【無料アーカイブ配信中】「診断名」に縛られない育て方と社会のつながり、ケアまで。山口有紗先生×井上雅彦先生が描く支援の未来とは「LITALICO MIRAI FES」レポ
ライター:発達ナビ【編集部Eye】
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2026年4月5日に開催された『LITALICO MIRAI FES』。本記事では、小児科専門医・山口有紗先生と公認心理師・井上雅彦先生による特別対談の模様をお届けします。テーマは、『特性がある子どもを育てる保護者に伝えたい、親と子の心を支える「ケア」』。診断直後の戸惑いや見通しの立たない不安の渦中にいるご家族へ向け、医療と心理の知見から、明日への希望となる「つながり」の在り方を語り合いました。 本対談はアーカイブ配信中ですので、ぜひ映像と併せてお楽しみください。
【山口有紗先生 講演】子どもの育ちとともにあること
対談に先立ち、小児科医・児童精神科医として、児童相談所や研究機関など「仕組み側」へのアプローチにも携わる山口有紗先生が登壇。自身も6歳の子を育てる「修行中の身」と語る山口先生の視点から、子どもの発達を捉える上で大切なキーワードが共有されました。
山口先生がまず紹介したのは、子どもの発達を多層的に捉える「エコロジカルモデル」という概念です。「子どもの発達は、本人が持つ特徴だけで成り立つものではありません。家族、先生、地域社会、そして国の政策や文化、さらにはパンデミックや国際情勢といった社会環境までが、玉ねぎの層のように重なり合い、相互に作用することで子どもの暮らしが形作られています」
こうした環境の中で育まれる関係性の力について、山口先生は近年の研究を示しながら語ります。「子ども時代の体験は、20年、30年といった長い年月を経て、その子が大人になった時のメンタルヘルスや幸福度に大きな影響を与えます」。家族の中で安全だと感じられるか、気にかけてくれる人がいるかといった小さな積み重ねが生む安全で温かい関係性を、先生は「リレーショナルヘルス(関係性による健康)」と表現し、その重要性を強調しました。
「今取り組んでいる小さな関わりが、将来のウェルビーイングを支える土台になります。そしてその担い手は、必ずしも保護者の方一人である必要はありません。エコロジカルモデルが示す玉ねぎの層のように、いろいろな層の人が担い手となり、社会の中に輪のようなつながりを作っていくことが何より大切なのです」
また、診断名に隠れがちな子どもの「内なる力」についても言及されました。一見、問題行動に見えることも、その子がそのときどきに生き延びるためにとってきた精一杯の「適応の努力」の結果です。その背景に敬意を持つことで、子どもの力を支える方法が自ずと見えてくる――。そんな温かな眼差しに、会場全体が深く頷いていました。
こうした環境の中で育まれる関係性の力について、山口先生は近年の研究を示しながら語ります。「子ども時代の体験は、20年、30年といった長い年月を経て、その子が大人になった時のメンタルヘルスや幸福度に大きな影響を与えます」。家族の中で安全だと感じられるか、気にかけてくれる人がいるかといった小さな積み重ねが生む安全で温かい関係性を、先生は「リレーショナルヘルス(関係性による健康)」と表現し、その重要性を強調しました。
「今取り組んでいる小さな関わりが、将来のウェルビーイングを支える土台になります。そしてその担い手は、必ずしも保護者の方一人である必要はありません。エコロジカルモデルが示す玉ねぎの層のように、いろいろな層の人が担い手となり、社会の中に輪のようなつながりを作っていくことが何より大切なのです」
また、診断名に隠れがちな子どもの「内なる力」についても言及されました。一見、問題行動に見えることも、その子がそのときどきに生き延びるためにとってきた精一杯の「適応の努力」の結果です。その背景に敬意を持つことで、子どもの力を支える方法が自ずと見えてくる――。そんな温かな眼差しに、会場全体が深く頷いていました。
【特別対談:山口先生×井上先生】特性がある子どもを育てる保護者に伝えたい、親と子の心を支える「ケア」
続いて、発達支援を専門とする心理師の立場から井上雅彦先生が加わり、特に孤独や不安を感じやすい「乳幼児期」の課題について、医療と心理の枠を超えた対話が行われました。
行動範囲が狭い分、どうしても家庭の中で関係性が「閉じやすい」という課題が生まれやすい乳幼児期。山口先生は、日本の支援制度には良い仕組みがある一方で、「情報を集めて足を運んで、電話をかけて……といったプロセスを、主には保護者が一人で担わなければならない。それは障害の有無に関わらず、非常に大きな負担」であると指摘します。これに対し井上先生も、「1歳半や3歳児健診でのフォロー体制も各自治体の支援者の数によって異なり、生まれた場所によって支援の受けやすさが違うという事実がある」と挙げ、親御さんが置かれている環境の厳しさに同意しました。
支援の在り方についても議論が深まります。山口先生は「医療機関ができることには限界がある」とした上で、大切なのは診察室で完結させないことだと語ります。「地域の保健師さんやワーカーさんと顔の見える対話を重ね、その連携の『のりしろ』を誰が担うのかを明確にすること。そうした連携のあり方を整えていけるといいのでは、と考えています」
これを受け井上先生からは、「アメリカの『Autism Speaks』というASD(自閉スペクトラム症)の当事者団体が提供する『100日キット』のように、何をすべきか客観的な道筋が示される仕組みや、AIなどのテクノロジーを使い、医療にたどり着く前段階で『わが子の得意・苦手』を把握できる動線があるといい」との提案もありました。
支援の在り方についても議論が深まります。山口先生は「医療機関ができることには限界がある」とした上で、大切なのは診察室で完結させないことだと語ります。「地域の保健師さんやワーカーさんと顔の見える対話を重ね、その連携の『のりしろ』を誰が担うのかを明確にすること。そうした連携のあり方を整えていけるといいのでは、と考えています」
これを受け井上先生からは、「アメリカの『Autism Speaks』というASD(自閉スペクトラム症)の当事者団体が提供する『100日キット』のように、何をすべきか客観的な道筋が示される仕組みや、AIなどのテクノロジーを使い、医療にたどり着く前段階で『わが子の得意・苦手』を把握できる動線があるといい」との提案もありました。
また、お二人の話は「診断名」との向き合い方にも及びます。情報を探すうちに、いつの間にか診断名という眼鏡だけで子どもを見てしまう悪循環について、山口先生はこう締めくくりました。「もちろん特性を理解するための眼鏡が必要なときもあります。けれど、大切なのはその眼鏡に振り回されすぎないようにすること。
時には眼鏡を外して、目の前のお子さんのありのままの豊かな姿をそのまま感じられるように、支援の仕組みやコミュニティ全体で応援していくことも、とても大切なのではないでしょうか」
特別対談の全容は、ぜひアーカイブ配信でご覧ください。
時には眼鏡を外して、目の前のお子さんのありのままの豊かな姿をそのまま感じられるように、支援の仕組みやコミュニティ全体で応援していくことも、とても大切なのではないでしょうか」
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「その人らしさ」を大切に。支援の最前線に立つ専門家からのメッセージ
特別対談の本番を前に、登壇を控えた山口先生と井上先生のお二人それぞれから、個別にお話を伺うことができました。
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