多様な子どもが「その子らしく」生きるために。LGBTQ+調査から考える、日常的なマイノリティ支援【第45回日本思春期学会総会・学術集会】

ライター:発達ナビ【編集部Eye】
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2026年8月29日に千葉県・幕張メッセにて開催された「第45回日本思春期学会総会・学術集会」では、『多様性を尊重する医療と教育現場であるために〜LGBTQ+を対象にした国内最大規模の調査結果から〜』と題した講演が行われました。登壇したのは、宝塚大学 看護学部教授の日高庸晴先生です。

マイノリティとされる子どもたちの「見えないSOS」

8月29日に千葉県・幕張メッセにて開催された「第45回日本思春期学会総会・学術集会」。『多様性を尊重する医療と教育現場であるために〜LGBTQ+を対象にした国内最大規模の調査結果から〜』の講演では、LGBTQ+を対象にした大規模調査の結果が提示され、単にセクシュアルマイノリティの現状を伝えるにとどまらず、「多数派(マジョリティ)を基準に設計された社会の中で、少数派(マイノリティ)として生きる子どもたちが、どのような困難に直面し、それを大人がどう支えられるか」という、普遍的な問いを投げかけるものでした。

LITALICO発達ナビ読者の皆さんの中には、「発達特性についての悩みと、セクシュアルマイノリティの課題は、少し遠い話なのでは?」と感じる方もいるかもしれません。確かに「発達障害」と「セクシュアルマイノリティ」は、特徴やその発生要因が重なっているわけではありませんが、それでもなお、この二つには社会の中で生きるうえで共通する構図があります。それは、『普通』や『当たり前』とされる多数派の基準で測られる社会の中で、生きづらさを抱え、自分自身を肯定しづらい状況に置かれやすいという点です。

このコラムでは、宝塚大学 看護学部教授の日高庸晴先生が28年前から継続してきた大規模調査のデータをもとに、マイノリティである子どもたちの「見えないSOS」と、子どもがどんな状況であっても「安心して自分らしくいられる家庭・社会」をどう作っていくか、そのヒントを紐解きます。

膨大なデータが明かす、生きづらさの正体

日高先生は、これまでに数万人規模の当事者や教職員、医療従事者を対象とした大調査を繰り返し実施してきました。その最新のデータが浮き彫りにしたのは、思春期という多感な時期に、周囲の無理解や固定観念に晒されている子どもたちの過酷な現実です。調査結果では、10代のセクシュアルマイノリティ当事者のいじめ被害経験や不登校、自傷行為の経験率の高さなどが示されました。

思春期は、自らの生き方を模索し、自分自身を形成していく非常に大切な時期です。しかし、周囲の無理解や固定的な価値観によって、生きづらさを抱える若者が少なくありません。この生きづらさは、決して「本人の心の弱さ」や「特性そのもの」が原因ではなく、「ありのままの自分を受け入れてもらえないのではないか」という不安や、周囲からの否定的な眼差しといった、周りの環境によって生み出されていると言えます。

この構図は、発達が気になるお子さん、あるいは周囲と違った行動や学習のペースを持つお子さんが、「みんなと同じようにできない」「怠けている」と誤解され、二次障害(不登校など)に繋がっていく構造とも似ています。

親が「あらかじめ知っていること」が、最大のセーフティネットに

では、子どもたちのために家族や周囲の大人ができることは何でしょうか。日高先生が実施した、セクシュアルマイノリティの子どもの保護者130人を対象とした調査には、非常に重要な示唆が含まれていました。

現在、10代の当事者のうち、親に自分のセクシュアリティをカミングアウトできているのは、約30%程度と推定されています。一方、保護者に対して「カミングアウトされる前から、LGBTQ+について知っていましたか?」という質問の結果を見ると

「カミングアウトされる前から知っていた」と答えた保護者の約8割は、子どもからのカミングアウトを比較的スムーズに受け入れることができたということが分かりました。

日高先生は「事前に情報があることはそれを受け入れるための大きな助けとなり、そして親がありのままのわが子を肯定できるということは、その家庭の子どもにとって最大の助けになります」と話しました。

これは発達障害の理解においても同様で、わが子に特性があるかもしれないと気づいた時、あるいは診断を受けた時、事前に知識や理解があれば、保護者自身の不安は和らぎ、お子さんをいたずらに否定することなく「その子に合わせたサポート」へスムーズに移行できます。
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日常の「小さな変化」から始められる、多様性を認めるレッスン

日高先生は日常のほんの少しの関わり方や、身近なツールを使うことで、大人の、そして子どもたちの意識は大きく変わると言います。

絵本が教えてくれた「その子らしさ」を受け入れる力

講演の中で紹介されたのは、小学館から出版されている絵本『ぼくのスカート』(原題:『FRED GETS DRESSED』)を使った、小学校1年生の授業のエピソードです。絵本の主人公フレッドは、両親の留守中にお母さんのクローゼットからピンクのシャツを引っ張り出して着てみます。大人用のシャツはワンピースのような着こなしになり、フレッドはこの姿でご機嫌に過ごします。

ある小学校での授業のこと。授業の当初、子どもたちは「男の子なのにピンクはおかしい」「スカートはおかしい」と口々に言っていました。しかし、授業が始まって30分ほど経ち、親が帰ってきたシーンを見たとき、子どもたちの反応に変化が起こりました。「おかしい」と思う立場から一転し、「お父さんお母さんに叱られるんじゃないか」「どうしよう、怖い」と、フレッドの不安を自分のことのように心配し始め、フレッドの気持ちに寄り添い始めたのです。
さらに、今度は両親の立場を想像してもらうと、ほぼ全員の子どもたちが「可愛いし似合ってるからいいんじゃない?」と、フレッドの姿を肯定的に捉えるようになりました。
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「男らしく」「女らしく」から「その子らしく」へ

家庭や学校での小さな配慮も、大きな意識改革に繋がります。 例えば、近年の学校制服における「女子のスラックス選択制」の広がりも好例です。これはトランスジェンダーの生徒だけでなく、「スカートが苦手」「寒いからズボンがいい」という生徒にとっても、選択の幅を広げる大きな助けになっています。ネクタイ・リボン・スラックス・スカート、どの組み合わせでもOKとするといった方法で、制服の多様性を確保することもできるでしょう。

「その子が何に心地よさを感じ、何を望んでいるのか」に目を向けること。この眼差しは、発達に特性のあるお子さんが「ほかの子と同じやり方」に苦しんでいる時、その子に合った独自の学び方や過ごし方を見つけ、肯定していくアプローチと一致しています。

特別に扱うのではなく、一人ひとりの尊厳を守るために

発達障害であっても、セクシュアル・マイノリティであっても、あるいはそれ以外のどんな違いであっても、子どもたちが求めているのは「特別扱い」ではなく「みんなと少し違っていても、ここにいていいんだ」「私は私のままで愛されているんだ」という、圧倒的な安心感です。

日高先生は「私たちは、多様性を何か特別なこととして扱うのではなく、目の前にいる一人ひとりの存在と尊厳を守るという、ごく基本的な姿勢を求められています」と講演の最後に締めくくりました。
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