「好きなこと」が避難生活の支えに。能登半島地震の体験談と災害支援の専門家Q&A【第73回日本小児保健協会学術集会レポート】
ライター:発達ナビ【編集部Eye】
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2026年6月19日から3日間、大阪市中央公会堂にて「第73回日本小児保健協会学術集会」が開催され、2日目である6月20日には『災害時の子ども支援を学ぶ・話す・つながるー発達に特性ある子どもと家族を支えるためにー』と題したシンポジウムが開かれました。
今回は、能登半島地震で被災されたご家族の講演と、本シンポジウム登壇者3名への質疑応答の紹介です。
能登半島地震を経験して〜ご家族の体験談〜
能登半島地震で被災され、現在も避難生活・生活再建を続けておられるご家族。発達特性のあるお子さんとの避難生活や、災害下における子どもたちの様子について語ってくださいました。
避難生活における、子どもならではの大変さ
地震が発生した1月1日。激しい揺れに襲われ、間一髪で高台にある高校へ避難しました。ご実家は倒壊し、津波の被害も受けるという凄まじい状況だったといいます。
避難所となった高校では、物資とインフラの断絶により生活もままならない状況に。特にトイレ事情は大変で、暗くて怖い普段と違うトイレに子どもが馴染めず、段ボールと凝固剤を使った簡易トイレを部屋に持ち込んでしのいだこともありました。また、外は危険なため避難所の決められたスペースで子どもたちは過ごしますが、遊び盛りの子どもにとって非常に退屈な環境であることが大変だったと言います。
避難所となった高校では、物資とインフラの断絶により生活もままならない状況に。特にトイレ事情は大変で、暗くて怖い普段と違うトイレに子どもが馴染めず、段ボールと凝固剤を使った簡易トイレを部屋に持ち込んでしのいだこともありました。また、外は危険なため避難所の決められたスペースで子どもたちは過ごしますが、遊び盛りの子どもにとって非常に退屈な環境であることが大変だったと言います。
「好きなこと」が心のよりどころに。必要なのは、頑張れる環境づくり
過酷な環境の中でも、子どもたちの心を支えたのは「好きなことへの没頭」でした。
絵を描くことや工作が大好きな上の子は、解体された家での思い出の絵を描いたり、復興イベントをきっかけに工作をしたりすることで自らの心を癒やしていきました。下の子も学童で出会った将棋に粘り強く取り組み、大人ばかりのクラブに参加して大会に出場するなど、自分の世界を広げています。
また、復興イベントや地域のお祭りに参加して周りの人を喜ばせることが、子どもたちの自信と原動力に繋がりました。学童や学校の先生方が「よかったよ」と声をかけてくれる地域の温かい理解が、子どもたちの成長を強く後押ししています。
このことから「ただ必要な支援を受けるだけではなく、何か頑張れる環境を作ってあげることが大事」だと語られました。
一方で、人口減少に伴い、以前通っていた障害がある子どもの会が解散してしまうなど、今後の支援体制への不安も尽きません。「現状を知って関心を持ち続けてほしい」という言葉には、被災地の切実な願いが込められています。
絵を描くことや工作が大好きな上の子は、解体された家での思い出の絵を描いたり、復興イベントをきっかけに工作をしたりすることで自らの心を癒やしていきました。下の子も学童で出会った将棋に粘り強く取り組み、大人ばかりのクラブに参加して大会に出場するなど、自分の世界を広げています。
また、復興イベントや地域のお祭りに参加して周りの人を喜ばせることが、子どもたちの自信と原動力に繋がりました。学童や学校の先生方が「よかったよ」と声をかけてくれる地域の温かい理解が、子どもたちの成長を強く後押ししています。
このことから「ただ必要な支援を受けるだけではなく、何か頑張れる環境を作ってあげることが大事」だと語られました。
一方で、人口減少に伴い、以前通っていた障害がある子どもの会が解散してしまうなど、今後の支援体制への不安も尽きません。「現状を知って関心を持ち続けてほしい」という言葉には、被災地の切実な願いが込められています。
専門家との質疑応答〜災害時の適切な支援とは〜
シンポジウム後半では、精神科医の福地先生、学校保健学分野の大学教員の古川先生、被災当事者ご家族を交え、会場からの質問に答えるセッションが行われました。支援者や周囲の人がどう関わるべきか、被災したときにどのような準備が必要か、重要なヒントが語られました。
Q1. 外部支援者として、真のニーズを掴むために気をつけることは?
