列に並べず注意され…ASD・ADHDの息子と臨んだ就学時健診。「入学前の学校相談」と連携で不安が安心に【読者体験談】

ライター:ユーザー体験談
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発達特性のある息子を連れて行く初めての「就学時健康診断」は、親の私にとっても緊張の連続でした。周りの子どもたちがしっかり列に並ぶ中、数歩横にズレてしまった息子は先生から強く注意され、今にも泣き出しそうに……。プレッシャーに押しつぶされそうになった私を救ってくれたのは、医療スタッフの柔軟な対応や家庭での事前準備、そして校長先生の温かい言葉でした。【発達ナビではユーザーさんからの子育てエピソードを募集中!今回は「就学時健康診断への不安と学校への連携」についてのエピソードをご紹介します】

監修者森 しほのアイコン
監修: 森 しほ
ゆうメンタル・スキンクリニック理事
ゆうメンタルクリニック・ゆうスキンクリニックにて勤務。産業医として一般企業のケアも行っている(産業医のご依頼を随時受付中)。 ・ゆうメンタルクリニック(上野/池袋/新宿/渋谷/秋葉原/品川/横浜/大宮/大阪/千葉/神戸三宮/京都/名古屋):https://yuik.net/ ・ゆうスキンクリニック(上野/池袋/新宿/横浜):https://yubt.net/ ・横浜ゆう訪問看護ステーション(不登校、引きこもり、子育て中の保護者のカウンセリング等お気軽に):https://yokohama.yuik.net/shinyoko-houkan/
お子さんのプロフィール
  • 年齢:10歳 
  • 診断名:ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症) 
  • 診断時期:3歳4か月 
  • エピソード当時の年齢:5歳11か月  

周りと同じようにできない――不安とプレッシャーに押しつぶされそうだった就学時健診

初めて足を踏み入れる小学校での、就学時健康診断のことです。午前中は幼稚園で過ごした後、急いでお迎えに行き、自宅で昼食を済ませてから徒歩で学校へ向かうというハードなスケジュールでした。
私が心配していたのは、学校内で息子が驚いてフリーズしてぐずるか、はしゃいで衝動性が全開になるか、疲れてかんしゃくを起こすのではということでした。そのため、この日はなるべく息子のペースに合わせて行動しようと決めていました。

実は事前にお友だちから「一緒に早めに行こう!」と誘われていたのですが、時間通りに行くのは難しいだろうと思い、お断りしていました。案の定、家を出る前に遊びモードになってぐずったため、到着は予定より遅れて中盤あたりの時間に。早めに到着した子たちが順番に列をつくっていましたが、周りを見渡すと、指示通り一斉に行動できている子がほとんどです。健診名簿に125人くらい載っていた中、列から離れているのはほんの数人。その状況を見た私は、「やっぱり息子だけ……」と、すっかりネガティブモードになっていました。
そんなプレッシャーの中、ある検査の列に並んでいたところ、息子が数歩横にズレてしまいました。その瞬間、「列から出ない!早くしなさい!」と、周りにいた全員が注目するほどの大きな声で先生から注意されたのです。その先生は、並んでいる子どもたちの様子を厳格にチェックしていました(入学後に分かったことですが、 生活指導主任の先生でした)。

息子は、今にも泣き出しそうな表情でかたまっています。私はすかさず横に行き、「息子には発達特性があるので、横に付き添わせてください。一斉指示が通りにくく、一声かける必要があるので」とお願いしました。しかし、先生からは厳しい視線を向けられたままでした。
列から少しはみ出ただけで、先生から大声で注意されてしまい……
列から少しはみ出ただけで、先生から大声で注意されてしまい……
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医師や看護師の柔軟な対応に救われて

どうしようかと考えていたとき、その検査の担当医師が「それでは、お母さんが横で付き添ってください」と助け舟を出してくださいました。隣で付き添いながら、都度「次にすること(行く場所)」などを息子に伝えていったところ、少しずつ落ち着きを取り戻し、その場に留まったり離れたりすることなく検査を受けることができました。

また、視力検査の際にも助けられる出来事がありました。この検査では「保護者の付き添いは不可」と言われたため、私は入口から見守ることにしていたのですが、「穴が開いているほうを右や左で答えてね」という説明に、やはり息子はフリーズ。私は数秒待った後、担当の方に「まだ言葉でうまく伝えられません。あと、ワンテンポ遅れます。指差しなら答えられます!」と声をかけました。するとすぐに、「じゃあ、このドーナツが開いているほうを指さしてね!」と、息子に伝わりやすい言葉に変えてくださったのです。
その後も、ワンテンポはズレるものの、落ち着いて指差しできている様子が確認できました。横に付き添わなくてもいい場合は、距離を保って見守ることができたこともよかったです。

実は、このときの検査担当の方は小児眼科専門の看護師さんでした。その後、毎年その眼科に通うことになり、発達特性にも深く理解がある方なのだと気がつきました。

ハードルを下げて臨んだ集団説明会。『おやくそくリスト』の効果は……

健診後の集団説明会では、事前に準備していた『おやくそくリスト』が役立ちました。

  • ママのとなりにいるよ 
  • おはなしは ちいさいこえで 
  • おえかきや ほんをよんでまつよ 

約束事を3つに絞り、イラストとひらがなで作成して、家でも一緒に実演してきたものです。
元々、「当日は激しく動き回ったり大きな声を出さなければ、離席しても仕方ない」と少しハードルを下げて臨んでいました。案の定、息子は離席しましたが、リスト通り私のイスの横から離れることなく、床に座って過ごせました。その姿を見て、「イスに座っていられなくても、私の隣にいることができたし機嫌も戻ってよかった。親子で頑張った!」と心から感じました。

