3歳でスプーンが使えない?食に興味がなく手先が不器用だったASD傾向の娘。遊びの工夫、療育の刺激で給食を完食するまで

ライター:えなめる
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娘のりんは、現在6歳。ASD(自閉スペクトラム症)傾向があり療育(児童発達支援)に通っています。そんな娘の小さい頃の悩みは、癇癪や偏食などさまざまなものがありましたが、その中でも特に頭を悩ませていたのは自分でスプーンを使ってごはんを食べてくれないことでした。今回の記事では、娘がどのようにしてスプーンを使えるようになったのか書いていきたいと思います。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

3歳までスプーンが使えなかった娘

娘のりんは、現在6歳。ASD(自閉スペクトラム症)傾向があり療育(児童発達支援)に通っています。娘は3歳になるまでスプーンを使って食事ができず、親が食事を手伝ってあげなくてはならなかったのでとても大変でした。

そもそもなぜスプーンが使えなかったかというと、その要因としては、まず娘が食に興味がないことでした。娘は赤ちゃんの頃から離乳食を食べさせていても自分から欲しいと手を出すことがほとんどなく、食べることにほとんど興味がないようでした。またつかみ食べをさせようとしてもごはん粒や食材が手に付くと嫌がって泣き、なかなか自分の手を使うということもありませんでした。

ハイハイを覚えてからは、ごはんの時間になってもじっと椅子に座っていることができず、すぐに椅子から逃げ出してしまうので私はそれを追いかけて無理矢理スプーンでごはんを口に入れて食べさせていました。そのため娘の中では「ごはんはお母さんに食べさせてもらうもの」という認識が生まれたのだと思います。
赤ちゃんの時から食に興味がなかった娘
赤ちゃんの時から食に興味がなかった娘
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児童発達支援での取り組み

スプーンが使えないまま娘は3歳になり、こども園に入園が決まりました。その時に園からは「自分で少しでも食べられるように家でスプーンの練習をしてください」と言われました。そこで通っていた療育(児童発達支援)の先生に相談し、通う時間をずらしてお弁当を食べる日を設けてもらいスプーンの練習をしてもらうことにしました。

初日のお弁当の時間、私は隣の部屋から見学をしていました。すると発語が全くなかったり、歩けなかったり、娘より年齢の小さいお子さんも、皆スプーンを使って自分でごはんを食べていたのに、娘だけがお弁当の前で固まってひと口もごはんを食べず、私はショックを受けました。

先生からは、「慣れないことなので緊張したのかもしれない。最初はスティックパンやおにぎりなどスプーンを使わないお弁当にしてみんなと一緒にごはんを食べることになれさせましょう。家に帰ったら、たとえ食べられなくても食事の時間にはスプーンを持たせたり、親がごはんをすくってスプーンを渡したりして練習するように」と助言を受けました。

家に帰った私は先生に言われた通り練習しようとしたのですが、あまりにも熱心に練習しすぎたせいか、スプーンを見ただけで泣きだしてしまうようになり、練習はなかなか上手くいきませんでした。
あまりにも熱心に練習しすぎたせいか、スプーンを見ただけで泣きだしてしまうように
あまりにも熱心に練習しすぎたせいか、スプーンを見ただけで泣きだしてしまうように
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まずはフォークから練習してみることに

家でのスプーンの練習は上手くいかなかったのですが、ある時先生に「スプーンのすくう動作が難しいのかもしれない。フォークのほうが刺すだけなのでハードルが低いと思う」と助言を受け、フォークの練習をしてみることにしました。興味を持ってもらえるように新しく娘の好きなキャラクターのフォークとスプーンを買い、好物のバナナを切ってフォークに刺して渡してみると、娘は恐る恐るですがバナナを食べてくれました。そしてそれを何回か繰り返しているうちに、お弁当の時間にも、娘はフォークを使ってフルーツを自分で食べられるようになりました。

そして何度かフォークだけでお弁当を食べた後、道具を使ってものを食べることに自信が持てたのか、娘はついにお弁当の時間にスプーンを使ってごはんを食べられるようになりました。