古川先生: 被災して「かわいそうな子」として接するのではなく、その子が自ら話したいと思う体験を引き出しすぎずに寄り添うことが大切です。無理に聞き出そうとするのではなく、「あなたのことをもっと聞かせて」というスタンスで、相手のペースを尊重することが求められます。支援者自身も「自分に何ができるか」を常に問い続ける姿勢が必要です。
Q2. 特性のある子どものパニックや他害(外在化するストレス)への対応は?
福地先生: 特別なニーズのあるお子さんが混乱しているとき、外部の支援者が直接できることは非常に少ないです。心理的応急処置(PFA)の原則である「Do No Harm(害になることはしない)」の通り、まずは迷惑をかけないことが最優先。直接ケアをするのは、普段から関係性ができている「内部(プライマリー)の人たち」であり、外部の支援者は彼らがケアしやすくなるための「環境設定」をサポートすることに徹することが大事と思います。
Q3. 被災した支援者(施設職員など)の早期職場復帰についてどう考えるか?
福地先生: 非常に難しい問題です。大前提として、まずはご自身の家族と生活を第一に考えてください。人がつらすぎる体験をしたとき、その苦しみに向き合うのを避けるために仕事などに「過度に没頭」してしまうことがあります。決して健康的な状態ではないため、危機的状況下であっても、職場で一部の人に過度な負担が偏ったり、仕事にのめり込みすぎたりしないような環境づくりが(理想論ではありますが)必要です。
Q4. 被災者でもある「学校の先生」にはどうアプローチしたか?
古川先生: 先生方は教育のプロです。医療や福祉のチームが土足で踏み込んで「支援しますよ」と言うと傷つけてしまうこともあります。ですので、私は先生方が自信を持っている授業や、工夫して頑張っている様子を「見学させてください」「どうやって工夫されたんですか?」と聞きにいくようにしました。プロとしてのプライドを尊重し、認め合う姿勢が、結果的に先生方の力になっていたと後から教えられました。
Q5. 災害に向けて、日頃から地域に知ってもらうには?
福地先生: 専門職も、当事者やご家族も、学校や病院などの「組織の中」だけで完結しないことが重要です。当事者が地域でどんな生活や文化を持っているのかを知るために、外に出ること。ご家族も、地域の中にいる頼りになる専門職のところへ自ら出向き、顔の見える関係を作っておくことが、いざという時の最大の備えになります。
Q6. 避難所での困りごとについて。大人はよくても子どもならではの困りごとは?
当事者ご家族:やはり避難所が退屈なことだと思います。避難所では「みんなの子ども部屋」というスペースが設けられていましたが、開いているのが朝10時から夕方4時くらいまでで。それ以外の時間を退屈しないためにおもちゃや本を持ってくる必要がありました。気軽に外に出ることも難しいので、行けるタイミングに行くしかないです。
あとは、お手洗い事情は大変で、大人だったら「電気が通ってないから仕方がない」と思えても子どもたちはそうはいかないので、ペットシーツや凝固剤、段ボールなどの簡易トイレの準備が重要になります。
あとは、お手洗い事情は大変で、大人だったら「電気が通ってないから仕方がない」と思えても子どもたちはそうはいかないので、ペットシーツや凝固剤、段ボールなどの簡易トイレの準備が重要になります。
おわりに
災害という非日常の中で、発達に特性のある子どもたちとそのご家族は、私たちが想像する以上の困難に直面します。しかし、実際に被災されたご家族のお話からは、子どもたちが持つ「好きなことの力」や、周囲の温かい関わりがもたらす計り知れないレジリエンス(回復力)を教えられました。
いざという時に備え、支援する側もされる側も、普段から地域と繋がり、お互いを知っておくこと。そして、有事の際には「環境を整え、見守る」という適切な距離感を持つことが、すべての子どもたちを守る第一歩となるのではないでしょうか。
いざという時に備え、支援する側もされる側も、普段から地域と繋がり、お互いを知っておくこと。そして、有事の際には「環境を整え、見守る」という適切な距離感を持つことが、すべての子どもたちを守る第一歩となるのではないでしょうか。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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