帰り際、校長先生に相談したい人を募っていたため、そのまま別室で面談していただくことになりました。
私は、息子が数字が好きで時計が読めること、一方で衝動性があり気になる物があると一目散に駆け寄ってしまうことを正直に伝えました。併せて、「説明を聞いて理解すればできることが多いので、個別の声かけをしてほしい」というお願いや不安な思いも伝えました。
校長先生は「そうなんですね」「なるほど」と穏やかに返答してくださいました。
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「お母さん、大丈夫ですよ!」の言葉に救われた入学前の壁

興味の赴くままに話す息子を、否定することなく受け止めてくれた校長先生
興味の赴くままに話す息子を、否定することなく受け止めてくれた校長先生
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面談中、息子は時計や掲示物に興味を示し、「あれは何?これは何?今は〇時〇分だね!」などと校長先生に声をかけるので、私はあえて制止せず、ありのままの姿をお見せしました。
すると校長先生は、「お、もう時計読めるの!うんうん、そうだね」と、終始息子に合わせてくださったのです。
気になる物を見に行っては話し、また着席する、を繰り返す息子。

そうして面談を終える頃、最後に校長先生から、「分かりました。お母さん、大丈夫ですよ!」と言われ、私は本当にホッと胸をなでおろしました。
息子の入学と入れ替わりにその校長先生は異動されたのですが、担任になってくださった先生はASD(自閉スペクトラム症)の生徒さんを通常学級で受け持った経験がある方でした。現在、息子は特性に理解のある対応をしていただいています。

不安は真剣に考えている証拠。素直に伝えることの大切さ

すべてが終わって帰宅したとき、私は一人で号泣しました。
「発達特性のある子が小学校に入学することって、こんなにも大変なんだ。まだこれほど幼い頃からつまずいて、この先はどうなるんだろう……」という思いがあふれてきたのです。

これから就学時健康診断を迎えるにあたり、不安を感じている方もいらっしゃるかと思います。でも、不安を抱えているのは、それくらい真剣にお子さんのことを考えている証拠だとも思うのです。
どうしてもお願いしたいところ、気になるところは事前に学校へ相談しておくことで、入学後の後悔が少なくなるかもしれません。皆さんの就学への道のりが、少しでもうまくいくといいなと思います。

イラスト/ネコ山
エピソード参考/七転八起

専門家コメント 森しほ先生(医師・公認心理師)

ちゃんとできるようにしなきゃと思うと、保護者の方も緊張してしまいますよね。伝え方を工夫して、お子さんのできることに目を向けて頑張られましたね。
わが子がうまく集団と同じ動きをできていないように感じると、「このままで大丈夫なのかな」「周りに迷惑をかけてしまったら」という不安が強くなるとおっしゃる保護者の方は少なくありません。特に就学前は、これまでと環境が大きく変わる時期なので、お子さんにも保護者の方にも心理的な負荷がかかりやすいタイミングとなります。

さて、発達特性のあるお子さんにとっては、みんなと同じように動くことそのものが難しい場合があります。ASD(自閉スペクトラム症)では、場面の切り替えや曖昧な指示の理解に苦労することがありますし、ADHD(注意欠如多動症)では衝動性があったり先生のお話に注意を向けにくいことがあります。
視力検査で「開いているところを指さしてね」と具体的に伝えるといった、ちょっとした伝え方の工夫でできるようになることもあります。もともと「できない」のではなく、その子に合った伝え方ならできる、というケースも多いのです。
特性を理解し、環境や伝え方を少し調整するとお子さんの安心にもつながります。

就学時健診や入学を控えている場合、まずおすすめしたいのは「当日、完璧にできること」を目標にしすぎないことです。
たとえば「列から絶対に離れない」ではなく、「お母さんの近くにいる」「大きな声を出さずに待つ」など、本人が達成できそうな目標を2~3個に絞ってお約束リストをつくっておくといいでしょう。リストをつくるときには文字だけでなく、イラストにしたり、実演をして説明しておくのも有効です。
学校に伝えるときは、できないことを伝えるだけではなく、こうしたらできる、という方法をセットで伝えるようにしてみてください。
「言葉で答えるのは時間がかかりますが、指差しならできます」
「次にすることを一つずつ伝えると理解できます」
「気になるものがあると走ってしまうので、近くで声をかけてもらえると助かります」
というように具体的に伝えると、周囲も対応を考えやすくなります。

支援機関に通っている方は、学校への伝え方も相談しておくと安心です。
困った行動をなくすこと、みんなと同じ行動をとることだけが成長ではありません。本人に合った方法を見つけて、これならできるということを少しずつ増やしていくことも、立派な成長です。
保護者の方が一人で抱え込まず、学校や医療機関、周囲の人を上手に頼っていくことも、お子さんを支える大切な一歩なのではないでしょうか。 (監修:医師・公認心理師 森しほ先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。


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