皆さんが積極的に要望を出してくださることが、私たちの原動力になります」と、次の未来へ向けた力強いメッセージで開会の言葉を締めくくりました。
また、セッション前に行った井上先生への個別インタビューでは、専門家として大切にされてきた「核」など、より深くお話を伺いました。
――先生からご覧になって、この10年で保護者が求める支援や情報の形に変化はありましたか。
井上先生:基本的な部分は変わっていないのではないでしょうか。ただ、扱う情報の領域は非常にニッチになりましたよね。発達ナビが始まった当初は基本知識を届けることを一生懸命行ってきましたが、今やそれはAIでできてしまう時代。だからこそ、これからは「人間味のある記事」がいかに提供できるかが鍵になります。AIには作れない、同じ体験をした保護者の生の声や、当事者の方のコラム、そうした血の通った言葉に、専門家がしっかりとした最新情報を添えて届ける。そういう記事が今後たくさん見られるといいなと思います。
――先生ご自身が大切にされてきた「核」となるものは何でしょうか。
井上先生:一番は「誰一人傷つけないこと」です。50万人もいれば、置かれた状況も考え方も千差万別ですし、デリケートな話題では、家族側と当事者側で対立が起こることもあります。中立性を保ちつつ、どうすれば誰も傷つけずに正確な事実を伝えられるのか。編集チームとは何度も会議を重ね、表現の一つひとつを研ぎ澄ませてきました。
――発達ナビが今後さらに保護者と専門家をつなぐ場として進化するために、こうしたコミュニティはどのような役割を担っていくべきでしょうか。
井上先生:これからは、単に情報を受け取るだけでなく、発信したり繋がったりする「双方向性」に大きな可能性があると思っています。 例えば、50万人の意見を集めることができれば、省庁が施策を考える際や、公共交通機関の休憩スペースのあり方など、当事者の声を反映させた「政策提言」のようなことも可能になるはずです。また研究者にとっても、この大きなコミュニティと信頼関係を築くことで、より科学的な分析に基づいた発信ができます。企業の商品開発も含め、お互いがインタラクション(相互作用)する中で、社会を良い方向へ動かしていく循環を作れるといいですね。
井上先生のオープニングセッションの全容は、ぜひアーカイブ配信でご覧ください。
――先生からご覧になって、この10年で保護者が求める支援や情報の形に変化はありましたか。
井上先生:基本的な部分は変わっていないのではないでしょうか。ただ、扱う情報の領域は非常にニッチになりましたよね。発達ナビが始まった当初は基本知識を届けることを一生懸命行ってきましたが、今やそれはAIでできてしまう時代。だからこそ、これからは「人間味のある記事」がいかに提供できるかが鍵になります。AIには作れない、同じ体験をした保護者の生の声や、当事者の方のコラム、そうした血の通った言葉に、専門家がしっかりとした最新情報を添えて届ける。そういう記事が今後たくさん見られるといいなと思います。
――先生ご自身が大切にされてきた「核」となるものは何でしょうか。
井上先生:一番は「誰一人傷つけないこと」です。50万人もいれば、置かれた状況も考え方も千差万別ですし、デリケートな話題では、家族側と当事者側で対立が起こることもあります。中立性を保ちつつ、どうすれば誰も傷つけずに正確な事実を伝えられるのか。編集チームとは何度も会議を重ね、表現の一つひとつを研ぎ澄ませてきました。
――発達ナビが今後さらに保護者と専門家をつなぐ場として進化するために、こうしたコミュニティはどのような役割を担っていくべきでしょうか。
井上先生:これからは、単に情報を受け取るだけでなく、発信したり繋がったりする「双方向性」に大きな可能性があると思っています。 例えば、50万人の意見を集めることができれば、省庁が施策を考える際や、公共交通機関の休憩スペースのあり方など、当事者の声を反映させた「政策提言」のようなことも可能になるはずです。また研究者にとっても、この大きなコミュニティと信頼関係を築くことで、より科学的な分析に基づいた発信ができます。企業の商品開発も含め、お互いがインタラクション(相互作用)する中で、社会を良い方向へ動かしていく循環を作れるといいですね。
井上先生のオープニングセッションの全容は、ぜひアーカイブ配信でご覧ください。