先生にどうやって食べるようになったのか聞いたところ、その方法は「まずは大人がすくって子どもにすくったスプーンを渡す」というものでした。

実はその方法は、私も家で散々やって失敗した方法だったので驚きました。しかし、家で母親が相手だとどうしても甘えがありますが、先生は他の子の面倒も見なくてはならないので常に隣にいるわけでもなく、他人ということで少し遠慮もあり、自分で食べる気になったようなのです。また、周りのみんながスプーンで食べていることも刺激になったのだと思います。
まずはフォークの練習をしてみることに
まずはフォークの練習をしてみることに
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実は手先が不器用だった娘

無事にスプーンを使ってごはんを食べられるようになった娘ですが、娘がごはんを食べているところを見ると、ごはんを3回すくったうち1回くらいしか口の中に入れられていないことに気が付きました。他の2回はごはんを全部スプーンから落としており、結果としてごはんを3分の1くらいしか食べられていませんでした。
療育(児童発達支援)の先生に相談したところ、注意力が散漫でスプーンに集中していないことと同時に、手首のひねりの動作が苦手なことを指摘されました。
そこでごはんを食べる時にはテレビを消し、「スプーンを見て」と声かけをしたり、お砂場でおもちゃのスプーンを使っておままごとをしたり、お風呂に入るときにお玉でおもちゃやスーパーボールをすくう遊びをしたりして、すくう動きを練習するようにしました。その結果、段々とスプーンも上達していきました。
お玉でおもちゃやスーパーボールをすくう遊びをしたりして、すくう動きを練習するように
お玉でおもちゃやスーパーボールをすくう遊びをしたりして、すくう動きを練習するように
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こども園でもごはんが食べられるように

そしてこども園に入園し、給食が始まりました。また1人だけ緊張してごはんが食べられないのではないかと心配していましたが、加配の先生が横に付いていたものの、特に手伝うことなく1人で給食を食べたとのことで驚きました。しかも娘はそれまで色のついたごはんを嫌がり白いごはんしか食べられなかったのですが、カレーライスを全部食べたと聞きさらに驚きました。やはりみんなと一緒に食べるといろいろ刺激があって良かったのだろうと思いました。今では娘は箸も使えるようになり、小学校で楽しく給食を食べています。
カレーライスを全部食べたと聞き驚き!
カレーライスを全部食べたと聞き驚き!
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専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)

りんさんがスプーンを使えるようになるまでの試行錯誤がとても丁寧に綴られていて、ご家族の方がどれほど悩みながら工夫を重ねてこられたのかが伝わってきました。

スプーンを使って食べるという行動は、一見単純なようですが、実は子どもにとってさまざまな力を必要とします。食べ物に興味を持つこと、食具を手に取ること、食べ物をすくうこと、スプーンをなるべく水平に保ちながら口まで運ぶことなど、いくつもの細かな動作が組み合わさっています。手首を滑らかに動かす力以外に、腕や手、口など自分の身体の位置関係を把握して動きを調整する力なども関わっています。こうした部分に苦手さがあると、「すくった食べ物を途中でこぼしてしまう」「口までうまく運べない」といったことが続き、スプーンの使い方を身につけるまでに時間がかかることがあります。

そのため、一つの動作を細かく分け、まず本人ができる部分だけを経験してもらい、成功体験を積みながら少しずつ自分で行う部分を増やしていくという考え方は、発達支援のさまざまな場面で役立ちます。お砂場でスプーンを使ったり、お風呂でお玉を使っておもちゃやボールをすくったりと、食事以外の場面で「すくう」動きを練習した遊びもとても参考になりますね。

苦手な動きを食事の時間だけに練習するのではなく、遊びの中で楽しく経験することで、本人への負担を減らしながら必要な動きを身につけることができます。こうした遊びは、発達特性の有無にかかわらず、スプーンの練習を始める時期のお子さんにもぜひ取り入れてみたい方法ですね。

発達に特性のあるお子さんのできないことの背景には、単なる「やる気」の問題ではなく、感覚や運動に関わる特徴や、注意の向けにくさ、動作の見通しの持ちにくさなど、お子さんそれぞれの理由が隠れていることがあります。その理由を探りながら、今できるところから少しずつ経験を積ませてあげたいですね。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031159
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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