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「育てやすさ」の裏に隠れたSOS。本田秀夫先生が説く、子どもの幸せとは
信州大学教授・医学博士の本田秀夫先生による基調講演では、「乳幼児期から思春期までを見据えた『未来への道しるべ』についての深い考察が語られました。
本田先生はまず、すべての子どもが達成できる可能性を秘めているのは「こころの幸せ」であると切り出されました。しかし現実には、日本の子どもたちの身体的な健康度は世界トップクラスでありながら、心の幸福度は先進国の中で最下位に近い(36カ国中32位)という衝撃的なデータを示し、日本の教育・育児文化の中に「子どもが幸せを感じにくい要素」が紛れ込んでいるのではないかと指摘します。
本田先生はまず、すべての子どもが達成できる可能性を秘めているのは「こころの幸せ」であると切り出されました。しかし現実には、日本の子どもたちの身体的な健康度は世界トップクラスでありながら、心の幸福度は先進国の中で最下位に近い(36カ国中32位)という衝撃的なデータを示し、日本の教育・育児文化の中に「子どもが幸せを感じにくい要素」が紛れ込んでいるのではないかと指摘します。
その象徴的な現象が、急増する「不登校」です。本田先生によれば、現在の学校システムは「平均的な7割の子ども」に向けて作られており、発達障害、特にASD(自閉スペクトラム症)の子にとっては、興味のないことを「みんな我慢しているから」という理由で強要される、非常に過酷な環境になりがちだと言います。
ここで注意すべきは、一見おとなしく適応しているように見える子どもたちの存在です。先生は、彼らが周囲に合わせようと必死に自分を偽る「カモフラージュ」という現象に警鐘を鳴らしました。「我慢をさせられ、我慢のやり方を覚えてしまった子は、一見『いい子』に見えます。しかし、本人の内側ではストレスが限界まで積み重なっているのです」と、周囲から見た「育てやすさ」を優先する危うさを説かれました。
ここで注意すべきは、一見おとなしく適応しているように見える子どもたちの存在です。先生は、彼らが周囲に合わせようと必死に自分を偽る「カモフラージュ」という現象に警鐘を鳴らしました。「我慢をさせられ、我慢のやり方を覚えてしまった子は、一見『いい子』に見えます。しかし、本人の内側ではストレスが限界まで積み重なっているのです」と、周囲から見た「育てやすさ」を優先する危うさを説かれました。
基調講演に先立ち行った本田秀夫先生への個別インタビューでは、鮮明になりつつあるという社会の「二極化」の現状、そしてマイノリティが直面する課題をどう乗り越えていくべきか、専門家としての視点が示されました。
――10年前と現在を比較して、発達障害のあるお子さんたちが自分らしく生きるための土壌は、先生の目にどのように映っていますか。
本田先生:社会全体に言えることですが、子育てや管理に関して、方針を立てて従わせようとする「管理志向」の強い人たちと、一人ひとりの自発的なモチベーションを尊重する人たちとが、昔に比べてより二分化してきている気がします。学校や企業でも、あからさまな虐待などは減りましたが、「方針に従わない生徒を静かに切り離していく」といった校風を志向する流れがある。その一方、多様性に対応したインクルーシブなあり方を考える流れも強まっていて、以前よりも両者の色が鮮明になり、分断してきていることを危惧しています。特にASD(自閉スペクトラム症)の人たちは、権利を尊重する論理的な思考が強い傾向があるため、管理する側からの理不尽な要求をパワハラと感じやすく、それがトラウマ体験になりやすい。管理主義的な色が強い学校や職場に入ってしまうと、簡単にメンタルヘルスを崩してしまいます。
――発達障害への認識が広まりつつありますが、大人の精神科医療の現場でいうとどのような変化が起きているのでしょうか。
本田先生:以前であれば(特性を)見過ごされていた人たちが、自分が「カモフラージュ」していることに気づき、精神科を受診する人が増えています。2010年代には、大人になって初めてADHD(注意欠如多動症)と診断された人が21倍に増えたというデータもありますが、これは社会参加の中でさまざまなストレスを受けている表れでもあります。その一方で、1990年頃から早期支援が行われている地域では、トラウマ的な体験を予防して、メンタルヘルスを崩すことなく社会参加ができている人たちも着々と増えています。本人に合った支援を受けて健康的に社会に出ている人たちが増えている反面、逆に理不尽なパワハラ被害に遭ってメンタルヘルスを崩している人も続々と出ている。これが、特に大人の精神科医療に表れている現状かなと思います。
――「つながり」をテーマとした本イベントですが、専門家の立場から、これからのコミュニティが担うべき社会的な役割をどのようにお考えですか。
本田先生:発達障害の特性がある人は潜在的に15%ほど存在します。決して少なくないマイノリティですが、一旦社会的弱者に位置づけられるとなかなか抜け出せない。だからこそ、こうしたコミュニティは「マイノリティの権利保障」をしっかり推し進めていかなければいけないんです。思春期の精神科医をしていると、子どもの頃に親や先生の言うことをよく聞く「いい子」だった子が、後々メンタルを不調にするケースをよく見ます。ですから、大人から見て「よくしつけられた子が、良い育て方なんだ」という価値観を、日本国民全体が一切捨てきることが大事なのではないかなと感じます。子どもが自分の特性を持ちながらも、人としてちゃんと社会に参加する権利があるし、周りに守ってもらえるんだということを、身につけてもらいたいですね。
――10年前と現在を比較して、発達障害のあるお子さんたちが自分らしく生きるための土壌は、先生の目にどのように映っていますか。
本田先生:社会全体に言えることですが、子育てや管理に関して、方針を立てて従わせようとする「管理志向」の強い人たちと、一人ひとりの自発的なモチベーションを尊重する人たちとが、昔に比べてより二分化してきている気がします。学校や企業でも、あからさまな虐待などは減りましたが、「方針に従わない生徒を静かに切り離していく」といった校風を志向する流れがある。その一方、多様性に対応したインクルーシブなあり方を考える流れも強まっていて、以前よりも両者の色が鮮明になり、分断してきていることを危惧しています。特にASD(自閉スペクトラム症)の人たちは、権利を尊重する論理的な思考が強い傾向があるため、管理する側からの理不尽な要求をパワハラと感じやすく、それがトラウマ体験になりやすい。管理主義的な色が強い学校や職場に入ってしまうと、簡単にメンタルヘルスを崩してしまいます。
――発達障害への認識が広まりつつありますが、大人の精神科医療の現場でいうとどのような変化が起きているのでしょうか。
本田先生:以前であれば(特性を)見過ごされていた人たちが、自分が「カモフラージュ」していることに気づき、精神科を受診する人が増えています。2010年代には、大人になって初めてADHD(注意欠如多動症)と診断された人が21倍に増えたというデータもありますが、これは社会参加の中でさまざまなストレスを受けている表れでもあります。その一方で、1990年頃から早期支援が行われている地域では、トラウマ的な体験を予防して、メンタルヘルスを崩すことなく社会参加ができている人たちも着々と増えています。本人に合った支援を受けて健康的に社会に出ている人たちが増えている反面、逆に理不尽なパワハラ被害に遭ってメンタルヘルスを崩している人も続々と出ている。これが、特に大人の精神科医療に表れている現状かなと思います。
――「つながり」をテーマとした本イベントですが、専門家の立場から、これからのコミュニティが担うべき社会的な役割をどのようにお考えですか。
本田先生:発達障害の特性がある人は潜在的に15%ほど存在します。決して少なくないマイノリティですが、一旦社会的弱者に位置づけられるとなかなか抜け出せない。だからこそ、こうしたコミュニティは「マイノリティの権利保障」をしっかり推し進めていかなければいけないんです。思春期の精神科医をしていると、子どもの頃に親や先生の言うことをよく聞く「いい子」だった子が、後々メンタルを不調にするケースをよく見ます。ですから、大人から見て「よくしつけられた子が、良い育て方なんだ」という価値観を、日本国民全体が一切捨てきることが大事なのではないかなと感じます。子どもが自分の特性を持ちながらも、人としてちゃんと社会に参加する権利があるし、周りに守ってもらえるんだということを、身につけてもらいたいですね。
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